素材力を核に、絶え間ない技術革新で社会・産業の基盤づくりに貢献する非鉄金属メーカー・古河電気工業株式会社(古河電工)。創業から130年以上を経た現在では、100社を超えるグループ会社の総力を結集して、世界規模で成長を続けています。
そんな古河電工グループでは、グループ報『One Furukawa』とWebグループ報『Vision web』を柱にインターナルコミュニケーションの活性化に取り組んでいます。昨年の「社内報アワード」でブロンズ賞を受賞したグループ報の現在と課題について、ご担当者に伺いました。
会社の方針に足並みを揃え、グループ報へ転換
古河電工が単体の社内報からグループ報へと切り替えたのは、2013年。「グループ全体でグローバル化を推進する」という会社の方針にベクトルを合わせたのが、その理由です。それに伴い冊子名や企画を一新。その当時一番インパクトの大きかった変化は、外国語併記にしたことでした。
「視覚的にもグローバル化を印象付ける狙いがありました。当初は日英中の3カ国語併記でしたが、非常に読みづらく、内容の充実も難しくなってしまったため、途中から日英の2カ国語併記に、さらに昨年からは日英でページを分けるようにしました」
と経緯を説明するのは、編集を1人で担当している尾﨑 優子さん。外国語併記にしたことで制作にかかる時間も労力も増えましたが、次第に進行のコツをつかみ、ある程度記事が固まったらレイアウトを待たずに社内チェックや翻訳・ネイティブチェックに回すなど、効率アップできるようになったそうです。
手間ひまかけた「歴史モノ」でグループの一体感を醸成
グローバル報への移行は、ネタ選びにも影響を及ぼしました。配布対象をグループ全体へと広げたため、かえって掲載できる内容が「グループ全体に告知すべきこと」に限られてしまうこととなり、企画には毎回頭を悩ませているそうです。
「例えば、社内報なら定番の新入社員紹介企画も、グループ報では難しくなりました。年2回発行していますが、グループ全体で14ある事業部や各社の社内表彰者の紹介などを中心に、読者がまんべんなく楽しめる内容にしています」
グループ報になってから好評なのが、昨年から連載を開始し、2回目が出たばかりのシリーズ企画「古河電工の歴史」です。
「第1回は創業者の人物像を掘り下げたのですが、『こういうものを読みたかった』という声が多く寄せられました。古い写真や史料を探しださなければならず、手間も時間もかかる企画ですが、案外社内でも知られていない会社の歴史を周知させるのは、グループの一体感醸成につながります。手間以上の効果を実感しているので、今後も継続していきます。2回目の反響も楽しみです」
グループ報を補う目的で、Web社内報をスタート
このグループ報を補完するツールとして昨年スタートしたのが、Web社内報『Vision web』です。
「もともと電子(PDF)版のグループ報『Vision』をイントラサイト「広報の部屋」に公開していたのですが、それをリニューアルしてWeb社内報にしました。
これを機に、冊子状にまとめることにこだわらず、完成したコンテンツから順次公開する方法に変更し、情報をよりタイムリーに発信するようにしています。この『Vision web』では英語版も掲載し、バックナンバーをアーカイブしています」
と尾﨑さん。
加えて、グループ報では掲載しきれない情報を扱うのも『Vision web』の役目。
「例えば、『社長の部屋』というページ。親しみを感じてもらうために、社長の行動を日記形式で公開するコーナーもあるんですよ。また、イントラではグループ会社や各部門が個別に情報発信を行っているので、『Vision web』内にはそこにダイレクトに飛べるようにリンクを貼っています。グループ内それぞれのコンテンツを気軽に見に行ける窓口のような場所があれば便利だな、という思いから始めました」
最近では『広報のつぶやき』というブログを開始。頻々と発信するうちに本編より楽しみにしてくれる人も増え、
「予想以上の反響で驚いています!」
尾﨑さんの笑顔が輝きました。
信条は「プロの素人になれ」難解な技術を分かりやすく紹介
グループ報は、グループ内の制作会社・古河テクノリサーチにデザインや更新作業は依頼しているものの、企画から撮影、記事の執筆まで、編集は尾﨑さんが一人ですべて担当しています。そのため、常に時間に追われ、余裕はまったくありません。
「とにかく時間が足りない! 体が2つほしい!! どの作業も予想より時間がかかることが多く、スケジューリングは本当に苦労しています」
さらに、一人体制ならではのお悩みも。
「企画立案や取材相手の選定などをすべて自分の裁量で決められるという自由度の高さはありがたいのですが、裏を返せば、意見交換する相手もいない孤独な状況。もちろん上司には相談しますが、『これで大丈夫だろうか』という不安は常にあります」
そんな不安を解消するために心がけているのが、多くの人とコミュニケーションを取り、情報を集めること。新たな企画を思いついた時には、それについて詳しい人や担当部署の人に相談し、そこから得た情報で、その企画が的を射ているかどうか判断しているそうです。毎年、社長が工場を回るツアーに同行したり、社内の研究発表会や展示会を取材する機会があるので、それらを、人脈を広げ、情報収集する場として活用しているとのことです。
また、編集にあたっては、「読む人の視点を忘れない」ことを心がけているそう。
「当社の場合は特に、専門的な技術を要する部署が多いため難解な話になりがちで、それをそのまま紹介しても別部署の人にはなかなか理解できません。グループの誰が読んでも理解できるように、“フラットな目線”を忘れずに、難しい話はかみくだいて表現するよう気を付けています。
前任の広報部長からもらった『プロの素人になれ』という言葉が、私の信条です」
スケジュールを上手に調整しタイムリーな発信を目指す
IR広報部に異動して、今年で5年目を迎える尾﨑さん。今後の課題は「計画的な進行」だと話します。
「未だ計画通りにできたことがないので(笑)。特に立ち上がって間もない『Vision web』は、いかにタイムリーに発信できるか、スケジュールの調整が最大の課題です。あとは、急ぎの案件に押されて自分のやりたい企画が後回しになっているので、それをぜひ実現したいですね」
また年2回の『One Furukawa』の発行を「せめて3回にしたい」という目標も。
「紙のグループ報は、製造現場などのパソコンを持たない従業員にとって大切な情報源なので、もう少し発行頻度を上げないと。その第一歩として、現状のメインコンテンツである社内表彰者の紹介を切り離して、『表彰号』とする計画を立てているところです」
「内容をもっともっと充実させるために、いろいろなことにトライしていきたい」
と尾﨑さん。
「当社はB to B業態のため、部門外秘など、公表できないネタが多いのが現実です。それでも、少しでも読んでためになり、楽しめる情報を発信したいと思っています。そのためには、公表可能となる瞬間のネタをつかむこと。例えば、社外メディアに露出しようとしている情報をうまくすくい上げるといった工夫を凝らしていきたい。グループ報担当になってあっという間に4年半が経ちましたが、これまで以上に人にスポットを当てる企画など、まだまだ挑戦したいことはたくさんあります」
グループ全体に役立つ企画を実現するために。尾﨑さんの奮闘は続きます。
-
グループ報『One Furukawa』
創刊:2013年
発行部数:6,000部
仕様:A4版、4色、20〜40ページ
発行頻度:年2回
- Webグループ報『Vision web』
創刊:2018年
更新サイクル:およそ2週に1回 -
会社情報
URL: www.furukawa.co.jp
[関連記事はこちら]