コロナ禍で、インターナルコミュニケーション(以下、IC)の目的やツールの見直しが急速に進んでいます。企業のIC施策の現況をタイムリーに把握し、貴社の次年度の施策検討に向けた参考資料としてご活用いただくべく、今夏、緊急アンケートを実施し、『社内報白書2020 臨時号』として発行いたしました。その集計・分析結果から見えてきたのは、「IT革命」が新語・流行語となった2000年以降、ICT革新と歩をともにしたIC史の中で、今、大変革が今起きているということです。
社内報の発行目的は見直すもの!?
『社内報白書2020 臨時号』は、下記の概要にて調査いたしました。
社内報白書2020 臨時号 調査概要
調査対象/日本国内の企業、団体
調査方法/アンケートフォームによるインターネット調査
調査期間/2020年7月31日~8月9日
ご回答者/1社(または1媒体)あたり、ご担当者各1名
有効回答数/258
これまで、社内報の発行目的は、社内報創刊時から社内報の誌名とともに「変わらぬもの」「変えてはいけないもの」として運用してきた会社も多くあったと思います。
例えば、企業にとってミッションや理念はある意味不変であり、そう頻繁に変更しません。しかし、「目指す姿」であるビジョンは、中長期経営計画などに紐づき、多くは3・5・10年単位で見直すもの。社内報が企業経営に資するツールであると考えれば、その発行目的は、これら不変のミッションと数年単位で流動するビジョンの、双方と強く結びついているのが一般的だと考えられます。
もちろん、各社の現況・課題・目指す姿次第で、社内報の発行目的は100社100通り。「かくあるべき」と標準化はできません。ただ、流動するものと結びつく限り、見直しは自然なこととも言えます。
近年、企業を取り巻く環境変化は激しさを増しており、これに伴い社内報の発行目的を定期的に見直す企業が増えています。実際、コロナ禍という環境変化のさなかに実施したこのたびの調査では、全体の21.6%が毎年、34.7%が2~3年に1度、社内報の発行目的を見直していると回答。3年以内の見直しタームを回答した企業が56.3%と過半数を占めました。
なお、従業員規模が大きくなるほど、見直しをかける頻度が高まる傾向が見受けられます。これは、M&Aなどの戦略によりグローバル含めグループ会社が増えそうした大きな経営環境変化によって、発行目的を見直す必要性が高じている結果とも考えられます。
社内報メディアのトップは“紙・Web併用”
現在、社内報ツールにどのような変化が起きているのか、昨年11月実施の調査を基に今年3月に発行した『社内報白書2020』と比較してみましょう。
一番大きな変化は、印刷社内報とWeb社内報を併用する企業が、43.4%と最も多くなっている点です。リモートワークを進めた企業では、印刷社内報のデリバリーはもちろん、場合によっては企画制作が立ち行かず、既定路線での発行自体が困難となるケースもありました。そうした企業の多くは、急きょ社内報をPDFで作成、イントラ掲載やメール添付でデリバリーを図っています。これは、従業員にリーチするための選択肢がWeb化一択だったためだと考えられます。働き方の急速な変化により、複数メディアを活用しないことには、社内報の重要な役割である情報の到達さえままならなくなった窮状がうかがえます。
同様の事情から、紙での発行をあきらめ、Webのみにシフトした企業も増加しています。
社内報メディア「多数派」が初めて紙からWebへ?
次年度の社内報メディアについては、企業の考え方にどのような変化が生じているのでしょうか。
「印刷社内報とWeb社内報の併用」がますます進み、57.0%と約6割近くが併用していると回答しました。また、「Web社内報のみ」と「印刷社内報のみ」がついに逆転。「Web社内報のみ」の会社が全体の20.2%となったのに対し、「印刷社内報のみ」の会社は18.6%に。
この傾向は大企業になるほど顕著で、従業員規模5,001人超の場合、「印刷社内報のみ」の割合は8.3%でした。
社内報ツールが、ここまで大きな振り幅で変化したことは、過去にも例がありません。
現在のWeb社内報の主流はPDF
全体の69.0%の企業が、現在、Web社内報の運用においてPDFまたは電子ブックを利用していると回答しました。業務でも日常的に利用するPDFは、導入障壁がないに等しいため、最多を占めるのはよく分かります。
次点は近年伸びているCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)で、26.5%の企業が利用しています。CMSは、(1)更新性に優れ、容易にWebならではの速報性を確保できる点、(2)CMS側でレスポンシブ対応を実装しているため、担当者にWeb知識がなくても簡単にマルチデバイス(PC・スマホ・タブレット)閲覧が可能となる点、(3)デザインを外注しなくてもWordを扱う感覚で、統一感のあるデザインを内製できる点などが、主な特長です。
次に挙がったのは、SharePointやNotesなどのグループウエア。業務目的ですでに全社に導入済みのシステム上で社内報を運用するため、追加コストを抑制できる点がメリットです。ただし、社内報の用途としては、デザイン・導線など使い勝手に多少課題があるようです。
4位は、動画配信プラットフォームとの回答で、12.3%。5位には、一世代前まで主流だったHTMLコーディングが僅差で続きます(11.6%)。「社内報アワード」の応募作品には、HTMLならではのデザインや構成の自由度を駆使した、オリジナリティーあふれるWeb社内報も多数存在します。しかし、技術的に内製が難しく、外注コストや工数負担がかさむことが課題です。また、近年登場したクラウド上のASPサービスも、7.7%が利用していると回答しています。
「その他」は、Workplaceやyammerなど、おおむね社内SNSでした。
次年度からのWeb社内報の主役は、CMS、グループウエア
次年度検討システムとして、同率1位になったのは、「CMS」と「グループウエア」。全体の53.7%の企業が検討しています。また、「クラウド上のASP」「動画配信プラットフォーム」も22.0%と、現状から大きく飛躍しそうです。
これらの結果から感じるのは、「使える便利な道具は何でも使って、ICを推進していく」という機運の高まりです。ウィズ・コロナの時代にいっそう重要度を増すICをまっとうするためには、速報性・更新容易性に優れたものや、動画などのリッチコンテンツなど、ツールを幅広く活用していく必要があります。
働き方の急速な変容を受けて、活用デバイスは柔軟な対応へ
会社支給のデバイスはもちろんですが、次年度以降は、個人のPCで社内報閲覧可能を検討する企業が39.0%、個人のスマホ・タブレットについては、半数を超える51.2%の企業が、次年度以降、閲覧可としたいと回答。個人所有のデバイスの活用が、今後、現状より大きく進んでいく傾向がうかがえました。
コロナ禍で、是非を検討する間もなく急速に進んだテレワーク化の中で、「使い方に最大限配慮するのであれば、個人所有のデバイスの活用もやむなし」と、柔軟に考える企業が増えてきたためと推測されます。
いかがでしたか? 発行目的の見直しは当たり前、ICにおいてWebが必需ツール化、個人所有のデバイスの活用が一気に進むなど、大きな変革を迎えた2020年度。貴社における次年度計画の参考にしていただき、ニュー・ノーマル時代のIC醸成にお役立ていただければ幸いです。
[コロナ前の状況と比較して、ICへの理解を深めよう]
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