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社員に「自分ごと」として読んでもらえる誌面づくり(株式会社 三陽商会)

社員に「自分ごと」として読んでもらえる誌面づくり(株式会社 三陽商会)
『High Touch』の制作を担当する3名。左から伊藤直美さん、岩崎麻佐子さん、小穴加奈子さん

設立76年の総合ファッションカンパニーとして、メンズ・レディス・ファッション雑貨を、全国の百貨店や直営店で販売している三陽商会。社内報は、販売を担当するFA(ファッションアドバイザー)や、店舗運営・商品企画開発・スタッフ部門等の社員に対して、紙媒体の『High Touch』を発行しています。進化し続ける三陽商会の社内報づくりについて伺いました。

会社の大きな転換期に、方向性を共有するツールへ

 三陽商会の社内報は、1963年に第1号の『お知らせ』というガリ版刷りからスタート。『お知らせ』は内勤者向けに会社の情報を伝えるものとして配布が続きましたが、その後、店舗勤務のFA向けに、販売ノウハウやファッショントレンドなどを伝える『FA通信』も創刊。以来2種類の社内報を発行していました。

 会社が大きな転換期を迎え、企業として変革が必要となったのを機に、社内報も情報共有にとどまらず、インターナルコミュニケーションの重要な役割を担うことが求められるようになり、2015年より、2種類あった冊子は一本化され、リニューアルした社内報『High Touch』が誕生しました。

 現在、経営統轄本部に属する企業コミュニケーション部を中心とした編集チームが制作を担っています。

「経営トップが考える方向性を伝え、社内に理解と浸透させるのが、『High Touch』のミッションです。会社からの押しつけではなく、従業員が自分ごととしてとらえ、同じ方向性を共有できることを目指しています」と、企業コミュニケーション部の部長、岩崎 麻佐子さんは言います。

状況に応じて編集方針を柔軟に変えていく

 生まれ変わった社内報のコンセプトは、「社内をタテ・ヨコ・ナナメにつなぐコミュニケーションツール」。

「経営トップの方針や考えをただストレートに打ち出すのではなく、アパレル企業で働く社員が興味を抱くように、ファッション誌風の体裁にしています。ファッション企業なので、表紙もスタイリッシュであるよう心掛けています。『High Touch』創刊当初は、経営方針に関連する企画や、ライフスタイルについての読み物、職場・売場紹介などを中心に掲載していました」と、企業広報課の小穴 加奈子さんは語ります。

 その方向性が少し変わるきっかけとなったのが、2017年に策定された中期経営計画において、「マーケット対応力の強化」が自社の課題のひとつとされたことでした。

「いいモノを作れば売れるという考えから脱却して、生活者・社会に必要とされる企業になるために、“生活者の声に耳を傾けることが大切”という投げかけをする――、そんな社内報になるべきではないか。2017年の中計をきっかけに、積極的に外部に目を向け、そこで得られた情報や気づきを社内報で共有できるように、軌道修正したのです」(岩崎さん)

「2017年の中計発表後、社内報の役割と方向性が大きく変わったと思います」(岩崎さん)
「2017年の中計発表後、社内報の役割と方向性が大きく変わりました」(岩崎さん)

 『High Touch』の特集記事では外部企業への取材を実施し、消費者と新しい形のコミュニケーションに成功している事例を紹介していくことに。取材先は、自分たちの興味に偏らないように、協力会社から客観的な提案を得ながら厳選しているといいます。

他人事ではなく自分ごととして捉えられるのか

 自社の抱える課題を浮かび上がらせるために、従業員アンケートも実施されました。そこで多数を占めたのが、「品質の高さやチームワークには自信がある」ものの、「消費者に対する意識やファッション感度が低い」のではないかという声。

「2017年の中期経営計画の中に、『マーケット対応力の強化』という記載があるにもかかわらず、この結果。アパレル企業として看過できない問題ではないかと感じました。

『いいモノを作れば認めてもらえるだろう』では、消費者の支持は得られません。社員が問題を自分ごとととらえて自ら変わらなければ、ずっと同じことの繰り返しになってしまいます」と話すのは、宣伝・販促部から制作チームの一員として協力をしている販促課長の伊藤 直美さんです。

 このアンケート結果は、社内報づくりにも影響を与えました。

 これまでも外部企業を取材して、興味深く素晴らしい内容を掲載してきたつもりだったけれども、果たしてそれは社員一人ひとりに響いていたのだろうか? 結局、他人ごとで終わってしまっていたのではないか?

 そんな疑問が湧き起こってきたのです。

「より良い社内報にするために編集委員とは徹底的に議論を交わしました」(伊藤さん)
「より良い社内報にするために編集委員とは徹底的に議論を交わしました」(伊藤さん)

「どうすれば自分ごととしてとらえてもらえるのか、編集委員は議論を交わしました。

 その中で解決策として出てきたのが、外部企業にインタビューを行う際に、社内報編集者やライターではなく、必ず当社の社員がインタビュアーやレポートを担当するという案。

 その人なりの意見や感想を盛り込み、自社に置き換えたときに何が必要なのかまで導き出してもらうようにしたところ、好反響を得ることができました。インタビュアー役の社員本人にも読者にも、大きな刺激になっているようです」(伊藤さん)

デザイナーも取材に同行して誌面を決める

 もう1点、こだわっているのは、たとえ忙しくても「読んでみよう」と思わせる誌面づくりです。

「デザインや写真といったビジュアル面には、とことんこだわっています。見た目から入ることは意外と重要です。まずは手にとってもらえなければ、価値も生まれないですからね」(伊藤さん)

 具体的には、文字と写真などのビジュアル要素のバランスを重視。取材先の選定もフォトジェニックである点を考慮し、例えば、コクヨ株式会社が展開するカフェ「THINK OF THINGS」の紹介記事では、事前に客としてロケハンしてから取材依頼を決定。

 大丸松坂屋百貨店が運営する「未来定番研究所」の紹介企画でも、取材場所がビルの会議室ではなく、町家を改装したオフィスだからこそ紹介する価値があると考えたそうです。

「社内報アワード2019」でブロンズ賞を受賞した企画[話題のシンクタンクを社員が訪問 大丸松坂屋百貨店「未来定番研究所」が見据える5年先の未来とは?]。社員をレポーターにすることで、社員の刺激、問題提起に効果を得られました

「取材は外部のライターやカメラマンに丸投げするのではなく、必ず弊社の編集メンバーが同行することにしています。読者に何を伝えたいからどんな写真が欲しいかを、ディレクションをする人が明確に指示しないと、見る人に響かない誌面になってしまいますから」と伊藤さんは強調します。

 再考後の読者アンケートでは「オシャレな誌面になった」と大好評で、ビジュアルの重要性をあらためて認識したそうです。

「企画の内容とともにビジュアルの重要性も改めて認識しました」(小穴さん)
「企画の内容とともにビジュアルの重要性もあらためて認識しました」(小穴さん)

 「こうしたこだわりが実を結び、『社内報アワード』でも高い評価を得ることができました。社内報の専門家に審査してもらうことで、自己満足ではない客観的な評価がわかりますし、社内で関心をもってもらう良いきっかけになっています」(小穴さん)

「社内報アワード2019」でシルバー賞を受賞した作品
「社内報アワード2019」でシルバー賞を受賞した企画「SANYO PEOPLE」。“こだわりのあるライフスタイルを送っている社員”が、リアリティのあるヴィジュアルで伝わるよう、社内のインタビューのみでなく、取材に行くことを徹底

Webとのすみ分けや情報鮮度、若手の参加が課題

 『High Touch』は今年度から発行回数を年4回から年2回にし、その分ボリュームを従来の20ページよりも増やしています。

「最新号では、会社の新たな取り組みを積極的に紹介しました。それも、社内報にありがちな事後報告ではなく、例えば旗艦店舗のフルリニューアルや、発表前の新ブランドの情報なども、タイムリーに紹介するよう発行時期を調整しています。現場のFAから評判がよく、もっと情報を知りたいという声が寄せられています。」(小穴さん)

 年2回発行になって意識するようになったのが、社内報とイントラとのすみ分けです。

「タイムリーさではイントラが優れていますが、それだけは補えない部分もあります。紙だからこそ感じられる熱量や感性といったものも大きいと感じています。皆それぞれ、取材で何を引き出して誌面にどう表現するかを、とても意識するようになりました」(岩崎さん)

 さらに今後は、若い人の意見も編集に取り入れていくのも課題です。

「社内報の編集は日頃の業務とは異なるため大変と思われがちですが、普段と違う視点で考えることは、先々、必ずプラスをもたらします。キャリアアップのためにも、ぜひ若手社員に社内報編集に参加してほしいですね」

 笑顔でこう語る伊藤さんの言葉には、社内報を通じて得られた経験を自らの糧にできた実感がこもっていました。

 次々と「今」の課題にスコープし、決して進化の歩みを止めない『High Touch』。イントラの速報性にも支えられながら、ますますその重要度を高め、経営トップ・従業員双方の期待に応えていくに違いありません。

  • 社内報『High Touch』
    創刊:1963年(リニューアル:2015年)
    発行部数:約3,000部
    仕様:B5判、4色
    発行頻度:年2回(2019年時点)

  • 会社情報
    URL: https://www.sanyo-shokai.co.jp

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