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広報部と編集委員制度が紡いできた社内報の歴史(住友商事株式会社)

住友商事株式会社のプレゼンを担当した皆さん
住友商事株式会社のプレゼンを担当した皆さん。広報部制作チーム長の白濱 淳さん(写真左)は企業概要と社内報の概要を解説。最大の特徴である編集委員制度を紹介した髙橋 麻衣子さん(写真右)、受賞作品についてプレゼンした伊田 奈津美さん(写真中)と3人で発表

2020年10月6日(火)~9日(金)に開催した「社内報アワードONLINE EVENT 4DAYS」では、上位入賞を果たした優秀企業10社による、社内報制作の事例発表を行いました。「社内報ナビ」では、各社の発表内容を紹介していきます。

第6回は、住友商事株式会社様「社内報アワード2020」では紙社内報部門1冊子20P以上でゴールド賞に輝きました。受賞作品は、広報部長から任期1年の業務委嘱形式で選出された編集委員により制作されたもの。この珍しい制度の概要と、誌面に生かされたメリットについてお話しくださいました。

設立100年、社内報創刊から約50年

 弊社は1919年に設立し、一昨年100周年を迎えました。次の100年を目指して新たなコーポレートメッセージ「Enriching lives and the world」を策定。健全な事業活動を通じて、世界を、社会を、人々の暮らしをより豊かにしていくという、これまでも、そしてこれからも、変わらない私たちの誓いです。

 弊社にはゴールド賞を受賞した『住商こみゅにてぃ』と、シルバー賞の『SC One』の2種の社内報があり、後者は2016年創刊のグローバル社内報です。今回は、前者の『住商こみゅにてぃ』を中心にお話しします。

 昭和47(1972)年に創刊した『住商こみゅにてぃ』には、約50年の歴史があります。季刊発行で、国内外の本社役職員、希望するOBOGを対象に、従来は紙冊子で約8,000部を発行してきました。弊社の業態として海外赴任をしている駐在員や事業会社に出向中の役職員も多くいること、部署・職掌・世代・性別と多岐にわたることから、あらゆる垣根を越えてインターナルコミュニケーションを図るツールであり、日常的会話のきっかけとなるべく親しみやすいテーマに特化した社内報として位置づけています。

 そんな弊社の社内報も、新型コロナウイルスの影響を受けました。在宅勤務が原則、もしくは奨励となったことに加え、各所での物流の滞りから冊子『住商こみゅにてぃ』を配布できず、急遽イントラネット上にe-bookファイル形式で掲載することになったのです。しかし、「実際に手に取って冊子で読みたい」という声が大変多く寄せられました。

 本社社員に加え、国内外地域組織の全社員・スタッフとグループ事業会社の一部が配布対象である『SC One』は、世界レベルでの物流体制に支障があったことを契機に、今秋よりWeb社内報に切り替えました。

創刊以来、受け継がれてきた「編集委員制度」

 編集委員制度は創刊時からの伝統で、自薦・他薦の編集委員は本業に従事しながら『住商こみゅにてぃ』の編集を行っています。活動範囲は単なるネタ出しや情報提供に留まらず、取材先の選定から寄稿依頼、原稿回収や原稿執筆、取材なども含みます。

 読者である社員が読んだとき、知り合いが登場し興味を持って読んでもらうために、編集委員の勤務地域は東京に加え名古屋、大阪からも数人を選出しています。また業務でのつながりが偏らないように、所属部門や年代が分散するようにしています。

 任期は1年で、それぞれが本業を抱えながら編集活動を行っているため、お互いの協力は不可欠です。編集委員になれるのは会社生活の中で1回限りというルールを定めていて、選出された社員はそれぞれの代のカラーを出しながら活動しています。

 では私たち広報部の役割は何か? それは、編集委員のサポートです。作業スケジュールの管理や原稿の表記チェック、掲載管理(多くの社員に偏りなく登場してもらうため社員の誌面登場は原則1年に1回)など、アシスト業務を行っています。

『住商こみゅにてぃ』編集委員体制の特徴

  •  編集活動を「業務」として広報部長より委嘱、編集会議のための出張も社費。
  • 入社年次や職種に関わらずフラットな関係。若手からベテラン社員に編集指示や原稿回収の督促を行うことも。
  • 通常業務とは異なる視点での会話や情報交換が刺激となり、本業へのヒントになることもある。
  • 過去に編集委員を経験した社員が多いので、周囲からの応援やサポートも多く、また寄稿依頼の際、ほとんどの社員が快く引き受けてくれる。

 1年間という限られた編集委員任期の中で、より充実した活動をしてもらうために、広報部は事務局としてサポートしています。任期中に4号発行しますが、毎号、編集会議を半日かけて行います。

編集会議における広報部の心得

  • 多くの編集委員が初対面でのスタートとなる。第1回目の編集会議では、最初に編集作業の基本や心構えを伝える。
    編集委員は知識や経験もなく1年間という限定的な活動
    編集委員は知識や経験もなく1年間という限定的な活動。広報部は可能な限り丁寧にレクチャー
  •  各号の特集などは編集会議前に広報部でいくつか案を練る。編集委員たちが議論する中で形が変わり、想像もしていなかったオリジナリティのある企画へと変化することが、広報部には非常に面白く感じる。
  •  時には編集委員の盛り上がる気持ちが暴走してしまうことも。そのモチベーションを維持しつつ、軌道修正することが広報部の腕の見せ所。
  •  編集委員が考えた企画を尊重しながら、社内報の品格と伝統を守ることが大切。

編集委員が創り出すオリジナリティを生かす

 ゴールド賞を受賞した号の作品の特集テーマは「100」。先人が築いた100年の歴史を深め、次の100年へ向かって社会と共に歩んでいく思いを込めて、タイトルは「住商100物語」。PART1「住商こみゅにてぃ タイムマシンでGO!」、PART2「住商で見つけたTHE100」、PART3「100周年企業を訪問」という構成です。

PART1:住商こみゅにてぃ タイムマシンでGO!

 過去のアンケート結果などリアルな数字を掲載することで読者の関心を引いた。ただし、イラストの多用と数字情報が満載で煩雑な印象に。文字の色や大きさ、地の色などを工夫して解決を試みた。

 

PART2:「住商で見つけたTHE100」

 100カ所目の海外拠点、オフィス近くの創業100年の名店などさまざまな100を紹介。特に注力したのが100歳越えのOBインタビュー。2名紹介したうちの1名は御年104歳。大阪のご自宅で3時間以上にわたり取材。誌面に載せきれなかった記事は社内のイントラネットに特別編として後日公開し、アクセス数アップ。100年という歴史の長さを実感するとともに、大先輩からの仕事に生かせるメッセージを多く掲載することで、現役社員の刺激にもつながった。

 

PART3:「100周年企業を訪問」

 同年に100周年を迎えたオリンパス様とキユーピー様を取材。企業の選択やアポとりも編集委員が行った。多くの貴重な話から厳選したエピソードを掲載。その際、忙しい社員のために、ポイントやエッセンスにマーカーを引くなど誌面に強弱をつけた。

 定番コーナーは、創刊から続く海外駐在員の寄稿『世界の地から この街、あの空』や、編集委員が毎号のテーマを決めて、海外駐在員が寄稿する『ワールドカップネオ』。今号は「世界の民族衣装」がテーマでした。

 定番コーナーの中で特筆すべきは、5年前の編集委員が企画して誕生し現在に続く『〇〇さん集まれ~!』です。初回は「そっくりさん集まれ~!」で、社内のそっくりさんを探して登場していただきました。読後アンケートでは、「ここにもいるよ」との情報提供や、「第2回もぜひ!」などの声が寄せられ、反響の大きいテーマとなりました。「同姓同名さん」のときは、互いに存在は認識しつつも会ったことがない社員が一緒に写真を撮り、その後一緒に飲みに行くなど、まさに社内のコミュニケーションツールとしての役割を果たしてきました。

 他にも『こんなトコロに住商グループ』『キラリな職場』があります。現在の編集委員が考案した『なぜなぜ? 発見! JAPAN』は、素朴な疑問を起点に取材をし、疑問点を解決するコーナーです。取材から執筆などすべて編集委員が担当しています。

現在の編集委員が考案した『なぜなぜ? 発見! JAPAN』
現在の編集委員が考案した『なぜなぜ? 発見! JAPAN』。取材から執筆などすべて編集委員が担当

 

 『住商こみゅにてぃ』は読者から、「とても読みやすく、内容も充実している」「家族で楽しみにしている」「海外にいると、活字と情報に飢えており、いつも熟読してしまう」という声をいただくなど、精読率が非常に高い社内報です。このような読者の声が編集委員のやる気、私たち広報部のやりがいにもつながっています。

 

  • 紙社内報『住商こみゅにてぃ』        
    創刊:1972年
    仕様:B5判、4色、32P
    発行頻度:季刊

  • 会社情報
    URL:https://www.sumitomocorp.com/ja/jp

 


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