2021年10月5日(火)~8日(金)に開催した「社内報アワード2021 ONLINE EVENT 4DAYS」では、ゴールド賞受賞企業10社による、社内報制作の事例発表を行いました。「社内報ナビ」では、各社の発表内容を紹介していきます。
第1回は、旭化成株式会社様。「社内報アワード2021」では紙社内報部門で連載・常設企画ゴールド賞に輝きました。「従業員の心に訴えかける連載を!」を目的に、受賞企画実施に至った経緯や、インターナルコミュニケーションの要となるものについてお話しくださいました。
来年創業100周年を迎える総合化学メーカー
弊社の従業員数はグローバルで約45,000人、うち国内は約25,000人です。2019年には名誉フェローである吉野 彰がノーベル化学賞を受賞するなど、時代の要請を先取りしながらさまざまな社会価値を提供してきた会社です。現在は「サランラップ」や化学品・電子部材などを手掛けるマテリアル領域、「へーベルハウス」を主力とする住宅領域、そして医薬品や医療機器などCOVID-19に対しても貢献をしてきたヘルスケア領域という、3つの分野で事業展開しています。
インターナルコミュニケーションの主なテーマは次の5つに集約できます。
「グループ理念(世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献する)」
「トップメッセージ」「経営計画」「事業・製品・人」「社会貢献・スポーツ活動」
それらを発信するメインツールが、社内報(冊子版、Web版)です。
若手・中堅層が自分ゴト化できるために
グループ社内報『A-Spirit』は、「従業員が、旭化成という会社を通じて、自己と事業を成長させるサポートをおこなう、インナーコミュニケーションツール」と位置づけて発行しています。1947年に創業の地、延岡で「工場新聞」として誕生し、1999年に『A-Spirit』と改称しました。
『A-Spirit』に期待する効果
- 会社が目指す方向性の共有(理念、経営、中計)
- 従業員同士のコミュニケーション(一体感、帰属意識、モチベーション、表彰効果)
- 所属以外の事業活動の理解(横軸連携=コネクト)
- 事業以外の活動、制度・ルールなどの理解(社会貢献、人事、コンプライアンス)
編集方針は、「従業員が自ら考え行動し Cs※の実践につなげるための“理解”と“原動力”を与える」です。 ※現中期経営計画“Cs+ for Tomorrow 2021”で掲げるさまざまなC:Compliance, Communication, Challenge, Connect, “Care for people, Care for earth“
そして5つの視点を持って制作しています。
① 社内視点と外部視点を取り入れる
② 説明が難しい事業や製品も、図解や写真で分かりやすくする
③ 現場、現実、現物を大切にする
④ 当社の強みである技術・製品・人の“多様性”を発信する
⑤ 冊子とWebでさまざまな働き方に対応したメディアミックスをアップデートする
メインターゲットは次期旭化成を担う若手・中堅(20代後半~40代前半)=ポストマネジメント層としています。
ポイントは「サクセスストーリー」だけではないこと
今回ゴールド賞を受賞した連載企画「BORDER」は、100周年を控えたこの大変革の時代だからこそ、今一度私たちの「A-Spirit(旭化成の精神)」を思い起こし、従業員の心に訴えかける連載を!という思いから、次の3つの狙いを設定しました。
① 自社の強みである「多様な人財」に焦点を当てる
② 「社内報に出るような人だからすごいのは当たり前」という他人ゴトから、「自分も一歩踏み出そう!」という自分ゴト化につなげる
③ 泥臭さ、リアル感をありのままに表現することで、読者の「共感」「刺激」を促す
この連載企画を実施するにあたって、下記4点を工夫しています。
[1]. 人選
社内報=キラキラ社員だけが登場というイメージを払拭したいと考え、「人事部の推薦」ではなく「現場や関係者からの他薦」としています。社内のイントラネットに応募フォームを立ち上げ、現場で働く従業員にもヒアリングするなど、現場目線での人選ができるよう工夫しています。
[2]. レイアウト
「社内報=従業員が主役!」ということを改めて訴求するため、メイン写真を見開き全体を使って大胆に配置しています。シンプルながら、企画への惹きが強く、「従業員が主役」という視点がしっかりと伝わります。加えて、人柄や業務風景を連想できるような写真選択も意識しています。
[3]. コロナ禍での取材
写真は必須の企画ですが、緊急事態宣言下などで現地に行けないこともあります。その際は対象者の同僚など周囲にいる従業員に現地カメラマン役を依頼。写真の質を極力統一するため、事前に「撮影指示書」(構図・注意点など)を制作して撮影者に配布するといった対策も行いました。またオンライン取材ならではメリットを生かして、海外で働く従業員や、国内の地方勤務の従業員を取り上げる機会を増やすなど、結果的に制作方法の幅が広がりました。
[4]. “リアル”を引き出す取材
取材を受ける従業員が、緊張したり気負ったりするのは当然。その状況下で本音を引き出すために工夫していることは、
① 取材では、名前の由来や生い立ちから聞く。
② 取材者側の話もあえてするなど、目線を合わせ、会話のキャッチボールを楽しみながら取材に臨める雰囲気をつくる。
③ 情報の質を上げ、ストーリーに深みを出すために、上司や部下などにも対象者の特性やエピソードを聞く。
といったことです。このようにして、パーソナリティに迫ったエピソードを引き出し、感情面も掘り下げ、抑揚あるストーリーを描き出します。
一人ひとりの飛躍に貢献できる企画を目指す
試行錯誤しながら、これまで計6回掲載してきました。取材対象者の情熱、仕事に対する姿勢が社内で共感や刺激を生み出し、誇りの醸成やモチベーション向上につながっています。
一度読み始めてもらえれば心に響く内容になっているものの、一方で取材対象者の職種などによっては読み飛ばされることもあり、不読率(読んでいないと回答した割合)が5%前後といったアンケート結果も出ています。この改善を目指し、制作会社と協議を重ねながらデザインや台割などのマイナーチェンジを検討中です。今後もPDCAを回しながら、さまざまな従業員の「BORDER」を届け、従業員一人ひとりの飛躍に貢献できる企画を目指して、制作を続けていきたいと思っています。
本日紹介させていただいたのは「BORDER」ですが、それ以外にもDXやサステナビリティなど重要な経営戦略テーマ、あるいはグローバル従業員を取り上げる企画、創業100周年に向けた社史の連載企画なども発信しています。また、弊社の特徴である企業スポーツも活用し、スポーツの力やアスリートの姿勢から、従業員の刺激やグローバルでの一体感醸成につながるインターナルコミュニケーションを推進しています。
今後も創業から変わらない『A-Spirit』を胸に、来年の100周年と次の100年へ向けて、より充実した社内報づくりを目指していきます。
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