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テクノロジーの活用で医療業界に新風を起こす(洛和会ヘルスケアシステム)

株式会社アローフィールド(洛和会企画広報部門)の皆さま。左から杉岡ゆき乃さん、小林万優さん、小林拓磨さん、須貝真也さん
株式会社アローフィールド(洛和会企画広報部門)の皆さま。左から杉岡ゆき乃さん、小林万優さん、小林拓磨さん、須貝真也さん

京都府と滋賀県を中心に、病院、クリニック、介護施設、健診センター、保育園、フィットネス事業など、「医療」「介護」「健康・保育」「教育・研究」の4つの領域で幅広く事業を展開する洛和会ヘルスケアシステム

170を超える施設、約5700の職員を抱える同会では、医療・福祉の現場にも情報共有はもちろんのこと、相互理解や連携が必要不可欠との考えから、インターナルコミュニケーションに力を入れ、16名体制からなる広報専門関連会社 株式会社アローフィールド(洛和会企画広報部門)を設けています。主に内製で法人内および地域への広報活動を行っています。

今回は、京都市にある同社とオンラインでつなぎ、医療・福祉領域における情報発信のあり方や工夫点、一般企業とは異なる制作事情や苦労点について、お話を伺いました。

新聞風のモノクロから、雑誌風のフルカラーへ

 1950年に京都市で開院した矢野病院から歩みを始めた洛和会ヘルスケアシステム。その後、事業の多角化を図り、2020年には創立70年を迎えました。

 職員向け広報誌『INGS』を創刊したのは、1994年。当初は、新聞風のモノクロ一枚ものという簡素な体裁でした。

モノクロの新聞風だった第一号の社内報。歴史を感じます
モノクロの新聞風だった第一号の社内報。歴史を感じます

発行の目的は、情報周知や、職員間のコミュニケーション強化。職員がどんどん増えていく中で、連携を図る重要性が高まったからです」と経緯を語るのは、洛和会企画広報部門の杉岡ゆき乃さん。

 創刊の翌年に、阪神淡路大震災が発生。災害現場で奮闘する医療従事者の仕事の記録、災害を機に設けられたボランティア休暇など福利厚生の周知徹底も、社内報の役割として『INGS』が担ってきたといいます。

 そうしたことから、必要とされる情報量も徐々に増えていったため、2004年にフルカラーにリニューアル。その後も、現場のリアルがより伝わりやすいよう、写真を増やすなど「もっと読みたくなる」誌面を目指して徐々にブラッシュアップしていきました。

「時代のニーズをつかみながら、『INGS』のブラッシュアップを図ってきました」(杉岡さん)
「時代のニーズをつかみながら、『INGS』のブラッシュアップを図ってきました」(杉岡さん)

ネット時代に合わせて、Web化を敢行

 時代に合わせた変革を常に模索してきた同会。2021年4月からは、16ページにまで増えていた『INGS』の廃止を決め、完全Web化に踏み切りました発信は、冊子時代と同様、毎月1日。これは、固定された日に見る習慣が定着していたためとか。

「基本は1日ですが、掲載しきれなかったものや、次の更新まで待てない情報などは、中間日の15日に発信しています。こうした柔軟な対応ができるのは、Webの利点ですね」と杉岡さん。

 インフラは、イントラネットを利用。病院内のパソコンは電子カルテを入れているため、ネットワークにはつなげていないそう。

 また、「介護士や保育士は各人にパソコンを割り当てていないため、個人のスマホからもイントラにアクセスできるようにしています。空き時間などに職場のパソコンで見るスタッフも多いですね」と、視聴環境について解説してくれました。

 コンテンツは、冊子版からの移行が主ですが、Webは読者の反応がダイレクトにわかるため、人気のない企画は整理するなど、試行錯誤を重ねている最中だと話します。

Webに移行した社内報は試行錯誤を重ねてブラッシュアップしています
Webに移行した社内報は試行錯誤を重ねてブラッシュアップしています

正しい情報を分かりやすく、動画を活用した情報発信

 そのWeb社内報と並行して現在、注力しているのが動画での発信です。もともと動画を内製する体制が整っており、理事長メッセージや1年の振り返りなど、以前から折に触れ動画を流していたそうですが、その勢いを加速させたのが、国内では2020年1月上旬に確認された、新型コロナウイルス感染症の流行。

 医療・福祉の団体である同会は、感染拡大の直後から怒涛の渦に巻き込まれていきます。突然襲ってきた未曾有の感染症と必死に向き合う医療従事者たち。その姿を見て、広報として何ができるかを検討した結果、選んだのが、動画での発信でした。

 「発生当初は新型コロナウイルスは分からないことが多い感染症で、専門職といえどもとまどうことがありました。ですから、私たちがやるべきことは、正確な情報、かつ現場のスタッフが欲している情報を分かりやすく届けることだと考えたのです。

 まず取り掛かったのは、感染症科の医師による感染予防の教育動画。ターゲットは全職員ですが、特に届けたかったのは、介護や保育事業の職員。彼らは、より不安が強かったと思うので、医療とつながっているんだよ、という安心感を与えたかったのです。それこそが、当会の強みですから」と、意図を説明する杉岡さん。

 その後も、個人防護服(マスクやガウン)の正しい着脱方法や簡易アイシールドのつくり方、資格取得過程に必須の講義動画などの啓蒙・教育動画を次々制作。イントラの中にポータルを設け、その中に随時アップしていくという方法で情報発信してきました。

簡易アイシールドのつくり方(左)や個人防護服の正しい着脱方法(右)など、コロナ禍で役立つ動画を数多く発信
簡易アイシールドのつくり方(左)や個人防護服の正しい着脱方法(右)など、コロナ禍で役立つ動画を数多く発信

コロナ禍のリアルに迫った動画で、ゴールド賞受賞

 そうした動画の集大成ともいうべき作品が、「社内報アワード2021」動画社内報部門でゴールド賞を受賞した「洛和会ヘルスケアシステム 新型コロナウイルス対応の軌跡」です。

 緊急事態宣言が発令される中、次々搬送される患者さんに懸命に対応する医師や看護師、高齢者や子どもを感染から守るため力を尽くす介護士や保育士、不足する医療物資の調達に走り回る資材購買担当の職員……。

 幅広い職種のスタッフが自分のできることにひたむきに取り組む姿を時系列で追いながら、キーパーソンのインタビューを挟み込む構成は、冒頭から臨場感にあふれ、「彼らの使命感や誇りを伝えたい」という作り手の思いが、ひしひしと胸に迫ってくる秀作です。

 制作する上で苦労したのは、何と言っても、現場への立ち入りが難しかったこと。「家族さえ面会できない状況でしたから、取材撮影は難航しました。事前にメールや書面で入念にやりとりし、現場へは外部の製作会社を入れられないため私一人がカメラを持って入り、ナレーションも私が担当しました。内製できる体制があったからこそできたことで、そこは私たちの誇りでもあります」と、胸を張る杉岡さん。

 動画内では、院内でクラスターが発生した時の様子も伝えていますが、ここも神経を使った点だったとか。

 「クラスター発生時は、オンタイムで起こっていることすべてを公開はしませんでした。というのは、職員を不安にさせることは避けたかったからです。罹患した職員の心のケアも必要でしたし、そこへの配慮は不可欠ですから。全体を通して、過不足のない情報コントロールに非常に気を使いました」(杉岡さん)。 

「社内報アワード2021」の動画社内報部門でゴールド賞を受賞した「洛和会ヘルスケアシステム 新型コロナウイルス対応の軌跡」。コロナ禍に立ち向かった職員の誇りの醸成に大きく貢献しました
「社内報アワード2021」の動画社内報部門でゴールド賞を受賞した「洛和会ヘルスケアシステム 新型コロナウイルス対応の軌跡」。コロナ禍に立ち向かった職員の誇りの醸成に大きく貢献しました

 「職員の誇り」「職員への感謝」を形にしたこの作品は、同会内でも大きな反響を呼びました。そこで、洛和会ヘルスケアシステムの公式YouTubeでも公開することに(こちらからご視聴いただけます)。

  その理由は、「地域に根差した医療」をビジョンに掲げているからです。その結果、地域の人々はもちろん、職員の家族にも高い評価を受けました。

 また、当時から現在まで続いているコンテンツとして、各病院長からのメッセージ動画があります。

 「コロナ禍では“集まる”ことができないため、職員同士の意識統一が大きな課題でした。職員は長引くコロナ禍で疲弊しているので、励ますためにも温度感を持って思いを伝えること、そしてそれにより意識を一つにすることを目的に、現在も続けています」(杉岡さん)

楽しい話題の提供で、地域を明るく、健康的に

 ここ2年は、コロナ禍が影響し、どうしても深刻なテーマが多かったという同会の情報発信。しかし今後は、少しずつでも明るい話題を採り上げていきたいという意向を持っています。

 「コロナ禍でなかったとしても、シリアスな話題が多くなりがちな業種なので、私たち広報から、皆さんの笑顔を増やすような発信をすることで、当会全体、ひいては、患者さんや利用者さん、そして地域へ、健康的な世界を広げていきたいと思っています」と、話す杉岡さん。

 その牽引役として期待を寄せるのが、インスタグラムです。担当する小林万優さんは、工夫点をこう語ります。

 「現場の空気感が伝わるような写真と、SNSらしいちょっと砕けた表現で、見て楽しくなるような発信を心掛けています。例えば、イベントでは、集合写真ではなく、場面を切り取ったような写真を取り上げています。

 人気のコンテンツは、人物紹介。それも手書きでモットーを書いてもらって本人写真に添えたり、普段の業務内容についても詳しくインタビューし、テキストに記しています。いろんな職種の人がいるので、その仕事や人物の魅力を伝えていきたいです。地域の人や求職者の方はもちろん、職員にも。夢は、全部署の職員を紹介することと、フォロワーをもっと増やすことです」

職員の意見を取り入れつつ、インスタグラムで投稿される写真はバラエティに富んでいます
職員の意見を取り入れつつ、インスタグラムで投稿される写真はバラエティに富んでいます

 投稿の頻度は、最低週1回。イベントが続くときは、連日投稿をしているそう。また、新企画にも積極的で、最近ではフォトコンテストをスタート。

 リール機能を使って各職種の制服を紹介する計画もあるとか。「以前職員にアンケートをして見たいコンテンツを募ったので、それに応えた情報発信もしていくつもりです」と、前向きに語ります。

「インタグラムでは職員のニーズに応えるコンテンツも展開していきたいです」(小林万優さん)
「インタグラムでは職員のニーズに応えるコンテンツも展開していきたいです」(小林万優さん)

 その発言を受けて、2人の上長である小林拓磨さんと須貝真也さんもこう続けます。

 「医療業界でSNSやYouTubeをここまで力を入れて展開しているのは、まだまだ少ないと思うのですが、ネットワークを駆使して、洛和会という名前をもっと広めたいですね。そうして洛和会ブランドを高めることが、我々の目標としているところです」

 コロナ禍の終束はまだ見通せない状況ですが、洛和会ヘルスケアシステムの目は、すでにその先の、明るく健康的な未来を見つめています。

「洛和会ヘルスケアシステムのインターナルコミュニケーションを盛り上げるためにさらに尽力します」上長の小林拓磨(左)さんと須貝さん(右)
「洛和会ヘルスケアシステムのインターナルコミュニケーションを盛り上げるためにさらに尽力します」上長の小林拓磨(左)さんと須貝さん(右)

 


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