2020年10月6日(火)~9日(金)に開催した「社内報アワードONLINE EVENT 4DAYS」では、上位入賞を果たした優秀企業による事例発表に加えて、社内報ご担当者に役立つ講演も行いました。
その中から、弊社代表取締役 兼 CEOで社内報総合研究所 所長の浪木による、「2021年のインターナルコミュニケーションの展望」をお届けします。
激動の2020年、社内報にも急速な変化が
コロナ禍は企業のインターナルコミュニケーションにも大きな変化をもたらしました。当社もテレビやラジオなどのメディア取材を受ける機会が増え、社内報に対する世の中の関心が非常に高まっていると感じます。そこで、この2020年の1年でインターナルコミュニケーションの目的とツールがどう変化したか、また、今後の見通しはどうなるかについてお話しします。
激動の2020年を振り返れば、コロナ禍においては出張や取材がままならず、さまざまなリモート活動が行われるようになりました。紙媒体の社内報ではページ数の削減や発行頻度の減少、休刊に至るケースもあり、それに代わって印刷物をPDFファイルに変換し、イントラにアップするなど社内報のWeb化が加速しました。それに伴い社外から閲覧できるようなシステムの構築や、個人所有のデバイスを活用する動きも進んでいます。
このように急速な変化が起こる今だからこそ、企業のインターナルコミュニケーション施策がより重要になっています。リモートワーク下で、誰もがあらためて自社の社会的存在価値を知る1年となったのではないでしょうか。社内報においても、社員の一体感を醸成できる企画が求められています。
環境変化に伴い柔軟に見直される発行目的
2020年の動向と今後について、当社が実施したアンケート調査『社内報白書2020』『社内報白書2020 臨時号』のデータから考察していきましょう。
まず、現状において「社内報の発行目的をどのくらいのスパンで見直していますか」という質問には、「見直していない」が43.6%と最も多く、「2~3年に1度」が34.7%、「毎年見直す」が21.6%という回答結果でした。また、「コロナ禍による目的の見直し」については約3割弱の企業が「見直した」もしくは「見直す」と回答しており、やはり影響が小さくないことが読み取れます。
見直しが、なぜ必要になるのでしょうか。一般に、企業には社長交代や経営統合、周年行事、中期経営計画などの「ライフイベント」があり、それによって組織課題が変化します。また、近年のSDGsや今回のコロナ禍における働き方改革などの社会的な重要課題にも直面します。このような場合に社内報が解決の一助となり、発行目的が見直されるのです。
下のデータは2020年2月にリリースした『社内報白書2020』からの抜粋で、社内広報の主な目的をグラフにしたものです。この時点で、経営理念やビジョンの浸透、社内の一体感の醸成、社内ニュースや周知徹底事項の伝達などが重視されていることがわかりますが、特にコロナ禍においては、これらに加えて在宅勤務におけるコンプライアンスの徹底も図られていると思われます。
社内報のメディア構成にも大きな変化が
ウィズ・コロナ時代の今、企業はかつて経験のない環境に置かれています。景気の先行きが見えず、従業員は自社の業績や雇用に不安を抱いているはずです。働き方がさらに多様化する中で、企業は従業員とのエンゲージメントをどう高めるか変革を迫られ、ニューノーマルな対応が求められています。
それとともに、社内報ツールの選択も変わりつつあります。
この中の左上の小さな円グラフは2019年11月、その斜め右下の大きな円グラフは2020年8月に実施したアンケートの結果です。2019年は「印刷社内報のみ」が51.5%と最も多く、Web媒体との併用は29.5%でしたが、2020年は「印刷とWebの併用」が最も多く、43.4%に上っています。この傾向は企業規模に比例し、従業員5,001人以上の大企業は57.1%が「併用」と回答しています。
こちらは縦軸を時間、横軸をターゲットとして、インターナルコミュニケーション・ツールをマッピングしたものですが、社員がオフィスから離れると、物理的なつながりよりも精神的なつながりが、より求められるようになります。
その結果、紙媒体の社内報や壁新聞、デジタルサイネージ、社内テレビ放送などの利用が減り、それに代わってWeb社内報や社内SNS、メール送信や動画配信などのデジタルツールが飛躍的に増えました。また、スマホ用アプリの導入も進んでいます。
これらを背景に、2021年度以降に発行予定の社内報メディアは「印刷社内報とWeb社内報の併用」が57%に増え、「Web のみ」が20.2%とそれに続いています。一方、2019年に51.5%を占めていた「印刷のみ」は18.6%にまで縮小しており、今後はWeb社内報が主流になると予想されます。
Web社内報ならではのハードルにも、柔軟に対応する兆しが
ただし、現状のWeb社内報にも課題はあります。
現状では「PDFまたは電子ブック」の利用が69%と最も多いのですが、これは紙媒体から移行する過程として、イントラなら手近だということでしょう。
他にCMS*1を活用する企業も26.5%あります。CMSならサイトの更新も簡単・迅速にでき、マルチデバイスへの対応やコンテンツの内製も可能になります。
グループウエア*2も23.2%とそれに続きますが、すでに導入済みのシステムを使うので追加コストを抑制できるものの、デザイン上の制約があるなどの課題が残ります。
また、動画配信プラットフォーム*3も12.3%の企業が使用しています。一方、HTML*4コーディングは内製が難しく、外注コストなどがかさむことから、減少傾向にあります。その他クラウド上の ASP*5サービスや社内 SNS*6も使用されています。
〈用語解説〉
*1:CMS(Contents Management System:コンテンツマネジメントシステム)
Webサイトのコンテンツ制作において、テキスト、画像、デザイン・レイアウトなどをまとめて管理するシステム。
*2:グループウエア(Groupware)
ネットワークを使用したユーザー間の情報共有など、業務の効率化を図るシステム用のソフトウエア。
*3:動画配信プラットフォーム
自社制作の動画を多くのユーザーに配信できるプラットフォーム。
*4:HTML(HyperText Markup Language)
Webページを作成するプログラム言語の一種
*5:ASP(Application Service Provider:アプリケーションサービスプロバイダ)
クラウド上にプログラムデータを置き、ネットワークを通じてソフトウエアが実行できるようにしたサービス。
*6:社内 SNS
社内ソーシャルネットワークサービス。Workplace、Yammerなど。
これが2021年度の見込みでは現在主力のPDF が 46.3%に減少し、CMS とグループウエアがそれぞれ53.7%と1位に並びます。 ASP や動画配信プラットフォームも22%と飛躍的に増え、ツールにも大きな変化が予想されます。
Web社内報には閲覧制限の緩和という課題もあります。現状では、個人所有のPC使用は32.1%、スマホ・タブレットは29.5%の企業が使用を認めていますが、これも次年度はPCが39%、スマホやタブレットは51.2%の企業が閲覧可としたいと答えており、個人所有のデバイス活用がいっそう進むと考えられます。
どのWebツールにも一長一短がありますから、複合的に使うことで全社から部署レベルのコミュニケーションまで活性化が図れるのではないでしょうか。
Web社内報時代における5つの制作課題
社内報メディアが変化を遂げる今、インターナルコミュニケーションの活性化を図るためのポイントをまとめました。
インターナルコミュニケーションの活性化を図るためのポイント
- 接点の強化
タイムリーな情報共有にはスマホでの閲覧が主流になることを念頭に置く。 - 双方向性の促進
社員をどう巻き込むか。掲示板などで意見やアイデアの交換を行うのも一つの方法。 - 改善の仕組み化
アンケートなどの効果測定を行ってPDCAを回す。年代・所属など属性別に読まれるコンテンツを把握し、継続的にブラッシュアップする。 - 関心喚起力・コンテンツ力向上
人気記事ランキングの発表、動画や音声などを使ってコンテンツの魅力を上げる。 - ターゲティング強化
ターゲット別に回線を分け、読んでほしいコンテンツを選別して提供する。
2021年は、こうした視点からコミュニケーションのインフラをどうデザインするかが重要になります。
昨今、ブランディングの一環として社内報をWeb公開する企業もありますが、まだ少数派です。ただし、全てのコンテンツをオープンにしなくても、一部を公式サイトに掲載する企業は増えています。複合的なツールの活用には、社内外はもちろん、社内でもターゲットを分け、コンテンツを慎重に選り分けて発信していく必要があるでしょう。
社内報の担当者は、会社のトップや現場、お客さまをも巻き込んで、企業風土の改善や課題解決を図る中心人物です。私は、それを「インターナルコミュニケーション・プロデューサー」と呼んでいます。ぜひ皆さんもその認識で、一緒に社内報業界を盛り上げていきましょう。
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