社内報担当になると、企画を考えたり、取材をして原稿を書いたりと、担当前とは全く違うタイプの業務に取り組むことがあります。その中でも「ラフ」というものに初めて出合い、これにてこずる方は多いようです。絵心のなさを自覚している場合は、なおさらかもしれません。「どうしてラフは必要なのかな? 文字で説明じゃダメなの?」「うまく描くコツってあるのかな?」とお悩みの方……、その答えをズバリお教えします!
目次
なぜ「ラフ」が必要? 答えは“設計図”だから
ラフというのは、いわば企画を誌面に落とし込むための“設計図”です。
ざっくり分けると、社内報制作におけるラフには2種類あります。1つは、編集会議などで提案するためのもの。もう1つは、デザイナーに誌面イメージを伝えるためのもの。
前者の場合は、編集会議は社内報の発行目的や読者ターゲット、社内情報といった情報共有がある程度できているため、かなり簡略化したラフでも、どういう企画を実施したいのかが伝わると思います。
編集会議などで提案するためのラフ
編集会議用に、「新社屋完成記念特集企画の見開きページ」として描いたラフ。企画内容やその目的などをまとめたテキストと一緒に提示し、補足説明をしながら提案するなら、このくらいのラフで意図は伝わります
後者(デザイナーに誌面イメージを伝えるためのもの)の場合は、もう少し具体的な内容のラフが必要となります。編集会議で企画内容が決まり、取材や原稿執筆、写真撮影も終わっているタイミングとなるので、見出しやメインビジュアル、コラムがあるなら枠のサイズ感や数などがわかるように作りましょう。
この時、ラフを描く用紙は実寸をお勧めします。「ラフではきれいに収まっていたのに、実際にデザインを組んでみたら文字があふれてしまった」「写真が希望のサイズよりもだいぶ小さくなってしまった」など、実際のサイズと違う用紙だと、そんな予想外の出来事が起こりがちだからです。
「絵には自信がないし、ラフの代わりに文字で説明するほうが伝わりそう」 とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんね。でも、最初に書いたように、ラフは“設計図”です。これを考えると、文字を連ねて説明するよりビジュアルにするほうが、より具体的にイメージできることがご理解いただけると思います。
「何を伝えたいのか」がわかれば合格!
では、デザイナーに誌面イメージを伝えるためのラフの一例を見てみましょう。企画内容は、先ほどご紹介した「新社屋完成記念特集企画」と同じですが、編集会議を経て、「社長メッセージとフロア解説より、新社屋完成プロジェクト担当者の対談のほうが、移転の目的や苦労・工夫点が伝わり、従業員に興味を持ってもらえるだろう」ということになり、それに沿ったラフに描き直した、という想定です。
デザイナーに誌面イメージを伝えるためのラフ
- 対談であることを示すために、プロジェクト担当者2名が話している写真をタイトル周りに置く
- 小見出しや原稿の文字量など、補足情報は赤字で記入する
- 新本社の特徴を伝える写真を左側にまとめる。キャプションで注目ポイントを解説
- 写真を入れたい位置は四角にしておけばOK。後送素材があれば明記する
- テキストはアルファベットのZを描けば横書き、横に倒したZを描けば縦書き
これも手描きラフですが、「このページで何を伝えたいのか」は十分わかります。そして、絵に苦手意識がある方でも、「これなら自分にも描けそう!」と心のハードルが下がったのでは? ラフは、美術の授業でお手本にされるような“作品”である必要は全くなく、「このページで何を伝えたいのか」がデザイナーに伝われば、それで合格。そのラフはしっかり役目を果たしているのです。
デザイナーによっては、「エクセルやパワーポイントで作るより、手描きラフのほうがありがたい」という方もいますが、デジタル化にますます拍車がかかるこのご時世、編集者の思いや強調したいポイントがしっかり伝わるならば、どちらでも問題ないでしょう。
ただ、エクセルやパワーポイントで作ったデジタルなラフには、注意が必要です。ラフに実際の原稿や写真を入れ込んでも、デザイン誌面に収まるとは限らない、という点です。
エクセルやパワーポイントで作ったラフと実際のデザインでは、フォントや文字サイズ、文字詰め、行間などが違うために起こることで、デザイン後にそれを修正するとなると、原稿の文字数カットやデザイン調整という想定外の工程が発生し、全体の進捗に影響が出かねません。
そんなことにならないために、ラフには原稿を入れ込むより、「原稿●文字」といった指示を記入するほうがよいでしょう。デザイナーが原稿を流し込んでみて「多すぎて収まりきらない」となったら、制作途中で相談があるはずですし、そういうやり取りができる関係づくりを日頃から行っておくことが重要です。
なんだかんだで、手描きがラクちん♪
伝えたいことがきちんと伝わるなら、ラフは手描きでもデジタルでもどちらでもかまわないというのは先述の通りですが、実際のところ、慣れてしまうと手描きが一番ラクかもしれません。例えばA4判の社内報の見開きのラフなら、そのサイズの紙(ノートでもコピー用紙でもなんでもOK)2枚を用意して、例に示したような要素を書き込んでいくだけで終わります。人のイラストは、線で描いたいわゆる棒人間でも大丈夫です。
同じ要素のラフをエクセルやパワーポイントで作ろうとすると、人が入るとわかるようにダミーイラストを探したり、図形を組み合わせてそれらしいシルエットを作ったりと、意外と手間がかかります。写真も、手描きなら四角を描けば済むところを、なぜか実際の画像を入れたくなったりするものです。そうこうするうちに、必要以上にどんどん作り込んでしまい、結果的に、先に書いたような“エクセルやパワーポイントのラフの落とし穴”にはまっていきがち……。
といったことを考えると、慣れてしまえば手描きラフがラクかもしれません。
ラフを元にデザイナーと密なコミュニケーションを
さて、デザインを依頼するときに怠ってはならないことは、ラフを元にデザイナーと密なコミュニケーションを取ることです。例示した手描きラフでは色などの指定はしていませんが、「幅広い年齢層の社員が見るので、ビジネス誌のような落ち着いたイメージで」「若い社員に関心を持ってほしい企画なので、ポップでにぎやかな感じに」などを伝えれば、仕上がりイメージを共有できるはずです。
また、ラフを忠実に再現してほしい場合(役職などによりスペースの取り方に暗黙のルールがある場合など)や、あるいは逆にラフは参考程度で、要素を押さえてあれば自由にアレンジOKなどの“さじ加減”の共通認識を先に図るようにすることも大切です。
構成要素をラフに描き出し、イメージをきちんと伝えれば、デザイナーはイメージを膨らませて、きっと素敵なデザインを考えてくれるはず。それを企画ごとに繰り返していけば、あなたのラフ描きスキルがアップするのはもちろん、デザイナーとの関係構築とイメージ共有が進み、いずれは阿吽(あうん)の呼吸で誌面作りができるようになりますよ!
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