「情報革命で人々を幸せに」を経営理念に掲げ、躍進を続けるソフトバンク株式会社。IT企業のトップランナーにふさわしく、動画による情報提供にもいち早く取り組み、2011年より営業支援のための動画番組『Biz TV』を制作。昨年の「社内報アワード2018」では、初の応募にしてシルバー賞に輝きました。1,000以上にも上る商材から重要な情報をピックアップし、日々の営業活動を後方からサポートする同番組の使命と制作の裏側を伺いました。
必要な情報をピックアップ、1つにまとめた最強ツール!?
法人営業を支えるツールとして生まれた『Biz TV』。そのため、社内広報の枠組みではなく、法人営業を管轄する法人マーケティング本部で運営しています。
現在は、週に1回(月曜)、2、3のトピックからなる『Biz TV NEWS』をベースに、月1回、1つのトピックを掘り下げた特番との2本立てで配信。スタイルは、テレビのニュース番組を意識し、キャスターを立て、営業担当者・企画担当者・プロモーション担当者はもちろん、管理職へのインタビューもふんだんに盛り込んでいます。
立ち上げに至った背景には、膨れ上がる商材数がありました。
「当社の法人部門は、一人の営業担当者がお客様に対してすべての商材を取り扱うスタイル。ですから、全製品に精通していないといけないのですが、当時は次々に新しいプロダクトやサービスが投入され、それらにまつわる情報があふれ返っている状態。最適な情報のピックアップが難しく、営業スキルや知識がバラバラという状況でした。
それを解決する手段として、これさえ見れば大体のことが掴める、という情報番組を展開することにしたのです」
と経緯を説明するのは、『Biz TV』の制作を手掛ける上野洋二さん。しかし、当初の内容は現在のものとはまったく異なり、パラパラ自動でめくれる資料にナレーションをかぶせた簡単なものでした。
「デジタル紙芝居」の声に発奮、大規模リニューアルを敢行
それでも、視聴率は90%以上あったそうですが、これにはからくりがあり、番組を企画した役員が視聴するよう指示していたからなのだとか。ところが、その役員が異動後、視聴率は60%にまで下落してしまいます。
そこで一から見直しを図ることに。まず取り組んだのが、営業担当者へのヒアリングでした。すると、「紙の資料などと情報が被る」「面白みがなくて眠くなる」などの意見が返ってきたといいます。
「流すだけではダメだと痛感しましたね。中でもこたえたのは、デジタル紙芝居みたい、という声。もっと営業担当者を惹きつけるものにしなければと奮起を促されました」
と話すのは、立ち上げ当初から制作に携わる中西和典さん。
そこからテレビのニュース番組をひたすら視聴し、研究に研究を重ねたといいます。
「見ていると、テロップにしても構成にしてもテンプレートがあることに気付きました。それを取り入れつつエンターテインメント性も加え、少しずつ現在の形に。走りながら考える、というのは当社の方針でもあるのですが、まさにそんな感じでした」
番組への出演はステイタス、今やなくてはならない存在に
リニューアルを敢行したのは、2013年。その後、番組は微調整を繰り返しながら進化し、役員の強制がない中、視聴率を以前の90%に戻しました。現在、制作は企画・撮影から編集・プロモーションまですべてを内製。上野さん、中西さんに加え、山本洋平さん、営業から異動した石山雅一さんの4人で行っています。
週1の『Biz TV NEWS』は、企画・撮影で1週間、編集に1週間かけ、2人ずつ2チームに分かれ、交互に担当。特番は、1人ずつ順に1本を担当しているそうです。
「毎週木曜に編成会議を行うのですが、その場で部長に承認をもらい、内容を固めてしまいます。翌日にはインタビューを打診し、翌週月火で撮影します」
と山本さん。かなりタイトなスケジュールですが、それを可能にしているのが、営業担当者が番組に寄せる信頼です。
「おかげさまで『Biz TV』に出ることがステイタスになっていて、出演に協力的なので助かっています」
と、自身も営業時代に出演経験がある石山さん。出演者の気持ちが分かるだけに、営業担当者が少しでも輝く番組作りを心がけていると語ります。
動画の特性を活かす編集と飽きさせない工夫が人気の秘密
制作をする上で最も大事にしているのは、「動画の特性を活かすこと」だと話すのは、中西さん。
「難しい内容を分かりやすく伝えられるのが動画の最大の特長。CGや図版、アニメーションを駆使するなどして、できる限り噛み砕いて表現することにこだわっています」。
加えて、動画である必要性を検証することも重要な要素だとか。
「動画で扱うべきネタかどうか、情報収集の段階から自分なりの基準を持って取捨選択するようにしています」。
4人の中でも一番ネタ集めが得意だという中西さん。コツを伺うと、「いろんな人と仲良くすること」と「集まってきやすい環境を作ること」との答えが返ってきました。その意味でも、部内でブランドが確立されていることは、大きな強み。1,000人を数える営業担当者だけでなく、営業以外の法人部門社員1,500人も視聴しているため、最近では、「番組で取り上げてほしい」とネタが持ち込まれることも増えているそうです。
もう一つ大切なこととして山本さんが挙げるのは、「飽きさせないこと」。『Biz TV NEWS』も特番も、1本の時間は5分以内がルール。動画としては比較的長めのため、起承転結を意識したり、視聴者が見慣れているテレビやYouTubeの要素を取り込むなど、目を惹きつける工夫は欠かせないといいます。
朝8時のメルマガで習慣付け、フィードバック機能で即反映も
高い視聴率を支えているのは、「作り」へのこだわりだけではありません。例えば、視聴を習慣付けるために行っているメルマガ。配信日の月曜には、朝8時に動画リンクを付与したメルマガを送り、通勤時間を利用して閲覧できるようにしています。
『Biz TV』のポータルサイトでは、「いいね!」ボタンやコメント機能で視聴者の反応を見える化しているほか、動画一つ一つに対して感想を寄せるアンケートフォームも設置。こうして得られた反響を分析して、番組作りに反映していることも、『Biz TV』が支持されるゆえんでしょう。
リニューアルから約5年が経ちますが、今のスタイルが好評のため、今後大きく変えることは考えていないとのこと。もう少しエンターテインメント性を上げたい気持ちはあるものの、営業支援という目的は見失いたくない、というのも大きな理由です。とはいえ、細かい部分でさらにブラッシュアップしていくのはもちろんのこと、特番では、少し広報色を打ち出したものもやってみたいとか。
「直接営業活動に関係はなくても、知っておいてほしい情報なども盛り込めたら。あとは、動画で情報発信するという文化が世間にもっと根付いてくれたらという希望があります」
と上野さん。そう語る背景には、同社が動画制作のプラットフォームを事業として展開していること、また『Biz TV』もその商材を使用しているため、内容についても詳しく教えてほしいという声が増えていることがあります。
「他社にプレゼンテーションする機会も増えているのですが、関心が高いなと感じますね」と手応えを口にします。『Biz TV』がインターナルコミュニケーションの世界に仕掛ける情報革命、その行方にも注目が集まります。
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動画『Biz TV』
創刊:2011年
発行頻度:毎週月曜
※特番は、毎月1回不定期 -
会社情報
URL:www.softbank.jp
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