社内報を季刊で発行する企業は、「3月に発表された決算情報を、社内報の夏号で報告」と年間計画で決まっているかもしれません。そして、毎年毎年、社内報の担当者は、「今年は決算企画をどういう内容にしよう?」と頭を抱えているのでは……?
決算の企画は「硬い・難しい・つまらない」というイメージが強く、閲読率を上げる内容に仕上げるには、ひとひねりふたひねりが必要です。
どんな切り口で企画を立て、どんな見せ方で訴求すれば、読者は決算に興味を持って読んでくれるのでしょうか。
目次
「安心」を最優先にすると、「硬い」と「難しい」のマイナスの相乗効果に
決算企画につきまとうマイナスイメージを生み出す要因について考察してみましょう。
まずは「硬い」。決算情報は、所属部署や従業員の名前、商品名などと並んで、「絶対に間違えてはならないもの」です。そのため、「正しく掲載するために、財務や経理の部署から入手した情報をそのまま載せている」という声を聞くことがあります。「硬い」イメージの一因は、ここにあるのかもしれません。入手した情報をそのまま掲載すれば、誤植のリスクは減り、確かに安心ではありますが、無機質な表組、意味がよくわからない数字のオンパレードになりがちで、「硬い」誌面になってしまいます。
次に「難しい」について。決算書には専門用語が付き物です。決算書の種類だけでも「貸借対照表(B/S)」「損益計算書(P/L)」「キャッシュフロー計算書(C/S)」とあり、それぞれを細かく見ると、流動資産、固定資産、流動負債、経常利益、税引前当期純利益、減損損失etc. 財務関連の仕事をしていない従業員なら「難しい! 見たくない!!」という気分になってしまいそうな専門用語ばかりが登場します。
これら「硬い」と「難しい」が合体した誌面は、マイナス要素の相乗効果を生み出し、「つまらない」と思われてしまうのは仕方ないことでしょう。決算企画は本当に難しいのです。
グラフや用語解説で、親しみやすさを演出
では、どうすれば従業員の皆さんに決算企画を読んでもらえるのでしょうか。
硬さを払しょくするための工夫の一例が、グラフで見せるという手法です。無機質な表組より、キャッチ―なデザインの分かりやすいグラフのほうが、確かに親しみを感じさせます。ただし、それがずらずらと並んでいるだけでは、「やっぱりわからない」となってしまう恐れがあります。
それを回避するために、決算情報のすべてを掲載するのではなく、「ここだけは知ってほしい」というポイントに絞って掲載してみてはいかがでしょうか。さらに、その数字を事業や会社の動き(ヒット商品発売、周年、合併など)と絡めて見せれば、読者はより理解しやすくなりそうです。
また、専門用語は財務や経理の部門から案内役を出してもらい解説してもらうという手もあります。ここで絶対にハズしてはならないポイントは、「分かりやすく」ということ。その道に詳しい人は専門用語に慣れている分、「基本は分かっている前提」になってしまいがちで、こうなるとせっかくの用語解説も読んでもらえません。
決算書に苦手意識を抱いている人にも読んでほしいなら、寄稿より、社内報担当者が財務や経理部門の人にインタビューし、まずは自分たちがきちんと理解した上で読者に伝わる言葉に変換して原稿化するほうがおすすめです。
決算企画のイメージ
- 「硬い」:無機質な表組、細かい数字の羅列
- 「難しい」:聞きなれない専門用語が満載。解説文があってもよく分からない
- 「つまらない」:「硬い」と「難しい」のマイナスの相乗効果
マイナスイメージを乗り越える工夫の一例
- わかりやすいグラフ(色使いやフォント、見出し)で見せる
- 本当に理解してほしい情報に絞って掲載
- 事業や会社の動き(ヒット商品発売、周年、合併など)と絡めて提示
- 財務や経理の部署の人に登場してもらい、専門用語を解説してもらう
- 分かりやすさを追求するために、社内報担当者がインタビューして原稿化
決算企画もここまで魅力的に見せられる! 2つの優秀事例
ここで、社内報に掲載する決算企画として、既成概念を打ち破る優秀事例をご紹介しましょう。
【優秀事例 1】アサヒグループホールディングス株式会社
- 企画名:
「?」に沿ってお答えします!財務から見たアサヒの力 - 企画意図:
自グループの「今」を全社員に理解してほしい、という思いが企画立案のきっかけ。しかしながら、決算への関心は低く、そのハードルを乗り越えるために「とっつきやすさ」にとことんこだわった。 - 注目ポイント:
①決算や財務といった言葉から連想される無機質なイメージを払拭する、ポップで明るい色使い
②ボードゲームのようなモチーフで気軽に読めるイメージを演出
③社員を案内役に仕立てて登場させた
④細かな数字の解説は避け、その数字が持つ「意味」や「価値」を伝える
⑤各枠の見出しは「話し言葉での疑問形」にして、決算への関心が低い読者への興味を喚起
⑥企画の目的がブレないように、専門用語の解説は極力少なく
- 効果:
読者層は国内事業に関する仕事に携わる従業員が大多数ながら、決算は国際事業の高まりが目につきやすい結果となった。その事実に対して「海外事業の飛躍は自分たちが担う国内事業あってこそだと自覚できた」等の声が寄せられ、企画の狙いが達成できた手ごたえを感じた。
【優秀事例 2】ナブテスコ株式会社
- 企画名:
いざ行かん!ナブテスコが目指す“頂”へ
決算報告から見るナブテスコの現在地 - 注目ポイント:
①マンガと実在の社内報担当者の融合という斬新な表現方法で、身構えてしまいがちな決算情報を抜群の分かりやすさで紹介
②決算に対して苦手意識を持つ社員の疑問を若手社員が代弁し、それに対してベテラン社員が教える構図
③決算の数字から自社の現在の立ち位置を伝え、今後の目標達成に向けた施策に向けた一連の流れがわかる内容
- 企画意図・効果:
社員の“挑戦”を後押しするために、会社の業績と目標を理解する「決算特集」は、社内報に不可欠との考えから実施。毎年趣向を凝らしてきたが、昨年初めて「コマ撮り漫画風」にチャレンジしたところ、社内で大反響を得ることができた。決算内容を余すことなく伝えながらも、誌面に登場した社員の迫真の演技も手伝って、多くの社員に楽しく読んでもらえた。
工夫次第で、決算も読者を引きつける企画になる!
2つの優秀事例からわかるのは、決算企画も工夫次第で読者を引きつける注目企画になれる、ということです。一人でも多くの従業員に、決算情報から会社の今と未来を感じてもらうために、「決算企画は硬くて難しくてつまらない」という思い込みを一新させる切り口を探してみましょう。
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