社内報ご担当者の皆さま、こんにちは。ウィズワークスのtomです。今回、皆さまにお話ししたいのは、「社内報リニューアルの進め方」。私がディレクターとして実際に担当した企業の事例を参考にしながら、この一大プロジェクトをどのように進めていくべきか、どのようなことに注意すればよいのかを、じっくり考えていきたいと思います。
社内報リニューアルのスタート&ゴールとは?
ひと口に社内報リニューアルと言っても規模はさまざまで、手軽なところでは「マンネリ感を打破するためにデザインを一新」という変更も、もちろん含まれます。しかし、どういうデザインなら自社の読者に受け入れられるのか、皆さんは自信をもって断言できるでしょうか?
「ビジネス誌や女性誌のような、スタイリッシュなデザインにしたい」という声はよく聞きますが、こうしたテイストがどんな企業にもマッチするかというと、必ずしもそういうわけではありません。
ここで大事なのは、リニューアル規模の大小を問わず、それをすることで「どんな課題を解決したいのか」「何を達成したいのか」という、ゴールの設定が不可欠だということ。先述のデザインにしても、ただ流行を取り入れればよいというわけではなく、ターゲットを明確に定め、そこにアプローチできるものになっている必要があります。
特に社内報は、規模が大きくなるほど読者の目線も多様化していくうえに(雇用形態、職種、年齢、勤務地など)、社長や役員から現場の最前線で働くアルバイト・パートスタッフまで、取材対象などのかたちで関わる人も飛躍的に増えていくメディアです。効果的なリニューアルといっても、「どこから手を着け、何をゴールに設定すればよいのかわからない」というお悩みが出るのは当然。迷走を避けるためには、スタート地点である「課題の抽出」と、到達点となる「ミッションやコンセプトの策定」が重要なのです。逆に言えば、これさえ押さえておけば、大規模なリニューアルに臨んでも迷うことはありません。
リニューアルの第一歩は「課題の抽出」
社内報の企画制作を請け負うウィズワークスには、お客さまからリニューアルに関するご相談が日々寄せられますが、その内容は大別して、「リニューアルを検討しているが、どのように進めたらよいかわからない」という”直球”のご依頼か、あるいは「読まれていない社内報をどうにか改善したい」というように、根底にある課題の解決方法を相談されるケースのどちらかに分類されます。
ご対応は千差万別ですが、どちらのケースにおいても必要なのは、まずは最初のステップとして、課題を細かく洗い出し、社内報を含むインナーコミュニケーションツール全般の使用状況を、分かりやすく整理することです。
企業が今、どのような課題に直面しており、経営層はどのようなメッセージを発信しているのか。社内報自体は、その現状を打破するために最適な設計になっているのか。読まれていないのなら、読者のニーズがどこにあり、マッチしていない原因は何なのか。そして、紙やWebなど運用媒体の使い分けが効果的に機能しているか。
こうしたことを丁寧にピックアップし、さらには検証し、「どういう誌面にリニューアルするべきか」という仮説を立てるのです。
収集した「読者の声」がガイドラインになる
当たり前の話ですが、社内報は読者がいてこそ成立するメディア。リニューアルの課題を洗い出すにあたっては、「読者の声」が何よりも頼れるガイドラインとなります。これを細かく把握するためには、「アンケートによる実態調査」や「インタビュー形式でのモニタリング調査」などが有効。聞いておくと参考になるのは、雇用形態や年齢、職種別の視点で、どのくらい読まれているのか。関心があるのはどんな記事か。社内報に期待するものは何か、といった内容です。上層部に社内報リニューアルの承認を得るときにも、こうした客観的な裏付けがものをいうことでしょう。
お悩み実例「こんなケースがありました」
私が対応したなかで印象的だったのは、発信の内容と読者構成がマッチしておらず、読まれなくなってしまった社内報をテコ入れしたいというケースでした。具体的には、本社オフィスから離れた現場で働く非正規社員が大多数となる組織構成に対して、発信の内容は正規社員に向けたトップダウンの経営情報、全社の動向などに偏ってしまっており、内容につられてデザインも硬く、文字も小さくなってしまっていたという状況です。
社員の方々に対してアンケート調査を実施したところ、読者が欲していたのは、「優秀なナレッジの共有」「自社の仕事を誇りに思えるようなブランド情報」「職場で働く喜びを感じられるコミュニケーション情報」だということがわかりました。
もうひとつのケースは、かつてはコミュニケーション系のコンテンツを中心とした活気のある誌面だったものの、業績が苦しい時期に経営方針の伝達を中心とした内容にシフト。以来、誌面で遊び心を表現するのがはばかられるようになり、「社内報は硬くて面白みがない」というイメージが定着してしまい、結果として読者離れを招いてしまったというもの。これは組織の変革に、社内報が追い付けなかったことが主な理由だと言えるでしょう。
言わずもがな、社内報というツールは「企業価値を向上させる」ことが最大の目的です。会社の成長や、事業が直面する状況にともない、掲載する情報や体裁も、柔軟に変わっていくのがひとつの理想形であることは間違いありません。上述したようなケースでは、速やかに現状分析を行い、主ターゲットとする読者層を見据えた、発行ミッションの再設計が必須だと言えます。
今回のまとめ
社内報リニューアルのプロセスは、例えるなら住まいの模様替えやリフォームのようなものでしょうか。個人の部屋なら、ポスターを張るだけでもガラッとイメージを変えることができますが、年月が経って家族構成が変わるころには、大規模な改築、増築が求められます。後者のように大きなコストがかかる施工の場合には、家族みんなが住みよい間取りや工夫を、設計図を見ながら慎重に検討していく必要がありますよね。
○「社内報リニューアル」はこのコラムもお勧め