MENU
ホーム > 記事一覧 > 事例に学ぶ > インタビュー > 公開座談会レポート前編|インターナルコミュニケーションは、コロナで変化する?しない?

公開座談会レポート前編|インターナルコミュニケーションは、コロナで変化する?しない?

新型コロナウイルスの終息が未だに見えません。企業の在り方、働き方が大きく変容するであろうウィズ・コロナ時代のインターナルコミュニケーション(以下、ICと表記)、社内報の役割や効果は、どのようなものになっていくのでしょうか。

誰も経験したことのないこの難題について意見を伺うために、IC研究の第一人者・清水 正道氏、社内報アワード代表審査員・馬渕 毅彦氏、Amazonジャパンで広報本部長を務めた小西 みさを氏をお迎えし、去る6月16日に公開オンライン座談会「アフター・コロナ時代のICの展望」を開催しました。開催告知から半日で満員御礼となったこの座談会の模様を、前後編に分けてお伝えします。今回は前編です。

【パネリスト】

清水 正道 氏 
CCI研究所 代表
日本広報学会 理事・経営コミュニケーション研究会 主宰

しみず  まさみち/富国生命保険相互会社 広報課 社内報担当から日本能率協会に転じ経営誌記者、広報部長、経営革新研究所 主任研究員などを経て淑徳大学教授。日本広報学会 理事長退任後に経営コミュニケーション研究会を組織。2019年に『インターナル・コミュニケーション経営』を刊行。

馬渕 毅彦氏
馬渕文筆事務所 代表 社内報アワード 代表審査員
まぶち たけひこ/元・日商岩井株式会社(現・双日株式会社)で、社内報『NISSHO IWAI LIFE』編集長、PR誌『Tradepia』編集長を務める。同社広報媒体の制作全般に従事。この間並行して、市販単行本などの編集に従事。現・馬渕文筆事務所 代表。

小西 みさを氏
AStoty(エーストーリー)合同会社 代表
こにし みさを/アマゾンジャパン株式会社の広報本部長をはじめ25年以上の広報経験を経て2017年にPR戦略やPR活動のサポートを行うAStory合同会社(https://astorypr.com)を設立。IT、旅行、消費財含むさまざまな企業を幅広くサポート中。著書に『アマゾンで学んだ! 伝え方はストーリーが9割』(宝島社)。社内報アワードの審査員も務めている。

【ファシリテーター】

浪木 克文
ウィズワークス株式会社 代表取締役社長 兼 CEO 社内報総合研究所 所長
1990年リクルート入社。人材部門の組織長として継続して高業績を上げる組織を実現。九州支社長として支社マネジメントも行う。その後、株式会社ゼロイン取締役社長、株式会社リンクイベントプロデュース取締役を経て2016年より現職。IC分野においての課題解決が得意。

コロナ禍がもたらす最大の影響、それは――

浪木 本日のテーマは「アフター・コロナ時代のICの展望」ですが、実は本企画の構想時点では、座談会実施頃にはアフター・コロナとなっているのでは、と楽観視していました。しかし現実はそうはいかず、今後もウィズ・コロナがしばらく続くと思われます。

なので、コロナ「終息」後、ではなく「収束」下でのICについて、意見交換していきたいと思います。コロナ禍で企業活動は大きく変容していますが、ICにどのような影響を及ぼしているのでしょうか。

清水 本題に入る前に、2014、2015年ころから起きている変化についてお話ししましょう。私は、2013年秋から毎年ICについて企業の担当者などにヒアリングを行い、研究を重ねてきました。

そこから明らかになったことは、「企業理念やビジョンの浸透のためにICを推進していくことは、企業経営に非常に効果がある」ということ、そして「TOPと従業員の直接の対話イベントは、それぞれの相互理解を深める」という2点でした。経営理念を単なる情報共有に終わらせずに、自分事化までもっていくためには仕掛けが必要で、それを実践する企業が増え始めたのが、2014、2015年ころなのです。

浪木 ICが経営戦略として活用され始めたのが、今から5~6年前ということですね。

清水 そうです。月刊誌『広報会議』も2015年から毎年、特集を組むようになりました。IC経営が受け入れられようとするところに、コロナ禍に見舞われたと言えます。「社内報のツールを紙からWebに変えて経費を削減しよう」とか「テレワークできる従業員とできない従業員がいるが、社内報の取材はどうしよう」といった問題が起きているようですが、これは表層的な変化でしょう。

しかし、コロナ禍がもたらした本当に深刻な影響は、「企業理念やビジョンの浸透のためにICを推進していくことは、企業経営に非常に効果がある」という潮流をせき止め、「経営理念を単なる情報共有に終わらせずに、自分事化までもっていく」ための施策を阻むかもしれないことです

そうならない、そうさせないために、経営企画や人事、広報のマネジメントなど、経営制度そのものを、急速に変えていくのではないか、と私は考えています。

資料出典元:「アフター・コロナ時代のインターナルコミュニケーションの展望-私たちが観察し、学び、議論し、伝えようとしたこと-」
清水氏は2013年からICについてのヒアリングを行い、研究を重ねてきた成果を『インターナル・コミュニケーション経営』という本にまとめて上梓(資料出典元:「アフター・コロナ時代のインターナルコミュニケーションの展望-私たちが観察し、学び、議論し、伝えようとしたこと-」)

小西 私は「不安定」「不規則」「不透明」という3つの「F」をキーワードに、今の状況をとらえています。

「不安定」は、今後社会はどうなるのか、働く場所は守られるのか、といったこと。

「不規則」は、働き方の変化を意味しています。コロナに後押しされるカタチで急速に広がったテレワークは、ウィズ・コロナ、アフター・コロナでも定着していくのか、正確な予想は誰にもできません。

また、「不透明」というのは、自分の会社が今後どこに向かっていくのか、という先行きが見えない状況を示しています。

アマゾンジャパン株式会社で広報本部長を務めた小西氏
アマゾンジャパン株式会社で広報本部長を務めた小西氏は、今の状況を3つの「F」と表現

この3つの「F」にアプローチするのが、IC、社内報の重要な役割となるのではないでしょうか。例えば、経営からの情報を日々発信することで、「不安定」「不透明」は薄らいでいくでしょう。「不規則」へのアプローチは、企業としてのゴールを改めて共有することです。

なぜなら、コロナの影響で働き方が変わったからと言って、自社のゴールやミッションが変わるわけではないからです。3つの「F」で従業員のモチベーションが揺れ動いているからこそ、改めて、会社のゴール、部署のゴール、自グループのゴールを再確認し、従業員一人ひとりのオーナーシップを促していく。そういうICが必要になると思っています。

馬渕 企業、とりわけ伝統的な企業においては、変えたくても変えられない文化というものが、良くも悪くも存在していました。これまでは不変と思われていたスタンダードが、コロナにより変化せざるを得なくなった。これは、新しい秩序を組み立てるチャンスとも言えます。

小西 そうですね。従業員一人ひとりがオーナーシップを持って働くことを促すIC施策は、コロナ以前より必要になりそうですね。

自社のゴールやミッションを改めて思い出し、それに対して会社はどう考え、何をしようとしているのか、明確な意志をTOPメッセージとして伝えていく――、そういう透明性のあるコミュニケーションを意識して、社内報に代表されるIC施策を打ち出していくことで、3つの「F」も解決できると思います。

ICの目的は、コロナでブレることはない

浪木 この難局を、旧習に縛られていた企業体質を生まれ変わらせたり、従業員のモチベーションの質を上げたりするチャンスととらえる、ということですね。となると、ICの目的も変化するのでしょうか。

馬渕 マズローの欲求5段階説の中の第三階層にある「所属と愛の欲求」では、「人は安全が確保されると自己を表現したくなる」とされています。今は、この点に対する不安感が大きくなっている状況だと思います。その観点から注目を集めているのが、「心理的安全性」という概念です。2012年にGoogle社のリサーチチームが発表した研究結果にある言葉で、心理的安全性が高いほど仕事の効率化は進み、組織の人間関係も深まる、とされています。

8年も前に発信されたこの概念が、今のコロナ禍に当てはまるのではないでしょうか。小西さんが指摘する3つの「F」は、心理的安全性が揺らいでいる状況とも言え、今日的な状況のなかでは心理的安全性を高めることが、ICの重要な目的になると思います。

ICの目的のキーワードは「心理的安全性」、と馬渕氏
ウィズ・コロナのICの目的のキーワードに「心理的安全性」を挙げる馬渕氏

小西 私としては、コロナによってICの目的が変わるとは考えていません。会社のミッションは何か、会社はなぜ存在しているのか、どんなビジネスモデルをつくり、どんなゴールを掲げ、その達成のために各部門がどんな取り組みをしていくのか。そういったことを共有した上で、各部門がどんな成功を収め、その事例から従業員がビジネスのヒントを探るといったこと、つまり、企業がビジネスゴールを達成するための追い風になること、それがICの目的です。

そう考えると、コロナで企業のゴールが変わらないのと同じく、ICの目的も、コロナ前後で変わらないと思っています。

貴社のICの目的は、考え抜かれたもの――?

清水 苦言を申し上げると、コロナに関係なく、そもそもICの目的がきちんと設定されていない企業が多いのが現実です。

調査のときに「皆さんの会社の社内報の発行目的は何ですか?」と尋ねると、どこの会社でも通用するような、一般的表現しか出てこないケースがなんと多いことか。社内情報の共有、CSRの啓発、経営方針の浸透――、その通りなのでしょうが、例えるなら「のどが渇いたから、なんとかして」ではなく、「のどが渇いたから、水がほしい」「お茶がほしい」「果汁100%のオレンジジュースがほしい」などのように具体的に示すこと。具体的に示さなければ、相手、つまり従業員には的確には伝わりません

「そもそも、ICの目的があいまいな企業が多い」と清水氏
清水氏は「そもそも、ICの目的があいまいな企業が多い」と指摘

小西 私も「社内報アワード」の審査員をしていて、気にかかっていることがあります。見栄えは良いのだけれど、「この部署は何のためにこの施策を行ったのか」「このプロジェクトは会社のゴール達成のために具体的に何に寄与したのか」という重要な点が伝わってこない企画が散見されることです。これはもしかしたら、清水さんがご指摘するような状況が起きているためなのかもしれませんね。

社内報というICツールを、どんな目的で、何を達成するために発行しているのかを、今一度考える。コロナ禍は、それを実行する機会になりそうですね。

浪木 確かに、ICや社内報の発行目的を明確に答えられない、経営目標や企業ミッションとどうつながっているのか腹落ちしていないまま業務を進めているケースは、案外多いかもしれません。

我々は社内報担当者を「ICプロデューサー」と定義していて、そのミッションは、「経営、現場、お客様など、ステークホルダーそれぞれの声に耳を傾け、総合的な視点でICをプロデュースする。そして社内報を通じて情報提供する」ことと考えています。今日のご意見を参考に、ぜひこの座談会を視聴している皆さんは、自社のICの目的を再確認してみていただきたいと思います。


2020年7月29日(水)掲載予定の「公開座談会レポート後編|ウィズ・コロナ時代の社内報、ツールやコンテンツはどうなる?」に続く

 

 

[関連記事もぜひご覧ください

社内報づくりに役立つ情報満載!
無料メルマガ登録はこちら

氏名

必須
会社名

必須
部署名

必須
TEL

必須
E-mail

必須
 一覧へ戻る
ページ上部へ