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サイトへの評価も変えた、参加型連載企画(株式会社資生堂)

資生堂の事例発表のお2人
左から資生堂ジャパン メディア統括部 高倉久代さん、資生堂 グローバル広報部 社内・デジタル広報グループ 小出茉那さん

2018年10月18日に開催した「社内報アワード2018 表彰&ナレッジ共有イベント」では、上位入賞を果たした優秀企業8社にプレゼンターとなっていただき、「社内報制作の事例発表」を行いました。「社内報ナビ」では、各社の発表内容をご紹介していきます。

第6回目の登場は、積極的な海外展開により海外売上比率が50%以上を占めるグローバル企業となっている株式会社資生堂。インターナルコミュニケーションにおいても、いち早くグローバル化に踏み切り、2016年にはグローバル統一プラットフォーム『WITH』を開設、情報発信の一元化を実現しました。そこに至るまでの経過と背景、Web社内報部門でゴールド賞に輝いた好事例集「動け、資生堂。実践レポート」の詳細をご紹介します。

「Webサイトに一本化する」という大きな決断

 当社では2016年3月、これまでの紙媒体の社内報の発行を取りやめ、社内のニュースをグローバルに共有するWebサイト『WITH』を開設しました。その一番の理由は、グローバル化が加速する会社の動きに足並みを揃えつつスピーディーな情報発信が、従来の形(下図)ではできなくなっていたからでした。

紙媒体(社内報) Web・イントラ
1959 国内社員向け『椿の友』創刊(~2008年) ―――
1993 海外社員向け『S.I.G.N』創刊(Shiseido International Group News)※国内・海外別コンテンツ 国内向けイントラサイト『Headline News』スタート
2009 国内版・海外版統合『TSUBAKI no TOMO』へとリニューアル ※日英併記 『What’s Up Shiseido』へと名称変更。 ※国内にとどまらず多くの社員が閲覧できるようコンテンツ含め刷新

2009年よりスタートした、グローバルでの発信内容の統一を図る体制にて5~6年続けていく中で、いくつかの課題が浮上しました。

グローバルでのインターナルコミュニケーションの課題

  • グローバルにグループを横断するツールが未整備
  • 各ブランドや事業部が発信するWeb媒体が乱立
  • 店頭や営業現場でのベストプラクティスをスピーディーに全社に共有する仕組みが弱い

 こうした課題を解決し、グローバル化が加速する会社の動きに合わせてインターナルコミュニケーションを強化するため、全世界でスピーディーに情報共有可能なプラットフォームを新たに構築することにしたのです。

社員みんなで作り上げ、「One Shiseido」意識を醸成

WITHトップ画面
「カテゴリー」「リージョン(エリア)」に分類され、日本語・英語・中国語の3言語に対応

 名称の「WITH」は、Worldwide Internal Topics Homeの略。グループ全体をつなぐインターナルコミュニケーションを想起させるとともに、当社が真のコンシューマー起点に立ち返り、グローバルマーケティングカンパニーになるためのキーワード“with”も重ねています。

 主なコンテンツは、トップメッセージや経営情報、そして世界中のニュース全般です。業務情報などは別の業務サイトで管理しているため、純粋なコミュニケーションポータルサイトとして運営しています。

 対応しているのは日本語・英語・中国語の3言語。ただし、全部の記事を翻訳しているわけではなく、共有の必要性があると判断したものに限定しています。写真を多く掲載するほか、最近は動画も積極的に活用します。

 制作は社内広報担当3名が中心となり、各部門・事業本部から選出された編集委員約30名とともに行っています。編集委員制度を採用したのは、社員みんなで作り上げる体制とすることで、媒体への関心を高め、部門や事業所、職種の垣根を超えた「One Shiseido」マインドを醸成する狙いがあってのこと。

 メンバーには、所属する部署のニュースをそれぞれ掲載してもらうほか、サイトのあり方などについてディスカッションも行います。また、5つある海外地域本社 のPR担当者とも連携。彼らが発信するニュースのうち、国内に知らせたいものについては、和訳して掲載しています。

 閲覧対象は全社員ですが、PCを持たない工場やグループ会社の社員向けには四半期に1度、3カ月分のニュースを一部抜粋してまとめた紙媒体『WITHタブロイド版』も発行。全員に情報が行き渡るよう心掛けています。

見てほしい人に「参加してもらう」というアイデア

 『WITH』は立ち上げから約2年が経過。運営はおおむね順調ながら、もちろん課題もありました。最たるものは、閲覧数がなかなか伸びないこと。特に、「現場で働く人」に見てもらえていないことは、悩ましい問題でした。

 今回、ゴールド賞をいただいた「動け、資生堂。実践レポート」は、その解決策として始めた連載です。また1年を迎えた際、この宝物を総集編とし再発行しました

 取り上げているのは、現場の最前線で働くビューティーコンサルタント(BC)。彼女・彼ら にどうしたら見てもらえるかを突き詰めていった結果、「見てもらいたい人たちに参加してもらうことが近道なのでは?」と考えたのです。

 1人のBCの背後にはオフィスの仲間がいて、全国にも仲間がいる――ということは、自ずと閲覧数が上がるはずです。

 登場するBCには、現場の成功例を語ってもらいました。例えば、お客様に興味を持ってもらう工夫や、再来店につながるファンづくり、心に残る応対やおもてなし、後輩の育成方法など。

 それらを横展開して共有することは、全国にいる仲間の励みになるだけでなく、現場を知らない人が現場を知る良い機会にもなります。連載としたのは、読者に広がりを持たせるのに加え、『WITH』を見る習慣づけを図りたいとの意図によるものです。

ゴールド賞企画の画面一例
現場の成功例を掲載することで、全国の仲間の励みにもなりました。

取材調整やスケジュールは予想外の連続

 苦労した点はいくつかありますが、一番難航したのはネタ集めでした。編集委員や会議資料を主な情報源としてネタを集めましたが、誌面で掲載できる状況のものはなかなか現れず、大半のネタが採用に至りません。結果としてエリアに偏りが出てしまい、紹介できなかったエリアの方から「うちも紹介してほしかった」との声も上がりました。

 また、他社様にご協力をいただく企画ということで、取材調整も大変でした。社外取材の依頼は、日ごろからお付き合いのある各プロジェクトの担当者を通じて行いましたが、通常の取材に比べて事前の手続きが多く、時間を要した上に、皆さんご多忙でなかなかスケジュールが合いません。プロジェクトの定例会議後に時間を取っていただいたことも…。

 その後の工程でも予想外に時間を取られました。社外の方々には、社内修正を反映した状態にてご確認いただきたかったので、再校を初校として提出。その分、制作会社との出し・戻しが増え、通常よりスケジュールを詰めて原稿確認を行う事態に。さらには、情報開示や表現について、当社と社外では異なる考え方もあったため、その調整にも追われました。

現場に出向いて、作り手の思いも伝える

 工夫したのは、読んで即真似できるテーマにしたこと。そして、毎回異なるテーマを扱ったことです。さまざまな立場の読者が見たくなるように切り口を変え、十人十色、オリジナリティーあふれる活動事例を紹介するようにしました。

 加えて、共感できる事例にこだわったのもポイント。BCは普段店頭で孤独に活動していることが多いため、全国で仲間が頑張っていることを知ってもらい、さらには資生堂社員としての心のつながりや結束感を感じてほしかったのです。

 取材に当たって注意したのは、必ず編集部員が現場に出向き、日頃の店頭活動への感謝、そしてテーマや人選について作り手の思いを直接伝えるようにした点です。顔が見えると取材対象者の心も動きますし、より良い内容につながると考えてのことでした。

ゴールド賞企画の画面一例

ゴールド賞企画の画面一例

 

 

ゴールド賞企画の画面一例

毎回異なるテーマを掲げ、共感できる事例を掲載することにこだわりました

ヒット企画で、Webサイトの見方も変わった

 一番苦労したのは「人選」です。テーマを優先してエリアに偏りが出てしまわないよう、エリア責任者にヒアリングを行い、取り上げるエリアのバランスに気を配りました。

 取材対象者に関する情報収集は、BCを統括する部署と連携して行いましたが、その都度探すのではなく、常時情報をもらえるようにお願いし、プールしておくことに。ほかにも、質問の仕方を変えたり、聞き方を工夫するなどして、良い情報を引き出すよう努めました。この様に、様々な人に関わってもらうことがWITHをみる習慣づけとなったのも大きな成果です。

 閲覧数増加を目的にスタートした本企画は、狙いどおりの効果を上げてくれました。それだけでなく、BCの頑張りを全社員に伝えられたことでBCのモチベーションアップにもつながり、また社員のサイトへの見方も、「何かヒントが隠されているツール」という風に変わってきたように思います。

 全世界の社員の心と心をつなぐために誕生させた『WITH』。今後も開設当時の志と目的を見失うことなく、本当の意味でのコミュニケーションツールに育てていきたいと思っています。

 

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※ゴールド賞事例紹介、coming soon!(敬称略)
㈱メイテック/ダイキン工業㈱

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