社内報で発信された社内の課題を自分ごととして受け止め、理解し、行動の質を上げると、成果が生まれるとともに仕事へのやりがいや満足感が得られるようになり、それが企業の競争力強化や企業価値の向上につながっていきます。では、社内報を“自分ごと”として読んでもらうためには、どうすればいいのでしょうか。多くのご担当者が工夫を凝らす“自分ごと化”問題について、考えてみました。
読者ターゲットを明確にすることが大前提
どうすれば、社内報を読んで“自分ごと化”してもらえるのでしょうか……。
一つ、どの企業にも当てはまる対策があります。それは、社内報のターゲットの明確化です。例えば、経営に関する情報を企画化するなら、管理職をターゲットにした社内報で発信するほうが、自分ごと化される確率は高くなります。「うちの会社は、パートや派遣を含めた全従業員に配布しているから、みんなに自分ごととして考えてほしいんですよね」という企業が多いのは存じています。
ですが、経営に関する企画を、パート従業員に自分ごととして受け止めてもらうのは、なかなかハードルが高いと思われます。管理職が経営や会社の方針を理解し、それを反映した具体的な施策を部下へ伝えていく、といった流れのほうが広く深く伝わるのではないでしょうか。
理想は、管理職向け、一般従業員向け、技術系向けなど、読者ターゲットごとに社内報を分けて発行し、同じ内容でもターゲットに適した編集(取材の人選やデザイン、情報の伝え方など)をすることです。ただ、予算やマンパワーの問題があり、そうはいかないということも多いと思います。
そういう場合は、企画ごとに読者ターゲットを変えて、そのターゲットが自分ごと化するような編集を試みましょう。「中期経営計画を伝える」という企画でも、マネジャー層が対象とパート従業員が対象では、伝える情報の精査や見せ方は、まったく異なるはず。つまり、「読者ターゲットの細分化」が自分ごと化促進の一つの施策となるのです。
この方法は、紙社内報より、Web/アプリ社内報のほうが実現しやすいと思われます。読者ターゲットごとに別媒体として発行しなくても、タグなどで対象読者を明確に提示することで、「誰に伝えたい企画か」がはっきりするからです。読者とすれば、「この記事は読んでおかないと」「これは、自分とは遠い話かな」と判断でき、必要な情報を選んで読む分、腹落ちしやすくなるのではないでしょうか。
企画で使える、自分ごと化するための仕掛け
ここからは、誌面やコンテンツでの具体的な工夫についてです。これまで社内報ナビで収集した情報を基に、自分ごと化を促すコツをお伝えします。
社員をたくさん登場させる
自身が知っている人や憧れの先輩などが登場すると、企画内容を身近に感じてもらうことができます。さらに、語っている内容に刺激を受け、自分ごと化しやすくなります。
特に若手は経験が浅い分、会社の方針と自分の業務を結び付けて考えづらいので、インタビューやアンケートなどに答えてもらう場面で若手社員に登場してもらうと、同じ年代の読者に自分ごととして考えてもらう機会を生み出すことにつながります。
ジャストタイミング&アフターフォロー
経営理念や中計など、ぜがひでも理解してほしいトピックスは、発表直後だけの企画化で終わらせず、半年後・1年後など、アフターフォロー的な企画を実施して、進捗状況などを伝え、理解を促しましょう。
イベントをフックに、グループワークや座談会を開催
ターゲット読者が興味を示しそうなイベントを仕掛けてみましょう。
例えば、映画鑑賞会や、著名人による講演会、社長との対話イベントなど(コロナ禍の今はオンラインで)。そのイベント後に、従業員によるグループワークや座談会を開催し、その様子をレポートすると、読者の興味が喚起され、自分ごと化が進みます。
チェックリスト
例えば中期経営計画をテーマにした企画は、グループ全体・企業全体におよぶスケールの大きな話となりがちで、読者は距離を感じやすくなります。それを現場目線に落とし込めるよう、細分化したチェックリストを作成して載せてみるのも一案です。チェックすることで、頭の中が整理されるとともに、きちんと理解できているかを自分で確認できるようになります。読者参加型の仕掛けで、自分ごと化を図るのです。
顧客の声を掲載する
B to Cのサービス業の場合、お客様の声が、現場で働く従業員に一番響いたりします。サービス向上を訴求する企画はもちろんのこと、経営方針・理念関連の企画でも、お客様の声をうまく絡めることで、単なるトップダウンの発信より腹落ち効果が期待できます。
誌面構成を、“森→木→枝→葉”としてみる
難しい話、壮大な話題を扱う企画で理解を促し自分ごと化へと導くには、大枠(概要)から始めて、次第に核心へ絞り込むという展開が効果的です。自分とは別世界と思っていた話が、だんだん身近になり、最終的には自分ごと化する、というストーリー展開です。
扱うテーマは、SDGsやサステナビリティ、多様性など、世界中で取り組まれている事柄が適しています。
[森→木→枝→葉と展開した好事例]
アソビゴコロのある、頼れる同僚のような社内報が グループの輪をつなぐ(カルビー株式会社)
インターナルコミュニケション・ツールを駆使する!
さて、ここまでは社内報で自分ごと化を促す方法を考えてきましたが、この問題は社内報という枠組みを超え、インターナルコミュニケーション(IC)の視点で考えるほうが効果的です。
これについて、経営理念や行動指針の浸透を例に、社内報総合研究所 所長の浪木 克文が解説します。
「理念」「行動指針」の浸透は、規模が拡大する企業にとって、とても重要な経営課題です。特に近年グローバル化を含め企業統合、M&Aが活発に行われてきました。規模拡大や、異なる文化風土の企業との統合で「自社らしさ」「強み」「DNA」が薄れ競争力を失ったという話もよく耳にします。
そこでICによる「理念」「行動指針」の浸透・自分ごと化がカギとなってきます。経営課題の解決は、広報だけでできるものではありません。関係する経営企画部、人事部、総務部などと連携し、各セクションでの役割を整理して取り組む必要があります。企業広報のインナーでの役割は、「社内報を制作する」ことから「インナーの複数のツールを駆使し、課題解決のプロデュースをする」というものに変化しているのです。
この3年で新たに注目されているツールだけでもSNS、アプリ、動画、ラジオ、オンラインイベントなどがあり、DXの推進とともにこれからも新たなツールがたくさん生まれてくるでしょう。自社のICに最適なツールを選択し「理念」「行動指針」の浸透・自分ごと化に効果的な企画・コンテンツを展開していく必要があります。
自分ごと化は、一朝一夕で実現できるものではありませんが、ICご担当者の努力と工夫で、少しずつ効果を出していくことは、必ずできます。従業員が、自社や仕事に関する事柄を自分ごと化できれば、会社に対する満足度や幸福度が上がり、仕事の成果が向上、その成果は共に働く仲間にも波及し、その好循環により会社は強くなっていきます。自分ごと化はその第一歩。さまざまなICツールと編集の工夫で、好循環サイクルを回していきましょう。
[編集部PickUp]
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