2019年10月16日に開催した「社内報アワード2019 表彰&ナレッジ共有イベント」では、上位入賞を果たした優秀企業9社にプレゼンターとなっていただき、「社内報制作の事例発表」を行いました。「社内報ナビ」では、各社の発表内容をご紹介していきます。
第7回は、トヨタグループの主要企業である豊田合成株式会社です。今回、連載・常設企画部門でゴールド賞を受賞した「改善の知恵」は、昨年グループ報化された月刊『TG NEWS』の人気企画。生産体制の伝承を目指したという企画の背景と、グローバル化を重点テーマに掲げるインターナル・コミュニケーションの方向性を、総務部 広報室の丹羽 由香利さんが紹介しました。
事業展開に合わせ、情報もグローバル化
当社は、自動車産業の世界進出に伴ってグローバル化が進み、現在18カ国に67のグループ会社を展開しています。売上の約5割、従業員数の約8割が海外グループ会社という状況のため、事業の主戦場は海外にあると言ってもいいでしょう。
そんな中、国内外のグループ会社に情報共有を図り、全社をタテ・ヨコ・ナナメにつなげる社内報の果たす役割は、ますます高まっています。そのため近年、重要テーマとして掲げているのは、インターナルコミュニケーション・ツールの「グローバル化」。
現在、紙の社内報、イントラなど6つある媒体のうち、3つをグローバル対応にし、各社に情報が行きわたるように努めていますが、その中でも特に、世界各地で増え続ける新しい従業員に対し、「TG SPIRIT」と呼ぶ当社グループの価値観を伝え、徹底を図ることに注力しています。
当社の取り組みで特徴的な点は、全グループ会社の約8割が独自の自社社内報を制作していること。海外では一般に「社内報文化」はありませんが、各拠点の長は日本人が多いため、社内報の重要性を理解し、情報共有ツールとして取り入れています。その発刊支援も私たち広報室の仕事。最初に目的や作り方などを教え、その後は各地で制作してもらうという体制を取っています。
グループ会社を巻き込んだ社内報づくり
6つの媒体のうち、中心となっているのは、毎月発行している『TG NEWS』です。
当社の社内報の歴史は、1957年に創刊した『TG TIMES』を起源としていますが、2014年にそこから枝分かれする形で分離を図り、現在は速報性のあるニュースは『TG NEWS』(グローバル対応)、年4回テーマを深掘りして届けるのが『TG TIMES』(日本語のみ)と役割を分け、2本立てで展開しています。
編集体制の特徴としては、下記の2点があります。
編集体制の特徴
●経営トップ・グループ各社を巻き込んだ制作
毎月実施する編集会議では、担当役員を含む全メンバーが集結し、内容や伝え方、情報に漏れがないかなどを話し合う。
●通信員制度
豊田合成60部門、海外50社、国内20社を網羅した130人に及ぶ通信員は、ニュースソースとして欠かせない存在となっている。
編集方針は、毎年発表される経営方針に沿って設定していますが、昨年、中長期経営計画「TG2025事業計画」が策定されました。
自動車産業は今、自動運転技術の発展による運転形態の変化など大変革期を迎えていますが、その中で当社が事業成長を続けていくために取り組むべき課題をまとめたこの中長期経営計画は、非常に重要なものと位置付けられています。さらに今年は、毎年設定されるスローガンとして、「圧倒的なスピード感で実行」も掲げられました。
それを受けて、私たちは3つの編集方針を策定しました。
3つの編集方針
①中長期経営計画とスローガンの理解・浸透
②ものづくりの心得や技能の伝承
③社内報の輪づくり
見やすさ・分かりやすさにフォーカス
今回ゴールド賞をいただいた企画「改善の知恵」は、このうちの②を狙いとした企画です。
「カイゼン」の言葉と概念は、トヨタグループの生産方式として広く知られていますが、同社でもその方針に基づき、古くから改善活動が行われてきました。内容は、全従業員が毎月改善計画を提出し、チームや係で職場の仕事の進め方を変えていくというもの。また、その好事例を全社大会で表彰するという仕組みも定着しています。
本企画は、そうした優秀事例を社内報でも掲載し、「改善の輪」をグループ全体に広げることで、全社の改善力向上を後押ししたいという思いから生まれました。
工夫した点は、大きく4つです。
「改善の知恵」で工夫した点
①写真や図の多用
お金をかけず、自らの手で工夫した点を評価基準としたため、見た目的には一見地味なものが多いことがその理由です。ポイントをビジュアル化することで、ビフォーアフターが分かりやすく伝わるように配慮しました。
②ヒントの掲載
発想のきっかけや改善を成功させたポイントをまとめ、カコミにして目立たせています。
③改善効果を定量的に記載
削減時間や金額など、具体的な数字を出すことで訴求力を高めました。
④関係会社や部門など第三者のコメントを添える
これにより記事に客観性をもたらすことを実現。紹介された人が、より達成感を感じられるという副次的な効果も生まれました。
苦労した点は、機密情報が漏れないようにすることと、難しい専門用語が多いため、理解してもらうにはどうするかということ。前者は、関係各所へのチェックを徹底する、後者は注釈を付けたり、分かりやすい表現に言い換えるなどの工夫で解決を図りました。
改善活動は全社的な取り組みで関心も高いためか、本企画は読者にも非常に好評で、「職場に取り入れたい」「私たちの活動も紹介してほしい」といった声がたくさん寄せられました。特にうれしかったのは、海外からそうした要望が多かったこと。グローバル化の成果が実感として感じられ、また方向性の正しさも確信することができました。
今後については、グローバル化をさらに進展させることを目指しています。現状、英語のみの対応なのですが、中国語やスペイン語を母語とするグループ会社も多いので、まずはそれを実現すること。さらには、現在8割に留まる各社の社内報を全拠点に広げることも目標としているので、そのために必要な支援により一層力を注いでいきたいと思っています。
-
『TG NEWS』概要
創刊:2014年
仕様:月刊、6~8P
発行部数:1万部 - 『TG TIMES』概要
創刊:1957年
仕様:季刊、26~44P
発行部数:7,500部 - 会社情報
URL: https://www.toyoda-gosei.co.jp/
※ゴールド賞事例紹介、coming soon!(敬称略)
キヤノン㈱/ソフトバンク㈱
[関連記事もぜひご覧ください]