「社内報アワード2017」の事例発表2社目は、主力商品「スーパードライ」の発売30周年記念特集およびESGへの取り組み強化特集の2本が、特集・単発企画7頁以下部門のゴールド賞を受賞したアサヒグループホールディングス株式会社。社員の「心を動かし、やる気にさせる」企画の制作プロセスを、同社の社内広報方針と併せてご紹介します。
ブランド価値を最大限に高めたい!
当社の主力商品「スーパードライ」は今年、おかげさまで発売30周年を迎えました。業績が低迷した苦しい時代に起死回生の大ヒットを記録した「スーパードライ」。それから30年経ちましたが、現在も多くのお客様からご支持を頂戴しております。
30周年という大きな節目に当たって、社内ではさまざまな盛り上げ企画やキャンペーンが進行していましたが、社内報でも何かできることはないかと検討し、制作したのが、今回ゴールド賞を受賞した特集「語り継ぎたい『挑戦』の言葉たち」です。
企画した背景にはまず、当社の社員はスーパードライに対して、愛と誇りを強く持っている、という大前提があります。しかし、発売から30年が経った今、当時在籍していた社員の数はわずかに全社員の約4%。大半の社員がスーパードライの発売当時を経験したことがなく、商品誕生にまつわる苦労やエピソードが風化されつつあるという現状がありました。そのギャップを埋め、誕生から今に至るまでの挑戦や取り組み、またそこに込められた想いを改めて伝えることがこの特集の目的です。それによって、スーパードライへの愛と誇りをさらに高めてもらいたい。そして読後には、社員一人ひとりに、スーパードライのブランドの発信者となってもらい、全社一丸となってブランド価値を最大限に高めていきたい。そんな狙いがありました。
挑戦のDNAを「言葉」で継承
▲スーパードライの象徴的な言葉とエピソードで30年を振り返った
企画のポイントは、「言葉」にフォーカスしたことです。こうした特集では、年表などを用いて歴史を振り返るというスタイルが一般的ですが、私達が目指したゴールは、振り返りながら「共感」をしてもらうことです。言葉の根底にある想いや意味に心を添わせ、誰かに話したいと思ってもらうこと。それこそが、ブランドの発信者になることにつながるのでは、と考えました。
また、「挑戦」をキーワードにしたのは、スーパードライの歴史とは挑戦の歴史でもあり、挑戦はアサヒビールのDNAとも言えるものだからです。注意したのは、現在、そして今後にも通じる言葉をチョイスすること。過去ではなく未来に目を向けるため、「その時代だから言えた」という表現は避けるようにしました。
ページ数は、全6ページ。今のスーパードライを支えている社員を紹介しながら、スーパードライの象徴的な言葉とエピソードで30年を振り返っています。過去の資料に関しては、広報が保有していた資料や資料室と連携して厳選しました。アサヒビールの挑戦するDNAを、これからもずっと継承していきたいと思ってもらえるよう、社員の心を刺激するような誌面を心掛けて制作しました。
タイトルと事例の工夫で「親近感」を演出
▲ESGという言葉をあえてタイトルに使わずに親近感を持たせた
同部門ではもう一本、「社会は『あなた』を求めている! 新しいつながりを見つけよう」という特集もゴールド賞をいただきました。タイトルからは分かりづらいですが、こちらはESGに関する企画です。中期経営方針の重点課題の一つ「ESGへの取り組み強化」を浸透させるための特集です。
タイトルに、ESG、CSR、社会貢献というワードを使わなかったのは意図したものです。というのは、一般的な社員にとって社会貢献活動は、たとえ興味があったとしても、触れる機会自体が少ないテーマ。そのため専門用語を用いたタイトルはハードルが高いと判断し、もう少し目線を下げて、「新しいつながり」という柔らかい表現にしました。また、社会とどんなつながりがあるのか、世の中に目を向けてみようという想いを込め、扉には虫眼鏡のイラストを使用しています。
内容についても、同様の配慮をしました。事例として社員3人を紹介していますが、手の届かない高尚な活動ではなく、身近な活動をしているごく普通の社員をピックアップ。始めることになったきっかけを中心に語ってもらうことで親近感を覚えさせ、「自分にもできそう」「活動のカタチはたくさんある」と思ってもらうことを狙いとしています。
目指すものと現状のギャップを埋める
2本の企画は、いずれも社内広報の方針に基づいたものです。当社では「その感動を、わかちあう。」をブランドステートメントに掲げていますが、感動を生み出すには、活き活きとした社員がやりがいを持って働ける環境を創り出すことが大切だと考えています。それを実現するには、自分の仕事や会社に愛情と誇りを持てるようにすることが肝心で、そのために目指すものと現状のギャップを埋め、より良い企業風土を創出すること。これを社内広報の役割と位置付けています。
動画を含めさまざまなツールを使い分けていますが、じっくり読んで考えるきっかけを作る媒体として、隔月で発行する雑誌社内報『HOP!』は欠かすことのできない重要なツールです。今後も、より良い企業風土作りを目指していきたいと思っています。
社内報『HOP!』概要
- 創刊:1964年
- 発行部数:8,000部
- 仕様:A4判カラー
- ページ数:20ページ冊子形式
- 発行頻度:隔月刊