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愛社精神を育み存在価値を高めた「読まれる社史」作り6つの極意(シンフォニアテクノロジー株式会社)

シンフォニアテクノロジーの皆さま
左から広報宣伝グループ 細目麻未さん、広報宣伝グループ長 嶽本幸一さん、小林雅子さん、山岡則夫さん

10月18日に開催した「社内報アワード2018 表彰&ナレッジ共有イベント」では、上位入賞を果たした優秀企業8社にプレゼンターとなっていただき、「社内報制作の事例発表」を行いました。「社内報ナビ」では、各社の発表内容をご紹介していきます。

第1回は、本格的な社史編纂はこれが初めてという「創業100年史」で、「社内報アワード2018」特別部門ゴールド賞を受賞した、シンフォニアテクノロジー株式会社です。社史編纂に最も役立った資料は過去の社内報。5年に及ぶ作業の中で蓄積されたノウハウは、業種を問わず、これから社史を編纂する担当者に大いに参考となるでしょう。

5年前から4つのステップで進行管理

 これから社史を編纂される担当者の皆さんに向け、特に大切なコンセプト作りを中心にお話ししたいと思います。

 当社が創業100年史の企画を開始したのは、発刊の5年前です。5年に及ぶ制作期間は、全体作業を4つのステップに分けて進めました。

1) 当初2年間:
準備期間として資料収集

2) 3年目:
本格的な骨子固め

3) 4年目:
推敲期間

4) 最後の1年:
校正期間

 5年という期間の設定は、会社の中期経営計画に沿ったものです。通常は3、4年で組まれるものが、このときは創業100年までの5カ年計画となり、そこで予算を組むことになりました。

 実は、当社では本格的な社史編纂は今回が初めてでした。過去には設立20年史の薄い冊子が1970年に発刊されただけで、その後も計画はあったものの諸事情で中止となり、社内でも会社の歴史をあまり知らない人がほとんどでした。

 そこで最初に取り組んだことは、いろいろな会社を訪問して社史の作り方を一から教わること。各社での主な質問項目は、「作業の開始時期」「作業体制」「着手する順番」「一番困ったこと」「事実確認の方法」「OBとの関係作り」「校正の回数」「作業スペースの確保」などです。ほかに、制作会社の選定や費用についても情報を集めました。

 得られた情報を踏まえ、当社では本格的な作業を発刊の3年前から開始。社内報担当者で主な作業を進行し、専用の作業部屋も確保しました。

 制作会社選定に当たってはコンペを実施。次のような選定基準を設けました。

  • 当社側の不得意分野をカバーしてもらえること:
    当社の担当者は文系が多いので、技術・機械系に強いベテランライターに担当いただきたい旨、要望しました。
  • 相手との相性:
    長いお付き合いになるので、重要なポイントと考えました。
  • 何か変更が生じたときに柔軟な対応が取れること:
    すべて想定どおりにはいかないであろう初めての社史なので、これも外せない条件でした。

 共同作業については月例会議を行い、次の会議までに宿題をお互いクリアする形を取りました。制作会社とは1つのチームとして対等な立場で活動しますから、コミュニケーションが大切です。特に、ライターさんと厚い信頼関係を構築できたことは良かったと思います。

 翌年には、社内に「創業100年事業プロジェクト委員会」が立ち上がり、その下部組織として社史編纂部会ができました。編纂部会は社史編纂のコンセプトや資料編の内容を検討する機関として機能し、実作業の大半は社内報チームが主担当に。

 この時期は第2段階の骨子作りに当たりますが、1年間にわたり、経営会議で毎回社史の概容を経営陣に話す時間を取ってもらいました。これにより、進行上の混乱を避けることができたのは、大きなメリットです。

何より大切な「読まれる社史」にする6つの極意

 コンセプト作りに当たっては、まず社外に対しては「電機メーカーとしての実績を紹介し、存在価値をアピールしたい」、社内に向けては「愛社精神を育むものにしたい」、OBやOGには「感謝の意を伝えたい」という目的がありました。

 その上で、「誰も読んでないよ」と言われては社史の役目を果たしませんから、何よりもまず「読まれる社史」を作ることを目指しました。

 「読まれる」ためには、逆の、「読まれない」要因を挙げ、それらを一つひとつつぶしていけばいい。そう考えて、次のように整理しました。

[読まれない要因①~⑥ →つぶし方]

①辞書のように大きい

→単行本のように、出張に持っていけるサイズにすることを目標に

 

②文字ばかりの誌面

→各ページに必ず写真を入れ、ない場合は新聞の切り抜きなどを使用

 

③出来事の羅列が多い

→辞書のようなものではなくストーリー仕立てにし、文章のつながりを大切に

 

④製品や技術の説明が長い

→専門用語をあまり使わないようにし、簡略化

 

⑤自慢話ばかりが載っている

→自慢話は極力省き、マイナス要因もなるべく隠さずに掲載

 

⑥時系列が前後して混乱する

→例えば、製品開発から衰退までのライフサイクルを追うと、次の章で年代が後戻りしてしまうため、それを避ける構成に。また、写真も文章の流れに組み込み、読みながら後戻りしないように

シンフォニアテクノロジー100年史_目次と章扉
時系列を混乱させない章立てを採用(⑥)/読みたい気持ちを喚起するビジュアル面の配慮(②) ※クリックで拡大

数々の工夫で練り上げた読み応えあるストーリー

 内容面で一番苦心したのは、登場人物を創業者と歴代社長、初期に活躍した方々に絞り、それぞれを主人公にしたストーリー仕立てにしたところです。

 社史は前から順に読むので、前半には特に面白みを持たせなくてはなりません。プロローグに重点を置き、最初のページでは当社が三重県鳥羽で創業したことから有名な九鬼水軍を取り上げ、そこから造船所が造られたという展開に。また、本編が物足りないところにはコラムも入れました。

 もうひとつの工夫は、時代の変化が読み取れるようにしたことです。一企業の歴史だけではなく、近代史の一端をとらえる読み応えを出したいと思ったのです。

 基となる資料については、デジタル化されていない古い写真を年代別のファイルにどんどん入れて整理しました。また、社内報も大いに役立ちました。特に歴代社長の年頭所感では、毎年の世の中の動きの総括や、会社の業績が語られますので、使い勝手が良かったと思います。

 これらを基に1年かけて粗年表を作成し、ラフな原稿を仕上げ、第3段階の推敲期間でさらに1年をかけてライターとストーリーを練り上げました。

シンフォニアテクノロジー100年史_本編例
近代史をもとらえる読み応えを醸すストーリーテリング(有名な九鬼水軍から造船所開所へと展開する部分) ※クリックで拡大

手間も時間もかかる校正は「絞り込み」が重要

シンフォニアテクノロジー100年史_本編例
事実関係の正確性担保のためにもプロの校閲者への依頼はおすすめ ※クリックで拡大

 校正については、まず各事業部のベテラン社員に見てもらい、次に社友会会長にOBの人選を頼み、各事業について1人ずつ、事実確認のみ見直してもらいました。こうした流れで、その後の役員チェックもスムーズに進みました。

 社史では、同じ文章を用いることが多いので、表記を統一しておくといいでしょう。誤字脱字、表現の見直しは、面倒でも読み合わせが一番です。

 社内の校正が済むと、最後はプロの校閲者の出番です。文章のグレードがぐっと上がりますので、必ず校閲は依頼したほうがいいと思います。

 まとめとして、3つのポイントを挙げておきます。

①方針の堅持にはコンセプトの逐一確認を

長期間の作業では、方針がぶれないようにコンセプトの確認が逐一必要です。

 

②社内報は社史編纂に最も役立つ資料

当社の社内報は60年前からありますが、いかに継続が大切かということを再確認しました。

 

③校正はある程度範囲を絞って

校正は、手当たり次第に頼まないこと。ある程度範囲を絞り込みましょう。

 最後になりますが、集めた資料の中には掲載できないものも多く、当社では発刊の2年ほど前から先行して、社内報で「社史こぼれ話」という連載を開始しました。これは、社史発刊後の今も続いており、多くの社員に読まれています。

シンフォニアテクノロジー100年史編集後記
思いの溢れる編集後記。これから社史・周年誌を制作する社内報担当者なら必読 ※クリックで拡大
  • シンフォニアテクノロジー創業100年史
    発行:2017年
    発行部数:10,000部
    仕様: A5版、4色、本編336ページ 別冊80ページ

  • 会社情報
    URL:http://www.sinfo-t.jp/

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