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難しいテーマをわかりやすく伝え、自社事業への誇りを育てる (株式会社東芝)

事例発表を担当した株式会社東芝の鈴木 梨少さん
株式会社東芝の事例発表を担当したのは、コーポレートコミュニケーション部 インターナルコミュニケーション室の鈴木 梨少さん

2021年10月5日(火)~8日(金)に開催した「社内報アワード2021 ONLINE EVENT 4DAYS」では、ゴールド賞受賞企業10社による、社内報制作の事例発表を行いました。「社内報ナビ」では、各社の発表内容を紹介していきます。

第3回は、株式会社東芝様。「社内報アワード2021」では「紙社内報部門/特集・単発企画8ページ以上」部門でゴールド賞に輝きました。グループ社内報『東芝ライフ』と、推敲を重ねた今回の受賞企画について、苦労の多かった制作過程を振り返ってくださいました。

インフラサービスカンパニーを目指す東芝グループ

 東芝の創業は1875年、「人と、地球の、明日のために。」を経営理念に掲げて事業を展開しています。従業員は世界全体で約12万人おります。白物家電やテレビ、パソコンなどのイメージが強いと思いますが、それらは実はもう東芝ではなく、東芝ブランドを使って別の会社が事業を行っています。現在、東芝グループでは、エネルギー、インフラ、デバイス&ストレージ、デジタルソリューションを主軸に事業を展開しています。

70年以上続いてきた紙社内報『東芝ライフ』の変遷

 コーポレートコミュニケーション部ではいくつかの情報発信媒体を運営していますが、 私たちインターナルコミュニケーション室は2つの社員向けの媒体を制作しています。1つはイントラネット上でニュース記事を掲載する「東芝新聞」、もう1つは年4回約55,000部を発行する紙社内報『東芝ライフ』です。

 『東芝ライフ』は読者対象を国内従業員とそのご家族と設定し、紙冊子とオンライン上で閲覧できるPDF版を発行しています。紙冊子には「ご家族に会社への理解を深めてほしい」「PCを持たない工場の従業員にも目を通してもらいたい」という背景がありますが、コロナ禍で在宅勤務が増えたことで、最近はオンラインサイトのPV数が増加しています。

 『東芝ライフ』は1948年に創刊され、70年以上絶えることなく発行されています。現在のキャッチコピー「ともに語り、ともに知る」は、創刊の辞からきています。とはいえ、激動の6年間に発行形態は変化しました。2015年の不正会計発覚からは、より早く従業員に会社の状況を知らせるために月刊化しました。2017年にアメリカの原子力事業減損でさらに危機的状況に陥ったため、経費面と即時性をより意識してWeb発行のみになりましたが、2019年12月、会社再生に一定の目処が立ったということで紙社内報が復刊されました。

創刊から70年、絶え間なく発行されてきた
創刊から70年、絶え間なく発行されてきた。コロナ禍で在宅勤務が増えた最近はオンラインサイトのPV数が増加傾向

企画から原稿作成、撮影までほぼ自分たちで

 現在『東芝ライフ』は担当者6名で制作し、室長が最終チェックを担っています。基本的には、企画から取材、原稿作成、写真撮影までを内製しています。編集歴は一番長いメンバーでも3年で、インターナルコミュニケーション室に異動してから、写真撮影や原稿執筆を学んでいます。

 年4回発行しているので、制作期間は3カ月です。前号の発行後に次号のキックオフとなり、会議で企画と各ページの担当者を決めます。担当が決まったら、取材先の窓口に企画を打診します。ヒアリングして企画を具体化し、取材OKとなったら登場する人を選んでもらいます。その後取材を行い、原稿を執筆。まず部内で文章チェックをします。言葉を整えた後に取材先に確認し、戻ってきたものを担当者が再度チェックして入稿します。
 その後、多いときは取材先3回、部内では4回程度チェックをして徹底的に推敲します。取材先のチェックは、「掲載してもよい内容か」「技術や事業に関する用語の選択や説明が正しいか」という点の確認で、非常に大事です。

 『東芝ライフ』は手に取って読んでもらえる社内報を目指して、従業員の活動や各事業の取り組みなどをわかりやすく紹介することを心がけています。制作方針は以下の6点です。

この方針・心がけに則り、従業員の活動や各事業の取り組みなどを紹介
この方針・心がけに則り、従業員の活動や各事業の取り組みなどをわかりやすく紹介

会社の未来を支える研究開発をわかりやすく伝えたい

 今回賞をいただいたのは2020年4月14日発行号の特集「先端技術で医療の未来を変える!? 東芝の『精密医療』」という企画です。「精密医療」とは東芝内での医療・治療分野の革新的な要素技術の総称です。9ページにおよぶこの特集は、世の中の注目を集めたマイクロRNA、独自の研究開発で事業化されている重粒子線治療装置、これから事業化を目指している生分解性リボソーム、コラーゲンシート、疾病予測といった技術を紹介し、将来有望な精密医療の社内周知を図りました。わずかな血液で早期に13種類のがんを検出できるマイクロRNAなど、普及すれば自分や家族、友人にも役立つ技術であるため、特にターゲットは限定せず、幅広い読者層を意識しました。

「社内報アワード2021」の「紙社内報部門でゴールド賞を受賞した企画の概要
「社内報アワード2021」の「紙社内報部門(特集・単発企画8ページ以上)」でゴールド賞を受賞した企画の概要

 企画背景は大きく分けて2つあります。

 1つ目は社会の反響。2019年11月に公表した経営方針で精密医療が注力領域に挙げられました。特にマイクロRNAは社会的に大きな反響があり、実用化に向け期待の声を多くいただいたことから、いち早く社内報で取り上げ従業員に紹介することにしました。

 2つ目は愛社精神の醸成です。昨今の経営環境の変化により、2016年に医療用画像診断装置事業を譲渡しており、医療関係の研究開発が続いていることを知らない従業員がほとんどでした。会社の未来を支える研究開発の成果を知り、より会社に愛着を持ってもらえるよう、研究開発に携わる技術者の熱い思いやエピソードを中学生でもわかる文章でわかりやすく解説しました。

技術ごとに綿密な取材を行い担当者がそれぞれの原稿を作成

ゴールド賞受賞企画:「先端技術で医療の未来を変える!? 東芝の『精密医療』」

 

 

 

 ページを追って内容をご紹介します。扉はパッと見で難しいと思われないように、ソフトなイラストを入れ、白い背景に大きめのスミ文字を配しシンプルにまとめました。右ページには担当部署の室長の思い、精密医療に対する社会からのポジティブな声を集めました。

 最初の技術紹介はマイクロRNAです。発表後国内外で大きな反響を呼び、社外からの取材依頼が殺到し担当者が対応に追われている状況でした。そこで、メディアの合同取材の日に合わせて私たちも研究所に行き、合間に『東芝ライフ』のために少し時間をもらい研究者から開発秘話などを聞きました。

 次の見開きは重粒子線がん治療装置です。重粒子線を細いビームにしてがんの病巣に照射することで体に負担をかけず、高い精度の治療を行うこの医療装置の設置を進めていた山形大学での写真を交えて紹介しました。頑張っている若手にフォーカスするだけでなく、がんセンターの先生からも当社製品についてお話を伺うことができ、より充実した紙面になったと思います。

 続く見開き左ページは生分解性リボソームです。治療の情報を組み込んだ遺伝子をがん細胞に運び、がん細胞の増殖を抑制、死滅する治療法は、抗がん剤治療や放射線治療が効かないがんにも高い効果が期待されます。一般的には治療用遺伝子の運搬にウイルスが使われますが、当社は工業的に量産でき、安全性も高い生分解性リボソームの研究に取り組んでいます。川崎の研究開発センターで粛々と研究開発を続ける研究者にインタビューしました。

 右ページは精密医療向けコラーゲンシートで、企画担当者が社内の技術展を訪れたときに、ぜひ『東芝ライフ』で紹介したいと強く思ったテーマです。独自の方法で、熱を使わずにナノファイバーが形成されるため劣化しないという利点があり、人工皮膚などへの活用が期待されています。

 最後のページは疾病リスク予測技術で、過去の健康診断データを用いて将来的な生活習慣病リスクを予測するためのアルゴリズム開発を行っています。協力に同意した従業員のゲノムデータと数年分の健康診断結果などを含むデータベースの作成、分析基盤の構築を進めています。最後に当社の産業医に東芝の技術が医療現場にもたらす可能性についてインタビューを行いました。

推敲を重ねてわかりやすさをとことん追求

企画上工夫したポイント

  1. 難しい技術の話と敬遠されないように
     →デザインの工夫(ソフトなイラスト、白地に大きめの文字で統一しシンプルに
  2. 未来の技術があることがモチベーションにつながるように
     →登場人物の工夫(なるべく多くの従業員、特に若手が登場、実際に製品を使用している医療現場の人も取材)

 この企画は情報収集時点から非常に労力をかけました。企画担当者が技術内容を理解するために各拠点の社内展示会に足を運び、情報収集・予習をしました。取材は企画書の着手から4カ月かけて7拠点を訪ねています。

 原稿作成は特に大変でした。他のメンバーが初見で理解できる文章を目指して書く、それをブラッシュアップするという2段階体制で臨みましたが、苦労の連続でした。技術者はどうしても専門的な説明になりがちで、取材中はわかったつもりでも、いざ原稿に起こそうとすると疑問点がたくさん出てきます。原稿を書く段階で取材対象者にこちらの理解が正しいかなどの確認を行い、うやむやな要素を一切残さずに書き上げることを意識しました。

 ブラッシュアップ段階では、前提知識のないメンバーが初見で理解できる状態になるまで何度も何度も推敲を重ねました。当初は単語だったものを文章に置き換えわかりやすくし、そのため増えた文字数をどこかを削って調整するという作業を何度も繰り返しました。今回の「社内報アワード」でゴールド賞受賞のご連絡をいただいたときには、担当者も他のメンバーも、まずその苦労を思い出して感慨深かったです。

 このように手がかかった企画ではありますが、発行すると従業員から多くの前向きな感想が寄せられ、制作メンバー一同、達成感を得ることができました。具体的な反応、読者のニーズを技術者に伝えることで開発に生かしてもらうこともでき、社内報の役割を少しは果たせたと手応えを感じています。

苦労した分、掲載後の反響の大きさに達成感・手応えを感じた!
苦労した分、掲載後の反響の大きさに達成感・手応えを感じることができた!

 

 

  • グループ社内報『東芝ライフ』概要      
  • 創刊:1948年 
  • 発行部数:約55,000部
  • 仕様:A4判、4色、28ページ程度
  • 発行頻度:年4回
  • 会社情報URL https://www.global.toshiba/jp

 


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