世界No.1タイヤメーカーとして、日本を代表するグローバル企業に数えられる株式会社ブリヂストン。世界26か国に180以上の生産・開発拠点を持ち、全従業員約14万3,000人のうち約7割が外国人という同社では、世界を4つ(日本/米州/欧州・ロシア・中近東・アフリカ/中国・アジア大洋州)の区域に分ける地域本社制度(SBU制度)を導入。それぞれに広報機能を置き、地域の特性・文化に合わせた広報活動を行っています。
その中で、日本でのインターナル・コミュニケーションを担当するのが、本社広報部広報第3課。ほぼ毎日更新するWeb版『Arrow』と隔月発行の冊子版『Arrow ダイジェスト』の2つのツールを軸に、グループ全体へ日々情報を発信しています。編集部に与えられた使命と、それを叶えるための取り組みについて、詳しいお話を伺いました。
パソコン環境に合わせて2つのツールを使い分け
「ツールの使い分けは、業務用パソコンを1人1台持つ従業員へはWeb版、その環境にない方々には冊子版、と分けています。ですが、2つを別物とはとらえておらず、同じ情報を別の方法で伝えるという感覚で発信しています」と話すのは、課長の馬場大輔さん。
長らく1969年創刊の冊子1本でやって来た同社ですが、社内ネットワークの構築状況に合わせて徐々にWeb化を推進。数年前、業務用パソコンを保有する従業員への冊子配布を思い切って取りやめました。現在は、リアルタイムに情報発信できるWeb版をベースに、冊子版はそのダイジェスト版と位置付け隔月発行。Webで流す情報の中から絶対に届けたい重要なコンテンツを精査して掲載しています。
ブレない編集で読者の信頼を獲得
冊子版の配布対象は、製造現場や販売店などの子会社を含む国内全グループ会社。そのため「グループ報」と呼称していますが、関連会社にも配布しているのが特徴です。「端的にいえば、『ブリヂストン』の看板でお客様に接している方々全員に届けようということ。読者の幅が広いだけに、編集作業には、しっかりとした指針が不可欠です」と馬場さん。
編集方針には、「社内状況に合ったテーマ」「経営メッセージをわかりやすく噛み砕いて伝えること」「さまざまな職種・部門にアプローチすること」「多くの従業員を登場させること」の4つを掲げていますが、最も注意しているのは、〈媒体の信頼を損ねないこと〉だと言います。
「真面目な社風なので、肝に銘じているのは、柔らかさや面白さを出すためであっても、一線は踏み越えないこと。例えば、漫画を使うにしても、〈ちゃんと伝えるにはこれが必要〉と言い切れることが肝心で、〈読後感に何を残したいか〉から考え、それを達成するためにどんな手段が最適なのかを模索するようにしています。そうすればブレが出ませんし、それが信頼を得る一番の近道だと思うのです」
ある企画で誕生し、絶大な支持を集める「Arrowくん」というキャラクターも、そうした理由から、多用し過ぎないように気をつけているのだとか。とはいえ、人気を受け3D化した「Arrowくん」は今や取材の場を和ませるのに欠かせない重要な存在。さまざまなイベントに出張し、「アロー君ブログ」を発信するなど多方面で大活躍しています。
しっかりした年間計画がバランスの良い誌面を生む
もう一つ、大事にしているのが、バランスです。どんな企画でも、誰に向けているかを明確にすることが大切ですが、冊子版は企画ごとではなく、1冊でバランスを取るようにしているそうです。
「現実的に、1冊同じターゲットというのは難しいので、特集はこの部門を対象に、連載はあの部門向けに、という風に振り分け、『この号は自分には関係ない』と思われないようにしています」と話すのは、編集部員の齊藤小夏さん。
それとは反対に、あえて特定の部門にフォーカスすることもあるのだとか。「例えば、販売部門のことをもっと知ってもらうという目的で、会社も商材も異なる販売部門を2企画続けて取り上げたり。そうすることで、販売に携わる従業員が何を考えているのかが、多角的に見えてくる仕掛けです」と話すのは、齋藤紀子さん。冊子版・Web版の制作は、この2人がメインで行っています。
まさに「練り上げられた」という言葉がふさわしい編集ですが、この緻密な戦略を支えているのが年間計画です。「1年を通してストーリーを組み立てるためにも、年間台割は欠かせません。バランスも自然と見えてきますし、この話題はこのタイミングで、このネタは連載でジワジワ浸透を図ろう、といった具体的な対策を打つのにも有効です」と、口を揃えます。
通信員制度の活用で人と部門に多様性を
気になる情報収集に関しては、全国の通信員たちが一役買っています。その数、実に135人。彼らには、情報提供はもちろん、取材の人選やセッティングも依頼しています。
「大きな組織ですから、特に人選では力になってもらっています。できるだけ多くの従業員を載せる、という目的が実現できているのも、ひとえに通信員の皆さんのおかげですね」と、齊藤小夏さん。加えて、部門からの売り込みも多く、社内に周知したいトピックがある時など、役員からも「『Arrow』を使おう」の声が挙がると言います。これこそ、『Arrow』が信頼されていることの何よりの証しと言えるでしょう。
また、グローバルに展開する施策などでは、必要に応じて、海外の広報拠点とも連携を図っています。一例を挙げると、全世界の従業員を対象に年1回実施される社内表彰「BGA(ブリヂストン・グループ・アワード)」。この表彰式が行われるのは日本。重要なトピックとして編集部が取材を行っていますが、受賞者は世界各国から集まっているためインタビューは英語で実施、記事の英訳版を作り、各地域に配信しているとか。さらに、グループ全体に関わる経営メッセージなども随時英訳して発信しています。
現状に甘んじることなくさらなる進化を目指す
数々の工夫が盛り込まれた冊子版『Arrow』。「社内報アワード2017」では初参加にしてゴールド賞に輝くなど、社外からも高い評価を受ける同誌ですが、常により良いグループ報を目指して改善をしています。冊子版では、主にデザイン面で全体のトーンを揃えるように、誌面リニューアルを図っているとか。また、Web版でも、スマートフォン対応のページを大幅に増やすなど、時代に合わせて進化を続けています。
さらなる信頼獲得と、誰からも愛される媒体を目指して。飽くなき挑戦が続きます。
- グループ報『Arrow』
創刊:1969年
発行部数:約2万5,000部
仕様:A4版、4色、28~32ページ
発行頻度:隔月 - 会社情報
URL:www.bridgestone.co.jp