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公開座談会レポート後編|ウィズ・コロナ時代の社内報、ツールやコンテンツはどうなる?

ウィズ・コロナ、アフター・コロナにおけるインターナルコミュニケーション(以下、ICと表記)や社内報は、どう変化していくのか、3人の有識者が意見交換したオンライン公開座談会「アフター・コロナ時代のインターナルコミュニケーション)の展望」。この模様のレポート前編では、コロナ禍がICに及ぼす影響や、ICの目的の変化について考察しました。

座談会の後半は、社内報のツールやコンテンツ、さらにはグローバル報へと話が広がりました。社内報担当者なら気になる、業績悪化による社内報の予算削減問題も追った座談会レポート後編を、どうぞご覧ください。
座談会レポート前編「インターナルコミュニケーションは、コロナで変化する? しない?」はこちら

【パネリスト】

清水 正道 氏 
CCI研究所 代表
日本広報学会 理事・経営コミュニケーション研究会 主宰

しみず  まさみち/富国生命保険相互会社 広報課 社内報担当から日本能率協会に転じ経営誌記者、広報部長、経営革新研究所 主任研究員などを経て淑徳大学教授。日本広報学会 理事長退任後に経営コミュニケーション研究会を組織。2019年に『インターナル・コミュニケーション経営』を刊行。

馬渕 毅彦氏
馬渕文筆事務所 代表 社内報アワード 代表審査員
まぶち たけひこ/元・日商岩井株式会社(現・双日株式会社)で、社内報『NISSHO IWAI LIFE』編集長、PR誌『Tradepia』編集長を務める。同社広報媒体の制作全般に従事。この間並行して、市販単行本などの編集に従事。現・馬渕文筆事務所 代表。

小西 みさを氏
AStoty(エーストーリー)合同会社 代表
こにし みさを/アマゾンジャパン株式会社の広報本部長をはじめ25年以上の広報経験を経て2017年にPR戦略やPR活動のサポートを行うAStory合同会社(https://astorypr.com)を設立。IT、旅行、消費財含むさまざまな企業を幅広くサポート中。著書に『アマゾンで学んだ! 伝え方はストーリーが9割』(宝島社)。社内報アワードの審査員も務めている。

【ファシリテーター】

浪木 克文
ウィズワークス株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 社内報総合研究所 所長
1990年リクルート入社。人材部門の組織長として継続して高業績を上げる組織を実現。九州支社長として支社マネジメントも行う。その後、株式会社ゼロイン取締役社長、株式会社リンクイベントプロデュース取締役を経て2016年より現職。IC分野においての課題解決が得意。

コロナ前以上に、ツール選択の精度を上げていく

浪木 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、「紙の社内報を休刊あるいは減ページする」「在宅勤務が増えたことで手渡しできなくなったため紙からWeb化を検討する」といったご相談が増えています。ウィズ・コロナ時代となり、ICのツールも大きく変わっていきそうです。

清水 ICのツールやチャンネルは、大きく6つに分類されます。こちらの図をご覧ください。

出典元は資料、清水氏作成の資料
資料出典元:「アフター・コロナ時代のインターナルコミュニケーションの展望-私たちが観察し、学び、議論し、伝えようとしたこと-」 清水氏作成

日本では、紙の社内報、イントラネットに掲載するWeb社内報、あるいはニュースレターが主なICツールとなっています。図の真ん中から左下にかけて位置しているものですね。

右上にある「マネジメント・カンファレンス」は、対面でトップとスタッフが協議し意思決定する活動です。その斜め左下の「グループ・ブリーフィング」は部門会議、グループ・担当者会議などで、これも対面中心の活動です。これらはすべて経営改善に向けて行われます。広報部門と経営企画や人事・総務部門などが協働しつつIC活動をすることは、欧米の企業では常識となっていて、日本企業もグローバル化により、この方向にIC分野の業務が拡大していくものと私は考えています。

浪木 実際に、広報が主幹となり、経営企画、人事部と協力してリアルイベントやタウンホールミーティング、表彰式などを行う企業が、日本でもここ20年くらいで増えていますよね。

小西 Amazonでもマネジメント・カンファレンスを開催していました。年に数回、数千名にも上る全社員を対象に実施される、「オールハンズ」という名のタウンホールミーティングがそれです。

会社が掲げるゴールと現在地、これまでのサクセスストーリーを全従業員で共有し、エンゲージメントを高めていくという、素晴らしいイベントでした。CEOであるジェフ・ベゾス氏や日本支社長のTOPメッセージから、従業員が目指すべき目標や、目の前にある成すべきことを再確認することができました。

AmazonでのIC施策を振り返ってみると、即効性と深掘りの2つの観点を使い分けて実施するのが効果的だと思います。ウィズ・コロナの不安定・不透明な現状で最悪なのは、沈黙です。それを打破する即効性のあるIC施策として、オンラインの活用は有効でしょう。

まずはイントラネットで確かな情報を素早く発信し、もっと深掘りして説明すべきことは、紙の社内報で伝える。状況的に可能ならば、マネジメント・カンファレンスで理解を促す。そんなイメージです。

浪木 確かに、速報性と深掘りに適したツールがあるので、使い分けは大切ですね。例えば、TOPメッセージは紙より動画、動画よりリアル、つまりタウンホールミーティングのような対面形式の方がより伝わりますよね。ウィズ・コロナ、アフター・コロナにおいては、伝えたい内容や用途にマッチしたツール選択の精度を、これまで以上に上げていく必要がありそうです。

馬渕 機能的なコミュニケーションをスピーディーに実現していく点では、紙の社内報よりイントラネットやチャットツールといったデジタルメディアの方が圧倒的に優れていることは、誰もが理解しているでしょう。

ではコロナ後の世界で紙の社内報は不要になるのかというと、そんなこともないと私は思っています。企業理念の浸透や、デジタルメディアでは表現しきれない情緒的な内容は、紙の社内報の方が有効でしょう。

清水 共感的ツールとしては、紙社内報や動画社内報に加えて、ボイスメディアの活用が増えています。声だけでもニュアンスは相当伝わるものですし、写真や絵がない分、聞き手はメッセージに集中できるというメリットもあります。

公開座談会のパネリストとファシリテーター
ウィズ・コロナ、アフター・コロナ時代にIC、社内報はどうなるのかを、有識者がオンラインで意見交換

世界中がウイズ・コロナ。グローバル報の行方は……

浪木 新型コロナウイルスは世界中に感染が広がっています。海外に拠点を持つグローバル企業におけるICは、どうなるとお考えでしょう。国内・グローバルを問わず、経済が悪化して企業の収益が落ちると、IC施策の中でも社内報がスケープゴートにされ、予算削減を迫られるというのはよく聞く話ですが……。

馬渕 グローバル経営というのは、国や文化が異なる社員同士に一体感を醸成することが不可欠で、その成功のカギとなるのは価値観の共有です。そして、価値観を従業員の絆とするためには、多様性の尊重が欠かせません。それぞれの個性、違いを認めることで、一つにまとまるという仕組みの一つが、グローバル報です。難しいとは思いますが、危機的状況でこそ、自社において自分たちは何を成し、どういう価値を生み出していくのかをしっかりと浸透させていくのが理想ですね。

危機的状況とは異なるけれど、小西さんがいらしたAmazonや、apple、スターバックスは、自社ならではやり方を貫きこのアプローチを成功させたことで、偉大なグローバル企業に成長したのだと思います。

ICを起点に、経営を立て直す!

小西 テクノロジーの進化により企業の差別化が一層難しくなる中でAmazonが成功し続けている理由は、人材マネジメントが非常に優れていて、それを起点に、より良いサービス、より高度なテクノロジーを生み出すメカニズムが作られているからだと、私は考えています。そして、人材はビジネスモデルの中でもっとも真似されにくい、一番重要なリソースなのです。

国籍、文化、風習が異なる従業員が集うグローバル企業が、従業員のモチベーションを高めていくためには、経営層のメッセージを世界中の従業員にきちんと届け、各国でゴールを共有し、働く人々が共感できる取り組みを実践し、ナレッジを共有していく必要があります。

それを行うICツールが、社内報です。人材の育成やモチベーションの向上を促すツールと考えれば、コロナ禍だからこそ、必要とも言えるのではないでしょうか。

浪木 経営戦略的に考えると、社内報の経費を削減するより、ツールやコンテンツを練り直して、ICを起点に業績を立て直すほうが、効果的な打ち手になるのかもしれませんね。また、ここ数年、社内報を社内研修や採用のツールとして用いる企業が増えています。結果的に、社内報の予算は削ることなく企業全体の経費節減を叶えることができますし、企業の皆様にはぜひご検討いただきたいと思います。

小西 社内報のコンテンツについてですが、コロナに関わらず、IC施策として有効な社内報のコンテンツは3つ考えられると思います。1つは、会社としてプロアクティブに社員に発信すべき内容。TOPメッセージがこれに該当します。

2つめは、今だからこそ伝えなければいけないこと。従業員の声にしっかりと耳を傾けたうえで、従業員が知りたいと思う情報を発信することが、エンゲージメント醸成において非常に重要です。

3つめは、従業員それぞれの工夫やサクセスストーリーを発信し、業務クオリティ向上のヒントにすること。これら3点をカバーしていくコンテンツが必要です。

清水 座談会の冒頭では、コロナ禍がICに及ぼした影響を憂慮しましたが、コロナをきっかけに、IC経営への理解・転換が加速する可能性がありますね! 次にお見せする資料「“インターナル・コミュニケーション”へ転換する!」の右上に「インターナル・コミュニケーション」の定義を書きました。

知識、態度、行動の3つを継続的に強化していくことは、従業員の不安を緩和するだけでなく、従業員の能力を中長期的に向上させ企業価値を高めることにつながります。旧来の社内広報から脱皮して、経営を支え、向上させる力になるはずです。

出典元は清水氏作成の資料
資料出典元:「アフター・コロナ時代のインターナルコミュニケーションの展望-私たちが観察し、学び、議論し、伝えようとしたこと-」 清水氏作成

浪木 難しいテーマを掲げて社内報やICの展望に関するご意見を伺ってきましたが、ウィズ・コロナ、アフター・コロナの状況でも、経営戦略にはICが不可欠であろうこと、そしてその成功には明確な目的とそれに沿った継続的な施策が必要であることがわかりました。今日はありがとうございました。


「公開座談会レポート前編|インターナルコミュニケーションは、コロナで変化する? しない?」を読めば、企業経営に必要なICの在り方が見えてきます!

 

 

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