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ARを用いた追体験で、“関心がない”から“自分ごと”へ (株式会社スクウェア・エニックス)

株式会社スクウェア・エニックスのプレゼンを担当したお二人と、社内報担当者
株式会社スクウェア・エニックスのプレゼンを担当した広報室の徳永 美沙さん(中央)、森光 萌奈さん(左)と、同じく社内報編集部の金振 由佳さん(右)

2021年10月5日(火)~8日(金)に開催した「社内報アワード2021 ONLINE EVENT 4DAYS」では、ゴールド賞受賞企業10社による、社内報制作の事例発表を行いました。「社内報ナビ」では、各社の発表内容を紹介していきます。

第2回は、株式会社スクウェア・エニックス様。「社内報アワード2021」ではWeb/アプリ社内報部門 企画単体でゴールド賞に輝きました。「商品への関心は高いが、会社への理解が低い」という課題を見事に解決した受賞企画。その実施に至った経緯や、インターナルコミュニケーション(以下、IC)の要となるものについてお話しくださいました。

課題解決のための情報発信プラットフォーム

 当社グループの代表的な商品ブランドには「ドラゴンクエスト(以下DQ)」「ファイナルファンタジー」「トゥームレイダー」「スペースインベーダー」があります。さまざまなエンターテインメント・コンテンツを世界各国の開発拠点で制作・販売し、出版物やグッズなども展開しています。

 本日は、約8割が商品開発に関わる職種である国内拠点の従業員3,800人を対象にしたICの取り組みをお話しいたします。

 当社では、ICにおける課題把握のため、全社向け調査を実施・分析し、次の3つを重点課題としています。

① 当社らしさへの理解を促す
② 経営情報への理解度を高める
③ 組織間・個人間のコミュニケーションを活性化させる

 これを踏まえ、Web社内報「Hub」では、従業員への「情報伝達」だけでなく、どのように「意識や認識を変える」か、どのように「行動の変化までつなげる」か、をミッションに掲げています。

2019年12月に初のWeb社内報をオープン(左)。2021年3月に現在の「Hub」(右)が誕生
2019年12月に初のWeb社内報をオープン(左)。業務ツールと社内報コンテンツは別サイトだったが、同じサイト内で全て完結できるようにするため、2021年3月に全面統合してリニューアル。現在のWeb社内報「Hub」(右)が誕生

 当社の社員の特徴として、もともとユーザーとして商品の大ファンだった人が入社しているケースが非常に多い、ということが挙げられます。そしてその想いが当社の強みであり、新しいコンテンツ制作をはじめとした現在の事業推進の原動力になっています。一方で、商品や事業への社員の興味関心の高さゆえに、相対的に会社全体に対する理解や共感が低くなるという課題があります。

 これを解決するために、以下2点を考慮しながら社内報制作を進めています。

【1】3つの重点課題「当社らしさ/経営情報/コミュニケーション」をバランスよく配置し、リフレッシュ企画(記事の読み疲れを防ぎ、業務の間の息抜きとなる)を合間に入れる。

【2】「読者ターゲット」を絞り込む(全社員をターゲットにはしない)。企画立案時は、「コアターゲット」の属性や人物像・職種・考え方、記事を読むことによる行動変容まで想定し、メッセージ浸透を最大化させる。さらに、情報の取捨選択に迷い、見せ方で悩んだときに立ち戻る拠り所とする。

編集方針に従い、こだわりを持って制作
課題解決のための情報発信のプラットフォームとしてWeb社内報「Hub」を立ち上げ、編集方針に従い、こだわりを持って制作

DQアプリを利用した「歴史散歩」企画

 受賞コンテンツは「DQウォークぶらぶら散歩 特別シリーズ企画 『歴史をプレイバック』」というタイトルで、会社の歴史を紹介する企画です。

 全社調査の結果、「社員は自社商品のファンが多く、それに対する愛着・情報の理解・共感は高いが、会社全体に対する理解は低い」「所属する部署外の人についてはよく知らず、コミュニケーションを活性化させる必要がある」ことが判明しました。さらに、残念なことに、「興味ある情報」の選択肢の中で、「会社の歴史」が最下位でした……。

 これらを解決できる社内報企画を検討していた際に、某雑誌の編集長の「別の切り口から伝えてみる」という言葉と出会いました。それがヒントとなり、社員に人気のあったゲームアプリをフックにして「興味を惹くアプローチ」を図ることにしました。

「DQウォーク」の機能を使った社内紹介記事を実施していた
当社のゲームアプリ「DQウォーク」は、スマホにリアルと連動した地図が表示され、実際に外に出て地図に沿って歩いていくとモンスターと出くわして戦うゲームで、AR撮影機能を搭載している。自分の仕事と関係ないエリアに行かない人に対して、この機能を使い「社内にこんな場所もあるよ」と紹介するリフレッシュ系記事をすでに実施していた

 この企画は、当社設立時から現在までの各拠点をめぐり、モンスターと一緒に各拠点を撮影したAR写真を紹介。それとともに、当時の事業環境や社員のエピソードなどを交えた会社の歴史をつづった記事にました。AR写真に惹かれて読み進めると、自然に会社の歴史が頭に入って来るという仕掛けで、全6回の連載企画としました。ねらいは見事的中し、大人気企画に。連載終了後に、記事に登場した社員の方々による座談会を収録した「特別編」を追加展開したほどです。

全6回の連載企画だったが、人気を博し「特別編」を追加展開
全6回の連載企画だったが、人気を博し「特別編」を追加展開

 この企画を立てる際の重要なポイントとなったのは、読者ターゲットです。この企画のターゲットは、会社の歴史をさほど知らないであろう社歴の浅い若手社員と入社10年目未満の中堅社員に設定し、この社員達の特徴を明確化しました。

ターゲット社員の特徴

  • 子どもの頃からゲームに親しみ、ゲームを通じた感動体験を持つ。自社商品の究極のファン。自らもゲームの開発者となり、世界中の人々に感動を与えたい、と入社した。
  • 自社商品の究極のファンにとって、自らが没頭したゲームや、自分の人生に影響を与えたゲームの開発者は、同じ社員でも「レジェンド開発者」としてファン的憧れを抱いている。
  •  商品に対する知識や理解は深いが、会社の過去の拠点などの歴史への理解は浅い。
  • 長文や硬い文体は苦手。カジュアルな文面を好む。

社内だからこそ、レジェンドエピソードを知ることができる

 この企画を成功させるためには、いかにターゲットの興味をそそる仕掛けができるかがカギになると思い、3つの工夫を行いました。

ターゲットに刺さる企画にするための工夫

1.  ビジュアルでストーリーを語る

AR写真で一風変わったビジュアル(拠点とDQモンスターを合わせて撮影)
AR写真で一風変わったビジュアル(拠点とDQモンスターを合わせて撮影)

拠点の周囲の様子もわかるように撮影
 当時在籍していた社員からの提供写真を掲載(海外拠点の写真など)

「初代DQが発売されたときの拠点」など自社の歴史において象徴的な場所は目立つように取り上げる
各時代に発売された商品画像や、拠点を知る社員の顔写真など、画像を多く配置
サムネイルを見ただけで、どの拠点でどのような話が含まれているかがわかるようにする
 

2. 年表ではなく「リアルな空気感」を伝えることで自分ごと化

リアルな空気感」を伝えることで自分ごと化してもらう
リアルな空気感」を伝えることで自分ごと化してもらう

情報と場所をリンクさせる
社会や業界の変化、そしてターゲット社員と同年代ったレジェンド社員たちによるエピソードを掲載することで、読み手が追体験できるようにする

 

3. 「現在」につながる情報だけに絞る

「現在」につながる情報だけに絞る
「現在」につながる情報だけに絞る

情報は思い切り絞る
情報の取捨選択をする上での判断軸は、ターゲットが知る「現在」につながる情報か否か

 当時の様子を伝える内容では、社会的な情報のほかに、現在の当社事業の柱のひとつに成長した当時の新規事業の軌跡などの情報も、詳細に載せています。

 また、拠点の写真とともに、地図情報を埋め込みました。ねらいは、アニメやゲーム、映画に登場した場所を巡るという聖地巡礼の文化です。ターゲット社員の特徴を考えると、聖地巡礼に親しみがあるのではないかと考えたのです。

 この企画で1番の人気は、レジェンド社員によるエピソードコメントです。人気ゲームに関する開発秘話など、従業員だからこそ知り得るエピソードは、商品の究極のファンであるターゲット層にとって心躍る情報だったようです。

「自社の価値」への理解が深まった

 記事掲載後は、「自分がハマったゲームはこの拠点で作られたのか。近くに行ったときは寄ってみたい」「当時の自分は何をしていたのかを思い返しながら、しみじみと会社の歴史と自分人生の出来事、体験をリンクさせた」など、多くの感想が寄せられました。どれも熱量が高く、中には500文字を超えるようなものも。反響は回を重ねるごとに大きくなり、長く在籍している従業員から、過去の資料や昔の画像の提供の申し出もあるなど、予想外の出来事もありました。

プレゼント付きアンケートは、かつてない大きな反響を呼んだ
アンケートはプレゼント付きで実施。今回は他の企画の5倍もの感想が届き、それまでにない大きな反響を呼んだ

 当社では、社内報全体の満足度、何を理解できたか、良かった企画とその理由などを把握するためのWeb社内報の読者アンケートを実施しています。記事掲載後に実施したアンケート結果から、この企画によって社員の「自社の価値」への理解が深まったことが分かりました。

 記事への反響とアンケート結果から、「関心が低いテーマでも、興味を惹く切り口で伝えることで、社員の自分ゴト化につなげることができる」「徹底したコアターゲット像の分析と絞り込みが重要」「まずコアターゲットに訴求することがメッセージ浸透につながる」ということを再認識しました。

 さらに、今回の企画で、ICのミッションの中の「自社らしさを伝える、この理解度を高める」ことに大きく寄与できたと自負しています。

 今後は、コロナ禍を機に在宅勤務制度に移行したことで増大した社内コミュニケーションの課題と、経営方針の浸透の強化という課題を、社内報の力で解決していきたいと考えています。

 

  • Web社内報『Hub』        
  • 創刊:2019年 
  • 閲覧対象者:正社員、契約・派遣社員、パート・アルバイト
  • 閲覧環境:社内(PC)、社外(社用デバイスに限る)
  • 発行頻度:週に1~3回(月7~14回)
  • 会社情報:URL https://www.jp.square-enix.com/

 


[編集部Pick Up]
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