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アップデートに終わりはない ― 前進し続けるICへ


「社内報アワード2024」イベントでは、「進もう、ICの力で。」をスローガンに掲げ、表彰・交流イベントを中心に、プレイベント、アフターイベントを展開しています。

10月2日(水)~8日(火)には「オープンギャラリーWeek」*を開催し、さまざまな日替わりプログラムを実施しました。今回はその第一弾として初日に行われた「冊子社内報」編の審査員特別対談の様子をお届けします。

今注目されるインターナルコミュニケーション(IC)の価値、冊子社内報が抱える課題やWeb媒体との併存などの最新トレンドを、「社内報アワード」コンクールの審査員2名が鋭く分析。ぜひ今後の社内報づくりにお役立てください。

*ウィズワークス株式会社「社内報ギャラリー」にて実施。

「オープンギャラリーWeek」プログラム(クリックして拡大)
初の試みとして、表彰交流イベントの前後に多様なプログラムを用意。プレイベントである「オープンギャラリーWeek」ではウィズワークス内の「社内報ギャラリー」を開放(事前予約制)するとともに、特別対談やワークショップを開催した(クリックして拡大)

 

【対談者】
株式会社タンシキ 
代表取締役/広報コンサルタント 

秋山 和久 氏  

社内報制作実務経験を踏まえつつ、理念・ブランド浸透、CI、組織開発など経営に寄与する観点で社内広報全般を助言する頼れるパートナー。2017年より「社内報アワード」審査員となり、今年度は紙社内報部門、Web/アプリ社内報部門(企画単体)、特別部門を担当。

パーソルホールディングス株式会社
グループコミュニケーション本部
コミュニケーション部インナーコミュニケーション室
加賀谷 睦 氏

審査員として3度目となる「社内報アワード2024」では紙社内報部門、Web/アプリ社内報部門、動画社内報部門を担当。自身も社内報の制作に携わる立場から、担当者に寄り添った親身なアドバイスが好評を得ている。柔らかい笑顔で場を和ませるムードメーカー。


[ファシリテーター]

ウィズワークス株式会社
社内報総合研究所 所長
橋詰 知明

 

 

 

IC担当者のポジティブな姿勢が組織を前に動かす

――今回のアワードでは「進もう、ICの力で。」というスローガンを掲げていますが、まず、これにどんな印象を持たれましたか。

秋山:とてもポジティブですね。「進もう」には、組織を前に進める、個人が前に進むという二つの方向性がありますが、会社だけではなく、IC担当者自身が前向きに楽しむことが大事です。また、「ICの力で。」については、電気や水道が生活インフラならば、ICは情報インフラととらえています。生活インフラが強固なら安定した生活が送れるように、ICもまた、組織の情報インフラとしての土台ができれば組織も個人もポジティブになれます。

加賀谷:私自身も社内広報の担当者として、このスローガンは「我らがやらねば誰がやる」という能動的なメッセージと受け止めました。ただ、自社を振り返ると、私の周囲では「ICの力」が理解されているものの、他の部門にはまだまだ伝わっていません。もっと頑張らないと、と考えさせられます。

――いろいろな受け止め方がありますが、会場の皆さんは、組織と個人のどちらの課題だと思われますか。(全員挙手)なるほど、全員が組織の課題と受け止めていると。

秋山ICは、ざっくり言えば経営を補佐する仕事ですからね。組織の経営には、経営者が意思決定をし、社内に情報伝達をして業務活動が行われ、情報開示をするという大きな4つのプロセスがあります。広報には、意思決定のフェーズでは経営者に情報提供をし、経営陣の意思を社内に伝達する役割がありますから、会社の課題ととらえるのは理解できます。

加賀谷:確かに広報には経営補佐の役目があり、それは自分一人で完結するものではありません。いろんな部署とやり取りをし、社員に伝える情報を仕分けするには、皆で力を合わせないと進まない。まさに「情報インフラ」の言葉通り、そこが滞ると経営はもちろん、社員も一気に不安になってしまうでしょう。

秋山タテ・ヨコ・ナナメに情報を行き来させることは、従業員の皆さんの心理的安全性につながります。もちろんエンゲージメント向上や離職防止というねらいもありますが、まず、心理的安全性を確保して、従業員が意見を言っていいんだとか、会社が自分たちを尊重してくれると思える環境を作ることが重要です。インフラは、何も問題がないときは特に意識されず、この状態が理想ともいえます。従業員の不満や不安がない状態を作るには、情報インフラとしてのICの質をいかに上げるかが大事ではないでしょうか。

加賀谷:同感です。ただ、情報が行き届くことは大事だとわかっているものの、私自身、どこまで届けきれているだろうかと考えると……。なかなかこれという手だてが見つからなかったり、情報を受け取る側の社員の状況がわからなかったりと、難しいところもあります。新しいことにいろいろチャレンジしていきたいですね。

柔軟に変化を受け入れながら新たな可能性を探るICへ

――では、次のテーマです。取り巻く環境が変化する中で、ICは新たにどのような役割・価値が期待されているとお考えでしょうか。

加賀谷:ここ数年で一番の変化といえばコロナ禍ですが、弊社も就業形態が変化して働き方改革が大きく進みました。リアルなコミュニケーションの場がオンラインになり、新卒者やキャリア入社の方が自部署の人とも顔を合わさずに勤務を始めたり、一方で離職が進んだり。社員の誰もが帰属意識とか、この会社で働くことの意味を考え始めたときに、ICの課題が急に持ち上がり、担当部署はその解決を期待されていることを感じました。また、DXも大きな変化ですね。いろいろなツールやアプリが増え、人により、部署により、使えるものと使えないものがある。どこでも・誰でも情報をスムーズに得られるようにするには、ただツールを用意するのではなく、なぜこれを使うのかメリットを伝えることが大切で、それが会社のビジョンやミッションの理解につながると思うのです。ICには、そういうことを周知していく役目も求められる気がします。

――コロナ禍ではウィズワークスにもさまざまな相談が寄せられ、未曽有の事態となったことで社内報の重要性に気づかれた企業も多くいらっしゃいました。ICの潮目が変わったと感じたものですが、秋山さんはいかがでしょうか。

秋山: ICの潮目は確かに変わりました。コロナ禍でTeams、Chatwork、LINE WORKSなどさまざまなコミュニケーション形態が生まれ、冊子社内報以外でいろいろな情報を受信できるようになりました。ただ、ツールが増えることで、情報の受信姿勢が「受け身」の従業員が増えたように思います。何らかの体験を伴わないと、情報に興味を持ってもらいにくくなりました。
例えば冊子社内報の特集で、特集テーマに関連した事前アンケートを組み込む例が増えています。冊子発行前に、アンケートの回答依頼を受けた・回答したという体験を創り出すことで閲読につなげているわけです。昨今のICでは「情報価値」だけでなく「体験価値」の提供が期待されるようになりました。

加賀谷:その通りですね。社内報に限らず、例えば贈り物でもモノよりコト、体験することに皆さんの目が向かっている。社内報にも「いい体験」が求められている気がします。弊社で社内報の企画を立案する際には、ただ「よかった」と言われるだけじゃなく、その先、つまり、社内報で行動変容を促したいという強い思いがあります。アンケートをクリックするとか、何かのコミュニティに参加するとか、何かしら社員の背中を押して自ら動き出すきっかけを作りたい。そう考えて、皆で企画を練り上げています。

――いろいろな価値観が共存する中で、ICには日々アップデートしていく柔軟性が求められますね。

加賀谷:はい。柔軟性とは今までやってきたものを無理に変えたり、奇をてらったものにしたりするのではなく、新たな可能性を探ることだと思います。媒体の特性に応じた使い分けや、マルチメディアでの展開といったことも必要ですね。

秋山:従来の踏襲だけでは、ICの価値も「点」で止まってしまい、動きのない状態になってしまいます。柔軟性とは「変わっていいんだよ」と導くことです。もっと意見を言っていいんだとか、隣の人も頑張っているなとか、そういう気持ちが“前に進む”行動につながっていく。ICにはそのために経営者と現場の調整をする機能や価値があるのです。

特別対談は、会場で来場者が聴講するとともにオンラインでも配信
特別対談は、会場で来場者が聴講するとともにオンラインでも配信

加賀谷:一人一人が周りに引きずられるのではなく、全体が一つになって大きくうねっていく——、そんな動きを見たいですね。ICによって、そのうねりが起きた! という感覚を持ってみたいです。ICの仕事は大変だけれども、やりがいが大きく、面白いものなんですよね!

「いいね」の数にとらわれず「守り」の姿勢から抜け出そう

――2024年度の審査を通じて得た気づきや、注目の事例などはありますか。

秋山:今年の作品に関してはポジティブとネガティブ両方の印象があります。
ネガティブな面では、昨今の社内報が経営課題の解決策として定着した半面、一方的に経営情報を発信する社内報が増えたと感じました。コロナ禍でコミュニケーションが取りにくくなったなど、いろんな事情があるのでしょうが、現場寄りの面白さが総じて弱まった気がします。企画のテーマも似たものが多く、社名がなければどれも同じに見えてしまうという傾向がみられました。
一方ですごく良かったのは、冊子と動画が一体となったイベント企画の事例です。メインは対面イベントで、冊子単体での企画力は弱いのですが、全体の情報の流れがよく考えられていました。媒体ごとのリーチの違いを生かし、複数の施策を組み合わせた企画がたくさん出てきましたね。

加賀谷:毎年素晴らしい作品が多くて「感動をありがとう」という気持ちで審査しています。その中で今年は原点回帰というか、足元を見つめ直して一丁目一番地を確認するような企画が多かったと感じました。社員のエンゲージメント向上を意識した作品も目立ちました。また、Webと冊子のメディアミックス企画、社内SNSを利用して社員のリアルな声を反映した企画もあり、全員で社内報をつくろうという思いが感じられました。
一方で、デザインはすごくきれいなのに「あれ?」と思うものも……。去年までは、いい意味で驚かされる作品が結構あったのですが、今年は「素敵できれいだな」という平坦な印象に終わったものが多かった気がします。

秋山:企画の構成要素はそろっていて、目的も明確なのに、単に情報のデリバリーになってしまっている作品が目につきました。もちろん情報の正確性は重要ですが、そこに読者の目を引き付けるアプローチがなく、クリエイティブな視点が不足している点は、残念でした。きれいにまとまった企画でないと社内承認が得られないとか、以前は担当者で自由にやれたのが、事前に上層部に計らなくてはならなくなったとか、そういう難しさがあるのかもしれませんが、例えば十数ページの冊子なら3ページだけでも遊んでみるとか、自由にやれる部分があってもいいのではないでしょうか。

加賀谷:お聞きしていて、すごく胃が痛い(笑)。実際、全員に「いいね」と言ってもらうのは難しいとわかっていても、担当者としてはネガティブな反響はやっぱり怖いんです。次に生かせばいいとわかっていても、それを避けようとしてしまう。……なんだか私自身の反省会になっていますね(笑)。多分どの企業もICの力に期待が高まっているからこそ、守りの姿勢になる担当者もいらっしゃるんじゃないかと思います。

――レベルが上がったからこそ、さらに突き抜けるのは難しいけれど、それらを両立させなくてはいけないと。そういう中で、今回特に印象に残った作品があれば教えていただけますか。

加賀谷:一番は、お正月に起きた能登半島地震の直後に社内外に情報発信をした冊子社内報です。制作スケジュール的にかなり厳しかったようですが、社内の頑張りやお客様の情報がギュッと詰まっていました。正直、ビジュアルはそれほど整っているわけではないのですが、「どうしても伝えたい」という編集者の声が聞こえてくるような作品でした。コロナ禍でも危機的な状況の中でICが情報をつなぐ役目を果たしましたが、どんな時にも立ち上がれるICは素敵だと思います。

秋山:私の印象に残ったのは、透明性のある企画です。今回、労使のやり取りをそのまま流した長時間の動画作品があり、視聴するのは大変でしたが、何も包み隠さず伝えているところは刺さりました。人間関係においても相手に自己開示をしないと信頼関係は構築できません。会社の業績が悪いときも、経営側が厳しい状況をきちんと伝えることで、初めて従業員側も頑張る気になります。この企画は残念ながらテクニカル面の評価が伸びず、上位には入らなかったのですが、強く印象に残った作品です。

――昨今、求められるリーダー像として、弱さをさらけ出して共感を得ることが大切と言われますものね。それでは最後になりますが、お二人からぜひ皆さんへのエールをいただけますか。

秋山:ICの業務をとにかく楽しんでやること、そして、やりたいことを言葉にすることです。こんな企画にチャレンジしたいと積極的に言葉にして実現に向けて動いてみてほしい。言葉にしていくことが実現につながると思うので、ぜひ頑張っていただきたいです。

加賀谷:限られた予算でいろいろな業務に追われて、もう手いっぱいだという方も多いことでしょう。グチもこぼせず、上司からのプレッシャーもある、そんな状況でも、今のような、ICご担当者の業務を称える場があることをまず知ってほしいです。困ったとき、助けが欲しいときには、さまざまなイベントやコミュニティが役立ちます。一人じゃない、全国の社内報担当者は皆仲間だぞという気持ちで、ともに前進していきましょう。

――全国の社内報、ICのご担当者に届いてほしい言葉ですね。本日はありがとうございました。

ICの力で前に進むために

  • 自分自身が率先してIC活動を楽しもう。
  • 環境の変化を柔軟に受け入れ、新たな可能性を探そう。
  • ネガティブ評価を恐れず、攻めの姿勢に転じよう。
  • マルチメディアで多角的なIC展開を図ろう。
  • 困ったときは社内報仲間のコミュニティを活用しよう。

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