社内報の抜本的なリニューアルは、どう進めれば成功するのでしょうか。そのカギは、自社のインターナルコミュニケーションのミッションそのものを見直すことにあります。
ミッション見直しへと向かう初めの一歩として、私たちは「組織課題の抽出」「経営環境の考察」からのアプローチをお勧めしています。前回の記事では、1つ目の「組織課題の抽出」、つまり組織として今取り組むべき課題を見極める切り口をお伝えしました。今回は2つ目「経営環境の考察」についてご説明します。
目次
「経営環境考察」の方法 |
(1)社会のトレンドから自社の取り組むべき課題を考察
どんな企業ももちろん、経済情勢・社会環境と無縁ではいられません。
であれば、「自社を取り巻く社会の環境が、今どのようになっているのか」ということにも、貴社が取り組むべき課題、テーマのヒントを見出すべきであると言えます。
社会のトレンドを大きくとらえる方法はいくつも考えられますが、業種・業界ごとに重視する分野や取り組み課題が異なることも当然あるでしょう。
そこで、ここではまず、人が働いているならばどんな企業にも必ず存在する「スタッフ部門」の注目トレンドを、汎用的な例としてご紹介します。以下の囲みは、ウィズワークスが販売元となっている総務部門の専門誌『月刊総務』が、ここ10年で特集として取り上げたテーマの一部です。
『月刊総務』テーマに見る社会のトレンド
- 2009年:裁判員制度・選ばれた社員のサポート/リスクマネジメント/ワークシェアリング
- 2010年:企業年金/ワーク・ライフ・バランス/中国ビジネス
- 2011年:BCP(事業継続計画)/DRP(災害復旧計画)/防災訓練
- 2012年:SNS/グローバル/メンタルヘルス
- 2013年:ダイバーシティ・マネジメント/BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)/働きがいのある会社
- 2014年:ユニバーサル就労/健康経営/社員の介護
- 2015年:ストレスチェック/コーポレートガバナンスコード/パンデミック対策
- 2016年:女性活躍/ステークホルダー・エンゲージメント/介護離職
- 2017年:AI(人工知能)/IoT(Internet of Things) /AR 拡張現実・VR 仮想現実/ESG(環境:Environment、社会:Social、ガバナンス:Governance)/アトラクション&リテンション/働き方改革/シェアリングエコノミー
- 2018年:働き方改革第2章/第4次産業革命/人づくり革命/働き方の多様化/労務管理の厳正化/人材不足/ダイバーシティ/健康経営
- 2019年:リカレント教育/ウェル・ビーイングとワークプレイス/SDGs経営/外国人材と多文化共生/DX(デジタルトランスフォーメーション)/障がい者雇用
貴社の社内報で、実際に過去に取り上げたことのあるテーマもあったのではないでしょうか。
こうした社会のトレンド、引いては貴社の取り組み課題も踏まえた上で、貴社内のコミュニケーション上のミッション策定へとつなげていくことを意識しながら、経営環境について考察を重ねてみましょう。
ウィズワークスの社内報セミナーのグループワークで参加者の皆さんにも取り組んでいただいている、「貴社取り組み課題と社会のトレンド」チェックのワークシートをお使いいただくと、整理がしやすいはず。ぜひ以下よりダウンロードしてご活用ください。
(2)「トップメッセージ」からキーワード抽出
経営環境に関する問題意識において、最も高い視点と包括的な視野をお持ちの方はどなたでしょうか。…言うまでもなく、ほとんどの企業でそれは経営トップその人です。
だからこそ、トップのメッセージは、インターナルコミュニケーションを用いて企業を成長させるミッション策定へとつながっていくキーワードの宝庫です。
会社案内・公式サイトでの公式メッセージ、ビジネス誌や業界紙での取材記事・寄稿、社内報(紙・Web)のトップ登場企画、イントラ内社長ブログ、タウンホールミーティングの記録などなど、折に触れて発信される「経営トップのメッセージ」を、あなたは常日ごろ、きちんとフォローできているでしょうか。
以下の囲みは、ウィズワークスで現在制作している74社の社内報の全てのトップメッセージを参考に77のキーワードをピックアップし、多く取り上げられている順に並べてみたものです。
2019年トップメッセージキーワード
- 働き方改革(16)
生産性向上 時間外労働の管理 働きやすい環境 外国人労働者受け入れ 女性活躍支援 テレワーク 健康経営 - 事業基盤強化(14)
事業競争力強化 経営基盤強化 グループ連結収益 経営体質強化 収益基盤構築 事業基盤強化 高収益体質 - 新・改革・変革(13)
経営改革 意識改革 行動変革 ビジネスモデル変革 プロセス改革 新商品創出 新ビジネス イノベーション - 安全(9)
安全確保 災害予防対策 BCP 安全感受性強化 自然災害リスク 安全の非常事態 安全健康活動 - デジタル推進(5) ICT IoT AI 第4次産業革命 ロボティクス デジタル推進
- 人材育成(5) 人材育成(2) 採用と人材育成 外国人労働者の受け入れ
- CSR(4) CSR活動 ESG CSR推進
- コンプライアンス(4) コンプライアンス 個人情報保護
- その他 ポートフォリオ変革 持続的な成長 夢と情熱 セルフマネジメント 持続的な事業発展 圧倒的な当事者意識
本記事の「(1)貴社の取り組み課題や社会のトレンド」の項にも似たテーマが並びますが、トップメッセージでは、トップが自らの言葉で、こうしたテーマと自社課題を結びつけて語ってくれます。だから、従業員にとって自分ごととしてとらえられるような、テーマのヒントが満載なのです。
社内報リニューアルに向けて経営環境を整理するために、トップメッセージは、まず当たらなければならない資料と言えます。
あるいは、社内報担当の皆さんと経営トップの距離が近い企業であれば、そのものズバリ、社内報リニューアルについて、トップの意向を真正面から聞き出すという方法も取れるでしょう。
まとめ
「組織課題の抽出」で行うことは、以下の3つ。
- 現在起きている「企業のライフイベント」の見極め
- 従業員満足度調査やエンゲージメントサーベイから現状の組織課題を考察
- 「コミュニケーションインフラ」としての機能不全箇所の再点検
「経営環境の考察」では、この2点。
- 社会のトレンドから自社の取り組むべき課題を考察
- 経営トップのメッセージからキーワードを抽出
これらを整理することで、貴社が取り組むべき「インターナルコミュニケーションのテーマ」を抽出することができます。ほんの一例ですが、私たちがコンサルティングを行ったある企業では、以下のようなテーマを抽出できました。
テーマ抽出(一例)
①組織課題抽出
・企業理念・行動指針の徹底
・若手社員のリテンション
・新3カ年計画の推進
・グループのシナジー強化
②経営環境考察
・社会課題からの新事業創出
・ICTを駆使した働き方改革
こうして抽出されたテーマと向き合うため、社内報の「形」を進化させていくこと――それが、ウィズワークスが提案するリニューアルです。
インターナルコミュニケーションのミッションの本質は、時代が変わっても、そう大きく変化することはありません。しかし、会社は「生き物」であり、経営環境や組織課題は日々変化しています。
時代と環境の変化を敏感に察知し、チューニングを繰り返してこそ、社内報をはじめインターナルコミュニケーションツールは、「会社を構成する人と組織のエンゲージメントを高め、持続的に企業価値を向上させるツール」としての機能を全うすることになるのです。
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