「社内報アワード2019 表彰&ナレッジ共有イベント」(2019/10/16)にて実施された上位入賞9社による事例発表の模様を、順次ご紹介してまいります。
第2回は、国内外におけるマーケティングリサーチや、デジタルマーケティングリサーチなど、お客様のマーケティング課題やニーズに最適なソリューションを提供する株式会社マクロミル。社歴3年未満の社員が半数を占めるという自社の状況を踏まえ、強固な企業文化を醸成し組織の実行力を高めることを目指して、積極的なインターナルコミュニケーションを展開しています。「社内報アワード2019」でWeb・紙・動画という3つのメディアでゴールド賞を含む6つの賞を獲得しました。
具体的にはどのようなインターナルコミュニケーション施策に取り組んでいるのか、同社の下瀬 貴子さんにプレゼンテーションを行っていただきました。
従業員エンゲージメントをいかに高めるか
当社は2000年に創業し、来年1月に20周年を迎える会社です。本社は東京・品川にあり、世界19カ国、40以上の拠点を展開しています。
当社では、ここ数年さまざまな変化がありました。例えば、M&Aを国内・海外で複数実施したことで、社員数・拠点数・グループ会社数ともにどんどん増加しています。それから創業者が退任し、アメリカ人のScott Ernstが代表に就任しました。
また、積極的な採用活動も行っており、単体約1,000名のうち半数は入社3年未満という環境です。様々な変化がある中でも、こうした社歴の浅い社員に対し、いかにコミュニケーションを行ってエンゲージメントを高めていくかが、当社におけるインターナルコミュニケーションの大きなテーマとなっています。そのために、3つの社内メディアをどのように活用しているかについてお話していきます。
効果的なメディアミックスを実現
3つのメディアのコンセプトや運用・閲覧状況などをお伝えします。
まずは、Webメディア『NOW』です。
コンセプトは「マクロミルの“今”を伝える」としており、Webの特長である速報性を活かして、情報の深さよりもとにかく速さを重視しています。毎日、少なくとも1記事は必ず投稿し、多い日には3~4記事をアップすることもあります。
『NOW』は、社員が1日に2~3回はチェックするほど身近なメディアです。自然に見てもらえるようにいくつか工夫もしていて、例えば出社後にPCでインターネットを立ち上げると、『NOW』が表示される仕様にしています。また業務に必要なシステムや申請系のリンクなどもすべて載せているため、何か必要なものがあればまず『NOW』に探しにくるという動線になっています。1日のページビュー数は10,000ほどです。
次いで紙媒体『ミルコミ』についてです。
コンセプトは「マクロミルの“リアル”を伝える」こととし、3カ月に1回発行しています。事実の裏にある思いやストーリーなど、『NOW』では伝えきれないニュースの裏側や背景を、社員にしっかり読み込んでもらい、刺激を与えることが目的です。
産・育休者を含む全社員対象に発行しており、KPIは、発行後のアンケートで満足度90%を設定していますが、今のところ平均92%をキープしています。
3つ目は動画です。
半年に1度、全社員が集まるキックオフという場があり、そこでは動画でMVPを発表しています。目的は表彰演出を盛り上げ、受賞に対する納得感や重みを醸成することです。内容は、主に受賞者の入社以降の成長ストーリーと、お客様や社員からのお祝いメッセージで構成しており、受賞者へのサプライズにもなっています。
以前は表彰状の読み上げのみでしたが、この演出に変更したことで、社員からの満足度が20%も上がりました。
初号からすべて社内で制作
ここからは社内メディアの変遷についてお話します。
2004年から10年以上、月刊で紙媒体『ミルコミ』を発行していましたが、社員数・拠点数が増え、他部署や他拠点の状況が分からないという課題が出てきました。そこで、その日のニュースを全社に即共有できるようにと、2013年にWeb社内報『NOW』を立ち上げました。
そうすると、月刊の『ミルコミ』と毎日更新する『NOW』で扱う内容が似通ってきてしまったため、2016年に『ミルコミ』を季刊誌へとリニューアルさせました。この時に、「今」を伝える『NOW』と、その裏の「リアル」を伝える『ミルコミ』というコンセプトを設定し、Webと紙とで役割をはっきりと分けるようにしたのです。
さらに昨年『NOW』の刷新を図り、今度は紙のリニューアルを進めています。来年から『ミルコミ』は社外にも公開し、社員の家族・友人はもちろん、当社に興味を持ってくれている学生の皆さんにも読んでいただけるようにする予定です。
次に運用体制についてです。同じユニット内にインハウスデザイナーがいるため、Web・紙・動画の企画から取材、撮影、編集、デザインまでのすべてを社内で行える、珍しい体制が実現できています。
また特長的なのは、いずれのメディアも経営のチェックを通さず、マネジャーの責任で発行していることです。それゆえ、例えば『NOW』では、今朝の出来事を即発信できる速報性が維持できています。
登場した社員と読者の距離を縮める企画が受賞
今回、ありがたいことに6つも賞をいただきました。主にWebと紙の受賞作についてお話しします。
まずWeb社内報部門でブロンズ賞をいただいた『早朝オフィス散歩』です。これはその日に早く出勤した人の写真と「今日早く来た理由」を一言載せるだけのライトな記事です。当社は10時始業ですが、8時頃に早く出社した社員を取材し、9時にはアップしています。先ほどお話したように速さを重視しているため、制作時間は15分を目標としています。
『早朝オフィス散歩』は月1回ペースの掲載ですが、社員から人気のコンテンツです。当社でも働き方改革を進めており、朝型の働き方を推奨したいという狙いがあるのですが、この企画は押し付けがましくならずに、「わたしもたまには早く来てみようかな」と自然に思わせることができているように思います。
続いて『ミルコミ』では、2企画がゴールド賞、1企画でシルバー賞とブロンズ賞をそれぞれいただきました。
ゴールド賞受賞企画の1つは、「特集・単発企画(8ページ以上)」の『特集・実録 先輩たちの修羅場』です。タイトル通り、先輩たちが乗り越えてきた修羅場を暴露するという企画です。主に、10年近く在籍しているマネジャーや部長クラスに取材を協力してもらいました。
そのような層は、最近入った社員にとって遠い存在ですが、「そういう人でも昔はこんな苦境を乗り越えてきた」と伝えることで、若手メンバーを元気付けたいと思い企画しました。
大きな修羅場は1ページを割き「超ド級修羅場」として、小さな修羅場は「やっちまった…!ヒヤヒヤした修羅場」「嘘でしょ?不幸すぎた修羅場」などの見出しを付けて、まとめて紹介しています。
特集の締めには、超ド級修羅場に登場した5名から、「修羅場にいるあなたへ」というメッセージをもらいました。
「皆が絶対助けてくれるから」「やってみれば何とかなる」という言葉には、「気が楽になった」「もっと頑張ろうと思った」などの声が、若手から多数寄せられました。最繁忙期の3月直前の発行というタイミングも、若手のニーズにマッチしたと思います。
もう1つ、「特集・単発企画(7ページ以下)」でゴールド賞をいただき、さらにグランプリにも選ばれた『10年後の笑顔』は、当社に10年在籍する、全体で1割未満の社員を何らかの形で労い、皆で称えたいという思いから企画したものです。
誌面では、10年以上在籍している社員を5名紹介しました。最高の笑顔をあえてモノクロ写真で掲載し、マクロミルで働き続ける理由を短いコピーで紹介するという、情報量は少ない誌面でした。
ただ、最高の笑顔にはインタビュー以上に伝わるものがあるのではないか、マクロミルで10年もの間働いてきた達成感や充実感をぜひ感じ取ってほしい、と考えこの形にしました。
発行後は「ナチュラルな笑顔が良い」「10年間頑張ってきたことが感じられた」などポジティブな感想を数多くいただきました。
すべての根底となる企業文化まで意識する
社内メディアの話をしてきましたが、私たちがインターナルコミュニケーションを行う上で特に大切にしているのは、さまざまな施策や戦略のベースにある企業文化や、Mission, Vision, Values(経営理念や行動指針)を、社員にしっかりと共有し、それが共感できる状態を創っていくことです。
なぜなら企業文化には、社内における安心感や信頼感が増し、戦略の実行スピードも高まる効果があると考えているからです。さらに、Mission, Vision, Valuesがあるからこそ組織内での求心力が高まり、あらゆる物事が推進しやすくなるとも思っています。
「組織の実行力を高める」ためには、この2つの要素が非常に重要であり、それを維持し高めていくことが、我々コミュニケーション部門の役割だと考えてきました。そのため、今後も当社では3つの社内メディアを駆使しながら、積極的なインターナルコミュニケーションを展開していきます。
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社内報『ミルコミ』
創刊:2002年
発行部数:1,450部
仕様:A4判、4色、40~50ページ
発行頻度:月刊 - Web社内報『NOW』
創刊:2013年
刷新:2018年
更新サイクル:ほぼ毎日 - 会社情報
URL: https://www.macromill.com/
※ゴールド賞事例紹介、coming soon!(敬称略) ANAホールディングス株式会社
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