「神を仰ぎ、人に仕う」をモットーに掲げるミッションスクール、学校法人聖学院。2つのキャンパス(埼玉・上尾、東京・駒込)に、幼稚園、小学校、女子中学校・高等学校、男子中学校・高等学校、大学、大学院を擁する同学院では、教職員、在校生および保護者に向けて、年4回、広報誌『聖学院NEWS LETTER &Seig』を発行しています。
教育機関の広報誌というと、学生募集に関するものが一般的ですが、本誌が志向するのはインターナルコミュニケーション。在校生および保護者をステークホルダーと位置付け、学校同士の「つながり」をつくり、教育方針や教育の価値を共有することを目的としています。企業の社内報とはひと味違った教育系広報誌の発行目的や編集方針、制作者の思いや制作上の工夫についてお話を伺いました。
※コロナウイルス感染対策のため、
オンラインで取材をいたしました。
広報の仕事とは? 自問の末にリニューアル
「ステークホルダーと教育の価値を共創する」ことを目標に掲げ、2018年から発行される『聖学院NEWS LETTER &Seig』。それまでにも、『NEWS LETTER』の名称で冊子を発行していましたが、各学校でのニュースやトピックスを教職員が持ち回りで寄稿する「お知らせ」的なもので、配布対象も教職員に限られていました。
それを変えるきっかけとなったのが、2017年、現在マネージャーを務める松田 慶光さんが広報センターに異動になったこと。勉強熱心な松田さんは、初めて就く広報という仕事について知識を深めようと、PRプランナーの勉強を始めますが、その中で、「このままの形式で良いのだろうか?」と疑問を抱くようになったといいます。
「ニュースをまとめて発信するのも一つの方法ではありますが、やはり物足りなさは否めません。PRを勉強する中で、広報の役割は、組織課題の解決にこそあると再認識したのですが、では当学院の広報誌でできる課題解決とは一体何だろうと考えた時、インターナルなつながりをどう生み出すか、だと思ったのです。それには、明確な意図を持って企画を立て、編集する必要があると考えました」
そこで、全面的なリニューアルに踏み切ることを決意。毎号打ち出したいテーマを掲げ、それに沿って取材するというスタイルにチャレンジすることに。加えて、内部進学が多いことや、一貫校という特徴を踏まえ、配布対象には在校生と保護者も加え、学院全体でのブランディングを図ることにしました。
各学校の取り組みを語り合う鼎談を軸に
新冊子の核となる企画は、巻頭の「&Talk」。9つの学校のうち最低2校から教職員や関係者3名以上が参加し、教育をテーマに語り合う鼎談(対談の場合も)です。
毎回各学校に共通するテーマを設け、それぞれが抱える課題とその解決に向けた取り組みを率直に語り合うことで、互いへの理解を深めることをねらいとしています。
「たとえば、テーマを理科教育としたら、小学校と中学校・高等学校の教師から選びます。コロナ禍に入ってからは、オンライン授業をテーマに、その環境づくりや推進役を担った大学の教員や、ウィズコロナでの教育改革に尽力した中学校・高等学校の教員、情報センターの職員といったメンバーを選んだ回も。
またテーマによっては、外部の方に入ってもらうこともあります。ICTのテーマでは、当学院を担当するマイクロソフト社の方に入ってもらいました。外部の視点を入れることも時に大切ですから。ここの人選は、冊子の出来を左右するので、最も難航するのですが、その後も参加者同士、情報交換など交流が続くケースが多く、つくり手としては嬉しく、やりがいを感じる部分でもあります」
と、松田さん。テーマが硬くなりがちなので、文体は和やかな会話の雰囲気が伝わるよう柔らかめに、デザインは写真を大きく扱い、余白を生かしたメリハリのある誌面を心がけています。
しっかりした企画書でブレを防ぐ
そのメイン企画に続くのが、鼎談のテーマをより広げ、現場レベルでどんなことが行われているかを紹介する「focus」。
その後、在校生や卒業生の活躍を伝えるページ、ニュース等を発信する「Seig NEWS」を挟み、最後は聖学院の歴史を紹介する企画で締める。この構成は、リニューアル当初から変わっていません。
ただし、年4回のうち、6月号だけは特別号としてページ数を増やし、理事長からのメッセージや卒業生にフォーカスした企画、協賛を仰ぐ企業の広告なども掲載しているそうです。
制作体制は現在、専任5名とパート社員2名。当初から4名増えたそうですが、これは寄付を募るために卒業生との交流を増やす「ASF校友センター」の機能も加わったためとか。
制作はまず、企画会議からスタート。テーマとそれにふさわしい人選をしっかり時間をかけて練り、その後企画書を作成。途中でブレないためにも、土台となる企画書は綿密につくり込むようにしているそうです。
実際の作業は、外注と内製の混合。メイン企画の「&Talk」はインタビューから原稿執筆まで外注に。それ以外の細かい部分は内製しています。写真は、表紙と「&Talk」はプロのカメラマンに依頼。
その他は、原稿同様、制作メンバーが手分けして撮影したり、写真をもらったり。また、デザインは全面的に外注していますが、任せっきりにするのではなく、制作側の意図は明確に伝えるようにしているそうです。
卒業生にフォーカスする2つの理由
見た目も美しく読み応えもある『聖学院NEWS LETTER &Seig』は、テーマが「教育」という以外、一般企業の広報誌と変わらない上質な印象を受けますが、一つ特徴的なのが、卒業生が多く登場すること。そのねらいについて、松田さんはこう語ります。
「私たちは卒業生を含めて、『聖学院ファミリー』と呼んでいるのですが、卒業生はいわば、インターナルとエクスターナルの中間にいる人たち。在校生にとっては、自分たちの未来の姿でもあります。それを知ることによって、聖学院の強みや豊かさ、魅力というものに気づいてほしいというのがまず一つ。
もう一つは、卒業生の方には、経済的な支援をかなり受けているというのがあります。でも、ただ寄付を募るだけで良いのだろうかというのがあって。それ以外の部分で、我々の方からコミュニケーションを取っていく必要があると考え、誌面にも積極的に出てもらうようにしています。
取材を通して、いまの聖学院の姿を伝えることができますし、卒業生から当時の聖学院を教えていただくことは新たな発見や学びを得ることにもなります。その意味でも、卒業生とのコミュニケーションは、とても大切なものなのです」
最近、広報センターにASF校友センターが統合されたのもその表れ。卒業生との関係性をより強めるためだと語ります。
より良い誌面を目指し、続くチャレンジ
リニューアルから約4年。「社内報アワード」には2019年から応募し、3回目となる昨年にはブロンズ賞を受賞しました。学院内での反響も大きかったそうですが、それ以上に感じたのが、「自信につながった」こと。
「自分たちの方向性が間違っていなかったと確認できたのは収穫ですね。特に人員が増えたので、部門の中でも一致や理解が促されたという効果がありました」
と、笑顔を見せる松田さん。
ただ、チャレンジは忘れたくないと、昨年6月号からプチリニューアルを実施しました。「ずっと横書きだったのですが、読みやすさを考えて縦書きにしてみました。それと、表紙をめくってすぐに『&Talk』に入っていたのですが、その前に号全体のコンセプトを伝えるための見出しやリードを加え、それに伴ってページ数も20ページに増やしています。
また、表紙も抽象的なデザインから人にフォーカスした写真に変更。鼎談に出てくださる方を別カットで掲載しています。手に取った方に『何か変わった』と思ってもらうことがねらいです。また、表紙を見た人が中を開いて読みたくなるように、登場する人の名前も掲載するようにしています」
今後の課題として挙げるのは、読者との双方向性を加えること。毎回アンケートは取っているそうですが、戻りはあまり良くないそう。それを解決するために、今年の3月号からアンケートに記載された声を掲載するページを設けたといいます。
「ここ最近は、小さなリニューアルを重ねてきましたが、どこかのタイミングで大きく舵を切ることもあるだろうと思っています。新しいことにチャレンジする気持ちは常に持っていたいですから」
と、前を向く松田さん。
学院全体を一つにまとめ、聖学院ブランドを内外に確立するために、「深化」と「進化」の歩みは止めない、と意気込んでいます。
- 学院報『聖学院NEWS LETTER &Seig』
創刊:2018年
発行部数:7,000部(6月号のみ+40,000部)
仕様:A4判、4色、20ページ
発行頻度:季刊 - 会社情報
URL:https://www.seig.ac.jp/
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