社員数が増えた、社員の働き方や仕事に対する考え方が多様化している……といった理由で、社内報の創刊を検討する企業が増えています。しかし、突然に社内報制作を任された社員は右も左も分からず、不安を抱えてしまうのではないでしょうか。
今回は2020年2月に社内報を創刊したばかりの株式会社LIXILビバを取材。創刊までの道のりや発行目的の決め方、社内報担当者が創刊号を作る上で知っておきたいことなどをうかがいました。
目次
社内報で本社と全国各地の店舗とのギャップを埋めたい
株式会社LIXILビバが社内報の創刊を検討し始めたのは、2019年8月のこと。同社は1977年に創業し、現在では全国に約100店舗を展開。クルー(従業員)の人数は1万人を目前にするまでに成長しています。
LIXILビバは企業方針として「強くてやさしい、いい会社」を掲げ、中期経営計画(2019年~2021年)に基づく成長戦略の実行や、クルーにとって働きやすい環境づくり(長時間労働の是正など)をしています。しかし、企業規模が拡大して店舗が増えるほど、本社が打ち出す各施策や思いを、全国各地のクルーまで浸透させることに難しさを感じていました。本社と現場との認識にギャップが生まれ始めていたのです。
そこで、経営層は会社の情報を全国のクルーに伝えるため社内報の創刊を検討。IR広報室の野杁(のいり) 基男さん(室長)、小林 寛之さん(シニアマネジャー)、渡部 裕樹さん(マネジャー)に、社内報制作の話が舞い込んできました。
3人とも社内報制作は未経験。しかし、制作の主担当となった渡部さんは特に混乱することなく前向きに準備ができたそうです。
「社内報担当者向けのセミナーに行ったり、インターネットで調べたりして、社内報制作は大変そうだなぁとは思いました。ただ、以前から教育部や人事部などの主管部から現場クルー向けに出していた広報資料があり、それらをまとめて、かつ、社内のコミュニケーションをもっと促進できるような社内報にしよう……というイメージはできていました。そのイメージを基に創刊に向けて走り出すことができました」
発行目的と編集方針を決めるまで
社内報の創刊時に最初に考えるのは、発行目的です。発行目的とは、自社の課題感を解決するために社内報が果たすべきこと(存在目的)を指します。
野杁さんは
「会社の規模が大きくなると、会社や他店のクルーのことが自然に分かる状態ではなくなってきます。社内報の創刊をきっかけに、さらに会社の一体感を醸成し、全国のクルーが同じ方向を向いて働ける『ファミリー』になりたいと思いました」
と自社の状況を説明します。
クルーがファミリーになるために、社内報を通じてインターナルコミュニケーションを活性化し、クルー同士の交流を深めつつ、会社の思いも伝えたい。そこで、LIXILビバ社内報の発行目的は「インターナルコミュニケーションの活性化」と設定しました。
発行目的が決まれば、次に考えるのは「編集方針」です。編集方針は、発行目的を実現するために、社内報を作る上で意識すべきことを指します。LIXILビバでは、本社と現場との距離感を縮めて結びつきを深めることを重視し、2つの方針を定めました。
【社内報の発行目的】
インターナルコミュニケーションの活性化
【編集方針】
- 会社のことを知る
- 仲間を知り、興味を持ってもらう
創刊号を「親しみやすく、読む価値がある」と思える企画構成にする
2019年11月ごろから、いよいよ社内報の制作が始まりました。
企画構成でこだわったのは「親しみやすく、クルーに『読む価値がある』と感じてもらうこと」。トップインタビューではなく、あえて新店や既存店の紹介ページを先頭に持ってくることで、仲間の姿を見せてクルーの興味を引くことにしました。
LIXILビバ社内報 創刊号の構成
- NEW STORE OPEN!
新店オープン当日ドキュメント、店長インタビュー、クルー紹介 - あなたの職場におじゃまします!!
既存店の店長インタビュー、クルー紹介、自慢の売り場紹介 - 北関東の店舗周辺のおいしいランチスポット特集
- VIVA TOPICS
ジャッキー・チェンさん来店、店舗のテレビ出演 - 2020年春のイチオシPB商品はこれだ!
PB商品の売り込みポイントの紹介 - 特集2019→2020 ビバの全貌 社長・副社長インタビュー
経営方針、社員に対する思い、社内報創刊の経緯
…etc.
特にこだわったのは、営業年数の長い店舗を取材する連載企画「あなたの職場におじゃまします!!」です。渡部さんは4年前まで現場の店舗で店長を務めており、
「営業年数が長い小さなお店には、個性豊かなクルーがいて、売り上げを上げるために日々売り場づくりに励んでいます。でも、どうしても彼らにスポットライトが当たりにくく、主役感がないなぁ……と感じていました」
と打ち明けます。
「ビバの稼ぎ頭となって会社を支えてくれているクルーの思いを、社内報できちんと伝えたいと考えました」
大型台風の日に地元住民が店を頼りに来店してくれたこと。社内試験の合格者数が全店舗で一番多かったこと。店の休憩室にこたつがあり、クルーが家族のように団らんしていること。お店とクルーのありのままの姿を見せて、店が地域に愛されている様子がイメージできるような情報満載の企画となりました。
創刊後のアンケートでも、「あなたの職場におじゃまします!!」が「よかった記事」第1位に輝きました。「普段電話口での声しか聞けなかったクルーの顔が、誌面を通して拝見できたのはとても新鮮でした」「クルーの活動を知って励みにもなり、個人的にも向上心を待って取り組もうと思いました」といった声が届きました。
社内報の創刊は一人では成し遂げられない
発行までにはハプニングもありました。校了直前に社長から「もっと軟らかい企画を増やそう」と指示があり、「ランチスポット特集」や「VIVA TOPICS」などを追加し、ページ数は8ページ増の20ページに。制作期間が延びて発行も1カ月遅れましたが、3人で協力して無事に2020年2月に創刊号を発行することができました。
渡部さんは
「20ページに増えた時はどうしようかと思いましたが、野杁さんが関係各所に『社内報は“お楽しみ雑誌”ではなく、社長が目指す“インターナルコミュニケーションの活性化に必要なもの”なのです』と説明してくださり、その後の取材が進めやすくなりました」
と語ります。
制作をサポートした小林さんは
「ランチスポット特集で紹介した『ある演歌歌手の実家のお店』について、職場で『この演歌歌手って誰だろうね』という会話が生まれました」
と、コミュケーションの活性化を実感できたそうです。
社内報の創刊を乗り切るために、制作担当者が意識すべきことは何なのでしょうか。渡部さんは「社内報の創刊は一人では絶対にできません」と言い切ります。
「ハプニングがあっても、野杁さんや小林さんをはじめ協力してくれるクルーがいたからこそ、やりきることができました。社内報を通じて社内の人脈も広がるので、自分のキャリアにとってもプラスに働くはずです。周りを頼りながら、前向きに社内報に向き合えたらいいと思います」
各クルーの言葉を通じて「ビバらしさ」がにじみ出る社内報へ
LIXILビバの社内報が目指すのは「クルーが会社を知り、仲間を知り、結束力を高めてファミリーになること」です。その「ファミリー」の在り方にも、LIXILビバならではの個性が表れています。
「ビバでは、本社が一括して店舗の売り場づくりを決めるのではなく、各店舗のクルーが自主的に売り場づくりを考えて実践しています。社内報も同じく、中央で情報をコントロールして『この色に染まりましょう』と言いたいわけではありません。もちろん同じ方向を向いていたいですが、各店舗の自主的な裁量が存続することが大切です。各クルーの仕事や人となりを伝えながら、そこに出てくる人たち自身の言葉を通じて『ビバらしさ』が自然とにじみ出るような社内報を作っていきたいです」(野杁さん)
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LIXILビバ 社内報(誌名は社内公募中。2020年夏に決定)
創刊:2020年2月
発行部数:約9,000部
仕様:A4判、4色、20ページ
発行頻度:季刊 - 会社情報
URL: https://www.vivahome.co.jp/corporate_top/
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