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グループの挑戦する風土、その浸透に情報発信で本気で向き合う(キリンホールディングス株式会社)

プレゼンテーションを担当したコーポレートコミュニケーション部の髙島 与佳さん
キリンホールディングス株式会社によるプレゼンテーションの様子。プレゼンを担当したコーポレートコミュニケーション部の髙島 与佳さん

2021年10月5日(火)~8日(金)に開催した「社内報アワードONLINE EVENT 4DAYS」では、ゴールド賞受賞企業10社による、社内報制作の事例発表を行いました。「社内報ナビ」では、各社の発表内容を紹介していきます。

最終回は、キリンホールディングス株式会社様。「社内報アワード2021」では紙社内報部門特集・単発企画8ページ以上でゴールド賞に輝きました。長期経営構想の実現に向け、経営と従業員の架け橋となるべく一貫した企画・編集姿勢。そのインターナルコミュニケーションの要となるものについてお話しくださいました。

食から医にわたる領域で価値を創造しCSV先進企業に

 弊社は1907年設立、従業員数3,1151人、グループ企業数192社(2020年12月時点)で、さまざまな事業を行っています。酒類・飲料などの食の領域だけでなく、サプリメントなどのヘルスサイエンス、そして医薬品といった3領域から成り立っています。これまで培った発酵バイオテクノロジーを活かして、「食」「医」「ヘルスサイエンス」の3つの領域でイノベーションを創出しています。

 2019年に長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027(KV2027)」を発表し、「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる」を2027年の目指す姿に掲げました。また、キリングループは「健康」、「コミュニティ」、「環境」と、「酒類メーカーとしての責任」を重点分野とし、事業活動を通じて社会課題の解決に貢献したいと考えています。

事業を通じて社会課題の解決に取り組むことに重点を置いている
事業を通じて社会課題の解決に取り組むことに重点を置いている

KV2027達成やCSVの自分事化に向けて

 グループ報『きりん』の編集方針は、①経営方針、グループ情報の共有・理解促進と、②従業員のモチベーションアップ(挑戦する/できる文化の醸成)と定めています。

2019年にKV2027の策定に伴い『きりん』の内容をリニューアルしました。新しいコンセプトは「新しいキリンに出会おう、変わるはわくわく」で、そこには下記の2つの要素を込めています。

 ①  グループの目指す姿である「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる」に向けてのムーブメントを作ろうという思い。

 ②  CSVの自分事化を促し、「今のままではいけない」という危機感や期待感の醸成。

 ターゲットは、若手リーダー・リーダー予備軍(30代)に定めています。この世代をしっかり刺激することで、下の世代にも上の世代にもムーブメントを起こすことを狙っています。

 編集チームの役割は、経営と従業員の架け橋となる情報発信を行い、一方的な経営からの情報発信に留まらず、従業員が知りたいことを伝えていくことです。

2007年にホールディングス化した際に創刊
グループ報『きりん』は2007年、ホールディングス化したときに、全グループ会社に対して共通の情報発信をするツールとして創刊

阻害要因を明らかにし解決のヒントを示す

 『きりん』のコンテンツは連載と特集とに分かれ、連載はKV2027達成やCSVの自分事化に関するコーナーを8種類ほど、常時設置しています。例えば、「CSV is」という企画では、当社のCSV活動の取り組み一つひとつを深掘り。また、他社様の事例を紹介する「隣の芝生は、確かに青い」は、目指す姿を達成するために、いま持ち合わせていない視点を持つ企業や、先んじて達成している企業の取り組みを紹介しています。「きりん あらかると」は、各グループ会社やKV2027、CSVに関する新しい動きを紹介。「写心館」は、働く人の想いに迫る企画で、毎回1人を取り上げ、想いを深く聞いていくコーナーです。シンプルに写真は2枚、文章は話し言葉で対話をしているようなイメージに仕上げ、グループ内の様々な事業会社に所属する、仕事に想いを持つ方に登場いただいています。

「写心館」は2020年5月からキリンビール公式noteに転載
「写心館」は2020年5月からキリンビール公式noteに転載し、なかなか伝える機会のないキリングループ従業員の想いをnote読者に伝え、新たなファン獲得をねらう

 特集は、KV2027達成に向けて、従業員が疑問に思っていることや経営の方針として「自分事」として捉えにくいものなどをテーマに設定しています。

2020年に実施した特集企画
2020年に実施した特集企画。左の「挑戦する風土のつくり方。」が、『社内報アワード2021』紙社内報部門特集・単発企画8ページ以上でゴールド賞に輝いた

 

 では、ゴールド賞を受賞した「挑戦する風土の作り方」についてお話します。
 KV2027達成に向けた戦略の枠組みのひとつである「多様な人材と挑戦する風土」という項目を挙げています。この現状を把握するために、グループ従業員約500人にアンケートを実施しました。

 その結果、9割以上の人が「自分の仕事の中で挑戦する必要性を感じている」と回答。ただ、組織としては「個人が主体的に挑戦できる組織だ」と思う人は6割で、「まだまだそうではない」と感じている人が多いことが分かりました。

 そこで企画の目的とターゲットを次のように定めました。

企画の目的

  • そもそも「挑戦」がなぜ求められているのか、挑戦するとはどういうことか、という素朴な疑問を、従業員目線で解消する
  • 「挑戦」を阻害する要因を明らかにし、解決のヒントを示す

 

企画のターゲット

  • 「挑戦」の必要性を感じていない人
  •  挑戦したいと思っているが、さまざまな理由からできていない人

 この目的とターゲットを踏まえて練り上げた構成がこちらです。イントロダクションと5つのパートで展開します。

アンケート分析から判明した5つの阻害要因の、解決のヒントをテーマにした
アンケート分析から判明した5つの「挑戦の阻害をするもの」に対して、解決のヒントになる視点をテーマに設定

 誌面を見ながら解説していきましょう。

 イントロダクション「挑戦は必要ですか?」では人事担当役員にインタビューをし、会社はなぜ従業員の挑戦を求めているのか、従業員一人ひとりにとってキャリアや人生になぜ必要なのかを、詳しく語ってもらいました。

イントロダクション「挑戦は必要ですか?」
イントロダクション「挑戦は必要ですか?」

 Part1「挑戦しやすい雰囲気をつくる」は「失敗するのが怖い」という課題に対して、挑戦しやすい雰囲気をつくっているマーケティング部の事例を紹介。実際に取り組んでいる組織貢献プロジェクトを通して、部署としてどんな制度や努力をして、挑戦しやすい雰囲気を作っているかを伝えました。

Part1「挑戦しやすい雰囲気をつくる」
Part1「挑戦しやすい雰囲気をつくる」

 Part2「これがあったから、私は挑戦できた」は「リーダーが周りに対して挑戦しづらい雰囲気」と感じている人へのヒントです。周囲がどんな挑戦のサポートをしてくれたから自分は挑戦ができたのか、というエピソードを紹介。囲み記事で人事担当役員から「リーダーの皆さんへ」の見出しで「後押しする風土を作ってほしい」というメッセージを載せています。

Part2「これがあったから、私は挑戦できた」
Part2「これがあったから、私は挑戦できた」

 Part3「挑戦する時間はこうつくる」は、やりたくても時間がない悩みを持った人に対して、うまく自分の時間をつくって挑戦している3人の従業員の例を紹介。

Part3「挑戦する時間はこうつくる」
Part3「挑戦する時間はこうつくる」


 Part4「自分の可能性を広げてみよう」
は「やりたいことが見つからない」人に対して例えばボランティア、外部の会社への出向、進学、仲間内での勉強会など、自分の可能性を広げるためのアクションを紹介。

Part4「自分の可能性を広げてみよう」
Part4「自分の可能性を広げてみよう」


 Part5「周りの巻き込み方」
は1人ではできないが、周りを巻き込んで挑戦している人の紹介。実際に周囲を巻き込んで新規事業を成功させた従業員のプロジェクトストーリーです。

Part5「周りの巻き込み方」
Part5「周りの巻き込み方」

 これに加えて、動画を使ったコミュニケーション「もっと!知っチャンネル」と連動。誌面では伝えきれない情報や背景・想いを伝え、誌面よりも柔らかい、カジュアルな情報を扱うことで、会社・経営と従業員との距離を縮め、自分事化を促進することを狙いました。

「挑戦について一問一答」というタイトルで、人事担当役員が〇×で回答
人事担当役員に「挑戦について一問一答」というタイトルで、少しゆるい質問に〇×で答えてもらった

 

 この企画を通して伝えたかったことは「挑戦する風土」の醸成は挑戦する本人だけの問題ではなく、挑戦する人・周囲の支える人の双方の取り組みが必要で「キリングループはその土壌がすでにある」ということです。これを伝えるために、<挑戦に対する会社の本音><挑戦の歩みを止めない組織風土><挑戦した人が見た景色(苦労・苦悩・達成感)>を記事にしました。

 社内の反応は「挑戦に対する自分の会社の仲間の奮闘、苦悩が伝わってくる」、「グループの従業員が既に挑戦できる環境にあること」、「リーダーがこんなにも優しく背中を押している事実に驚きと感動を抱いた」等、しっかり伝わっていることが分かりました。

 今後もKV2027・中期経営計画の経営ツールとして、経営からも従業員からも活用されることを目指し、KV2027達成に向けてより踏み込んだインターナルコミュニケーションに取り組み、また在宅勤務など従業員のワークスタイルの変化に対応していかなければいけません。

 今年取り組んでいるのが、既存の枠組みにとらわれないインターナルコミュニケーションの見直しです。その一環として2021年6月にインターナルブランディングWebサイト「KIRIN Now」を立ち上げました。

スピーディで、より踏み込んだ情報発信を目指して開設
グループ報『きりん』では実現できないスピーディで、より踏み込んだ情報発信を目指して開設

 開設から数カ月と、まだ頑張って育てている段階ですが、紙のグループ報で培った知見を取り入れながら、よりよいインターナルコミュニケーションの姿を目指していきたいと思っています。

 

  • グループ報『きりん』 
    創刊:2007年
    発行部数:約20,000部
    仕様:A4判、4色、基本28ページ
    発行頻度:半期に1度(1月、7月)
    URL:https://www.kirinholdings.com/jp/

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