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【オンライン対談】社内報でSDGs、ESGをどう訴求していくか。その解を探る

近年、世界中で関心が高まっているSDGsとESG。その取り組みを積極的に行い、社内報で発信しているキリンホールディングス株式会社とグリー株式会社に、オンラインで対談をしていただきました。両社の取り組み内容は実に素晴らしく、どの企業にとっても参考になるナレッジにあふれていました。

【対談者】

キリンホールディングス株式会社
コーポレートコミュニケーション部
髙島 与佳 

グリー株式会社 
経営企画部 広報グループ
インナーコミュニケーションチーム
坂見 晴香

[ファシリテーター]
ウィズワークス株式会社 社内報総合研究所 所長
浪木 克文

社会的課題の解決となるSDGs・ESG は企業成長の要

浪木 これまで、企業としてどのようなSDGsの取り組みを行ってきましたか?

髙島 現在キリングループでは、これまでビール醸造などで培った発酵・バイオテクノロジーの強みを活かし、食から医にわたる領域で事業を展開しています。また、2019年には2027年にキリングループの目指す姿として「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる」を掲げました。
 CSV(Creating Shared Value)という考え方は、企業が事業を通じて社会課題の解決に取り組むことであり、社会的価値・経済的価値の両方を、事業活動を通じて創造します。多くの社会課題の中で、キリングループは特に「健康」「地域社会・コミュニティ」「環境」そして「酒類メーカーとしての責任」を軸に定めて活動しています。

 それらを含めた長期経営構想「キリングループ・ビジョン 2027」(以下KV2027)達成に向けた情報発信を強化するために、今年6月1日に、新たにWeb社内報「KIRIN Now」を開設しました。

新たなWeb社内報「KIRIN Now」を2021年6月1日に開設
新たなWeb社内報「KIRIN Now」を2021年6月1日に開設

 「KIRIN Now」は経営ツールとしての情報発信と位置付けているので、Webサイトの目的は下記のように定めています。

①  KV2027や中計の達成に貢献
CSVの自分ごと化、(CSVを理解するだけでなく、自らの仕事の中で社会課題の解決とキリングループの事業を結び付けて考えるためのCSV経営への共感や、仕事の場面での体現を目指す)
全キリングループ従業員が知るべき情報の発信

 

②  読者ターゲット:若手リーダー・リーダー予備軍(30代)

 「KIRIN Now」を開設するまでは紙のグループ報『きりん』を発行し、2007年にキリングループがホールディングス化する前のキリンビール時代から合わせるとその歴史は60年以上。2019年4月にリニューアルし、CSVに関する内容を充実させたところ、従業員向けのアンケートによる定量調査の結果は「グループ報がCSVの理解に役立っている」と答えた読者の割合が2018年の67.9%から2020年末には73.7%に増加と、うれしい結果となりました。「KIRIN Now」のスタートにより、現在、『きりん』は季刊から半期に1度の発行となっています。

60年以上の歴史を誇る、紙のグループ報『きりん』
紙のグループ報『きりん』は、キリンビールの社内報の時代を含めると60年以上の歴史を誇る

 グループ報をWeb化にシフトした背景には、コロナ禍によるワークスタイルの変化以上に、KV2027達成に向けて、より踏み込んだインターナルコミュニケーションが必要になったことがあります。従業員の状態を無関心、認知、理解、共感、体現に分けて考察し、「キリングループに誇り・信頼・愛着を持つ」ことに関与が深くなると、従業員のエンゲージメントが高い状態となりキリングループの目指す姿により近づいていく、と定義づけ、これを目指して情報発信しています。もちろん、企業としては新入社員やキャリア採用の方の入社など新しくキリングループの仲間になっていただく方に対しても必要な情報を届けていく必要があるため、継続的にさまざまな視点での情報発信を行うことが重要と考えています。

坂見 CSVの浸透を図るKPI(重要業績評価指標)について、もう少し詳しく教えてください。

髙島 インターナルコミュニケーションのKPIとしてはグループ報発行後に、全従業員から約650人を無作為抽出してアンケートを依頼。500人前後の回答を得ています。

浪木 グリー様は、いかがでしょう。

坂見 コーポレートサイトの公式ブログで社内外に情報を発信していましたが、2021年1月、「グリーグループの真剣さを伝える」をコンセプトに、働く人を中心としたオウンドメディア「6 deGREEs(シックスディグリーズ/以下6D)」をリリースしました。カテゴリーは「働く人・環境」「プロダクト・事業」「テクノロジー」「経営」「シナジー」「サステナビリティ」の6つ。グリーグループのサステナビリティ活動は政策企画グループ社会貢献チームが主幹部で、広報は6Dへの企画・編集やグループ内外の露出の実施や活動レポートの監修などのサポートをしています。

⽉に3〜4本を2人体制で制作
グループ従業員が気軽に見られるポップで親しみやすいデザイン。⽉に3〜4本を2人体制で制作

 サステナビリティ活動は、2012年から行っていたCSR活動に、SDGsの観点やグリーグループの事業を盛り込み、2021年5月にリニューアルしました。その背景は弊社の事業がゲーム事業だけでなく、ライブエンターテイメント事業、広告・メディア事業などが加わったことがあります。さらに、近年重要な指標として注目されているSDGs17ゴールについても、すでに社内で継続的に取り組んでいるものが多く、伝え方を見直すことで訴求力を強化しました。コーポレートサイトには、これまで継続している活動・新しい取り組みのそれぞれにSDGsのアイコンを付加して掲載しています。

コーポレートサイトのリリース当日に6Dでも記事を配信
コーポレートサイトのリリース当日に6Dでも記事を配信。反響は大きくPVは通常の2倍ほどに

髙島 SDGs、ESGに関して従業員の理解・浸透を図るために、6Dでの情報発信のほかにどのような取り組みをしていますか?

坂見 年に1度『OUR ACTIONS』という冊子を紙で発行しています。社会貢献チームが中心になり、弊社1年の活動内容を知ってもらうことを目的に制作し、官公庁などにも送付していました。より多くの方に見ていただけるようにコーポレートサイトでもPDFを掲載していましたが、サステナビリティの視点から本年度より冊子版を廃止し、Web閲覧に特化したスタイルで間もなくリリースする予定です。従業員やそのお子さんにもモデルとして出演してもらうことで社員に興味・関心を持ってもらえるようになりました。

浪木 本日はオンライン対談ということで、視聴者からチャットで質問を受け付けています。さっそく坂見さんに質問が届いています。「6Dは社外にも公開する形式ですが、『出たくない』という社員はいらっしゃいませんでしたか?」

坂見 もちろん、そういう方もいます。その場合は顔を出さずにインタビューを受けていただくなど、無理のない範囲で登場してもらっています。

Webの特性を活かし社外にも発信。ブランディングに活用

浪木 自社の取り組みを受けて、社内報での展開やその工夫、また目指すべき姿は、どのように計画していますか? 

坂見 コーポレートサイトのリニューアルに伴い、社会貢献チームとミ―ティングを重ね、企画書をアップデートしながら、6Dに載せる記事の企画・取材を行ってきました。

髙島 どのように企画・コンテンツを組み立てているのですか?

坂見 すべての記事において企画書を作成しており、①概要 ②目的 ③ターゲット④メイントピック ⑤「真剣」ポイント ⑥取材概要 ⑦記事構成を明記。議論を重ねて企画書が通ったのちに、必要に応じて取材対象者とすり合わせのミーティングを実施しています。

髙島 発信した記事への従業員、経営陣の反応はいかがですか?

坂見 ビジネスチャットツールSlackを利用しているのでスタンプなどのリアクションから読み取ったり、役員は自身のSNSなどでコメントを書いて記事をシェアしていただくこともあります。

髙島 従業員のCSR活動への関心度、関与度はいかがですか?

坂見 まだまだ課題はあると思っていますが、さまざまな取り組みを通じて従業員への理解促進を図っています。

取り組みを通じて事業部側からのリアクションや参加の姿勢が見える
取り組みを通じて事業部側からのリアクションや参加の姿勢が見える

髙島 キリングループにとってSDGsやESGは「リスク」と「チャンス」の両面があると考えています。環境への対応など、変化をしなければ既存の事業活動を継続できなくなるリスクが生じることもある一方で、社会課題解決に取り組むことで新たな事業創出につながるチャンスになります。このような背景を踏まえると、キリングループで働く全ての従業員が、企業が社会課題解決に取り組むべき社会的背景とキリングループの事業活動を結び付けて考えられるようになることが必要です。

「KIRIN Now」は「経営」「事業」「ひと」「学び」の4コンテンツがある
「KIRIN Now」のコンテンツは「経営」「事業」「ひと」「学び」の4つのカテゴリーがあり、SDGsに関しては赤枠の企画が該当。さまざまなステージにいる従業員に、多様な切り口で情報を届けることを意識して制作
サステナビリティに関連して、知っておくべき基本情報を分かりやすく解説
サステナビリティに関連して、知っておくべき基本情報を分かりやすく解説。仕事中のとある日の会話を切り取ったイメージで、CSV戦略担当者と、従業員同士の掛け合い形式で紹介
自身が関わる事業や商品などもCSVにつながっていることを実感してもらう
CSVの概念を具体的な事業活動の事例をベースに解説し、自身が関わる事業や商品などもCSVにつながっていることを実感してもらう企画
従業員が自主的に学びを深めたいときに役に立つ資料を格納
取材記事だけでなく、従業員がサステナビリティについて学びたい、自分の仕事に活かしたいなど、自主的に学びを深めたいときに役に立つ資料を格納
2020年、キリングループの従業員を紹介する「写心館」をnoteに転載スタート
2020年5月から、キリングループの従業員を紹介する「写心館」をnoteに転載スタート。2021年6月からは、グループ報のコンテンツを社外にも知ってもらおうと、CSV活動を実践する従業員を紹介する「1ミリ変える、ストーリー。」を転載。キリングループの新たなファンづくりや企業価値の向上を狙う https://note-kirinbrewery.kirin.co.jp/m/m716d3cb8ef8b

浪木 閲覧者を増やすために、どのような取り組みをしていますか?

髙島 次の3つです。

.「KIRIN Now」では毎月5~10本くらい記事を発信しており、新しく更新したものを1つの画像に「まとめ読み瓦版」として、月末に各社のポータル、イントラネットに掲載しています。
.各記事の下に「シェアボタン」を設け、URLとタイトルをコピーできる仕組みを作っています。個人が読むだけでなく社内のコミュニケーションにつながることを目指しています。
.「KIRIN Now」編集部のメンバーは約10人いるのですが、各担当者の社内メール発
信時の署名に、お薦めの記事をつけてもらい、告知に役立てています。

坂見 Webメディアの中でnoteの選択をしたのはなぜですか?

髙島 キリングループではさまざまなオウンドメディアを持っていますが、noteはキリングループを直接検索して情報を見に来ていただいたり、公式アカウントをフォローしていない方にもリーチしやすく、サステナビリティやマーケティングなどキリングループ以外の記事を経由して記事を読んでいただけることもあります。また、note読者はミレニアル世代、Z世代など、カルチャーやサステナビリティに非常に関心の高い若い世代も多いと認識しています。そのため、商品・サービス以外での会社の魅力を伝えるのに有効と思っています。

坂見 取材対象者の⼈選の基準を教えてください。

髙島 1つはさまざまな事業会社や事業領域からバランスよく選ぶこと、もう1つはその事業に関わる現場の方の声を届けたいと思っているので、現場でCSVを実践している若手に登場してもらえるように、私どもが日々人脈づくりをしています。

各部署との連携強化と、現場の従業員の事例発掘

浪木 2021年を含め、今後、企業としての方向性は? また、それを受けてインターナルコミュニケーション担当としてはどのように動いていきますか?

髙島 今後の取り組み課題は、下の3点です。

  1.  各部署が行っているインターナルコミュニケーション施策と情報発信の連携
    (一例)「キリン 午後の紅茶」がキリンビバレッジのCSVのフラッグシップブランドとして、さまざまなCSV活動を訴求することになり、ブランドとしてCSVの取り組みを消費者に発信するタイミングで、社内に「なぜ午後の紅茶がこのような取り組みをしているのか」を発信。各部署との連携を重視。

  2.  従業員のさまざまな「立ち位置」に寄り添った発信、一度発信した情報の活用
    (一例)新入社員やキャリア採用入社者といった、新しくキリングループに入社した方に過去の記事を人事総務部から共有するなど、すでに発信した記事を繰り返し閲覧してもらえるWebの特徴を活かし、価値ある情報を蓄積し活用していく。

  3.  海外事業会社に向けた情報発信の強化
    「KIRIN Now」は国内従業員向けのWebサイトとして日本語でオープンしたが、今後はキリングループのサステナビリティなどの考え方を海外にも共有するべく海外情報発信を強化していく。

坂見 6Dでの情報発信の強化に尽きますが、サステナビリティ活動として3点あります。

  1. グループ内各部署のサステナビリティ活動情報をキャッチアップし、適切なタイミングとコンテンツで現場と社会貢献チームとの連携強化
  2. 広報と事業部側との連携が多いため、サステナビリティ活動に活かせそうな事案を、積極的に社会貢献チームに情報提供
  3. 5月末にリニューアルしたばかりなので、従業員に興味を持ってもらえるコンテンツを意識して作っていく

浪木 今日は貴重なナレッジを共有していただき、ありがとうございました。SGDsの取り組みを積極的に行っている両社のお話は、多くのインターナルコミュニケーション・プロデューサーのお役に立つと思います。SDGsやESG、CSR関連への関心はまだまだ続くと思いますので、またぜひお聞かせください。


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