「社内報アワード2022」のWeb/アプリ社内報部門・企画単体において、5つの企画で入賞を果たしたパーソルホールディングス株式会社。オウンドメディア『Touch! PERSOL』の企画、「絵本で描く『はたらいて、笑おう。』が実現された世界」と「パーソルかるた」がゴールド賞に輝いたほか、グループ社内報『ツナぐ』の2企画がシルバー賞を、1企画がブロンズ賞を獲得しています。企画のご担当者のお2人が事例発表を行い、制作過程をお話しくださいました。インタビュアーによる質問を交え、制作の裏側に迫ります。
【プレゼンテーター】
パーソルホールディングス株式会社
グループコミュニケーション本部コミュニケーション部
インナーコミュニケーション室 エキスパート
柴田 真亜美さん 石山 貴一さん
【インタビュアー】
ウィズワークス株式会社
社内報事業部 マネジャー
橋詰 知明
新ブランドの浸透と、組織内の一体感醸成を図る
――まず、簡単に会社概要を教えてください。
石山:1973年のテンプスタッフ株式会社(現・パーソルテンプスタッフ株式会社)創業以降、はたらく一人ひとりの想いと時代の要請に合わせて、総合人材サービスとして業容を拡大してきました。現在、国内外含めた全従業員数は6万人超(2022年3月時点)、グループ会社数は合計で137社(2023年4月時点)、拠点は716箇所(2023年2月時点)になります。
2016年にグループ一体経営を進めるべく、新たなブランド「PERSOL(パーソル)」が生まれました。現在はグループビジョン「はたらいて、笑おう。」に向けてさまざまな取り組みを進めていますが、社員への理念浸透と、グループ会社間の枠組を超えた一体感醸成を目指して活動しているのが、私たちが所属するインナーコミュニケーション室です。現在、兼務のメンバーも含め8名で業務に取り組んでいます。
社内公募で「絵本」を作成。その狙いは……
―― 今回2企画でゴールド賞を受賞されました。まずは「絵本で描く『はたらいて、笑おう。』が実現された世界」を担当された柴田さん、企画の背景を教えてください。
柴田:当社のグループビジョン「はたらいて、笑おう。」は抽象度が高いため、社員に自分ごととして捉え、行動してもらうためには、その理解と浸透を図る必要がありました。今回の企画では言葉だけではなくビジュアル化して視覚的な訴求を加えることで、社員が自分ごとに落とし込みやすくなるのではないかと思い、「絵本」というアウトプットの形を選びました。
―― どのような工程を経て、絵本が完成したのでしょうか。
柴田:まずは3名の社員に、どんなことを表現したいのか改めて詳細をヒアリングしました。そのうえで全6ページのストーリーを固め、作画を担当していただく作家さんとやり取りしていきました。原案者と作家さんが二人三脚で制作できることが重要だと考えていたので、私はできる限り黒子に徹しました。結果的に、お互い納得ができる作品作りができたと思います。
―― 社内ではどのような反響がありましたか?
柴田:オウンドメディア内の他の企画と比較すると、かなり高いPV数を記録しました。多くの社員に、興味深い企画として受け取ってもらえたのではないかと思います。またインナーコミュニケーション室にではなく、原案を考えてくれた社員に対して多くのコメントが寄せられたと聞いています。
私たちにとっても、原案者の社員にとっても、そして作家さんにとってもはじめての経験となりましたが、ワンチームで良好な関係性を築き、最初から最後まで楽しみながらプロジェクトに取り組むことができました。PV数などの結果にもつながり、3冊の絵本を通じてグループビジョンをより身近に感じてもらうことができたと思います。
グループ各社を「かるた」形式で紹介し、活用
続いてもう1企画、ゴールド賞を受賞した「パーソルかるた」について企画の趣旨をうかがいます。担当された石山さん、お願いいたします。
石山:「パーソルかるた」は、グループ会社の理解を促進するために生まれた企画です。冒頭でご紹介した通り、パーソルグループは多くの事業会社でできています。ただ、社員にとって、同じグループ内においても、日常業務の中では自分が所属する会社以外の情報を得る機会はなかなかありません。
そこで情報に触れるハードルを徹底的に下げることを意識し、たどり着いたのが「かるた」形式のコンテンツでした。
―― グループ全社とコミュニケーションを取り、事業内容を限られた文字数で表現するのは難易度が非常に高い作業だったと思います。苦労された点はありますか?
石山:短い文章で会社について表現する場合、ともすれば誤解につながってしまうリスクがあります。そのため各社とのコミュニケーションは密に行いました。制作側である程度の表現の叩き台を作成して各社に提案し、細かい表現を相談しながら一緒に作り上げていきました。
とはいえ各社に大きな負担がかかったのは間違いありません。しかし、結果的に、完成した「パーソルかるた」をいろいろなところで活用でき、よかったという声を多数いただいています。
――どんなところで活用されているのでしょう?
石山:人事から採用候補者の方にご案内したり、入社式のプログラムの中で使われたりと、広く活用されています。またオウンドメディア上で公開しているため、グループ社員が閲覧するだけではなく、SNSのコンテンツとしてもシェアされています。
コンテンツ化するにあたり、とにかく情報に触れるハードルを下げることに妥協せず取り組んだ成果だと思います。
紙媒体からe-bookへ。試行錯誤を重ねて最適化
――ご紹介いただいたユニークな企画の他、グループ報『ツナぐ』の連載企画でも賞を獲得されていますね。このグループ報はもともと紙媒体で発行されていたものをe-book化したものだと伺っています。
石山:そうですね。リモートで働く社員が増えたのを機に、2020年以降オンラインに切り替えました。『ツナぐ』自体が社員から愛されていた媒体でしたので、グループ報としてそのまま残すことにしたんです。ただ仕様に関しては、現在の形にたどり着くまでさまざまな試行錯誤を重ねてきました。
―― 特集などの企画も非常に興味深いのですが、今回は人気の連載企画についてご紹介をお願いします。
石山:1つは社員のストーリーを小説風に紹介する「はたらくスケッチ」です。業務内容に留まらず、ときには幼少期までさかのぼって個人の人生にフォーカスしています。きれいごとではない「リアリティさ」を大切にし、読者が自分自身を重ね合わせられるようなストーリーの描き方をしている企画です。
―― この企画でも、グループビジョンに即した考え方や行動を浮かび上がらせることを目的としているのでしょうか?
石山:おっしゃる通りです。当社のグループビジョンのステートメントには、「はたらくことは、生きること。」という一文があります。社員自身も「はたらいて」いる一人ですので、その社員個人の生き方、働き方にフォーカスすることで、グループビジョンについて考えるきっかけを提供したいと考えています。
石山:そしてもう1つは、仕事の相談に社員の子どもたちが回答する「はたらく相談室」です。『ツナぐ』創刊時からの人気企画で、これを見るためにグループ報を開く、という社員も少なくありません。
―― ご紹介いただいた人気の連載だけではなく、大ボリュームの特集なども含め、企画自体にひねりがきいていると感じます。企画に対する考え方、見せ方、演出の仕方などにどのようなこだわりをお持ちですか?
石山:Webメディアの場合は記事それぞれが単独で成り立つものですが、e-bookは「ページをめくる」行為が発生します。そのためページをめくるごとにストーリーが深まっていくように意識して設計しています。
冒頭の特集記事ではより身近に感じやすい一般的な話題を取り上げ、そこから同テーマを深掘る形で事業やインタビューなどの話に入り、最後に自分ごとに落とし込みやすいようなコンテンツを掲載しています。
知恵を結集し、ハイクオリティな企画を生み出し続ける
―― 貴社の事例を伺っていると、各媒体の発行目的に沿った機能的な設計と、「おもしろい企画を届けたい」という企画者の思いがバランスよくミックスされることで高い次元の制作物が生まれているのを感じます。お2人は、高いクオリティを維持し続ける秘訣はどこにあると思われますか?
柴田:そもそも私たちが目指したいことは、グループビジョンの浸透です。目的が明確に設定されていることで、常に「はたらいて、笑おう。」というビジョンありきで考える思考になっているのが大きいかもしれません。
またそれぞれのメンバーが収集したアイデアをチームでシェアすると、点と点がつながり企画が広がることがよくあります。一人では限界がありますが、チームで知恵を結集することでさまざまな企画が生まれていると思います。
石山:そうですね。また、企画を立てるとき、伝えたいことを盛り込みすぎると企画や制作側目線の「説得」寄りのコミュニケーションになってしまうことがあると思います。そうならないよう、「読者から見てどうか」を常に念頭に置き、企画を客観視することが重要だと考えています。
―― 常に目的を意識する、ビジョンありきの思考。チーム力。読者目線。これらがクオリティの源なのですね。今日は刺激的で参考になるナレッジをありがとうございました。
Web社内報『Touch! PERSOL』
創刊:2021年(前身は2017年から)
閲覧対象者:オープン
発行サイクル:週に1~3回(月7~14回)
会社情報:https://www.persol-group.co.jp/
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