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【「社内報アワード」審査員対談】~入賞企画の傾向編~『上位入賞を果たす企画の共通点とは?』

今回、対談をしていただいたベテラン審査員の馬渕 毅彦さん(左)と古川 由美さん(右)
今回、対談をしていただいたベテラン審査員の馬渕 毅彦さん(左)と古川 由美さん(右)

「社内報アワード2020」コンクールの応募締切が、今月末に迫ってきました。今年もたくさんの企画と出会い、担当者の熱い想いを感じたい――。そんな気持ちを抱く「社内報アワード」ベテラン審査員の馬渕 毅彦さんと古川 由美さんが、「社内報アワード」コンクールの近年の傾向や、応募の意義などを語り合いました。審査員の視点で語られる内容は、応募を検討中の企業にぜひ知っていただきたい情報ばかり。 「応募用紙をこれから書く」「……応募を迷っている」、という社内報担当者は必読です。

~審査対策編~ 『社内報の専門家である審査員は、ココを見ている!』もぜひご覧ください〉

技巧的な編集を超えて、本質を射る企画が多数登場

――ここ数年の「社内報アワード」コンクール応募企画は、数年前と比べて飛躍的にレベルアップしている印象があります。

馬渕 それは、本質的なところをとらえる企画が多数出てきたためでしょう。昨年、Web部門のグランプリに輝いた株式会社スタッフサービス・ホールディングの「SSGの介在価値って何だろう」という企画が、その一例です。「自分たちの会社は社会にどんな価値を提供しているのか。従業員はそのために何をすべきなのか」という、自社事業の本質を従業員に伝える、実に素晴らしい内容でした。ほかにも、社内報が企業で果たすべき役割をしっかりと理解し、本質的な的を射抜く企画が、年々増えています。

シーエックスカーゴさんの誌面
「社内報アワード2019」社内報部門/特集・単発企画8頁以上でゴールド賞を受賞した株式会社シーエックスカーゴ。受賞作「フルトレに込めたチャレンジ魂」は、同社の基本方針のひとつ「チャレンジ」と一大プロジェクト「フルトレーラの導入」を多角的に捉えた企画として、高い評価を得ました
ポラス株式会社は昨年の社内報部門/特集・単発企画8頁以上でシルバー賞を獲得。受賞作「今日からあなたもマスターに! ポラスのファンづくりABC」では、同社の経営方針「ハートフル活動」の浸透に大きく寄与した内容が高い評価につながりました
ポラス株式会社は昨年の社内報部門/特集・単発企画8頁以上でシルバー賞を獲得。受賞作「今日からあなたもマスターに! ポラスのファンづくりABC」では、同社の経営方針「ハートフル活動」の浸透に大きく寄与した内容が高い評価につながりました

古川 これまでも高い評価を得ていた企業の社内報が、本質をしっかり見つめることで新たなステージへと歩を進めた、昨年の「社内報アワード」ではそんな印象を受けました。でも、入賞する・しないにかかわらず、応募企画全体が、年々レベルアップしていますよね。

馬渕 同感です。かつては、デザイン面や文章面の技巧的な編集が注目されがちでしたが、近年はそれを超えて、「社内報は何を伝えるべきか」をきちんと考えて作り込まれている企画が目を引くようになっていますね。

 昨年、「社内報部門(紙媒体) 特集・7頁以下」でゴールド賞を受賞した、株式会社マクロミルの「十年後の笑顔」も、自分たちの企業文化、抱えている問題を客観的に受け止め、その本質を解決することを狙って企画したものでした。目の前の直接的な効果ばかりを追いかけるのではなく、大局観を持つ企画として、高く評価されました。

古川 もう一つの傾向として、応募企業がとても多彩になってきたことがあります。応募企業数が年々増えているので当然と言えば当然なのですが、全国から幅広く、多岐にわたる業種の企業から応募があります。それはつまり、インターナルコミュニケーションに注力する企業が増えたということであり、社内報が企業経営に重要な役割を果たすということの理解が広がっていると言えるでしょう。

四国地方から初の応募となった日本食研ホールディングス。動画社内報部門(左)でゴールド賞、特別部門(右)でブロンズ賞受賞と、華々しい結果となりました。
四国地方から初の応募となった日本食研ホールディングス株式会社。動画社内報部門(左)でゴールド賞、特別部門(右)でシルバー賞受賞と、華々しい結果となりました

継続は力なり。応募し続けて一気に開花した企業も

――先ほど話に出た株式会社マクロミルは、長年にわたり「社内報アワード」に応募し続け、2019年に紙・Web・動画社内報の3部門で6つの賞を獲得と、目覚ましい結果を残しました。

馬渕 社内事情もあるでしょうし、躍進の理由は一概には言えませんが、審査を継続的に受けた効果の表れだとうれしいですね。審査講評は刺激になり、それはじわじわと効いてくるものです。そこにアワードに応募して審査を受ける意味があるのだと思います。

古川 どの仕事も、ルーティン化して流れ作業になってしまうと、成長は望めません。社内報制作はパワーがかかる上に、終わったと思ったらすぐ次号の準備に着手することも珍しくありません。それどころか、並行して複数号進める場合もあります。常に追い立てられている日々の中で、気づかぬうちにルーティン化の落とし穴にはまっていることは、誰しもあるのではないでしょうか。

 年に1度の「社内報アワード」コンクールへの応募は、そんな状況に陥っていないか確認する良い機会にもなりますね。審査を受けて「自分たちの社内報の優れている点はどこか」「課題は何か」に気づくことは、ルーティン化から脱出し、成長するための足掛かりとなります

馬渕 人間とは不思議なもので、「仕事に追い立てられていると安心する」という一面もあります。「追い立てられる」=「一生懸命やっているから、これでいいのだ」というような感覚ですね。しかし、これはある種の思考停止です。そこから抜け出す方法の一つが、審査を受けることと言えるかもしれません。第三者の目による指摘により、違う景色が見えるようになりますからね。

古川 「社内報アワード」の特長の一つに、コンクールとナレッジ共有イベントの2本立てという点があります。自分が携わる社内報を客観視する機会を得ることに加えて、イベントで他社の事例を学ぶことができる、さらには多くの企業の社内報担当者と交流できるということは、非常に有意義ですね。

馬渕 「場の空気を吸う」ということは、とても大切です。「社内報アワード」のナレッジ共有イベントに参加して、受賞企業の熱気あふれる事例発表の「空気」を吸えば、大きな刺激を受けることでしょう。さらに言えば、コンクールの応募用紙を記入するために、緊張感を持って企画の振り返りを行い、審査講評のフィードバックを受けて応募企画を見つめ直すことも、その時その時の「場の空気を吸う」ことになります。

 コンクール応募からナレッジ共有イベントという流れの、それぞれのフェーズが持つ「場の空気を吸う」ことで、より有益な学びができるのではないでしょうか。

尻込みする必要なし。辛口審査が成長につながる!

――「コンクールに応募するほどの企画がない」「当社のレベルでは……」と尻込みする企業も多くいらっしゃいます。

馬渕 人員が多く予算も潤沢な大企業の社内報を目にしたら、そう思ってしまうのはよくわかります。ですが、「社内報アワード」コンクール応募の目的は入賞だけではないはずです。もちろん、入賞すれば「成功」とみなされ、それはうれしいことですし、モチベーションも上がるでしょう。しかし、入賞しなかったとしても、それは決して「失敗」ではありません。そもそも「失敗」などないのです。審査講評が厳しい内容だったら落ち込むでしょうが、その出来事は、自分、そして自社の社内報にとって大きな財産になり、必ずレベルアップにつながります

「社内報アワード2017」では受賞を逃したものの、そこから大幅なリニューアルを経て、昨年はブロンズ賞を受賞したミロク情報サービス。受賞作「MJ TOURS」は、的確な取材に基づく支社紹介が評価されました。
「社内報アワード2017」では受賞を逃したものの、そこから大幅なリニューアルを経て、昨年は社内報部門/連載・常設企画でブロンズ賞を受賞した株式会社ミロク情報サービス。受賞作「MJS TOURS~○○支社~」は、的確な取材に基づく支社紹介として評価されました

古川 「(審査講評を通して)広い世界を見る」のと、「(講評内容から)自社の社内報をしっかり見つめ直す」という両方の視点が、成長には欠かせませんよね。

 コンクールなので入賞する・しないという結果は出ますが、周りと比べずに、「自分たちが頑張って作っている社内報」をしっかり見つめてください。「上司に修正されて内心不満だったけど、審査講評を見て、その修正は正しかったと納得した」とか、逆に「自分の意見は正しかったのだ! 次は講評を参考に説得してみよう」とか、審査講評はモチベーションを前向きにしたり、仕事を進めやすくしたりするツールとしても活用できます。ですから、「応募するレベルにない」なんてことを気にする必要はまったくありません! 審査講評を「自分たちのアドバイザー、応援者」と思っていただけるとうれしいですね。

審査結果により、仕事が進めやすくなることも

――審査講評により、応募企業の社内報がレベルアップしたら、その先には、いずれ入賞という結果もあり得ますよね。

馬渕 もちろんです! コンクールで高評価を得ると、思いもよらない効用があったりもします。私の体験談ですが、かつて企業で社内報を担当していたころ、「社内報アワード」のような社外コンクールで高評価を得たことがありました。すると、急に、自分の意見が社内で通りやすくなったんですよ(笑)。

 従業員が、自社と他社の社内報を比較することは、めったにありません。つまり、自社の社内報に対する判断基準を持っていないわけです。それが「社内報アワード」のような場で認められると、「わが社の社内報は素晴らしいのか!」と上層部が認識するきっかけとなり、「担当している○○さんの企画は、会社にとって役立つのだな」と信頼してくれるようになります。これにより、担当者の裁量の領域が一気に拡大することもあります。

――それは仕事を進める上で大きなメリットであると同時に、担当者も「もっと頑張ろう!」という気持ちになりますね!

馬渕 社内報は、経営の強力な武器となるパワーを秘めています。その力をどこまでリアライズできるか、それが社内報担当者の腕の見せどころです。ですから、担当者のモチベーションはとても重要なのです。

 インターナルコミュニケーションという考え方が浸透してきた昨今、社内報をどのように経営に生かすかを、改めて考え直す企業が増えています。その際に重要なのは、短期的視野ばかりにとらわれるのではなく、長期的視野で社内報の効果を考えること。組織文化をいかに形成し、従業員と共有していくのか。社内報担当者は、企業価値を上げるという重要なミッションを担う立場ですから、高い目標を持って頑張ってください

――「社内報アワード」の近年の傾向である、「本質をとらえた企画が増えてきた」ということに、リンクしていきそうですね。

馬渕 まさにそうです! すでに、経営戦略としての社内報のあり方に気づき、実践している企画が多数登場し、入賞している。「社内報アワード」のレベルが上がっているのも、納得できますね。

~審査対策編~ 『社内報の専門家である審査員は、ココを見ている!』もぜひご覧ください


社内報アワード審査員の馬渕さん
馬渕 毅彦さん
(馬渕文筆事務所 代表)
元・日商岩井株式会社(現・双日株式会社)の社内報『NISSHO IWAI LIFE』編集長であり、PR誌『Tradepia』編集長。そのほかホームページ、アニュアルレポートなど同社広報媒体の制作全般に従事。この間併行して、市販単行本などの編纂にも従事。現・馬渕文筆事務所 代表。
日経連社内報センター主催の社内報コンクールで全国最高得点(1983年)、PR研究会主催『全国PR誌コンクール』で最優秀賞(1986年)受賞するなど、社内報の現場を知り尽くした専門家。

社内報アワード審査員の古川さん
古川 由美さん
(社内報総合研究所パートナー・コンサルタント)
 

川鉄商事株式会社で約13 年、社内報編集業務に従事。日経連推薦社内報コンクールにて、推薦社内報15 年連続受賞。その後、日本経団連推薦社内報審査員、社内報関連セミナー講師、現在は社内報総合研究所パートナー・コンサルタント。「社内報アワード」の審査、社内報診断、社内報セミナーの講師を務める。

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