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新しい「コト」の現場に密着した映像で、社員の心を動かす (カゴメ株式会社)

プレゼン担当は、カゴメ株式会社の篠原 早耶さん/写真中央
イベント2日目に行われたカゴメ株式会社様の事例発表。リモート会場に来場してプレゼンをしてくださった、同社経営企画室広報グループの篠原 早耶さん/写真中央

2020年10月6日(火)~9日(金)に開催した「社内報アワードONLINE EVENT 4DAYS」では、上位入賞を果たした優秀企業10社による、社内報制作の事例発表を行いました。「社内報ナビ」では、各社の発表内容を紹介していきます。

第3回は、カゴメ株式会社様。「社内報アワード2020」では、動画社内報部門でゴールド賞に輝きました。四半期ごとに全体朝礼で流しているという『カゴメ通信 The Movie』は、視聴率ほぼ100%を誇る強力メディア。その編集方針と、受賞作品に込めた思いをお話いただきました。

クロスメディアで、テーマへの理解をより深く

 弊社では、1956年に創刊した紙社内報『カゴメ通信』と1984年にスタートした映像社内報『カゴメ通信 The Movie』の2つのメディアを、それぞれ年4回(季刊)発行しています。

 ミッションは両者共通で、以下の2点になります。

社内報のミッション

  • 会社のコトを自分ゴトに
    会社の方向性を明確に伝え、理解を促す。
    会社の取り組みを自分ゴトとして捉え、問題意識をもってもらう。
  • コミュニケーション・働き方へアプローチする。
    共に働く仲間である他部門の社員のことを知ってもらう。
    他の社員の仕事との向き合い方を伝えることで、意識改革や行動を起こすためのヒントにしてもらう。

 これらミッションの達成度を高めるために行っている仕掛けが、両者のテーマをリンクさせること。具体的には、紙版の核となる特集のテーマと映像版のテーマを連動させているのですが、「映像でリアリティを届ける×紙で深掘りする」という二重構造にすることで、より理解を深めてもらうことを狙っています。

 『カゴメ通信 The Movie』は「情報リーチ率が非常に高いメディア」となっています。その理由は、映像社内報が強制視聴であることに加え、その場に各自が紙社内報を持参するという暗黙のルールが存在するほど社内報文化が根付いていることも大きいかと思います。

 また、経営側にも従業員側にも偏らない「中立のメディア」という位置付けを守ることを大切にしています。これはつまり、経営側からの発信も、従業員の声や思いも、同じ重みでバランス良く伝えるということ。この立ち位置を保つことは一番重要なポイントであると同時に、一番難しいことだと感じています。

「トマトの会社」から「野菜の会社」に

 今回ゴールド賞をいただいた「野菜を好きになるコトをつくる!」は、昨年夏に放映した作品で、「コト領域の拡張」をテーマとしています。
 企画した背景には、弊社が「トマトの会社」から「野菜の会社」に飛躍しようとしていること、そしてその実現のために近年、コト事業をビジネス化する取り組みを進めていることがあります。

 もう少し詳しくお伝えしましょう。弊社はトマトケチャップやトマトジュースなど「トマトの会社」として広く認知されていますが、会社の持続的な成長のため、また社会課題を解決するためには、より広い「野菜の会社」として生まれ変わることが必要だと考え、長期ビジョンとしてこれを掲げています。

 そのビジョンを達成する方法として、トップが目を付けたのが、コト領域を広げることです。弊社は実はかなり前から、野菜や健康の素晴らしさを伝えるコト活動(小学校や保育園へのトマトの苗の配布活動や食育をテーマとしたミュージカルなど)を行ってきたのですが、すべて無償でした。

 しかしそれではできることが限られてくるので、有償化により、より深く、より広範なコトの提供を行い、弊社の思いにより深く「共感」して頂くことで、その結果として、カゴメのファンを増やしたいと考えたのです。

「知られていない」課題と向き合い、素材を選定

 そんな理由から、ここ数年、新しい事業や施設運営を手掛けてきたのですが、残念なことに、社員の多くがその詳細を知らないという現状があり、社内報で取り上げることにしました。トピックは、2019年4月に続けてオープンした「野菜を好きになる保育園 ベジ・キッズ」と、「カゴメ野菜生活ファーム富士見」の2つの事業です。それでは、作品をご覧ください。

野菜を好きになる保育園 ベジ・キッズ

 2019年4月1日、東京都中央区に誕生した「野菜を好きになる保育園 ベジ・キッズ」。ここは、社員のアイデアから生まれた新しい形の保育園です。野菜を好きになれるよう「日常的に野菜に触れ合える保育」をコンセプトに掲げ、現在、社員のお子様を含む17名が在籍しています(19年4月時点)。

 プロジェクトリーダーの飛石 希さんにお話を伺いました。
 「ここの子どもたちは、キッチンにある食材や知育の題材として、毎日何かしらの野菜に触れています。また給食は、乳幼児が1日に必要とする野菜摂取量の50%以上を賄うようにしています。中央区の平均が約26%なので、大分高いと言えますね。その意味では、お母さんをラクにして差し上げることにもつながっていると思います」
プロジェクトリーダーの飛石 希さん

プロジェクトリーダーの飛石 希さん

 給食の献立は、管理栄養士さんと飛石さん、食品企画部の星野 香織さんの3人がタッグを組んで考案しているそうです。

 「このベジ・キッズの取り組みは、ぜひ他の保育園や施設へも展開してほしいですね。私たちがノウハウを培い、バトンを渡していけたらと思っています」(ベジ・キッズ施設長さん)

カゴメ野菜生活ファーム富士見

 2019年4月26日にオープンしたここは、レストランや農業体験、工場見学が一体化した体験型「野菜のテーマパーク」。八ヶ岳の大自然をバックに、野菜やこのエリアの魅力を体験できるユニークな施設で、複合的に「野菜の会社・カゴメ」を発信するフラッグシップに位置付けられています。

 レストランやショップの運営などは、ほぼすべてをカゴメの出向社員が担当。オープン直前まで準備に奔走する社員たちの姿に密着しました。
 ショップ部門統括責任者・安江 一穂さんのコメントです。
 「ここでは、長野県産の食料品やカゴメの原料を使ったコラボ商品、限定パッケージ商品など多彩なアイテムを揃えています。なかでも注力したのが、オリジナルジャム。初めての経験なので苦労も多く、悩みながら一つずつ形にしてきました」
 そして迎えたオープンレセプション。華やかにテープカットが行われ、カゴメ社長の挨拶に続き、長野県副知事、富士見町長からスピーチをいただきました。また当日は、ハーブや野菜を使った手づくりピザの体験教室も開催され、お客様からの評判も上々でした。
 ファームのコンセプトに欠かせないレストラン「イル・ファッジョ」も大人気です。レストラン部門を統括するのは、田中 満さん。調理スタッフとしても活躍する田中さんは、「驚きをもって野菜を食べられる本物のイタリアン」にこだわり、約1年間イタリア料理店とピッツァ研修所で修業を積みました。
 「やるからには、自分たちでやろうと覚悟して挑みました。そうでないなら、カゴメがやるべき事業ではないと思うからです。ここは、野菜の会社・カゴメを実体験してもらう場所。カゴメはこんな会社でこんなことを考えています、こういう気持ちになってもらいたいです、というメッセージを発信する装置ができたのは、大きな武器になるのでは、と思います」
 最後は、施設全体の責任者であるカゴメ野菜生活ファーム(株)代表取締役社長・河津佳子さんに意気込みを伺いました。
「お客様と直接コミュニケーションがとれる拠点を持つことは、メーカーとして強みになると感じています。何度でも訪れたくなるような施設に育てていきたいですね。そのためには、新しく魅力あるコンテンツをいかにつくり続けていくかかが勝負。それが私たちの最大のミッションであり、最大の挑戦だと思っています」
 現場で奮闘する皆さんの姿が印象的でした。「野菜の会社」の実現に向けて、モノだけに留まらないさまざまな活動が始まっています。

「遠い話」にしないために、こだわった「生の声」

 いかがでしたでしょうか。企画の狙いとしたのは、「野菜の会社」になるための具体的な取り組みを紹介することで、「カゴメの可能性」を感じてもらうことと、会社の持つ資源をビジネスとして転換・発想するマインドを醸成させることでした。

 約13分と動画としては長めの尺ですが、最後まで飽きずに視聴してもらうために、コトが起こっている現場にフォーカスした「ドキュメンタリータッチのつくり」をコンセプトとしました。工夫したのは、以下の4点です。

制作上の工夫点

  1. わかりやすい「シナリオ」
    初めて見る社員にも理解できるストーリー展開を意識。シナリオは事前に用意はするものの、現場の状況を見て質問を変えるなど、臨機応変に見直しを行った。
  2. 客観的なスタンスの「ナレーション」
    感情に訴えたり、作り手の主観を入れたりすることは極力避け、事実を端的に伝えるワードに絞った。
  3. インタビュー主体の「映像」
    事実を切り取ることを目的に、その事例にまつわる主要な人物の「証言」
    (インタビュー)を中心に構成。今回の映像には、スタッフやお客様など計9名のコメントを挿入した。
  4. 臨場感が伝わる「音声」
    音楽はボリュームを抑え、かつポイントで効果的に使い、音声から臨場感を感じてもらうようにした。

 なかでも視聴者を触発するためにもっとも重要視しているのは、3の「証言(インタビュー)」。それが、マインドを醸成するのに一番大切なことだからです。どんなに深い説明も淡々と事業を紹介するだけでは、どうしても視聴者からは遠い話のように思われてしまいます。

 それを避けるために、携わっている人たちの思いや苦労、工夫をしっかり言葉で伝え、自分に置き換えて考えられるようにしました。そのため、インタビューは極力細かい編集をせず、できるだけありのままを流すようにしています。

信頼されるメディアとして存在し続けたい

 最後に社内報の未来について広報グループの考え方をお伝えします。弊社社内報は歴史が深く、視聴率も高いですが、だからと言って今後もあるのが当たり前かといえば、決してそうではなく、存続させるための努力を怠ってはいけないと考えております。存続させていくためには、会社のあるべき姿や方向性を多角的に伝える、企業文化の醸成や伝承をするといった努力や工夫が不可欠だと考えています。

 もう一つ、私たちが信条としているのは、「心が動くと、人は動く」ということ。視聴者・読者(=会社の仲間)と一緒に会社を育てていく気概でテーマをぶつけていけば、作り手の挑戦する気持ちは必ず受け手に届く。そう信じて、信頼されるメディアとしての立ち位置を確認しながらより良い社内報を目指していきたいと思っています。

 

 

  • 映像社内報『カゴメ通信The Movie』
    開始:1984年
    視聴形式:四半期ごとの全体朝礼で視聴
    主なコンテンツ:特集(冊子版とテーマを連動)

  • 冊子社内報『カゴメ通信』        
    創刊:1956年 形式:雑誌型:季刊
    発行部数:約3,800部(社員、OBOGへ配布)
    仕様:A4判、4色、24ページ
    発行頻度:季刊

  • 会社情報
    URL:https://www.kagome.co.jp/

 


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