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「自ら考え行動する」企業DNAを未来に引き継ぐために(東京海上日動火災保険株式会社)

制作背景などを語った、広報部広報グループの岩井 悠美さん
震災当時の緊迫した社内の様子が伝わる動画について、制作背景などを語ってくれたのは、東京海上日動火災保険株式会社 広報部広報グループの岩井 悠美さん

2021年10月5日(火)~8日(金)に開催した「社内報アワードONLINE EVENT 4DAYS」では、ゴールド賞受賞企業10社による、社内報制作の事例発表を行いました。「社内報ナビ」では、各社の発表内容を紹介していきます。

第5回は、東京海上日動火災保険株式会社様。「社内報アワード2021」では動画社内報部門および特別部門でゴールド賞に輝きました。東日本大震災から10年、損害保険会社としての使命感を再確認するため特別企画として制作された動画についてお話しくださいました。

社会の役に立つ良い会社「Good Company」を目指して

 昨東京海上日動火災保険株式会社は1879年に日本初の保険会社として誕生し、今年(2021年)で142年目を迎えます。当時は海外貿易の積荷を海難事故からお守りする「海上保険」からスタートし、日本の近代化を支えました。1914年には日本で初めて自動車保険の販売を開始し、自動車保険の歴史も100年を超えています。

 当社は創業以来、あらゆるリスクからお客様をお守りしています。社会の発展とともに、リスクも多様化してきていますが、そうした時代のニーズに対応した商品を取り揃え、「安心と安全」をご提供しています。皆様に身近な保険商品としては、自動車保険や、火災保険、ケガの補償の傷害保険、また旅行保険等があります。

 今回の企画にもある東日本大震災をはじめ、近年激甚化そして頻発化している大規模な自然災害の際に、迅速に保険金をお支払いするということは損害保険会社の使命であり、すべてのお客様をお守りするという気持ちで従業員一同使命感を持って業務にあたっています。

 東京海上グループは日本全国に拠点があり、海外にも多くのグループ会社を持つグローバル企業です。世界に約4万人の従業員がいますが、グループ共有のコア・バリューとして「To Be a Good Company」を掲げています。人や企業の挑戦を支えるということ。また、世の中のあらゆる「いざ」を支え、社会の役に立つ良い会社、「Good Company」を実現するというパーパスを私たちは大切にしています。当社の事業を推進すればするほど、社会課題の解決に繋がる、社会が良くなる、その結果として当社も持続的に成長することを目指しています。

社内広報の主な媒体

  1. 冊子グループ報「Nextage(ネクステージ)」 対象:東京海上グループ従業員
  2. 冊子代理店ニュース「Club Nextage」 対象:保険代理店の皆さん
  3. 社内放送「NextageHeadline」 配信先:全国の拠点のテレビ(衛星放送)
  4. Web社内報「NextageOnline」 対象:東京海上日動の従業員

震災後10年の節目に自社の使命を再確認する

 東日本大震災は日本にとって非常に深刻な大災害でしたが、損害保険会社である当社にとっても、「世のため人のため」というパーパス、DNAが発揮され、確立されるきっかけとなった出来事でした。

 当社では毎年3月に震災を振り返り、損害保険会社の使命について職場で話し合ったり、新人研修で震災をとり上げたりと、当時の思いを風化させない取り組みを続けています。震災から10年という節目を迎え、改めて私たちの存在意義や「お客様の”いざ”というときをお守りする」という使命を再確認するきっかけとするため、動画と冊子を制作することになりました。

ゴールド賞受賞作品:東日本大震災から10年「あの日を忘れない」

 

 東日本大震災の死者・行方不明者は22,000人以上、建物の全半壊は40万戸以上。あの日被災地で何が起こったのか、私たちは何ができたのか、忘れてはいけない記憶がある。
2011年3月11日午後2時46分、宮城県沖を震源とするマグニチュード9.0の地震が発生。30分後、巨大な津波が東北地方沿岸に打ち寄せ街を飲み込んでいく。(作品ナレーションより)

 

本店災害対策本部設置:震災当日午後3時33分
 東京丸の内の本社に本店災害対策本部が即座に設置され、被災地支援に向けた先遣隊の編成が行われる。

 「まず社員とその家族、代理店さんの安否を確認しなければお客様の対応ができないのが最大の課題だった」(隅 修三 東京海上日動火災社長/当時)
 「社員も被災者であるため、こちらの社員が現地に行って何が必要か指示をさせた」(永野毅 同専務取締役/当時)

 

先遣隊被災地へ出発:震災翌日3月12日
 先遣隊は支援物資を携え被災地へ。現地災害対策本部と東京本部によるテレビ会議が情報交換や意思決定の場となる。

 「毎日のテレビ会議では仙台側の発言が優先され、現場の状況をくみ取ってもらえた。経営陣も出席し、決定事項は稟議書がなくても即実行できた」(長尾 善行 東北ブロック担当常務執行役員/当時)

 「現地情報が入れば我々の考えも伝えられる。同時にテレビ会議の映像が全国の社員に共有できる」(隅社長/当時)

 

津波による被害/安否確認と支援活動
 道路が寸断され、代理店さんやお客様の安否確認と支援活動がはかどらない。

 「渋滞や回り道で、先方に着くのはお昼ごろ。どう効率的に回るか苦心しながら、安否確認できた方のお名前をボードに書く日々だった」(太田 宣良さん 仙台支店石巻担当課長/当時)
 「全国の支店・支社の備蓄品、代理店さんやお客様のご協力で本店に集まった大量の物資を、震災の翌々日から4 tトラックでどんどん送った」(隅社長/当時)

 

震災による大量の事故報告/2カ月での立会完了を目指す
 通信の復旧とともに、被災地の支店には被害報告が大量に届く。しかし人員不足が被災地の業務を圧迫し始める。

 「見たこともない大量の FAXを前に、早く保険金をお支払いしなくてはと思う一方、どれだけお待たせするのか不安になった」(早坂 恵里さん 東北損害サービス部/当時)
 「代理店さんやお客様の声を踏まえ、3月28日のテレビ会議で、2カ月で立会の目途をつけたいと提案した」(長尾常務執行役員/当時)
 「半年から1年はかかると想定したが、仙台のメンバーの危機感は強かった」(隅社長/当時)

 

全社を挙げ応援要員の集中派遣/2カ月で立会確認に目処
 本店災害対策本部は2カ月で被害物件の確認作業を完了させるため、被災地へ大量の人員を一気に送り出す。
「保険金の支払業務が未経験の社員も集めて現地にピストン輸送し、バスの中でビデオ研修をして、着いたらすぐ任務にかかってもらった」(永野専務取締役/当時)
「お客様に保険金を届ける方法を思案していたところ、東京海上の社員が全国から駆け付けてくれた」(保険代理店代表)
「3月下旬には鑑定人やアジャスターの方々がたくさん応援に来られ、代理店さんとともに厳しい状況を乗り越えようと強い一体感を持った」(早坂さん 東北損害サービス部/当時)
 「震災2カ月後の5月11日に、自社都合でお待たせするお客様をなくすという目標を立て、その通り実現できた」(長尾常務執行役員/当時)

 

本店災害対策本部:2011年5月12日
お客様をお待たせする状態はほぼなくなり、目処がついた一方、地震保険に未加入で保険金を受け取れないケースも多くあった。
 「今後はそんなことがないよう、保険のプロとしてお客様に伝え続けなければだめだと。また、私たちもこの地でお客様に支えられていると改めて感じた」(保険代理店代表)

 

 「自分の仕事が世のため人のためになるという実感を、社員の多くが持った。それが会社の文化として根付いたが、震災を経験していない若い人たちも新しく入社している。社員の大半が未経験者になっても、その企業DNAが引き継がれてほしいと切に願う」(隅社長/当時)

 

 2011年3月11日の出来事は大きな問いを投げかける。私たちの仕事とは何なのかを、保険とは誰のためにあるのかを。私たちに何ができるのか自ら考えを発信し行動する。答えはそこにしかない。

 

企画のコンセプト

①継承する 
 震災後に入社した社員は現在約3割。彼らに当時のリアルな状況を伝え、先輩社員の経験を語り継ぐ

②臨場感 
 時系列でストーリーを展開する。震災直後からの時系列に沿うことで、その場にいるような感覚を持ってもらう。

③メッセージ・体験談 
 当時の役員、最前線にいた社員にインタビューする。代理店さんの思いや行動が具体的に伝わるよう、さまざまな立場の視点を取り込む。

④真実 
 被災地である東北の支店の意見を踏まえ、真実を伝える。約2カ月で保険金支払い業務の目処をつけたことは、企業DNA「自ら考え行動する」の言葉通りに社員一人ひとりが実行した結果だと伝える。

 

 動画は3月上旬の放映を予定し、約5カ月で制作しました。一番苦労したのは最初の段階でした。コンセプトを明確にし、制作目的や企画内容を社内の関係者に周知して協力を仰ぐというフェーズですが、10年の間に社員の異動や退職があり、また、私を含め制作メンバーの多くが震災後に入社しており、社内関係者のどこまで範囲を広げて協力を要請した方がいいのか迷うこともありました。実際に制作が始まると、インタビューはスムーズでしたが、全てを盛り込むことはできないため、制作スタッフと密に連絡しながら編集作業を進めました。

 また、コロナ禍で出張が制限されたため、社内のインタビューはZoomで行いました。しかし画面録画では画質に限界があります。これを解決するために、出演者には事前に小型のデジタルビデオカメラを送り、インタビューを録画してもらうよう依頼しました。専用アプリを使って遠隔で画角の指示をしたり、リモートでもリアルさながらの取材ができるよう工夫をしました。

 当時の映像は、広報部の専属カメラマンが撮影したものです。当初は動画制作が目的ではありませんでしたが、カメラマンが現地へ取材に行き、第一線の社員や役員の対応など震災の記録は全て残っています。膨大なアーカイブから使うところを抜粋し、外部の会社にデータを提供して動画制作を依頼しました。

 社内では1週間にわたって放映し、在宅勤務でもイントラネットで見られるようにしました。各職場では3月11日前後に「東日本大震災を忘れないために」というテーマで議論する場があり、そこでも活用されました。

 社内からは「震災後の入社だが当時の映像が使われ、先輩社員の奮闘ぶりがよくわかった」「当時を思い出しながら見た。辛い出来事だが忘れてはいけない」「後輩に語り継ぐ必要があると痛感した」「当事者のさまざまな実体験に引き込まれ、損害保険会社社員として使命を再確認した」などの感想が寄せられ、当初の制作意図はしっかり伝わったと思います。

 今後も社内報メンバーは会社と社員を結ぶ架け橋として制作に努めていきます。

社員の反応から、制作意図がしっかり伝わったことがわかる
視聴した社員からの反応を見ると、制作意図がしっかり伝わったことがわかる

 

  • 東日本大震災から10年「あの日を忘れない」概要
    公開日:2021年3月上旬
    対象視聴者:全社員、代理店
    閲覧環境:社内衛星放送、社内イントラ、DVD、タブレット、スマホ等、様々な手段

  • 会社情報
    URL:https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/

[編集部PickUp]
●災害からの教訓や自社の使命を社内報で企画化した事例を紹介

震災で得た教訓を記録し、未来に伝える(株式会社日立ハイテクフィールディング)

東北の復興推進という使命を全社に浸透させる (積水ハウス株式会社)


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