100年に一度の大変革期を迎えた自動車業界。グローバルで3万5,000人の従業員が在籍する豊田合成では、「社内報」を活用してグループのインターナルコミュニケーション活性化に取り組んでいます。
国内向けには日本語版社内報『TG TIMES(季刊/冊子)』と『TG NEWS(月刊/新聞)』、海外向けには英語版社内報『TG NEWS(月刊/PDF)』を発行。併せて国内外をカバーする『GLOBAL TG NET(随時/イントラ)』も活用しています。さらに、近年力を入れているのは海外拠点の社内報発行支援。グループの広報活動を幅広く展開するTG編集部の舞台裏を覗いてみました。
ヘッドオフィスがグローバル拠点の社内報づくりを支援
「国内外のグループ会社は66社。この10年で従業員数は1万5,000人から3万5,000人へと急増しています。新しく加わった従業員にも、自社グループの価値観を共有してもらうため、また組織の中で働く人たちが“タテ・ヨコ・ナナメ”につながっていくためにも、社内報(グループ報)の役割は、今まで以上に大きくなっています」と語るのは、広報室企業広報グループチームリーダーの浅倉正二郎さん。
社内報(グループ報)は歴代トップからの期待も大きく、TG編集部としてはうれしい半面、責任の重さも感じています。従来の社内報(グループ報)をより良くしていくことはもちろん、この2年間は特に「海外拠点の社内報発行支援」に注力しています。
「デザイン」のハードルを乗り越え、社内報を次々と創刊
「全世界でグループの価値観を共有」と口で言うのは簡単ですが、国や地域によって、当然文化もコミュニケーション・スタイルも全く違います。ヘッドオフィスでは「同じ情報をくまなく伝えるだけでは不十分」と考え、地域・拠点ごとの「現地社内報」創刊を決定。しかし、実現は容易ではありませんでした。
立ち上げに向けた手順書を準備し、主要拠点にテレビ会議で説明。丁寧なプロセスを心掛けましたが、なかなか前に進みません。コミュニケーションを重ねるうちに見えてきたのは、「社内報のデザイン制作」が高いハードルになっている事実でした。
そこで、編集部は現地社内報共通のデザインフォーマットを作成。誰もが手軽に扱えるよう、ソフトはMicrosoft PowerPointを採用しました。この「フォーマット作戦」が功を奏し、1拠点、また1拠点と現地社内報が誕生。目標とする36拠点中、24拠点まで創刊にこぎ着けました。
誌面登場で、国内グループ会社とのつながりを強化
グローバル拠点の社内広報支援を行う傍ら、国内グループ会社の巻き込みも進行中です。国内グループ会社は、距離的にも文化的にも比較的身近な存在。しかし、これまで発行したことのない会社に社内報発行を勧めても「自分たちは、それほど規模が大きくないからいいですよ」という答えが返ってきます。
そこで、最初から社内報の発行を勧めるのではなく、社内報(グループ報)でグループ会社を取材し、紹介することに。すると、当初は関心の薄かったグループ会社のトップも従業員も、自分たちが掲載され、周囲から反響を直接受け取ることで、社内報のメリットを実感。「社内報は、思っていたより良いものかも」と次第に心が動いていくようでした。
こうした丁寧なコミュニケーションを通じた「ステップ・バイ・ステップ」の地道なスタイルが、豊田合成編集部流と言えそうです。
情報が「自然に」集まる社内報、その背景にあるもの
TG編集部の強みは「情報力」。毎月発行する『TG NEWS』では、編集部が依頼をして社内のニュースを集めるのではなく、国内外のさまざまな地域や拠点から情報が入ってきます。いつ、どのようにして、そんな理想的な状態が形づくられたのでしょう? 何か得策を講じたのでしょうか?
社内報担当歴10年の森永さんは「最初から今のような状態ではなかったですし、特別な施策を打ったわけでもないのです。ただ、『普通の』コミュニケーションはずっと続けてきました」と言います。「普通の」コミュニケーションとは、情報をもらったら必ず記事にして掲載すること。取材などで接点をもった人とのリレーションは、「点」で終わらせずに、「線」でつないでいくこと。
このような姿勢で情報を扱い、コミュニケーションを重ねてきたところ、今まで情報提供のなかった部署からも「〇〇部門が載っていたね。今度はうちのニュースも載せてよ」「この新製品を紹介して」と声がかかるようになりました。以前は1カ月10件程度だった情報提供が、いまは多いときには30件程度に。ページ数を増やすまでにまでになりました。
「取材」で、グローバルコミュニケーションの地盤づくり
グローバルコミュニケーションの地盤づくりとして、TG編集部では海外取材も積極的に行っています。「毎年海外取材に行かせてもらっているのは、大変ぜいたくなことだと思っています。その分、現地の状況をしっかり見聞きし、社内報(グループ報)で伝えていきたい」という森永さんの言葉は力強く、担当者としての秘めたる覚悟がうかがえます。
昨年異動してきた川島義之さんもさっそくインドを取材し、それを契機にインドからの情報は自然と集まるように。取材で現地を訪れると、確実にリレーションは良好となり、コミュニケーションが活発になるそうです。
日本から編集部が現地を訪ね、現地社員の苦労を目の当たりにすることは、現地社員の立場に立って言い換えれば、理解者が増えること。だからこそ現地取材は歓迎されるのでしょう。
TG編集部のメンバーは、森永さん、川島さん、昨秋メンバーに加わった伊藤挙さんの3人。
2018年度は「環境変化・経営方針の認識などを軸に誌面づくりを強化したい。具体的には『TG NEWS』のグループ報化でグループ会社との絆を深め、グローバル発刊率の拡大に向けた発刊支援を引き続き行います」と息を合わせます。
先々にはSNSや動画活用も視野に入れていますが、「新しいものが加わっても、紙は残す。決してなくしません」とのこと。グローバル・グループのインターナルコミュニケーション活性化に向けた取り組みは、これからも「ステップ・バイ・ステップ」で続いていきます。
- 社内報『TG TIMES』概要
創刊:1957年
発行部数:7,500部
仕様:A4判、4色、24~28ページ
発行頻度:季刊 - 会社情報
URL:http://www.toyoda-gosei.co.jp/