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次世代メンバーに向け全面リニューアル(株式会社ワコールホールディングス)

「マンネリを打破したいが勇気がない」「やりたい企画を通せない」。そんな悩みを抱える方は少なくないでしょう。誌面刷新はどうすれば実現できるでしょうか。若手従業員向け社内報としてリニューアルを成功させた株式会社ワコールホールディングスにお話をうかがいました。

株式会社ワコールホールディングス IR・広報室 広報担当 原 敬寛さん(左)、谷垣裕子さん(右)

株式会社ワコールホールディングス IR・広報室 広報担当 原 敬寛さん(左)、谷垣裕子さん(右)

アンケートで見えてきた真の読者層

 ワコールホールディングスでは、グループ従業員を対象に、社内報『知己』を隔月で発行。1957年に創刊した本誌では、これまでメインターゲットであった管理職に必要な情報を伝え、トップダウンで全従業員に周知させるという目的のもと、読み応えある格調高い誌面づくりをしてきました。

 そんな連綿と続いてきた社内報がリニューアルしたのは、2013年の上長交代がきっかけ。新しく着任した上長から、なんと「社内報を読んでない」という衝撃的発言があったのです。疑問を抱いた私たちは、早速、現状把握のためのアンケートを実施。すると、ターゲットと考えていた課長、部長の管理職にあまり読まれていないことが判明しました。管理職は会社方針を職制で伝達される機会があるため、社内報から新しい情報を得ることは少ないのが理由でした。

 一方で、意外にも20~30代の従業員によく読まれていることがわかりました。なかでも突出して多いのが25~29歳。であれば、今後は情報を必要とする20~30代に向け情報発信をすべきでは。私たちはそんな仮説を立て、全面リニューアルに着手しました。

若手が手に取りやすい誌面に大変身

 まずは新しいターゲットへのヒアリングから。すると、「難しくて読んでない」「パラパラとページをめくるだけ」という声が多く聞かれました。それは文字量が多いことも原因のひとつ。そこで文字量を極力減らし、写真やグラフを多用するなど、デザインの刷新を図りました。

 めざすイメージは雑誌『BRUTUS』。外部のデザイン会社さんの知恵も借り、若手従業員が手に取りやすいよう“洗練”と“親しみやすさ”のあるレイアウトを模索し、本誌名もアルファベットの『CHIKI』をダイナミックに配置しました。

 さらに参加意識を高めるため、登場人物を増加。役員以外の人にも多く登場してもらうことで社内報に親近感を持ってもらうと同時に、世代間・世代内のコミュニケーションの活発化を狙いました。

 こうして方向性が決まったところで、最高経営会議の稟議にかけ、当時の担当者が役員前でプレゼン。思い切ったことではありましたが、社内報において役員の理解協力は不可欠です。プレゼンでは副社長をはじめ賛同を得たことも推進力になり、晴れてリニューアルが実現しました。

知己からCHIKIへのBefore&After
(↑クリックで拡大)

「砕けても当たりにいく」の精神でトライ!

 新生『CHIKI』では、企画から取材、撮影、執筆と、デザイン以外はすべて私たち2人が担当。特集については2人で案を出し、上長と擦り合わせますが、ここが大きな難関です。「その企画に意味はあるのか?」「他の企画との差別化は?」などと追求され、連続11回ダメ出しされたこともありました。

 そんな日々に鍛えられ、最近は3回ほどで企画が通ることも。上長が日ごろ話していることに聞き耳を立て、上長を巻き込みながら企画を立てていく……そんな姿勢が勝率を上げるポイントかもしれません(笑)。了承が得られた企画は、制作会社とのオリエンテーションを経てブラッシュアップ。ここで一度デザイナーさんにラフを上げてもらい、ラフに沿って取材を進めます。

 取材で重視しているのは事前準備。下調べを入念に行い、どんな記事になるかを想定、当日は答えを確認する感覚で行います。準備が十分だと話が散見せずにすみ、短い時間でも濃い内容の取材ができるように思います。

 原稿作成では、短く誰にでも分かる文章にすることに留意。専門用語は取材しているとわかった気になりがちなので、2人で確認しあい、噛み砕いて表現するよう努めています。それでも上長に提出すると原稿が真っ赤に染まることもあるので、言葉選びや文章表現は常に推敲を重ねています。

次のコミュニケーションにつながる企画を

 社内報は、担当者自身が面白いと思うもの、読みたいものを作らないと伝わりません。反響が大きかった企画に、「中途入社社員特集」があります。中途入社社員の生々しい言葉を掲載したことで人事部から少しお小言をもらいましたが、それくらいでないと読んでもらえない。上長の「いい子ちゃんの媒体じゃない」の言葉に背中を押してもらい奮闘しただけに、手応えを感じています。

 『CHIKI』はいま従業員の6割に読まれるようになりました。でも、まだ道半ば。もっと多くの人に読まれるものにしていきたい。社内報はただ情報を発信するだけでなく、読んだあとで周囲の人と意見交換したり、盛り上がったり…と、次のコミュニケーションにつなげることも大事だと思います。載せて終わりではなくて、そこから次のものが生まれてくる、そんな社内報をこれからもめざしていきたいですね。

 

谷垣さん

2015年9月に広報へ。紙媒体の『CHIKI』とWebの『i-Chiki』を担当しています。異動前は販促を4年半担当。大型の店頭プロモーションが控えていた時期の、まさかの異動でしたが、ちょうどリニューアル前、昇格試験のために社内報1年分を読み込んでいたので、『CHIKI』の変化がリアルタイムに実感できました。まだまだ勉強中ですが、いろいろな方との出会いで世界が広がるこの仕事にやりがいを感じています。(谷垣さん)


原さん2012年4月入社。紙媒体の『CHIKI』とホールディングスのHPの運営管理を担当。学生時代はスポーツ新聞の編集をしていたこともあり、商品リリースなどに関わりたくて広報を志望しましたが、いきなり社内報の担当になりました。知らないことを知ることができるのが社内報の魅力。一から自分たちで考えた企画をカタチにしていくのは楽しいですね。日々進化していく『CHIKI』に、これからもご期待ください!(原さん)


 

※『コミサポプラス』2016年8月号より転載

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