医療、科学、映像の3つの事業を柱に、躍進を続けるオリンパス株式会社。ことに消化器内視鏡分野は世界シェア70%強と高い実力を誇ります。顕微鏡で創業してから今年で100年。輝かしいメモリアルイヤーを迎えた同社に、インターナルコミュニケーションの実態と100周年への取り組み、今後の展望について、お話を伺いました。
記念すべき100周年は、変革プランで幕開け
100周年イヤーに突入した2019年早々、「Transform Olympus」と名付けた変革プランを発表したオリンパス。
「当社は輸出比率約8割の会社ですが、至って日本的な会社です。今後世界を相手に持続的に成長していくためには、組織や企業運営をドラスティックに変えていく必要があるのです」
と、変革の重要性について説明するのは、経営統括本部 広報・IR部 広報1グループの久野寛子さん。続けて、経営陣がそれほど危機感を強めている一方で、社員にその意識を浸透させていくことが課題として挙げられます。
「経営陣と社員の間にある距離を縮めることこそが、社内報の課題。変革プランに関していえば、いかに自分事として捉えてもらえるかが大事で、会社の目指す変革が自分の仕事にどう影響を与えるのか、一人ひとりが納得いくように、社内報で示していかなければと考えています」
創刊62年で初の試み、社内報の目指すべき姿を定義
同社のインターナルコミュニケーションツールは、冊子とイントラの2種類。制作は、2011年から携わる久野さんと、入社2年目の若手、横田 伸乃資さんのお2人が、メディア対応と兼務で担当しています。
年4回発行する冊子『OLYMPUS FORUM』は、1957年に創刊した歴史ある社内報ですが、これまで編集方針を見直したり話し合ったりすることはなく、100周年を前にした昨年、真剣に議論したといいます。
「100周年を終えたらリニューアルをしようという話が出発点です。その前に、目指したい姿をきちんと整理しようと思いまして」
と、経緯を話す久野さん。ブレストの結果、社内広報全体の目的および『OLYMPUS FORUM』の発行目的を、次のように定めました。
- 社内広報全体の目的
企業価値最大化に向けた従業員エンゲージメントの向上- 『OLYMPUS FORUM』発行目的
・経営理念や経営方針の浸透
・組織風土改革への寄与
・社内コミュニケーションの活性化
「一番のポイントは、組織風土改革への寄与です。当社の社員には、もっと問題意識を持ってほしいので、会社について考える環境を作っていきたいという気持ちがあります」
そうして最終的には、オリンパスのファンになってほしいと語ります。
ターゲットは若手社員。若い感性に響く誌面を
続いてターゲットを、管理職以外のメンバー、特に次世代を担う20代後半〜30代に設定。編集方針は、以下の5点としました。
□ 正確な記事を掲載する
□ 読みやすい記事とレイアウトにする
□ 問題提起はしても社内抗争を誘発することはしない
□ 経営理念や経営方針から逸脱しない
□ タイムリーな企画や記事を掲載する
「どれも普通のことですが、ちゃんと話し合って腹落ちさせたことに意義があります」と、久野さん。
こうした方針を定義するに当たって、これまでの振り返りも行いました。その中で久野さんが注目したのが、「うちの社内報は、良いことを褒める内容が多く、面白味に欠ける。問題を提起するような企画もあってもいいのでは」という横田さんの意見。
「ターゲット層である若い社員の感性は、きちんと反映していかなければと思いましたね。保守的な会社ですから妥協点を探りつつですが、常に面白いかどうかを自問する姿勢は忘れてはならないと思っています」
100周年企画は1年前から、エンタメ要素もプラス
発行目的や編集方針が明確になったところで、100周年の準備に入った編集部。2019年10月12日が100周年ということで、1年前の2018年10月号から6回にわたり特別企画を組むことを決定。オリンパスの過去、現在、未来を2号ずつで取り上げる予定です。
「1号目は『知ってた?来年100周年』と題して意識づけを、2号目はオリンパスが世界に先駆けて発売した製品の中から社内アンケートで順位を決める『世界初番付』、3号目は新しくなった経営理念の浸透を図るような企画を考えました。その後についてはこれから考えていきますが、社員の読後感を大切にして、次の100年に向けて頑張ろうと思える内容にしたいですね」
と、意気込む横田さん。
また、デザインも周年後の本格リニューアルを前に、プチリニューアルすることに。これまで中面はモノクロでしたが、カラーページを大幅に増やしたほか、表紙にインパクトを出す、誌面に貼れるシールを添付するなど、エンターテインメント性も高めています。
次の100年に向けて、新たな挑戦が始まる
現在は、渦中にある100周年記念号に集中するお2人ですが、当然、その後も見据えています。横田さんが取り上げたいと考えているのは、2011年に起きた不祥事のこと。
「私も含め若い社員は、事件について詳しく知らない人が多い。でも、世間で企業の不祥事が起きるたびに、オリンパスの名前が出てきます。そのことでモヤモヤしている人は少なくないと思うので、一度きちんと検証する企画をやりたいです」。
これについては久野さんも同意見で、こう続けます。
「当時、私はメディア対応を担うことになり、社内報としてこのテーマを深く追求できなかったことに後悔に近い気持ちがあるのです。本当の意味で、過去と決別するためにも、いつか取り組んでみたいですね」
また、隣の人に関心を持たせるような企画にも挑戦したいといいます。
「組織が大きくなると、隣の部署が何をしているのか関心がないという傾向になりがちなので、そこを改善していきたいのです。これは上層部も含めてなのですが、当社はすごくいい人が多い!なのに、横のつながりが弱い…もどかしさを感じています」
と、悩みを吐露する久野さん。とはいえ、救いは、社内報そのものへの関心度は低くないこと。読むことが当たり前のように定着しており、モニター登録制にしているアンケートも3割程度の高い回答率を誇ります。
「それを見ると、みんな言いたいことはいっぱいあるんだなと思いますね。従業員の声を吸い上げていくことこそ、私たちの役目なんだと思っています」
と、前を向く横田さん。次の100年に向けて、お2人の新たな挑戦が始まろうとしています。
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社内報『OLYMPUS FORUM』
創刊:1957年
発行部数:18,000部
仕様:B5判、4色、28ページ
発行頻度:季刊 -
会社情報
URL:https:// www.olympus.co.jp
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