
時代とともに社内報の価値は進化を遂げ、それに伴い「社内報アワード」の応募企画も年々磨かれてきました。今年も多くの挑戦と出会いを生んだ「社内報アワード2025」。その熱気の中で最高位に輝いたのが、今回ご紹介するグランプリ企画です。
数多くの力作の中から選ばれた理由や背景を、社内報総合研究所 所長・橋詰とともに振り返ります。課題に対する設計の巧みさ、アウトプットの質の高さに触れることで、皆さまの新たな発想や気づきにつながるはずです。
実際の誌面データや動画をご共有いただいております。転載などの二次利用はご遠慮ください。
また、一部機密情報、個人情報についてはモザイク加工等させていただいております。ご了承ください。
紙社内報部門/特集・単発企画8ページ以上
企業名:大和リース株式会社
媒体名:『あゆみ』
企画名:特集 令和6年能登半島地震 受け継ぐ使命、伝えたい想い
『あゆみ』Vol.89の表紙と実際の誌面
社内報総合研究所 橋詰より
2024年元日の能登半島地震において、応急仮設住宅を迅速に準備した支援プロジェクトを、象徴的な数字と関係者の言葉で振り返る一大記録。同社ではこの対応を「使命としての仕事」と位置付け、社是「事業を通じて人を育てる」にならい語り継ぐ教訓とするべく、同年夏号に全18ページの大特集を敢行しました。誇りを持って支援に臨んだ社員・関係者たちの行動を「追体験してもらうこと」を目的に、文体は一人称のリアルな声を中心に構成。貴重な写真の数々とともに、細部にまで熱の通った表現を徹底することにより、壮大なテーマに見合った求心力を発揮しました。
審査では、目的・設計からアウトプットまでブレることがなく、現場や関係各所と連携してIC担当としての「使命」も結実させた編集チームの想いに対して、各項目に高い評価が付きました。
紙社内報部門/1冊子 20ページ以上
企業名:日清食品ホールディングス株式会社
企画名:『KITCHEN OF THE EARTH』
『KITCHEN OF THE EARTH』2024年10月号表紙と実際の誌面
社内報総合研究所 橋詰より
攻めたテレビCMの印象が強い同社らしく、華やかなアートディレクションやデザイン感度の高さがまずは目立ちますが、トータルバランスに優れた仕上りで、文句なしのグランプリ受賞となりました。
同誌は「経営サポートツール」と位置付けられており、受賞号でもタイムリーな重要課題に根差した3つの特集を展開。その多くは社内で活躍する人を切り口に練られており、手触りは一見ライトながら、課題解決に向けてはっきりと一石を投じています。それ以外にもハッとさせる、ドキッとさせる、ついつい目で追いたくなる、そんな仕掛けが随所にあり、一冊を通じて読み手を飽きさせません。全体構成から情報の整理と絞り込み、読ませるところと見せるところのメリハリなどに、編集チームの優れたバランス感覚があふれ出ています。A4レターの版型もいいですね。
Web/アプリ社内報部門/企画単体
企業名:株式会社バンダイナムコエクスペリエンス
媒体名:『BANAMIGONLINE』
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企画名:次期中計への道
サイトトップページと受賞企画の『次期中計への道』で使用されたサムネイル
トップページはクリックするとフルスクリーンのキャプチャをご覧いただけます
社内報総合研究所 橋詰より
中計について知る機会が社内に少ないなか、自分ごととして捉えてもらうにはどうすればよいのか。IC担当者なら「あるある」といえる悩みですが、本作は固くなりがちな中計浸透企画を、意欲的な手法でほぐしたシリーズ企画です。
社歴の浅い層や正社員未満の層を主ターゲットに据えた対話調の演出で、連載初回で「中計とは何か」、2回目で「誰がどのようにつくっているのか」を丁寧にひも解いたからこそ、続く3回目で「経営トップが思いを語る」動画の訴求が最大限に高まる設計が秀逸でした。中計策定に携わるたくさんの人たちの想いやアクションにフォーカスし、「読者が知りたいこと」に忠実でいたからこそ、主ターゲット以外にも刺さる奥行きを獲得できたのでしょう。この斬新さと思い切りの良さが、審査でも高い評価を集めたポイントでした。
Web/アプリ社内報部門/媒体全体
企業名:キリンホールディングス株式会社
媒体名:『KIRIN Now』

サイトトップページ
社内報総合研究所 橋詰より
そもそもの誕生が2019年、長期グループビジョンの達成に向けてインターナルブランディングの重要性が高まっていたことによるものといいますから、『KIRIN Now』は根っからの経営ツールとしての出自を持ちます。研ぎ澄まされた発行目的が今も息づいているのはもちろん、編集方針やコンセプトといった思想から、回遊性や双方向性を含むUI/UX設計、平時の運用における効果測定と改善に至るまで隙が見当たりません。混戦となったWeb/アプリ社内報部門の媒体全体カテゴリーで、頭一つ抜けた評価を獲得したのも納得といえるでしょう。
収録コンテンツも練りに練られており、特に根幹となるCSV関連の発信は、読者の関与ステージごとに切り口を分けるなど、大いに参考になるはず。どれだけ分析しても学びが尽きない、経営と共にある社内広報のお手本ともいえる媒体です。
動画社内報部門
企業名:株式会社西武ホールディングス
企画名:グループビジョン動画 2025
社内報総合研究所 橋詰より
映像で見るビジョンブックさながら、特に目的・設計と、それを伝えるビジュアル表現が高く評価された動画作品です。
「でかける人を、ほほえむ人へ。」というグループスローガンの理解・共感と、社員個々人の現場・立場におけるつながりを再認識してもらうため、グループ8社・20名の方々と西武ホールディングスの会長が、スローガンの解釈や実践のストーリーを語っていく構成。インタビュー途中のインサートにありのままの業務風景が映りますが、この演出が効果的でした。誰しもの日常にもビジョンに対する矜持があるはずというメッセージであり、本作品ではさらに、シナリオやカンペを用いない対話形式により、社員の本音の言葉を引き出しています。力のある言葉と自然体な表情にすっと引き込まれるため、15分強という長尺があっという間に感じられました。
[特別部門]
企業名:株式会社リクルートホールディングス
媒体名:月刊 かもめ リクルートグループ創業65周年特別編集号『ROOT65』
リクルートグループ創業65周年特別編集号『ROOT65』誌面と表紙
社内報総合研究所 橋詰より
自社グループを65年間も存続させた、「根っこ」にある実践理論や意思決定プロセスを記録し、未来のリーダーたちが変革力・推進力として活かすために編さんされたケースブックです。社史としての性格も持ちつつ、未来に活きる知見集として仕立てられているのが最大の特徴。これまでも10年ごとに加筆されてきた『ROOT』をベースにしながら、時代ごとに意味・役割・手法を上書きして臨むICの活かし方も、同社に学びたい点だといえます。
掲載事例は直近10年分のプレスリリースなどの資料から吟味しており、1年ごとの象徴的な出来事をピックアップし、それを主導した主要な意思決定者へのインタビューで構成。巻末の編集後記にも制作サイドの強い想いがあふれ出ており、発行後に高評価が多く寄せられたというのも納得の、類まれな熱量に満ちた1冊でした。
いかがでしたか。ぜひ日々の取り組みの参考にしてみてください。ただし、社内報に唯一の正解はありません。各企業の理念や社風、目指す姿に寄り添った発信を追求することこそが、社内報の魅力であり面白いところです。
一緒に社内報、そしてインターナルコミュニケーションの力を信じて歩んでいきましょう!
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