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【オンライン対談】不透明時代こそ、インターナルコミュニケーションが企業を救う

【オンライン対談】不透明時代こそ、インターナルコミュニケーションが企業を救うウィズ・コロナ時代がいつ終わるか、先が見えない今、インターナルコミュニケーション(以下、IC)は、企業によっては「こんなときだからこそ、注力すべき」と重要視され、また別の企業では経費削減の“スケープゴート”として扱われています。

不透明な時代に、ICはどんな役割を果たし、どこに向かっていくのでしょうか。多くの企業でインターナルコミュニケーション改善のコンサルティングを行う沢渡 あまね氏と、弊社代表の浪木が、オンラインで対談しました。そこから見えてきたものは、今に適したICのカタチと、インターナルコミュニケーション・プロデューサーへの期待でした。

(オンライン対談なので、メインカットはそれぞれ別撮りしたものです。沢渡さんからのご提供写真に合わせて背景画像をチョイス&浪木の写真を合成しました。オンライン取材の参考にしていただければ幸いです。オンライン取材の撮影についてはこちらもご覧ください)

 

【対談者】

沢渡 あまね
あまねキャリア工房 代表。
作家、業務プロセス/オフィスコミュニケーション改善士。浜松ワークスタイルLab所長。
350以上の企業/自治体/官公庁などで、働き方改革、マネジメント改革、組織変革の支援・講演・執筆・メディア出演を行う。著書『職場の科学』『ここはウォーターフォール市、アジャイル町』『IT人材が輝く職場 ダメになる職場』『職場の問題地図』『マネージャーの問題地図』ほか。
最新刊『バリューサイクル・マネジメント ~新しい時代へアップデートし続ける仕組みの作り方』(技術評論社)は4月30日に発売。趣味はダムめぐり。

 

 

浪木 克文
ウィズワークス株式会社 代表取締役社長 兼 CEO
1990年リクルート入社。人材部門の組織長として継続して高業績を上げる組織を実現。九州支社長として支社マネジメントも行う。その後、株式会社ゼロイン取締役社長、株式会社リンクイベントプロデュース取締役を経て2016年より現職。IC分野においての課題解決が得意。

社内報もメディアミックスの時代に

浪木 今回コロナ禍で働き方の多様化が一気に進みました。この1年、どんな変化を感じましたか?

沢渡 大きく分けて2つあります。1つは特性、強み、立場の違う人同士のコラボレーションの重要性がますます高まってきたということ。もう1つはリモートワークが進み、場所を共にしない人たちといかにコラボレーションしてパフォーマンスを発揮していくかが求められる時代になったということです。ICも離れた相手とのコミュニケーションをどうするかに向き合わざるを得ないと感じています。

浪木 社内報担当の皆さんから、休刊、合併号の話がありましたが、同時にICのツールが変わってきたという実感もありました。社内報の主役が、紙からWebへと逆転しようとしています。

沢渡 まさに、社内報ルネサンスですね。ITツールが身近になって、コンテンツ化しやすくなったことも、大きいですね。動画を撮るのは、以前はカメラやスタジオなど大ごとでしたが、今はインターネット会議を録画すればそのまま動画コンテンツになります。

浪木 Webになるとスマホで見たりするので、いかにコンパクトに、わかりやすく、タイムリーに伝えるかが重要になってきますね。

沢渡 紙はストック情報としてはすごく価値がありますが、一方で検索しにくい、関連情報を見つけにくいというデメリットもあります。紙だけに捉われるのではなく、さまざまなメディアの良いところを組み合わせるメディアミックスでICを捉える。組織の課題解決、イノベーション、ビジネスモデル変革など、それぞれの企業の経営課題の解決に資するコミュニケーションを作っていく方向に、我々はもっと進化する必要があると思います。

メディアミックスでICを捉える必要性を説く沢渡さん
メディアミックスでICを捉える必要性を説く沢渡さん。ちなみに背景は、大好きな秋葉(あきは)ダム

浪木 ICは経営課題、組織課題を解決するための手法で、特性の違うメディアを組み合わせながら会社のインフラになっていくということですね。

沢渡 例えば、工場だから、飲食だから、デジタルメディアは無理と考えるのではなく、ポータブルデバイスに適したコンテンツの発信をすればいい。最近は生産現場や飲食業や建築現場などでも、iPadなどのポータブルデバイスの活用が進みつつある企業も増えてきています。マルチメディアで社内報を作っていくことに伴って、旧来の社内報担当者からICプロデューサー(以下ICP)に進化していかなければなりません

コミュニケーションを作るという視点でアップデートを

浪木 表彰式や社員大会などの社内イベントをやる会社がこの10年増えていたんですが、コロナの影響でイベントもオンライン化しています。

沢渡 確かにオンラインイベントの需要は増えていますね。オンラインだからこそインタラクティブになる、チャット機能などを使って共感する相手を見つけやすくなった面もあります。そこでIC担当者は「デジタルを使って行動をデザインする」という発想を持ってほしい。コミュニケーションとは、行動をデザインすることだと思うんですね。きっかけやテーマを投げてコミュニケーションを生み出してほしい。

 「社内報」と言うと、従来の紙のメディア、せいぜいそれを電子化するくらいしか発想がいかない。ところが「IC」と考えると、マルチメディア化、多様化する世の中でどうコミュニケーションを作っていくのかという視点に変換できると思うんです。これがこれからの広報業界に求められるものではないでしょうか。

浪木 コロナ禍で、業態によっては赤字になってしまいました。歴史を振り返ると、社内報は経費削減の“スケープゴート”にされやすく、経営層から「社内報は本当に必要なのか」と問いただされる担当者も出てきます。ただ、この度のコロナ禍においては、「こんな時代だからこそ、ICが必要」という認識が浸透してきたのか、社内報の発行が短期間は止まったものの、完全に廃止という企業は多くはありませんでした。

沢渡 社内報を作ることが目的化してしまっている企業は、「もういらないよね」と経営側から言われたら、担当者の仕事そのものがなくなってしまいます。一方、コミュニケーションをつくっていくことが本来の課題だと考えを改めて、オンラインツールを充実させる、オンラインイベントを企画・運営するといったスキルを身に付け、その領域にシフトしてむしろ仕事が増えたという方も間違いなくいます。コミュニケーション方法をトレンドに合わせて見直していけるか、さらに社内報の先にある本来の目的を追いかけられるか、ここが分かれ目ではないかと思います。

浪木 経営環境が変われば組織課題も変わり、会社から出すメッセージも変わるのに、社内報の目的を見直していない会社は、発行すること自体が目的になってしまい、その結果、「なくてもいいんじゃないの?」という問いに答えられない。

経営環境が変われば組織課題も変わり、会社から出すメッセージも変わる。それに合わせて社内報の目的も見直すべき、と浪木
経営環境が変われば組織課題も変わり、会社から出すメッセージも変わる。それに合わせて社内報の目的も見直すべき、と浪木

沢渡 企業の成長ステージによって、組織の課題は間違いなく変わります。世の中の環境、要請も変わります。組織を成長に導くためのコミュニケーションとは何か、どんなコミュニケーションが必要なのかを常にアップデートしないと経営に資する広報組織にはなれない。世の中のテーマ、企業の経営課題に応えられる組織になるという姿勢で臨んでいきたいですね。

ICが組織変革のサイクルを回す

浪木 今年1月号の社内報120誌くらいを読んで、トップメッセージからキーワードを拾ってみたところ、「変化・変革」に関わるものが一番多かったんです。新たなビジネスモデル、事業プロセス改革など。次が「新型コロナ」と「働き方改革」。「事業基盤強化」「DX」「SDGs」と続きます。

沢渡 私がまとめた、組織のバリューサイクルの図をご覧ください。これは、私が最近企業の経営者やマネジメント向けの講演などで使用している図で、「働き方改革」「DX」「SDGs」などを立体的に関連づけて解説しています。

詳細は書籍『バリューサイクル・マネジメント』にて解説
組織に対するエンゲージメントを高め、方向感やビジョンに共感する人を集めるためのサイクルを作るのが、IC/出典:浜松ワークスタイルLab。詳細は書籍『バリューサイクル・マネジメント』にて解説

 どんな企業も一番上に「ビジネスモデル変革」がある。そのためにどうするか。多様な答えを持つ人材のコラボレーションが必要です。コラボレーションからのイノベーションが経営戦略および事業基盤としてますます重要性を増してきます。

 組織が、個人が、強みを研ぎ澄ましてブランディングしていく。得意、強み、困っていること、できることを発信し、未来の社員、他部署、お客さま、ビジネスパートナーなどのファンとつながる。どこを目指しているのか、何を改善しなくてはならないか。議論して成長する組織には、そこで働く人たちは成長実感を持つことが出来る。働く人たちの、組織に対するエンゲージメントが高まり、より方向感やビジョンに共感する人が集まる。このサイクルをいかにつくるか。そこで真価を発揮するのが、ICなのです。デジタルを駆使してさまざまな議論、受信/発信をしていく、動機付けをしていく、ビジョンニングをしていく――、こういったことで問題解決をしていく必要があると思っています。

浪木 ICの領域を担当する人のパフォーマンスが問われますね。

沢渡 そうです。私はこの資料で2つのことを伝えたいんです。1つ目は、ICはさまざまな現場の課題や経営課題を解決し得るということ。2つ目は、コラボレーション。IC担当者が他部門とコラボレーションすることで仕事そのものの価値を上げていくことが大事です。

ICPはトップ、社内、社外の代弁者に

ラボレーションにより仕事の質を高め、経営課題により資する働きをする
人事、総務、情報システムなど各スタッフ部門とコラボレーションし、それによって仕事の質を高め、経営課題により資する働きをするのが、「広報2.0」/出典:浜松ワークスタイルLab

沢渡 最近、「広報2.0」という話をよくしています。「広報1.0」は、社長だけがデカデカと登場する・マンネリ化した・誰も読まない社内報、外のメディアに対して受け身、社内に対して上から目線。こういう広報担当者、社内報担当者は、もういりません。

 これからは、社員と社長と社外の代弁者であることが求められます。社長メッセージを発信する、その伝え方を考える。社員はそれ対してどう思うか、どんな課題があると考えているかを代弁する。さらに社会から何が求められているか、どんな課題があるかなど社外の声を伝える。この3つの役割です。

 そのためにはメディアミックスでコミュニケーションをデザインしていく。ICPにはこういう役割が求められます。ただ、その実現は、広報単独では難しいこと。「広報2.0」では人事、総務、情報システムなど各スタッフ部門とコラボレーションし、それによって仕事の質を高め、経営課題により資する働きをする時代になると思います。

浪木 社外も含めて、自分が中心になって巻き込んでいくことが求められるわけですね。

沢渡 まさにコラボレーションのファシリテーターになれるかどうか。各部門のプロが一緒に悩んで、一緒に変わっていく、その方が組織のプレゼンスも間違いなく上がりますし、楽しいし、やりがいがあります。

浪木 社員がファンになっていないと、ブランド価値も上がっていきませんよね。

沢渡 ブランド価値をどう高めるかも広報の大きなミッションだと思います。SNSが発達すると社員が社外の人たちとのブランドタッチポイントになり得ますから、全社員=広報パーソンに、ブランドを維持向上させていくための振る舞い、考え方をきちんと教育する、そういうことも広報2.0では求められます。

 ひと言で言うと “IC Is Solution. ”。すぐに成果は出ないかもしれない。組織風土は時間をかけて作られるものですから。でも、確実に変化は生まれる。小さくていいので変化を生んで、その変化を承認する。最近意見交換が生まれるようになったね、よかったね。と社長に言ってもらう。それで企業カルチャーは間違いなく変わります。

ICPという言葉に市民権を与え、広めたい

浪木 2021年度の「社内報アワード」では、インターナルコミュニケーション・プロデューサー(ICP)部門を新設します。今までは社内報という「作品」「企画」を審査対象としてきましたが、この部門では社内報担当者、つまりインターナルコミュニケーション・プロデューサー(以下、ICP)の「取り組み」を審査します。例えば、自ら動いて社内の雰囲気を変えた、仕事へのモチベーションを上げたなど、仕事のプロセス自体を審査・評価します。

 社内報制作は大企業でも少人数でやっているケースが多く、壁にぶち当たりやすく苦労が多い割になかなか理解してもらえない、予算が取れないなど、自分たちの仕事の価値を実感することがあまりないのが現状と思います。そんなご担当者にスポットライトを当てるとともに、他社のIC担当者の「こんな壁に当たった時、こんなふうに乗り越えて、こんな成果が出た」という取り組み成果を共有することで、IC担当者を勇気づけ、挑戦する気持ちを高めたい。それにより、世の中全体のICを盛り上げたい、という思いでこの部門を創設しました。

沢渡 素晴らしいです。経営課題にどう向き合ったか、どうやって社員、社長、他部門の意識を変化させていったか、これができる人の価値はものすごく大きいと思います。皆さんの取り組みを、私もこの部門の審査員として拝見させていただきますまだ成果が出ていなくても、やってみて周りにどんな変化を生み出したか、自分自身がどんな変化をしたか、そういうものが見たいです。

浪木 1年、3年、5年くらいに時間軸を分けて募集しようと思っています。決勝大会はオンラインイベントでプレゼンしていただいて、視聴者投票もやっていこうと。

ICP部門は、活動内容を知るために専用の応募用紙を用意
インターナルコミュニケーション・プロデューサー(ICP)部門は、活動内容を知るために専用の応募用紙を用意。上記はその一例

沢渡 仕掛けで盛り上げるというのもICPの仕事ですから、我々もある意味試されているので、しっかりやっていきましょう。楽しみですね。

 仕事や職種に名前を付けることは大事なことですよね。社内広報と言うと、これまでの社内広報の動きしか期待されず、自分たちもそういう動きになってしまう。ところが、今日、お話ししてきたように、役割が変わってきた。新しい役割に名前を付けると市民権が得られ、学ぶ目標になる。ですから今回ICPという名前を付けたことはものすごく大きな変化です。全国でICP、ICP部門を名乗る人が増えてコミュニケーションがよくなれば、仕事そのものがアップデートされるはずです。皆さんに「私はICPだ」と名乗っていただき、新しい職種にしていきましょう。

浪木 同感です。たくさんの応募があり、名実ともに「ICP」が認知され、仕事内容がアップデートされることに期待しましょう。今日はありがとうございました。


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