ウィズワークスでは、社内報をはじめとした企業のインターナルコミュニケーション(以下、IC)施策の実態を分析・把握するため、「全国社内報実態調査」を定期的に実施し、分析レポートを『社内報白書』としてまとめています。今年春には『社内報白書2020』を発行。これを手がかりに、社内報の最新トレンドを読み解いていきます。[シリーズ『社内報白書2020』で読む社内報最新トレンド(3)]
※[シリーズ(1) 社内報の役割は、「経営情報の伝達」から「経営戦略」へ] [シリーズ(2) 担当者の「お悩み」から垣間見える、社内報の進化の兆し]もぜひご覧ください。
大企業を中心にWeb活用が拡大
Web社内報のトレンド考察に当たり、「印刷社内報・Web社内報発行の現状」についてシリーズ連載(1)を少し振り返ってみましょう。
印刷社内報・Web社内報発行の現状
印刷社内報のみ…………51.5%
印刷・Web社内報併用…29.5%
Web社内報のみ…………14.3%
【詳細は、お役立ち資料「社内報白書2020(2) 社内報は紙? Web?」をご覧ください】
調査時点では、51.5%が「印刷社内報のみ」と回答。「印刷・Web併用」の29.5%と合わせると、回答企業の約8割が印刷社内報を発行しており、2018年の前回調査と変わらず、今も主流は「紙」との結果になりました。
ただし、従業員数3,000人以上の企業に絞ると、「印刷・Web併用」の回答は44.4%へと大きくアップ。「Web社内報のみ」と合わせると回答企業の約6割がWeb社内報を発行しており、企業規模が大きくなるほどWeb活用が進んでいる傾向が見てとれました。
この状況は、コロナ禍により拍車がかかっているようです。感染拡大防止のためにテレワークが進んだ結果、従業員の手元に印刷社内報を届けられないという事態が多発するとともに、従業員の不安を払しょくするためのトップメッセージをタイムリーに発信する必要に迫られるといった事情から、これを機にWeb化を検討する企業が急増しているのです。さらには、経営状況の悪化から、コスト抑制のために印刷社内報をWebに切り替えることを検討する企業も多いようです。
経営環境が激しく変化する中、情報共有のスピードを求めてWeb活用が拡大しているのは明らかです。ウィズ・コロナ、アフター・コロナ時代となる次年度の社内報をどう運営していくのか。社内報総合研究所では8月上旬に緊急アンケートを実施いたしました。その集計・分析結果は、改めてお伝えいたします。
Web社内報閲覧対象は「社内」のみの傾向
2位の「デザイン・見せ方に満足していない」、3位の「独創性や斬新さがない」も、前回とほぼ同じ順位となり、普遍的なお悩みと言えそうです。この2項目と、7位の「記事の文章表現に満足していない」は、企画や制作面のお悩みです。
社内報づくりには、専門的な編集スキルが必要ですが、広報をはじめ社内報に関わる職種は専門職ではありません。とりわけ大企業では、ジョブ・ローテーションの観点から2~3年での異動が当たり前。「やっと編集のあれこれがわかってきた。これからそのスキルを発揮!」というタイミングで他部署へ異動、ということは珍しくありません。そして人員的リソース不足や働き方改革の動きもあいまって、専門スキルを要するレイアウト・デザインや取材・原稿執筆、校正・校閲などの業務をアウトソースする企業が増える傾向にあります。
悩みの中に、社内報の未来が見える!
さて、紙とWebで「配布・閲覧対象」を比較すると、項目により大きな違いが見られました。
印刷社内報・Web社内報|配布・閲覧対象者 ※主なもの
正社員……99.1%[紙]/97.3%[Web]
パート……57.2%[紙]/46.5%[Web]
内定者……55.5%[紙]/9.6%[Web]
OB・OG…45.4%[紙]/5.9%[Web]
社員の家族…35.7%[紙]/8.6%[Web]
【詳細はお役立ち資料「社内報白書2020(5) 紙とWebで閲覧対象者が変化」をご覧ください】
正社員を配布・閲覧対象としている企業は、印刷社内報・Web社内報とも100%近い数字で差はありませんが、これが「パート」「内定者」「OB・OG」「社員の家族」となると、Web社内報では極端に少なくなります。これには、各メディアの特性(紙は物理的な配布/Webはネットワーク経由の閲覧)が影響していると思われます。Web社内報は一般的に、社内に閉じた環境下で運用する自社イントラに開設するケースが多く、外部アクセス対応が難しい事情があるのでしょう。
ただ、今後変化するかもしれない動きも見て取れます。Web社内報の「内定者」は2018年調査では2.5%だったのが2020年は9.6%へ、「社員の家族」は3.8%から8.6%へと伸びています。これは、印刷社内報を採用に活用する企業が増えたり、オープン社内報が増えたりという動きと通じるのかもしれません。「Web社内報は外部アクセス対応が困難」という従来の常識を乗り越え、少しずつ新たな展開が見え始めている、という解釈もできそうです。
Web社内報の更新頻度も増加傾向に
Web社内報|更新頻度(1カ月当たりの更新回数)
2回以下…39.0%
6~3回……24.6%
14~7回…19.8%
15回以上…16.6%
【詳細はお役立ち資料「社内報白書2020(6) Web社内報の更新頻度」をご覧ください】
Web社内報の更新頻度の回答で最も多かったのは2018年の前回調査と変わらず、「1カ月に2回以下」。せっかくの速報性のメリットを生かしきれているとはいえない頻度です。これはおそらく、紙からWebに移行しても、制作の体制・スタイルはWebに移行しきれず、PDF版をWebにアップしているケースが含まれている点も影響していると思われます。
一方、「1カ月に15回以上」更新している企業も16.6%ありました。これは、グループウエアやCMSといったシステムの導入により、アップ作業が比較的容易になったためでしょう。
ところで、Web社内報の更新頻度は前回調査の2018年度から動きはあったのでしょうか? 下記をご覧ください。
「社内報白書2018」でのWeb社内報|更新頻度(1カ月当たりの更新回数)
2回以下…48.4%(2020では9.4ポイントダウン)
6~3回……24.2%(2020とほぼ横ばい)
14~7回…12.7%(2020では7.1ポイントアップ)
15回以上…14.6%(2020では2ポイントアップ)
「2回以下」が9.4ポイントダウンということはつまり、3回以上更新している企業が増えたと推測され、また、「14~7回」「15回以上」がともにアップしていることと併せて考えても、Web社内報の更新頻度は前回調査より上向き傾向にあると言えそうです。
これは、前述したように、グループウエアやCMSといったシステムの導入に起因しているのかもしれませんが、そうは言っても社内報担当者が1人の場合など、コンテンツ作成の作業負荷は決して軽くはないでしょう。「職場からの寄稿を、アップまで各職場に一任する」あるいは「社内報担当部署でのチェックを経てアップする」といった制作体制の組み方も、更新頻度に影響を与えます。更新頻度を上げたいなら、制作体制の見直しから始めたいところです。
では、更新頻度の“正解”は何回なのでしょう? その答えを導き出すためには、「読者」に対する配慮が欠かせません。更新頻度を高めて情報量が増えても、それが読者にとって関心が低い情報だったり、記事の質が低い内容だったりすると、読者離れが起こるおそれがあります。
常に忘れてはならないのは、「読者目線」です。従業員(読者)のニーズや閲覧時間などを十分考慮し、自社のWeb社内報に最適な更新頻度を見極めていきましょう。
社内報ナビでは、今後も社内報の最新トレンドをご紹介していきます。どうぞお楽しみに!
[まとめて読むと社内報に対する理解が一層深まります!]
[シリーズ『社内報白書2020』で読む社内報最新トレンド]