Hondaグループの福利厚生の充実を目的として設立され、Hondaの発展とともに業容を拡大してきたホンダ開発株式会社。現在、約2,500人の従業員が、社員食堂の運営や、不動産の供給、海外出張のサポート、ホテルの運営など、幅広い事業を手掛ける一方、その高品質なサービスをグループ外のお客様にも提供しています。
組織としては全国7拠点とホテル、4つの海外現地法人で事業活動を展開していますが、そのインナーコミュニケーションを支える主軸のツールが社報『Kaihatsu』です。2018年新春号より誌面を一新。社報編集委員(通信員)制度も新たに導入し、生まれ変わった社報編集局にお話を伺いました。
リニューアルは「社報が現場で活用されていない」との問題意識から
社報『Kaihatsu』発行責任者の総務部部長・江尻昌道さんは、「そもそも、社報が現場で活用されていないのではないか?との問題意識があったことが、リニューアルのきっかけです」と語ります。
「理由として考えられたのは、2000年頃までは現場目線でつくられていた社報が、会社からのメッセージ色が強いものになってしまっていたこと。トップからも、これでいいのか?との課題をずっと投げ掛けられていました」。
そこで2017年4月、海外赴任から戻った江尻さんと時を同じくして、育休から復帰した総務部総務課の津田あすかさんが、新たな社報の編集局となり、リニューアルに着手。しかし、「それまで担当していた係長が異動になってしまい、経験のないまま、いきなり独り立ちといった状況でした」と津田さんは当時の不安な心境を振り返ります。
自由回答を重視したアンケートなどで、社報を分析
まず取り組んだことは、社報を客観的に見ること。それはリニューアルを進めるためのエビデンスを取ることでもありました。ウィズワークスのコンサルティングを受け、「社内報診断」や従業員へのアンケートを実施。
アンケートは、質問の仕方にもこだわりました。回答のしやすさを考えると選択式のほうが良さそうですが、それだけだと「なぜそう思うのか」までは見えてきません。
そこで自由回答のスペースを大きくとって、「社報に関するご意見を何でもお書きください」としたところ、箇条書きで意見を書いてくれる人が続出。回収率は、各拠点の総務の協力もあって約8割に上りました。また、その内容から社報の読者のマジョリティーは、従業員の多くを占める契約社員やパート、40代、50代の女性であることも再確認。
こうしたエビデンスを分析し、じっくり時間をかけてつくり上げたのが、新しい社報のコンセプト「現場を映し、現場から組織を明るくする社報」でした。
現場の声を吸い上げるため、編集委員制度を発足
社内報の原点に立ち返ったようなコンセプトですが、きちんとした裏付けがあるため「腹落ち」感があり実効性が違います。あらためて、「わかりやすさを意識し、現場の声を吸い上げる社報にする」となったところで、現場目線でレポートしてもらえるよう、社報編集委員(通信委員)制度を設けることにしました。
社歴や職種を問わず、全国から編集委員を募集。自ら手を挙げた人、事業所の総務に推薦された人など、若手を中心にさまざまな人が集まり、2018年1月、10人のメンバーによる編集委員チームが発足しました。
そこからは、試行錯誤の日々。編集委員の役割は、現場での情報収集から企画立案、取材や執筆の依頼、原稿回収と多岐にわたります。全員が初めての社報づくりですから、簡単にはいきません。それでも、編集委員に「やらされ感」といったネガティブな表情が見られなかったのは、江尻さんからの「無理しなくていいからね」「楽しんで。やりたいことをやりましょう」といった声掛けも大きかったようです。
編集委員が楽しんでやれる環境を、編集局では意識
メンバーたちが本来の業務をこなしながら編集委員を務めていることを、社報編集局は、しっかりと理解しています。また、困ったときには、編集委員同士で助け合うことで、コミュニケーション活性化につなげてもらえたら、との思いもあります。そうした中、「楽しんでやれば、楽しいものができる」環境づくりを編集局では意識しています。
とはいえ、それは「甘やかす」ことではありません。社報をつくる上でこだわっているのは、コンセプトに則った、納得できるものを発行すること。江尻さんは編集活動を人材育成としてもとらえ、編集局の津田さんも自ら編集について貪欲に勉強中です。文章の書き方やデザインなどの本を読む一方で、江尻さんからの指摘にハッとすることもあるそうです。
例えば現場レポートの写真に対する「臨場感がないね」というひと言。言われてみれば、現場レポートにも関わらず、その写真には人物しか写っていませんでした。
大切なことは、自分が読者の立場になって考えて、こうあってほしいというものをつくること。まさに、同社の事業の根幹でもある、カスタマーサービスの精神と一緒です。
リニューアルの反応は上々。さらに現場の深掘りを
リニューアル後、従業員からの「おもしろい」「良くなったね」との声に、津田さんは手応えを感じています。もちろん、まだまだ課題もたくさん。例えば、「待ち」の姿勢では社内のニュースや情報が「レクをやりました」といった表面的なものしか上がってこないこと。けれど直接、現場に行くと「こんなニュースを載せてくれたら、事業のPRになるのに」といった話を聞くことができます。
「そういう声を編集委員のみんなで探っていけるようになりたい」と津田さん。そして、「載ってうれしい」と言ってもらえる社報にしたいと、意気込みを語ります。
リニューアル第2号を出すにあたっては、クオリティーを求めるがゆえに、発行月を4月から5月に変更しました。「本来なら期日ありきなのですが、自分たちが今、一番いいと思ったものを出すことが、最初のうちは特に重要です。納得いくものを出していれば、読者の意見も素直に受け入れられる。それをまた次に生かせばいい。そうしてPDCAで回していって、2年、3年経ったころには、自分たちも満足し、読者が喜んでくれて、その喜びが編集委員の喜びとなって、またがんばれる、といったサイクルが自然に回っていられるようにしていきたいですね」と江尻さん。
今後、インナーコミュニケーションの施策としては、社内ポータルサイトを強化し、社報とのシナジーなども考えていきたいとのこと。また、新たに導入したテレビ会議システムを活用し、さらなるコミュニケーション活性化を図っていきたいといいます。
「アンケートの回収率からもわかるように、素直さは、ホンダ開発の素晴らしいDNA。ただ、自ら動くといったところが弱い。本当であれば、編集委員の募集にも、定員オーバーになるくらい応募があるといいのですが」と江尻さん。そうした風土づくりのためにも、いっそうインナーコミュニケーションの充実に取り組んでいきます。
- 社報『Kaihatsu』
創刊:1969年6月20日
発行部数:約3,000部
仕様:A4版、4色、8~16ページ
発行頻度:年間4回+臨時号 - 会社情報
URL:www.honda-kaihatsu.co.jp/