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誰でも使えるツールで、誰にもまねできない社内報をつくる


「社内報アワード2024」イベントでは、「進もう、IC*の力で。」をスローガンに掲げ、表彰・交流イベント、プレイベント、アフターイベントと展開しています。

10月2日(水)~8日(火)には「オープンギャラリーWeek」を開催し、さまざまな日替わりプログラムを実施しました。今回は最終日に行われた審査員の特別対談の第2弾〈web/アプリ社内報編〉の様子をお届けします。

簡単に操作できる制作ツールの普及により、導入のハードルがぐっと下がったWeb社内報ですが、それだけに内容の充実がより重視されるようになったと語る審査員。冊子社内報とは少し異なる審査のポイントも要チェックです!

*Internal Communication(インターナルコミュニケーション)の略。

 

【対談者】
クベルバ株式会社 代表取締役 
吉田 哲也 氏  

Webをはじめ、グラフィック、映像、E ラーニングコンテンツなど、幅広い制作に携わる。特に企業採用や社内コミュニケーション活性など、インナーブランディングの制作領域に強みを持ち、企画、制作、運用まで一貫して行う。「社内報アワード」コンクール審査員。

株式会社ファイブグループ
経営企画部 コーポレートコミュニケーション・ 広報 担当
式地 知美 氏

自社の店舗でのアルバイト経験から「“楽しい“をつくる」 という会社の価値観に惹かれ、正社員に。約5年間店長を務め、2019 年にコーポレート部門に社内転職をして2020年より現職。広報全般業務を1人で担当する。「社内報アワード」コンクール審査員。


[ファシリテーター]

ウィズワークス株式会社
社内報事業部マネジャー
古源 友美子

 

 

 

多様な進化を続けながら社内外に広がり続けるIC

――今回の対談イベントでは、まず「進もう、ICの力で。」というスローガンに対する思いをお聞きしています。吉田さんはいかがでしょうか。

吉田:これまで止まっていたものが動き出す、その原動力がICなんだという能動的なイメージを得ました。運営事務局からIC担当者に向けた熱いエールであり、我々審査員にとっては意気込みや決意であり、これらが一つにまとまるキーワードとして、まさにICそのものを体現していると思います。

――式地さんは現役のICP(インターナルコミュニケーション・プロデューサー)として、どう受け止められましたか。

式地:このスローガンには、日ごろ脚光を浴びることが少ない社内報の担当者が、自分たちの仕事に誇りを持とうという力強さを感じました。近年、企業の無形資産の価値が見直されていますが、ICはそういう企業価値を作るど真ん中にあると思っています。弊社ではICが経営企画と紐づいているので、ボードメンバーや営業部長からダイレクトに相談を受け、現場の要望にも応えながら一緒に動いていますが、会社が推進するための施策の一つとしてICが作用していると思う瞬間が楽しいです。

吉田: ICという言葉を使うかどうかは企業によりますが、例えば社内報やインナーブランディングとは少し違ったニュアンスがあり、より広い範囲を指す言葉だと思います。日本はまだまだICが遅れているとよく言われますが、社内報アワードの応募企業の方々はその中の最先端であり、リーダー的なポジションと思います。もっと枠をはみ出してこんなICをやっていると紹介する場があってもいいですね。

「社内報アワード2024」イベントスローガン
「社内報アワード2024」イベントスローガン。これを目指してプレイベント、表彰&交流イベント、アフターイベントを開催

――なるほど。では、ここ数年、コロナ禍や働き方改革などICを取り巻く環境が変化している中で、新たにICに期待される価値はどんなものだとお考えですか。

吉田:今はWebやアプリのツールが安価で手に入り、あらゆる機能がそろっていて、Webや動画の社内報をつくりたいと思えば誰でもすぐに始められるようになりました。見る側もそういうインフラに慣れたというのは、一昔前と比べて大きな変化ですね。ツール自体に目新しさはもうない、となると、これからは企画のコンセプトや中身がより重視されると考えています。よくあるテーマでも切り口のおもしろさや、深掘りの仕方に変化をつければ、見る側に新たな気づきや価値を生み出していきます。価値とは普遍的なものではなく、見る人によって異なり、時間が経てば変わる。「これが答えです」という絶対的なものはないのが難しいところですが。

式地ICの価値は単に作品をつくるとか媒体を運営することではなくて、それによってどんな変化があったか、何が前に進んだのかだと思います。ただ記事を書くだけじゃなくて、例えば社長と相性の悪い部長を仲良くさせるというのもそのひとつです。あ、弊社は仲がいいですよ(笑)。社内のコミュニケーションを円滑に回すには、媒体の枠にとらわれずに、いろいろ試して手数を増やすことが必要かなと思っています。当社の場合はワンフロアーオフィスで、ほぼ毎日出社しているので他部署の話はそれとなく耳に入ります。また、店舗の方にもインタビューをしたり遊びに行ったりしてフランクな話を聞いています。会議では出てこない、そういう場での情報が実を結ぶことが多いことを考えると、足取りの軽さもICの一つの価値かもしれません。また、特定のターゲットに向けた発信がうまくいかなくても、違うターゲットにしてみようとか小回りが利く、そこがICに期待されている点でもあると思います。

吉田:ここ数年、ICのターゲットが社外に向かう動きが定着してきましたね。特に採用や教育と絡めた社内報の活用はますます加速しそうです。今はリファラル採用(社員による人材紹介)やアルムナイ採用(退職者の再雇用)なども増えています。こういう外部へのアプローチにもICの価値が発揮されると思います。

――採用や離職防止にICや社内報を活用。式地さんは、すでに実行されている?

式地:採用担当者から、例えば2年前の新卒者の座談会をして、応募者にアピールできるものを書いてほしいというようなリクエストはありますね。当社はオープンのWeb社内報ですが、実は求職者向けの記事も結構あり、必ずしも社内がターゲットというわけではありません。2020年の立ち上げ時から、そこはあまり固定せずに、誰かが欲しいという記事を書いていこうというスタンスで取り組んでいます。

Webの特長を生かして没個性的な社内報から脱却する

――さて、お二人は今年度もたくさんの企画を審査されましたが、どんな気づきや発見があったでしょうか。

吉田:毎年たくさんの発見があるのですが、今年は特に担当者のモチベーションの高さが応募用紙から伝わってきました。どれも解像度が高く、企画意図がよく伝わる。やらされているのではなく、冊子社内報の対談 で加賀谷さんがおっしゃった「我らがやらねば誰がやる」という、まさにICを引っ張っていく強い意思を感じましたね。

(冊子社内報 審査員特別対談「アップデートに終わりはない ― 前進し続けるICへ」はコチラ

 この傾向は年々高まっていますが、最近はコロナ禍で中止されたリアルイベントが再開されるなど、情報が開示される機会が増えたことが背景にあると推察しています。いろいろな取り組みを通じて発信される多岐にわたる情報を整理して次の打ち手を検討することを繰り返すうちに、そのスキルのレベルが自然に上がっている。例えばWebなら、アクセス解析を基に効果測定を行い、そこから課題分析、施策の取り組み、改善結果と前進させていくというように。

式地:同感です。私は審査するときに従業員数と平均年齢、拠点数、経営理念などをホームページで確認していますが、今年は応募用紙から感じ取れるケースが増えた印象があります。
 それから、どの企業も社内報で扱う用語の種類が増えているように感じています。経営理念にはじまり、ミッション・ビジョン・バリュー、中期経営計画、SDGsなどの言葉があふれているため、今の課題はどれなのか、読者つまり社員にとっては優先順位をつけるのが難しくなっているような気がしています。社内に浸透を図りたいテーマや言葉は繰り返し使うことが重要ですし、当社もWAYSを本文中に必ず入れるといった工夫はしていますが、何を最重要と考えるかの線引きは必要かもしれません。

吉田:その企業オリジナルの言葉が企画にマッチしていれば腹落ちしますし、社内でうまく作用していれば素晴らしいと思いますね。ただ、審査では社員の行動変容まで確かめられないのが残念で、どんな成果に結び付いたかを知りたいところです。

式地:「その企画が何に作用したか」が応募用紙に書かれていると、企画の意図への誓いがより深まります。今年審査した中に、社内で開発したSNSを応募された企業があって、内容もさることながら、これで社内が盛り上がるならめちゃめちゃいいことだと思いました。これが今の自社にとってのベストな手法で、それによってどのような行動変容が起こったかをたどるのはおもしろいし、さまざまな表現方法を見ると私自身の勉強にもなります。

吉田:表現方法については、審査員としては少し悩ましい状況にあります。Webのインフラが整って手軽に制作できるようになったことの弊害なのか、似たような企画が増えていると感じています。先ほどお話したように、テーマの切り口や深掘りの仕方は常に工夫が必要で、手軽さだけを追求していると停滞してしまいます。
 ただ、社内報が停滞感に陥ったときにアップデートする方法はいろいろあります。Webならではの特徴としては、情報の貯蔵庫であるという点。一度公開した記事や未公開記事などの情報資産を上手に活用することで活性化させるという方法があります。例えば、新入社員が見ていない過去の情報を料理し直したりするのは、Webはやりやすいと思います。

――応募作品が似てきたという話は他の審査員からも聞きます。Web社内報は発行頻度が高いぶん、飽きさせない工夫がより必要になるのですね。

式地:Webは見たいときに見たいものだけをさっと見られるのが特徴ですよね。それを踏まえ、当社のWeb社内報では、単発企画は一時的なカンフル剤になればよしで、その企画が響かない人がいても構わないし、全社員を喜ばせなくていいと割り切っています。一方、連載企画や毎年恒例の企画については伝え方を変える工夫をしています。内定式の際は、去年の内定式の記事を併せて配信しました。これが結構見てもらえたんですよ! 繰り返しの情報であっても、時期を選べば新たな刺激になることの実例です。

オリジナルの魅力があふれた社内報は強い

――今年審査された中で、2024年度の注目企画を教えていただけますか。

式地:大手グローバル企業が立ち上げたWebサイトですね。コロナ禍が明けて全社の一体感を得るために世界中の拠点を結んで一つにまとめたのですが、それ自体が全社イベントになっていて、すごくやりがいがあるだろうなと思いました。メタバースやVRなどの利用がもっと一般化すれば、こうした企画は増えていくだろうと予想され、今後の可能性を感じました。

吉田:私が注目したのは、社内のチャレンジャーだけにスポットを当てて深掘りするという、刺さる人が限られそうな企画です。登場する本人はとてもうれしいでしょうし、見る人にもそうなりたいという連鎖が生まれそうという点で記憶に残りました。課題も多くて上位入賞には至らなかったのですが、今後の可能性を感じた事例です。
 もう一つはテクニカル面での好事例。CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を使ったWeb社内報はレイアウト上の制限が多いのですが、画像の枠をスライドにする、タイムラプス(コマ送り的手法)で写真を次々と切り替えるといった工夫が光った作品です。Web社内報は、世の中全般のWebより少し遅れている傾向にあるのですが、モーションデザインやショート動画を活用するなど部分的にトレンドの手法を使うことで、マンネリから脱却して社員の目を引き付けることができると気づかせてくれた事例でした。
 ゴールド賞の企画は総合的な完成度が高いのはもちろんなのですが、入賞外の作品にも今後を期待させるものが結構あります。時間も予算もないことに屈せず、熱意を込めて取り組んだ企画は、たとえ上位に入らなくても審査員としては心が動きます。そういう企業にも注目し、審査講評を通じてエールを送っています。

式地:確かに、CMSだと素朴なつくりになりやすいですよね。ただ、「社内報アワード」に応募するとか、外部に見せるためにかっこよく仕上げることより、自社ならではのノリとか空気感を表現することも大切だと思っています。今回審査した中で、その点で秀でた企画と出合いました。読み手と肩を組むような、「僕たちはこうだよね」と語りかけてくるような文章表現で、全員がスクラムを組んでいるような空気感の社内報です。社内の人にしかわからない用語もバシバシ出てくるのに、審査しながらその会社のファンになってしまいました(笑)。自社ならではのトンマナのコントロールができている企業の社内報は、強いなと思います。

――確かに、ゴールド賞受賞企画以外にも、尖った作品、おもしろい作品がたくさんあります。本日はありがとうございました。

ICの力で前に進むために

  • Webアプリやツールはあって当たり前、中身で勝負する時代へ
  • 更新頻度が高いWebだからこそ、飽きない工夫が求められる
  • 過去の記事は情報の倉庫。リメイクで活用するのも一案
  • 表面的なカッコよさより、自社オリジナルの魅力を前面に出す
  • 受賞作品にこだわらず、“尖った”社内報にたくさん触れよう

[編集部Pick Up]

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課題解決に挑みながら「らしさ」「温度感」を大切に、共創を目指すWeb社内報
(株式会社 土屋鞄製造所)

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