『密かに想いを寄せていた隣のあの子へ、ある日終業とともに上司から「結婚おめでとう!」の言葉と花束が。周囲の大きな拍手と、花束を手にはにかむあの子。「知らなかったのは自分だけ……?」うなだれて席に戻り、何の気なしに数日前に配られた社内報をめくると、そこには幸せそうなあの子のドレス姿。そして相手は同期のライバル……』
昔のトレンディドラマで見た(?)光景ですね。社内報を読んでいた周囲は祝福モードだったのに、読んでいなかった彼は、心の準備も後手に回ってしまったようです。
……もちろん上記はフィクションですが、実際「結婚」は社内報の定番ネタとして広く扱われています。そこで今回は、社内報に結婚報告を掲載するときに気を付けたいことなどをまとめてみました。
目次
なぜ結婚報告を社内報に掲載しているの?
国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査、2015年実施)」によると、夫婦の出会いのきっかけについて、およそ3割が「職場や仕事」と答えています。
1990年代は「職場や仕事」がトップ。近年はSNSの普及などもあってか「学校で」「友人・兄弟を通じて」の出会いも増えましたが、「職場や仕事」は現在でもトップ3に入っています。
働き盛りに結婚というライフイベントを迎える人が多い上に、会社が出会いのきっかけを与えることも多い。となると、社内報で結婚報告をコンテンツ化して、社員の慶事を社内全体でお祝いするコミュニケーション方法がとられるのも、当然なのかもしれません。
結婚・出産ネタの人気は根強く、社内報ご担当者からも、「中面を開いてもらう誘引コンテンツ」として、目立つ表4(裏表紙)に置いているというお話もよく伺います。
社内報に掲載する社員の写真について、特に笑顔にこだわっていらっしゃる企業もありますが、人生の中でも最も喜ばしく幸せな笑顔の写真を掲載できる結婚・出産ネタは、やはり多くの企業にとって、社内報内のキラーコンテンツなのでしょう。
社内報で結婚報告、したい? したくない?
さて、情報化の進展にともない、またとりわけ2005年の個人情報保護法施行もきっかけとなり、社内報に掲載する個人情報についての考え方にも、変化が生まれてきました。
例えば、
- 性別(色分けなども)
- 血液型
- 生年月日・星座など
- 出身地・出身校
など、個人に対して先入観を与えることにつながりかねない情報の公表に、慎重になる企業が確実に増えています。
「結婚」に関しても同様で、社内報で結婚報告を掲載する際には、本人へ掲載許諾の確認を取るのは当然のこと、掲載する内容についても最大限配慮し、写真と名前(もしくはイニシャル)のみとする企業も少なからずあります。また近年、式を挙げない選択をするカップルが増えている傾向も踏まえ、「挙式・披露宴」を連想させがちな「結婚」という単語も避け、「入籍しました」などとする企業も。
個人情報やライフスタイルを尊重する流れの中で、掲載される社員の皆さんから、「プライベートをわざわざ報告したくない」「恥ずかしい」という声も聞かれます。
とは言え、結婚報告は間違いなく職場での話題のきっかけになり、社内のインターナルコミュニケーションに寄与することは確か。プライバシーにも配慮しつつ、社員が参加しやすい・参加したくなるコンテンツ設計を考えてみていただければと思います。
「もし自分がお願いされたら」も考える
こうした結婚報告のコンテンツを取り上げる際に、気をつけたいのは、掲載される当人とのコミュニケーションです。前述のように「わざわざ報告したくない」「恥ずかしい」という人がいる中で、重要なのは、結婚報告がどういった目的で、どういう効果を狙っているのかをきちんと伝えること。
目的や狙いが明確であれば、「それならひと肌脱ごうか」と納得も得られやすくなりますし、それに基づいてどんな素材を提供したらいいのか、協力する側も理解しやすくなります。
社内報のどのコンテンツでも同様ですが、「もし自分がお願いされたら」を考えてみましょう。「これまでみんなに掲載してもらっているから(とにかくください)」という空気では、協力しようという気持ちになりづらいですよね。
「定番企画ありき」で機械的に依頼するのではなく、企画趣旨や目的、プライバシーに配慮した掲載方法などについて丁寧に説明し、個別の「ああしたい・こうしたい」という相談に対しても柔軟な対処を心がけて、誰もが快く協力したくなるよう、ぜひ努めてください。
コンテンツ展開例
ここでいくつか、実際のコンテンツ展開例をご紹介してみましょう。
「結婚おめでとう」「入籍しました」など標準的結婚報告
●目的
結婚記事を話題提供の一環と位置づけた、インターナルコミュニケーションの活性化
●掲載内容(例)
①写真
挙式後であれば、お2人が正装した写真がベストです。ゲストに上司や同僚を招待している場合は、全員で写っているものもいいですね。
②部署/名前
社員については「○○部/苗字 名前さん」などとし、配偶者については下の名前のみ表記するのが一般的。社内結婚の場合は、配偶者にも部署名を入れます。また、旧姓を通称として使い続けるケースも多いので、旧姓もご紹介した方がいいかもしれません。ケースバイケースなので、ご本人に確認しましょう。
③ひとこと
可能であれば、さらなる話題提供や、周囲への感謝や決意の表明で心証を良くする(笑)ためにも、本人からのひとことはぜひ欲しいところ。自由記述では、協力くださる社員個々人により分量・情報量などを粒ぞろいにしづらいので、あえて「一言ずつ答えれば済むアンケート形式」とするのもありでしょう(①出会いのきっかけは? ②直してほしいところは?など)。
Web社内報上の社内トピックスページなどで(サラッと)紹介
●目的
結婚記事を話題提供の一環と位置づけた、インターナルコミュニケーションの活性化
他のトピックスに(あえて)紛れさせることで「知る人ぞ知る」「頻繁に見ていれば気づける」という形で展開
●掲載内容(例)
①新郎新婦・写真(社員のみでも可)
②新郎新婦・氏名(社員のみでも可)
③入籍日
④ひとこと
⑤社員の部署紹介(リンク)
⑥社員の担当業務紹介(リンク)
(職場結婚の場合)それぞれの上長を交えた四者対談
●目的
社内コミュニケーションが円滑な職場で、さらなる効果をもたらすエンタメネタとして
●掲載内容(例)
①四者対談
②四者集合写真
③新郎新婦写真(社外ならばどちらかでも可)
④新郎新婦氏名(社外ならばどちらかでも可)
⑤入籍日
⑥ひとこと
⑦新郎上長プロフィール
⑧新婦上長プロフィール
ブライダル企業の社内報コンテンツ
ここで少し視点を変えて、ブライダルを主事業とする社内報のコンテンツをご紹介。「社内報アワード2019」でブロンズ賞を受賞したアニヴェルセル株式会社のWeb社内報『LINKS!』では、次のようなコンテンツを掲載しています。
企画タイトル:【柏店】スタッフみんなで「結ぶ」結婚式
13店舗で事業展開する同社では、各店が独自のアイデアでさまざまな取り組みを行っています。読者アンケートで「他店の新しい取り組みを知りたい」という希望が多かったことから、それを叶える企画をスタート。柏店を取り上げた回では、「披露宴退場直後の新郎新婦を、スタッフ総出で拍手でお迎えし、2人にお祝いの挨拶をする」という同店オリジナルのサービスを紹介しました。
社内報のいわゆる「結婚企画」とは異なるものの、結婚したお2人をはじめ、式の参加者、スタッフと、みなさん「笑顔」という点は共通しています。
「結婚」ネタの取扱注意点・まとめ
さて、社内報にとって「結婚」ネタは定番かつ人気コンテンツではありますが、社員の皆さんのプライバシーに関わらざるを得ない分、取り扱いには注意が必要です。まとめると以下の通り。
〇社内報のいちコンテンツとして、明確な目的を持つこと
〇社員には無理のない範囲で素材提供の協力を依頼すること
〇本人への掲載可否確認のコミュニケーションを丁寧に行うこと
どんな社内報企画でも、社員登場企画は社内報のファンを増やす絶好のチャンス。特に「結婚」ネタは、表彰ごとなどと違って間口を広く参加していただけますから、なおさら「無理強いされず、行き届いたプライバシー配慮で、きちんとこちらの希望を聞いてくれた!」という好印象を醸し、見る側でも載る側でも、社内報ファンを獲得する機会にしましょう!
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