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専門機材もなくメンバーの内製で、ゴールド賞を受賞した動画社内報 (デロイト トーマツ グループ)

「社内報アワード2022」動画社内報部門でゴールド賞を獲得した『Dot TV』は、制作会社のサポートや業務用の専門機材がない“完全内製”で2018年にスタートしました。試行錯誤しながらも、TV番組のようなクオリティにまで育て上げ、高い評価と多くの社員の支持を得るメディアへと成長した『Dot TV』を、どのようにして運用しているのでしょう。制作チームのお2人へのインタビューを通じて、気になる舞台裏に迫ります。

「社内報アワード2022」ゴールド賞受賞

 動画社内報部門:『Dot TV』

 

【プレゼンテーター】

デロイト トーマツ グループ合同会社
(受賞当時の社名は、デロイト トーマツ コーポレート ソリューション合同会社)
C&I/BM Division
Creative Studio Team
川越 二郎 さん(写真右)

デロイト トーマツ グループ合同会社
(受賞当時の社名は、デロイト トーマツ コーポレート ソリューション合同会社)
C&I/BM Division
Internal Communications Team
鈴木 智子 さん(写真左)

 

【インタビュアー】

ウィズワークス株式会社 
社内報事業部 マネジャー
橋詰 知明

グループに、ホットでタイムリーな話題を届ける動画社内報

——まず、簡単に会社概要を教えてください。

鈴木:デロイト トーマツ グループは、グローバルにネットワークを持つデロイトに所属する日本の会社です。
 事業内容は祖業である会計監査・保証業務の他に、リスクアドバイザリーやコンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー、そして税務・法務に関するアドバイザリーなど多岐にわたる専門分野を持ち、2023年3月時点でグループに所属する法人は30以上あります。

 私たちはこの中でも、グループのコーポレート機能の中心を担うデロイト トーマツ コーポレート ソリューション合同会社という法人に所属しております。川越はCreative Studio Teamという動画などの各種クリエイティブの企画・ディレクション・制作部隊のメンバーで、私はInternal Communications Teamというその名の通りグループの各種社内コミュニケーションを担当するチームに所属しています。

1968年に創設、今年55周年を迎える総合プロフェッショナルファーム
1968年に創設、今年55周年を迎える総合プロフェッショナルファーム。グローバル共通で”Deloitte makes an impact that matters.”というPurposeを共有している(クリックして拡大)

 グループの人員や法人数が増えていく中で、①グループの一体感の醸成 ②帰属意識の向上 ③グループの動き・情報を効果的に伝達する、この3つの必要が生じてきました。その解決策の一つとして、動画社内報『Dot TV』は2018年10月に放送をスタートしました。

一部署限定だったの動画メディアを、グループ向けに進化させたのが『Dot TV』
川越さん、鈴木さんが所属するデロイト トーマツ コーポレート ソリューションだけの動画メディアを、グループ向けに進化させ、コミュニケーションを活性化させたのが『Dot TV』(クリックして拡大)

 

鈴木:制作体制は担当役員のほか3チームから計10名です。『Dot TV』専任のメンバーはおらず、日常業務のうち『Dot TV』に関わる割合が数パーセントから約70%程度までと、メンバーの関与度はさまざまです。

 『Dot TV』の番組名は、当社のロゴにある「グリーンドット」に由来します。グローバル全体で非常に大切にしているブランドアセットで、デロイトのサービスの簡潔性や、ビジネスにおける総合力を表しています。『Dot TV』はグループの総合力やそれによって生じるインパクトをメンバーに伝える番組として誕生したので、ドットを冠につけました。番組の公式キャラクターは、もぐらのDotton(ドットン)。これもドットからです。

――もとは個社の媒体からグループ全体向けに育った経緯は?

川越:グループ内の様々な情報を伝える媒体として、動画は直感的に見やすく、移動中でもiPhoneで視聴できるなど、視聴する時間の融通も利くので視聴効率がいいと考えられ、グループに広げようと始まりました。

鈴木:ちょうどグループ経営の強化に舵を切った時期でした。当時のコンテンツもエグゼクティブメンバーのインタビューが中心。ただ、苦戦したのは視聴数です。個社の媒体のときは知り合いが登場している確率が高いので、必ず見てくれるメンバーがいました。でも、グループになると一気に心理的距離が広がってしまうのか、対象が広がったはずなのに視聴数や人数に変化がない。そのためコンテンツを工夫する必要があるなと痛感しました。
川越:グループ目線で情報を見渡すこと、視聴者目線で情報を取捨選択すること、そしてその伝え方はかなり苦労しました。

カジュアルテイストだが、グループに誇りを持ってもらうコンテンツ

――では具体的に主要コンテンツをご紹介ください。

鈴木:『Dot TV』はその時々の時世に合ったトピックを3から4つ、ときには5つを15分にギュッとまとめて「楽しめる、かつためになる番組」を目指しています。グループの総合力や、それにより生じるインパクトを伝えるには、コンテンツ作りが一番重要です。未だに試行錯誤しながら進化させています。
 「エグゼクティブインタビュー」では事業戦略や方向性などを語ってもらうだけでなく、休日の過ごし方や座右の銘、「最近一番笑ったことは?」など、本人の人柄やキャラクターも伝わるような構成を心がけています。その結果、視聴者からは「経営陣の仕事への熱量や、プライベートな一面を見ることができてよかった」「リーダーがより身近に感じられた」という声をいただいています。

グループのCEOをはじめとした執行役員へのインタビュー企画
「エグゼクティブインタビュー」は、グループのCEOをはじめとした執行役員へのインタビュー企画(クリックして拡大)

 人気コーナーの「Dottonのコレ気になっとん!」は、番組の公式キャラクターであるDottonが、日常にある素朴な疑問を解決するために、グループの専門家を訪ねて解説してもらうコーナーです。テーマは、「ヤングケアラーのボーダーラインは?」「コロナワクチンの開発、どうして日本は遅れたの?」など時事に関連するトピックをとり上げています。受賞回を発信した時期は、13年ぶりの宇宙飛行士募集や、民間人の宇宙旅行が話題になっていたので、「一般人はいつごろ宇宙旅行に行けるの?」という素朴な疑問に答える「宇宙ビジネス」をテーマにしました。その流れでデロイト トーマツ グループには小型衛星の打ち上げを計画しているチームや、衛星技術を使いさまざまなサービスを展開しようとするチームがあることを紹介。グループの専門性の幅の広さや、メンバーの多様性、またグループの業務と社会とのつながりを伝えるコーナーになっています。

社内報アワードでゴールド賞を受賞した特集
社内報アワードでゴールド賞を受賞した特集。「一般人はいつごろ宇宙旅行に行けるの?」と宇宙服を着たDottonが社内の専門家に尋ね、社内の専門家はあどけないDottonにも分かるように、難しい話をシンプルに、かみ砕いた表現で解説


川越
:視聴者に日常の生活と自分の業務がつながっていると感じてもらえ、さらには視聴後に「こんなにすごい会社に属しているんだ」と誇りに思ってもらえたら、うれしいですね。

鈴木:実際に視聴者から、「こんなに幅広いジャンルの専門家がいるのか、とグループの層の厚さを感じた」「グループの活動と社会とのつながりを感じることができた」「ためになり新たな学びにつながった」といった声をいただいています。一方、出演者からも「グループに自分たちの活動をアピールできてよかった」と喜んでいただいています。

――一つ一つの動画のクオリティが本当に素晴らしいですね。ほかにはどのような企画がありますか?

鈴木:グループが目指すべきAspirational Goalとして掲げる「Well-being社会の構築」を踏まえた企画として、「今月のWell-being」があります。Well-beingに関するさまざまな社内の活動を紹介していて、例えば、独自で対話を促す社内イベントを企画している若手メンバーのインタビューや、金融に関わる企業によるチャリティーランニングイベントに参加した様子を配信しました。「イベントに参加できなかったが、この動画を通して取り組みの様子が分かってよかった」「会社がWell-beingについて真摯に取り組んでいることが分かった」との声に「配信してよかったな」と思いました。

 また、「世界のメンバーからこんにちは!」企画では、グローバルに活躍するメンバーにオンラインで取材し、赴任までの経緯や、現地でどんな働き方をしているか、日常生活の様子などを届けています。視聴者からは「このコーナー大好きです」「海外で働きたいと思って入社したので、モチベーションにつながった」「全然海外で働く選択肢はなかったが、持つようになった」などの声が多数届きます。

 ほかにも、グループのトピックや入社式イベントなどのタイムリーなニュース、「今年一番のニュース」「おすすめのランチは?」「新入社員のみなさん、現時点で不安なこと、ないですか」などを調査する「調査隊コーナー」があります。

「今月のWell-being」企画。グループが目指すAspirational Goalを踏まえた内容となっている
「今月のWell-being」企画。グループが目指すAspirational Goalを踏まえた内容となっている
「世界のメンバーからこんにちは!」は、視聴数が伸びる人気コーナー
「世界のメンバーからこんにちは!」は、視聴数が伸びる人気コーナー。業務以外の外国での暮らしやライフスタイルが見え、苦労などのリアルな声も語られる

鈴木:番組の工夫としては、1つはキャスターも毎回、職員が登場しています。皆さん初めてとは思えないほど上手。自薦他薦問わず募集しているのですが社内ネットワークを広げたい、関わりたいという人が一定数いて、応募いただいたいるのはありがたいです。ダイバーシティーの観点から、男女のバランスも考慮しています。 もう1つは「ジングル」。動画として15分は長いと感じてしまう人もいるので、トピックとトピックの箸休めとしてショート動画を流しています。

川越ジングルも内製です。編集チームのメンバーがそれぞれ「今回こういうジングルを作りたい」とアイデアを出し、手描きのラフ画を描いてもらうところからスタートします。できる、できないにかかわらず、とりあえずトライする。自分が作りたいものや興味を持ったものには集中するためか、手前味噌ですがみんな上手だなと感心しています。

――コンテンツ全体の情報を取捨選択するときのポイントは?

鈴木:2022年に番組の構成を少し変えました。それまではグループ内の出来事をニュースのように一方的に伝えていましたが、それでは興味を持ちにくいのではという課題を感じ、忙しい中で時間を割いて見てもらうからには、「何か学びを得る、ためになる番組」にしたいと考えました。そこで、アンケートや多くの方にヒアリングなどを行い検討し、視聴者が知りたいであろう潜在的なニーズに応えられるような方向性に切り替えました。

内製だからこそ得られるメリットと課題

――動画を内製で月に1回配信。どのような進行をしていますか?

川越: 10名体制で専任メンバーはいませんが、月1回の企画会議は全員で行っています。企画が決定したらすぐにキャスターを決め、取材先へのアポとり、取材、編集です。内製の良い点は一連の作業が同時進行で、迅速にできることですね。

進行スケジュール

● 月1回の企画会議
「これとり上げたら面白いね」「これは絶対発信しないといけないよね」「こんなイベントあるね」と情報を持ち寄り喧々諤々。「じゃあ次はこれをとり上げよう」と、その場で決定。

●キャスターと取材先の人選

●取材依頼とスケジュール調整、取材

●キャスター原稿を書きつつ、同時進行で編集。編集作業はだいたい2週間

川越:動画は素材がないと作れないので、イベントなどは放送するか未定でも取材はしておき、ビデオカメラやiPhone等で動画や写真を撮っておきます。編集は2週間ですが、取材やインタビューはその都度、並行して実施。常に何らかの動きはしていて、Dot TVに関していうと1号当たり1カ月の制作時間となっています。『Dot TV』以外にも社内動画や様々なデザインなどその他クリエイティブ制作も行っています。

鈴木:特集の企画立案から収録終了まで2~3週間くらいです。人選はマーケティング担当に尋ねて専門家を紹介してもらったり、社外向けリリースを見て担当者を調べてアポとったり。番組ができているのは、グループのメンバーの協力があってこそ、ですね。

川越取材対象者も協力的で「この日だったら15分空いてる」「『Dot TV』に放送してもらえるなら」と言ってくれる方が多いので助かっています。

鈴木:私たちも宇宙ビジネスやヤングケアラーなどテーマとなった話題については、ある程度は勉強して世の中の動きを調べ、叩き台を持った上で話を聞くようにしています。

――動画の編集制作は、ご経験があったのですか?

川越私を含め担当スタッフのほとんどが、まったく未経験からのスタートです。HOW TO本やYouTubeを見ながら動画ソフトを勉強するなど試行錯誤してきました。担当メンバーの動画制作やデザインの感度を高めるために、各々が気になった動画やデザインを持ち寄り、「良いところ、変なところ、真似したいところ」を共有し合う「デザイン会議」なるものを開くなど、自己成長を促しながらスキルを身につけています。

――「動画社内報をやるからには、完成度が高いものを」という心理が働きがちですが、まずは動いてみて、そこからブラッシュアップを重ねていかれたと?

川越:はい。初めから完璧なものはできないのはわかっていました。何度も試行錯誤やトライ&エラーを繰り返し、みんなで成長しつつ、作り上げてきた感じです。最初は画質や画角、音声などすごく乱れていました。マイクもなかったので、キャスターの方には毎回声を張り上げて原稿読みをしてもらいました(笑)

――機材はどういうものを使っていますか?

川越運動会でお父さん・お母さんが使うような家庭用のビデオカメラと三脚です。今も特別な照明はなく、グリーンバックも今は常設していますが、昔はガムテープで壁にペタペタ貼っていて、毎回大変でした(笑)。あと機材と言えるようなものはマイクとキャスター撮影用のプロンプター(他部署のおさがりで古すぎて壊れかけていますが)くらいですね。

――完成した動画からは信じられないです! ちなみに、川越さんが一番最初に制作された動画を作るのに、どれぐらいの時間がかかりましたか?

川越:「テロップを入れたい」となったのですが、そもそもテロップの入れ方が分からない(笑)。 あれこれ調べながらだったので、口に出せないくらいの時間がかかりました。でも、すべて経験。制作するごとに覚えていくので、まずはやってみることが大事だと思います。

動画社内報を見てもらうための工夫

  • スマホ:通勤時間に見てもらえるようにスマホアプリを利用
  • テロップ:英語ネイティブやバイリンガルの方に見てもらえるように、英語テロップバージョンも
  • クリック促進:週1で配信するメルマガに『Dot TV』のリンクを張り、アクセスしやすくする
  • プロモーション:入社式など人が集まる場や、機会があるごとに、「『Dot TV』を紹介する時間をもらえますか」と相談。社内のデジタルサイネージに投影するなども。
  • キャスター:多くの部署から広く人選など制作に関わる人を多く巻き込む
  • 内容:一方的な情報伝達ではなく、視聴者目線で、視聴者が欲しい情報を

 

細かい積みあげで地道に視聴率を伸ばしています

社内報の仕事は自己成長を実感できる

――『Dot TV』の将来の展望は? 試してみたい、挑戦してみたいことはありますか?

鈴木:もっともっと見てもらうために、コンテンツをさらに充実させていきたいです。例えば複数のチャンネルを組み合わせるとか。Web社内報に動画を入れ込む、動画にしきれなかったこぼれ話をWeb社内報でとり上げるといった、複合チャンネル化にもチャレンジしていきたいです。

川越:一方的になりがちな媒体ではあるので、双方向性を実現したいですね。大幅改編したときに多くの方にヒアリングをした結果から、そのニーズがあることはわかっているので、何かしらの形で早くできればと思っています。

鈴木:コメントやアンケートで集めた貴重な意見を、コンテンツに還元できるように、これからも努力していきます。

――最後にインターナルコミュニケーションという仕事のやりがいや可能性についてご意見をください。

鈴木:情報を広く伝えることで、社員のモチベーションを高めたり、苦労が多い日々に光を照らすことができたりするのがインターナルコミュニケーションです。それがこの仕事の面白いところであり、可能性の高さでもあると思います。ビジネスの最前線で活躍する社内のメンバーと日々接するチャンスも多く、自分自身の成長にもつながっていることを実感しています。

川越:インターナルコミュニケーションは、ないがしろにされがちですが、それは違う。社内報は企業にとって非常に重要なメディアだと思っています。社員の士気や帰属意識を高めることができたりなど、業務の土台になるようなことで重要だと感じます。個人的なやりがいとしては、普段会えないエグゼクティブな方たちに直接話を聞くことができたり、幅広い情報に触れることができるなど、刺激とやりがいに満ちています。

 

動画社内報『Dot TV』
創刊:2018年
閲覧対象者:正社員、契約・派遣社員
閲覧環境:社外からアクセス可(社用PC・デバイス限定)
発行サイクル:月刊
会社情報:https://www2.deloitte.com/jp/ja.html


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