2019年10月16日に開催した「社内報アワード2019 表彰&ナレッジ共有イベント」では、上位入賞を果たした優秀企業9社にプレゼンターとなっていただき、「社内報制作の事例発表」を行いました。「社内報ナビ」では、各社の発表内容をご紹介していきます。
第1回は、株式会社リクルートホールディングスです。社内報界の“バイブル”的存在として知られる『かもめ』を発行する同社の事例発表には、多くの聴講者が集まりました。
目次
経営方針を浸透させ、その理念を従業員が体現できる土台作り
2012年4月、会社の分社化に伴い、社内報の位置づけは「グループ報」に変わりました。弊社は2000年後半からM&Aを進め、グローバルとIT事業の展開を加速し、国内外のグループ従業員数は約4万5000人、グループ企業数は352社となりました。さらに昨年、グループの経営理念が再整理され、グループ報ではその経営理念の理解・共感の促進に取り組んでいます。
2014年、株式公開した際に企業文化を「起業家精神・圧倒的な当事者意識・個の可能性に期待し合う場」と言語化し 、以降、コアなメッセージとしてグループ報で伝えていきました。
そういったなか、グループ経営理念を再整理した背景には、リクルートが大切にしている価値観を、もっと的確に表す英語にしないと、グローバルで伝えきれないという課題感が出てきました。そこで、経営理念の構造を見直し、Vision、Mission、Valuesの3階層に整理。日本語と同じ温度感で伝わるよう英訳にもこだわりました。
2019年度からは、この理解・共感を目指すこと、特にValuesのの体現者を増やすことを使命として、グループ報を制作しています。
過去の記事はアーカイブではなく、行動を促すサイトへ
グループ社内広報では3つのメディアを運営しています。
リクルートホールディングスの3つのメディア
(1) 『Recruit Group Times』
『週刊リクルート』(1963年9月スタート)で創業者が宣言した「経営者も新入社員も同じ情報を共有し、開かれたコミュニケーションを」との精神を受け継ぎながら、今はグループ報として『Recruit Group Times』と誌名を改め、リクルートグループの中長期戦略・重点テーマを、毎月メールマガジン形式で、英訳版を含めてグローバルに配信しています。
(2)『かもめ』
1971年8月の創刊当時から、経営と一線を画し、従業員の思いを伝え続けるメディアです。形式や方法は変えつつも、その精神を引き継ぎ、2019年度からは、グループ経営理念の理解・共感を主眼に、Valuesの体現者となるべく行動の後押しとなるよう作り込みをしています。
(3)『リクルートグループ報WEB』
2016年にオープンした独自サイトです。過去から現在までの社内報・グループ報メディア、周年誌、動画までを格納。コンセプトは「1万件から探せる、つながる! 人と組織の経験データベース」。2018年から検索サイトを強化。例えば、ワーキングマザーの営業が「営業/出産・育児」にチェックを入れて検索すると、それに関連した記事がヒットし、両立のヒントや先人の知恵を学べます。
単なるアーカイブではなく、一歩踏み出せる、アクションを起こさせることに注力して取り組んでいます。
軸のぶれない取材・誌面作りをするには
ゴールド賞を受賞した特集企画は、社外の企業様から学びを得ようと立案し、社外企業のご担当者と弊社従業員3人による3本の対談です。それぞれ“カスタマー”“クライアント”“従業員”から支持されている企業様にご協力いただきました。
企画の立案背景は次の通りです。
① 発行月に株主総会があり、社会の目を意識する時期であること
② 従業員アンケートのコメントや日々のヒアリングから「社外事例を知りたい」という声や「他社と比較して自分の事業・仕事はこれでいいのか」など漠然とした不安や危機感があること
企画化するにあたり、社外視点を従業員のモチベーションのドライバーとして置き、自身の仕事を客観的にかつ前向きに認識できていないという課題を解決すべく、他社の取り組み事例から学ばせてもらうことにしました。
合わせて、読後感も想定しました。読者に「他社はここまでやっているのか」「自事業や自分にこういう思想はなかった」という刺激と気づきを提供し、読者が「この観点でカスタマーを見て行こう」「営業スキルを磨こう」「働き方改革で〇〇を生かそう」といった気持ちを抱いたり、ヒントを得られたりすることを狙いにしました。
編集時は、トビラページ、各ページなど特集の全体像を、これまでの企画や雑誌を参考にしながら、レイアウトイメージとして事前に作成します。こうすることで、デザイナーとのやりとりや、従業員への取材依頼時も説明しやすく、チームメンバー同士の目線合わせもできます。
3本の対談は、異なるメンバーが取材・撮影しているので、トビラ用・中面用、それぞれどんな写真がほしいかを事前に決め、共有しておきました。写真だけでなく原稿フォーマットについても、「タイトル、小見出し、本文は一人称、文字数、本文に盛り込むべきポイント」など、厳格に定めました。読者に共感してもらえるよう、細部にまでこだわっています。
反響は大きく、誌面の言葉を引用して感想を寄せる人が多数でした。
特集企画の反響
- (現場第一主義に対して)現場を見聞きして自ら変わり続ける
- 現場を知ることで自身の成長にも直結すると実感
- (チーム営業にファシリテーターが求められていることに対して)今の営業組織に必要な力だと納得した
- (一人ひとりが正しく説明できることに対して)自分は果たしてそれができているか
- 会社に対する意識を高めようと確信した
- (企画全体に対して)業界は違えど参考になった
このような言葉から、従業員一人ひとりに気づきを与えるきっかけになれたかと思っています。
連載企画はテーマの重複を避け、汎用性の高いものを選択
連載・常設企画でゴールド賞をいただいた「リクルートの歩き方」は、中途入社者応援企画です。これも「生の声を集める」「チームで仕立てる」「共感で動かす」にこだわり制作しました。
弊社は中途入社者が6割、多い部門では7~8割をも占めます。入社半年までの人ほどグループ報を熟読し、企業文化やリクルートで求められている仕事の仕方を理解しようと努めていることが、ヒアリングを通じて分かりました。
一方で、リクルートの企業文化はハイコンテクストで理解するのが難しく、伝わりにくいこともあり、本企画は、企業文化のフィットを後押しする目的で誕生しました。
具体的な内容としては、中途入社1年未満の人と、すでに活躍している3年目以上の中途入社者との対談形式で、自分らしくリクルートで活躍していくための方法論やアドバイスをもらうというものです。
また、中途入社者の素直な疑問や、変えた方が良いこれまでの慣習など、暗黙知を開いていくことも大事、さらに中途入社者ならではの悩みも解決していこう、と企画を進めました。
読んだ後に「同じような悩みを抱えていて安心できた」「この方法を真似してみよう」など、共感と勇気を感じてもらえるような企画にしようと、チームで話し合いました。
そして、毎月この連載企画を回すために、本番の対談取材の前に、中途入社者にお悩みヒアリングを実施。悩んでいることを2~3聞き出し、「過去のテーマと重複しない」「他の人にも汎用性が高い」といった観点でお悩みを絞り込み、適する先輩を探しています。
企画書やページネーションは特集と同様、事前にすり合わせし、写真については「スペースがないので動きは小さいポージングで」など細かい点までディレクションします。
若手中途入社者からの反響が毎号多く、「参考になった」「焦らなくてもよいことをあらためて感じる機会になった」と、手応えのある企画に成長しています。
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グループ報『月刊かもめ』
創刊:1971年
発行部数:29,200部
仕様:B5版、4色、36ページ
発行頻度:月刊 - Webグループ報『リクルートグループ報WEB』
創刊:2016年
更新サイクル:週1回前後(1カ月に3~6回) - 会社情報
URL: https://recruit-holdings.co.jp/
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