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潜在的なパワーをもつ社内報。2017年は何を担うか

2017年、社内報はどんな役割を担うのか。20年以上にわたり社内報審査を務めてこられたコンペ審査員の馬渕毅彦先生を中心に、ウィズワークス社長の浪木克文、月刊総務編集長 豊田健一の3人で、社内報を取り巻く環境や方向性を語り合いました。

左から、 弊社 代表取締役社長  浪木、馬淵文筆事務所  代表  馬淵毅彦さん、弊社『月刊総務』編集長  豊田

(左から、ウィズワークス株式会社  代表取締役社長  浪木克文さん、馬淵文筆事務所  代表  馬淵毅彦さん、ウィズワークス株式会社『月刊総務』編集長  豊田健一さん)

本音で語れば読者に伝わる

浪木 1903年から始まった日本の社内報の歴史を紐解くと、時代背景と共に社内報は発行目的や編集方針など変化を遂げながら、インナーコミュニケーションツールとして発展してきました。日本企業は世界の中でも長寿大国。社内報の存在が事業継続に少なからず寄与しているともいえるでしょう。ただし、昨今はM&Aなどによって会社規模が大きくなり、働く環境も変わっています。そうした中、経営者はこれまで醸成してきた会社の風土を継承していけるのか、危機感を持っているのではないでしょうか。

馬渕 社風の継承といえば、2016年の社内報企画コンペで審査をした株式会社サイバーエージェントの『ヒストリエ2』(特別部門)は秀逸でした。私は長年審査をして数々の企画を見てきましたが、その中でも群を抜く出来栄えです。「新しいことに挑戦し続ける企業文化を浸透させる」という藤田晋社長の思いが凝縮され、企業理念を具現化した一冊。過去の失敗も含めた歴史をリアルに事実として残している。指示のされ方もすごいし、それを形にした編集力も素晴らしいですね。

豊田 結局時代が変わろうと、インナーコミュニケーションはいかに本音で語れるかが問われるところ。最近の社内報の傾向として、どうしてもカタチから入る企業が多く見受けられます。そんな中で、目を引いたのは東京海上日動火災保険株式会社のWeb部門の動画企画。TOEICに挑む社員の姿がそのまま映し出されていました。この作品のように本音を覗かせる社内報には感動します。結局本音、本質、本物、そこにはリアルがあり、伝わるのです。

馬渕さん

今の時代をどう見るか?

浪木 長年社内報企画コンペの審査をされてきたお二人は、社内報を取り巻く「今の時代」をどのように感じていますか。

馬渕 まず「人」についていえば、二つのことを感じています。一つは今の人たちは何でもそつなくこなします。例えば社内報アワードでの発表などを見ても、皆さん立派で本当にすごいなと感心しました。もう一つ日常のコミュニケーションではメールの影響が大きいと思いますが、メールのCcによって責任体制が曖昧になっていることに懸念を覚えます。「安全運行の文化」といえるでしょうか。

浪木 私が社会に出たのはバブルの真っ最中、1990年でした。個人情報の扱いなども今とは違い、規制が少ない時代。いまはメール、SNSもあり、ちょっとした情報がすぐに拡散します。そこでリスク回避をするために発信する言葉が徐々に最大公約数になってしまうのでしょう。

豊田 我々の世代は常に戦い続ける「ガンダム世代」。いまの「ワンピース世代」は、ある理想像があり、昨日戦った敵であっても翌日になれば手を組むことさえある。そつなく、敵を作らずに安全運転。デジタルデバイスが発展、加速しているため、リアルな関係性が薄まってきています。だから穏便さを求めるのもしょうがないのです。

馬渕 それらの現象自体を良い悪いと一概にはいえませんが、問題はそういう文化や時代背景のもと、組織の中で働く人たちは、イキイキと生きがいを感じながら仕事ができているのだろうか? という疑問があります。

浪木 「イキイキと働く」といえばモチベーションが関係するでしょう。高度成長期は物欲が満たされることでモチベーションが上がった時代。しかしいまの働く人たちのモチベーションはさまざまです。会社のブランドや理念、製品、あるいは働く仲間など、各人のモチベーションにスイッチが入るのは、同じ会社に勤務していてもいろいろです。ですから、社内報で情報を出す際も、通り一遍の情報では誰も満足しない。それぞれのモチベーションを想定し、情報を整理し散りばめることが大事です。

弊社代表 浪木

経営理念を打ち出す使命

馬渕 そう、しっかり整理をしながら散りばめて行くうえで、押さえておかなければならないのは経営理念です。経営理念は、企業の「背骨」。社内報では企業理念を何らかのかたちで打ち出すことは使命であり、それが編集方針に結びついていなければいけません。

豊田 そこで今回のテーマについて「2017年はどんな年か」ですが、ずばり「変化」でしょう。米国ではトランプ大統領が就任し、英国はEUから離脱……。社内報担当者は社内に限らず社会情勢における「変化の察知」が必要不可欠です。ただし国や社会がいっているからという理由で画一的に行ってはいけません。環境を見据え変化を迎い入れたうえで、会社は、自分はどうあるべきか。いったんゼロベースで考え、仕事の意義を問い直すことです。社内報では問題提起型で企画を組むとよいのでは。社内報もテーマによっては識者や専門家も交え、社内報が社内と社外の中継地点の役割を果たすことも大切です。

馬渕 ただし社内報を考える上で「2017年はどんな年か?」ととらえること自体、いかがなものか、という疑問もあります。2016年、2017年という思考のフレームワークで社内報を眺めるより、私たちの会社は今どういう成長ステージにあるかを見据える必要があります。

弊社取締役 豊田

担当者は空気づくりを

浪木 社内報113年の歴史の中で今をとらえると、ツールも増えインナーコミュニケーションの重要性が増していることは間違いありません。働く人の価値観が多様化していく中で、多様な価値観をどう束ねていくか、その設計が問われています。マサチューセッツ工科大学元教授ダニエル・キム氏が提唱する「組織の成功循環モデル」にもあるように、「人と人の関係の質」が向上すると「思考の質」の向上につながります。思考の質が向上することで、次は「行動の質」の向上を促し、行動の質の向上によって、「成果の質」に結びついていくのです。この循環を繰り返していくことで、企業価値の向上が図られるのです。

馬渕 そう、私は社内報には潜在的なパワーがあるとずっと思っています。社内報はファクト(事実)の情報伝達をするだけでなく、企業文化、企業の空気をつくっていく役割ももっています。その力をいかに実現できるかは社内報担当者の力量次第。社内報担当者の皆さんにはご自身の力量磨きをしっかりやっていただいて、会社の空気を変えるくらいの社内報づくりに挑んでほしいですね。

 

※『コミサポプラス』2017年2月号より転載

 

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