2019年10月16日に開催した「社内報アワード2019 表彰&ナレッジ共有イベント」では、上位入賞を果たした優秀企業9社にプレゼンターとなっていただき、「社内報制作の事例発表」を行いました。「社内報ナビ」では、各社の発表内容をご紹介していきます。
第4回は、株式会社スタッフサービス・ホールディングス。「社内報アワード2019」ではWeb社内報部門でグランプリに輝きました。受賞企画実施に至った経緯や、インターナルコミュニケーションの要となるものについてお話しくださいました。
目次
SSGの広報~社内広報の活動ミッション
スタッフサービスグループ(以下、SSG)は、派遣事業を主軸に、職業紹介や請負などの人材サービスに携わる会社です。テレビCMで流れる「オー人事 オー人事」というフレーズは、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
グループ本部のスタッフサービス・ホールディングスの下に、事業部門とバックオフィスがあり、広報部はグループ本部に属しています。人員は6名で、構成は以下のとおりです。
- 部長、アシスタント
- アウター(社外広報:社外への情報発信・PR・メディア対応・リスク対応ほか)2名
- インナー(社内広報:社内への情報発信・意識調査・社内報発行・全社キックオフの企画運営ほか)2名
部の活動ミッションは、社内外のさまざまなコミュニケーション活動を通して、SSGのブランドイメージを向上させるというものです。その中で社内広報が担うべきは、「好ましい従業員マインドを醸成すること」。これをミッションとして私たちインナー担当は、紙・Webの社内報や社内イベント、マンガ壁新聞など多様なツールで情報を発信しています。
派遣事業に誇りを持てる従業員マインドの醸成
「好ましい従業員マインド」とは、すなわちSSGという会社や人材サービス事業、自分自身の仕事を「誇らしい」と思える気持ちを意味しています。
皆さんは人材派遣業に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか。
実は、当業界はネガティブな印象を持たれがちで、どうしたらそれを払拭できるのかということも、私たちの重要な課題なのです。
現在日本で働く派遣スタッフの数は約142万人で、雇用全体の2.5%を占めています。ここ15年間、その割合は変わらず、人材派遣業は、働きたい人と働き手が欲しい企業の橋渡し役として、たくさんのニーズに応えています。にも関わらず、そこで働く従業員は、なぜかそれを誇りに思えない、という現実があります。
広報部では定期的に経営層と話し、SSGの「ありたい姿」についてヒアリングしています。「誇り」というキーワードは、時の社長が「悲しいことに、SSGに勤務していることを知人に言えないという社員がいるようだ。“我々は社会にチャンスを提供する仕事をしている”ということに、誇りを持ってほしい」と話したことがきっかけで設定されました。私たちは、こういった経営層の思いを体現する方策について、その実現のプロセスも大切にしながら、じっくり考察しました。
「誇りの醸成プロセス」を図式化すると、まず、「知る・感じ取る」から「理解する・共感する」につながり、そこから「腹落ちする・自分事として捉える」さらに「体現者になる」と進みます。
インターナルコミュニケーションで特に大切なプロセスは「知る・感じ取る」と「理解する・共感する」です。これを繰り返し体感すると、「自分は良いことをしているのかも」と再認識できるようになります。
そこで私たちは、従業員が全社で起きていることを「知る・感じ取る」ことができるような、情報やイベント企画を発信しています。その活動事例の一つが、今回ゴールド賞を受賞したWeb社内報の企画でした。
「誇りの醸成」を大テーマに4テーマ展開のWeb社内報
Web社内報は毎週火曜日に発行しています。4つのテーマに大別して年間スケジュールを立てたうえで、前もって各号の企画を組んでいます。
4つのテーマ
[1]トップメッセージ〈掲載頻度:四半期に1回〉
社長が従業員に伝えたいことを私たちがヒアリングし、記事に仕上げます。そのほか、社長のプライベート情報なども紹介して親近感を持ってもらえるような仕立てにしています。
[2]社内情報の発信〈掲載頻度:月1回〉
社内のイベントや各事業部のニュースなどを、毎月いくつか紹介しています。加えて、全都道府県に事業所があるという特色を活かしたご当地自慢のコーナーも設け、人気を集めています。
[3]従業員紹介企画〈掲載頻度:月1回〉
3年前に始まった、輝く従業員を紹介する連載企画。今期は個々の「強み」に着目し、ストレングスファインダーという性格診断の結果を基にインタビューしています。登場者は、主に同僚や上司の推薦で決定。成績や役職ではわからない「人となり」が表出されると好評です。
[4]特集記事(各回ごとにテーマ設定 掲載頻度:月2回〉
「誇りの醸成」に基づいたテーマを毎回設定。従業員にとってプラスになるさまざまなエッセンスを取り入れます。全事業部の従業員に登場してもらうために、地方取材にも出向きます。
一部、ライティングのみ外部委託しているものがありますが、そのほかは担当者2名で分担し、すべて内製しています。
成功事例を基に仕事への誇りを再認識させる
今回ゴールド賞をいただいたのは、テーマ[4]特集記事の、「スタッフサービスグループの介在価値とは何だろう」です。
先ほどお話ししたように、派遣事業が一般的にあまり良いイメージを持たれていないことは、私たち従業員もわかっています。
しかし、人材派遣サービスの根幹は「人」。世の中には、自分の力だけでは理想の働き方を実現できない人、成長の機会を見つけられない人も、たくさんいます。私たちは、働きたい人と働く機会をつなぐ「チャンス」を提供しているのです。
日々当たり前に行っていることの価値は見えづらいもの。日常業務に忙殺されていると、なかなか気づけませんが、私たちは意義深い事業を行っているのです。この事実を、すべての従業員にわかってほしい。その思いから生まれた特集企画でした。
記事は、カスタマー・クライアントへのインタビューと担当営業者のコメントを主とした構成で、インタビューではSSGがどのようなお手伝いをさせていただいたか、またそれに対してどう感じられたかを伺いました。
例えば、引きこもり生活を10年続けたある男性のケースです。
この男性は、40代で自ら奮起して仕事を探されたものの、門前払いばかりが続き、心が折れそうになっていらしたとき、SSGの製造領域の求人に出合われたそうです。ご本人は半ば諦めていらしたようですが、弊社にお問い合わせをいただいた、その勇気を見過ごすことはできませんでした。
最初は経験不問の軽作業でしたが、弊社営業担当者は、男性がここ10年働いていらっしゃらないことから大事を取り、クライアントに掛け合って週3回の勤務からスタート。男性は一度も休むことなく、その後フルタイム勤務も可能となって、次の職場でも元気にご就業されています。
「最初は大変でしたが、働いて流す汗の気持ち良さを知れたのは御社のおかげです」という言葉は、取材した私にとっても、忘れられない宝物になりました。
社内の反響も大きく、読者アンケートでぎっしり書き込まれた回答が多かったことからも、手応えを感じました。
[社内の反響の一部]
● 我々の仕事の原点ですね。とても心に響き、一文字一文字、丁寧に読ませてもらいました。
●スタッフさんが仕事を楽しいと言ってくれて、頑張ってくださっていること、営業職として自分のことのようにうれしく思いました。
●普段は忘れがちな自分たちの介在価値について、あらためて考える貴重な機会になりました!
成功事例を基に仕事への誇りを再認識させる
私たちが社内広報、Web社内報を通じてミッションを実現していく中で、肝となるポイントをまとめると――
ミッションを実現していくためのポイント
- 自社に対する世間のイメージを知ること
ステークホルダーに対しておこなっているイメージ調査の結果などを、課題解決のための検討材料にしました。 - 経営層と議論してテーマを設定すること
定期的に経営層と会話し、従業員に「いま何を伝えたいのか」「会社としてどうなっていきたいか」という思いについてヒアリングをしました。 - インナー担当としての役割を決めること
ヒアリングしたことを、トップメッセージとして社長の言葉をただそのまま記事にするのではなく、その思いを織り込んだうえで従業員の心に響くような記事に仕上げることこそ、私たちの役割と考えました。
このように、私たちは、「経営層の思い」や「あるべき姿」を社内に発信することで、従業員一人ひとりがプラスαの思いを持てるよう、会社(経営層)と現場の橋渡しをしたいと思っています。
皆さんはどのような思いで社内報を発信されていますでしょうか。記事を通して従業員の皆さんに何を伝えたいでしょうか。ぜひあらためて考えてみていただければと思います。
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Web社内報『グループポータル トピックス記事』
創刊:2007年
更新サイクル:週に1~3回(月7~14回) - 会社情報
URL: https://www.staffservice.co.jp/
※ゴールド賞事例紹介、coming soon!(敬称略) オリンパス株式会社
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