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企業の方向性とインターナルコミュニケーションのベクトルを合わせる(東京地下鉄株式会社)

東京メトロ社内報編集部の皆様
前列左から三代さん、山本さん(おふたりは㈱メトロアドエージェンシー)、後列左から寺澤さん、宗利さん、川さん

首都東京の暮らしを「輸送」の面で支える鉄道会社。中でも今回ご紹介する東京地下鉄株式会社(東京メトログループ)が担うのは9路線179駅からなる東京の大動脈で、1日で約742万人が利用します。グループ理念に「東京を走らせる力」を掲げ、さまざまな安全対策やサービス施策とともに積極的にCMを展開。東京の価値向上と企業イメージ向上に力を入れています。

グループの従業員数は1万1,419人(2017年度末)。グループ報『めとろはーと』は、業務ごとの縦割りを越えて組織を一つにまとめる目的のもと1955年に創刊しました。高い公共性、深夜業務など、一般企業とは異なる点も多い同社ならではの苦労や留意点、目指すところなど、インターナルコミュニケーションの実態を伺いました。

「当たり前」は変化するもの、今の「当たり前」への理解を促す

 24時間眠らない鉄道。社員の大半が現場である鉄道会社の働き方は実に多様です。「一番の特徴はそこですね」と話すのは、広報部広報課長の宗利英二さん。「真夜中に働く社員も多く、当然、泊まり勤務もあります。そうした現場ではパソコンも少数しかないため、情報伝達は今もファクスが主流です」

 働く環境の特殊性から、紙文化が根強く残る同社。そのためインターナルコミュニケーションも冊子を重視し、36ページのボリュームで毎月発行しています。発行目的は、一体感の醸成、教育、働く動機付けの3つそして、これらを結びつけ、共通認識の再確認を図ることを編集方針としています。

課長の宗利さん
「紙文化が根強いからこそ、冊子の社内報を重視しています」(宗利さん)

 「要するに、全員に同じ方向を向かせたいということです。我々の仕事は、“当たり前”を作る仕事。事故がなくて当たり前、安全や安心を当たり前に提供しなければならないのですが、当たり前の概念は時代によって変わり続けます。だとしたら、今の当たり前を理解してもらう必要がありますし、世の中の動きを知っておいてもらわないといけない。同時に当たり前を提供し続けている仕事に対して誇りを持ってほしい。そういう意図を持って制作しています」

旬の企画を取り入れるために年間計画を取りやめに

 こうした意図が最も顕著に表れるのが、特集です。今、社員に知ってほしいこと、考えてほしいことを取り上げていますが、実は、今年度から企画の立て方を変えています。これまで年間で計画を立てていたのを、3カ月先までと、計画スパンを大幅に短縮したのです。「あまり先まで決めてしまうと、世の中の動きをキャッチした企画ができない」というのがその理由です。

 ちなみに編集担当者の中で掲げた今年度のテーマは「ざわつかせる」。読んで何かを感じたり、思ったりしてもらうことを狙っているとか。

 「社内報は自分でお金を払って買う市販誌と違って、究極、読まなくてもいいもの。かといって、『読んで』と押しつけるものでもない。その壁をいかに押し下げて興味を持ってもらうかが重要で、日々葛藤している部分なのですが、その意味でも、攻めた企画で心をざわつかせることが大事なのかなと思います」と話すのは、駅勤務から広報課に移って1年目の川康隆さん。

 例えば5月号では「社内のマナー」を取り上げ、大きな反響を呼びました。

マナー特集の誌面
社員のマナーを多角的に取り上げ、狙い通り“ざわつかせる”効果をあげた(クリックで拡大)

今年度から誌面をリニューアル。表紙で「変わった!」を印象付ける

 年間計画の廃止に加え、今年度は誌面のリニューアルにも踏み切りました。主な変更ポイントは2つ。一つは表紙で、写真をグループの集合写真から2、3人にフォーカスしたものに変えています。

 「職場のシーンを切り取った、カッコいい写真に変えました。カッコよさにこだわったのは、仕事への誇りを持ってもらいたいという、我々からのメッセージです」と、課長補佐の寺澤さん。

 「表紙を変えることで、変化を印象付けたかったというのも大きいです。というのも、最近は会社でも社会でも変化や挑戦という言葉が頻繁に言われ、社内報でもよくその言葉を使いますが、社内報自体に変化がなくては説得力がない、という考えもあって。おかげさまで評判は上々です」

 細かいところでは、表紙に記載していた目次をやめて特集タイトルだけを掲載することに。これには、期待感をあおってページをめくらせたい意図があります。

 もう一つの変更点は、サイズを一回り小さくしたこと。これは、家に持ち帰りやすいようにとの配慮から。

 「鉄道会社は変則的な勤務形態ということもあり、他の会社よりも家族の理解がより重要になってきます。でも、弊社の社員はどちらかというと会社のことをあまり話さないタイプが多いので、家族に直接社内報を見てもらって、会社を理解し安心してもらいたいのです」と理由を説明するのは、宗利さん、寺澤さんとともに編集を手がける川さん。

編集部の川さん
「社員の家族の方にも社内報を読んでもらい、会社のことを知ってほしいです」(川さん)

 リニューアルは4月号からですが、まだ十分とは言えないとのことで、7月号までかけて徐々に理想形に持っていくことが目下の課題と語ります。

意見の素早い吸い上げのために、イントラでのアンケートを導入

 今年度はさらに、長年温めていた計画も、実行に移すことができました。

 それは、アンケートをイントラから取れるようにしたこと。対象はパソコン環境のある社員のみではありますが、「効果は予想以上」と寺澤さん。

課長補佐の寺澤さん
「アンケートを導入した効果は予想以上でした」(寺澤さん)

 「意見の集約が早いので、アンケート企画がやりやすくなりましたし、気軽に書けるのか集まりもすごく良いです。5月号の『社内のマナー』企画でも実施したのですが、内容に幅と深みが出せました」と、そのメリットを語ります。

アンケートを活用した誌面
アンケート企画を組み込むことで、より深い情報の提供が可能に(クリックで拡大)

 読後のアンケートもこちらで取れるようになり、リアルな声が集まるようになったとか。

 「無記名なので本音が言えるのでしょうね。私たちの気付きにもなりますし、知らない情報も取れるようになったので、やって良かったと思います。ただ、アンケートを使った企画をあまり多用してもワンパターンになるため、要所要所で使いたいですね」

進化の歩みを止めず、読者が待ちわびる社内報に

 やりたいと考えていたことが、一つ一つ形になっている今年度。今後については、それをさらにブラッシュアップしていきたいといいます。

「改善すべきことはまだまだあります。イントラを使った参加型企画ももっと充実させたいですし、これからリニューアルの反応が返ってくると思うので、それを反映して、さらに良いものにしていきたいですね」と川さん。最終的には、読者が心待ちにするような冊子に育てたいと意気込みます。

編集会議の様子
編集部のスタッフのみでなく、外部スタッフも混じえて、頻繁に編集会議を行い、「今の会社に必要な企画」を生み出していきます

 グループ理念「東京を走らせる力」には、東京メトロに乗って出かけたいと思わせるような、楽しく、ワクワクする東京を作っていく、という意志が込められているとか。そして、これはそのまま同社の社内報作りにも当てはまります。社内を楽しく、ワクワクさせるために。『めとろはーと』は進化の歩みを止めないことでしょう。

 

  • グループ報『めとろはーと』
    創刊:1955
    発行部数:13,000
    仕様:A4版、4色、36ページ
    発行サイクル:月刊
  • 会社情報
    URL
    www.tokyometro.jp

 

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