コロナ禍を引き金として、インターナルコミュニケーション(以下、IC)は10年分以上に相当するといわれる多大な変化の受け入れを余儀なくされました。しかし、そうした変化に順応すべく、ここ数年のICは目覚ましい進化を遂げています。
その実態を調査すべく、この度、ICや社内報における各企業の現状と今後の方向性についてICご担当者を対象にアンケートを実施しました。この集計・分析結果をセレクトしてお伝えします。
『社内報白書2023』 調査概要
調査対象/日本国内の企業、団体
調査方法/アンケートフォームによるインターネット調査
調査期間/2023年8月16日~8月28日
有効回答数/277
※『社内報白書2023』アンケートにご協力くださった皆さま、誠にありがとうございました。ご回答者には『社内報白書2023(PDF)』ご覧いただくためのアクセス情報をメールにて連絡させていただきました。もしもメールが届いていない場合は、ご一報いただけますと幸いです(迷惑メールフォルダに入っている場合もございますので、ご確認をお願いいたします)。
ICの目的に影響を及ぼすツールのデジタル化
コロナ禍という未曽有の事態に対応し、それを乗り越えることで急速に進化しているIC。組織のさまざまな課題を解決するために重要かつ多岐にわたる役割を担っていることから、人事や総務、IRなどと連携してICに取り組む企業が増えています。では、ICの目的はどのように設定しているのでしょうか。
前回2021年調査からの目立った変化は、まず3位だった「社内・グループ内の周知事項の伝達」が今回トップに。有効回答277のうち、今回調査ではほぼすべての企業がこの選択肢をインターナルコミュニケーション(以下、IC)の目的に掲げており、全体比率では76.9%から263社(約95%)へと大きく伸長しました。
続く「経営理念・ビジョン・中計などの浸透」は前回3位から2位に、「社内・グループ内の一体感の醸成」は2位から3位へと、トップ3の顔ぶれは変わらないものの、順位には若干の変動が見られます。合わせて、前回は6位で全体では64.6%が目的に挙げていた「従業員の意識改革・態度変容」は、156社(約56%)へと減少しました。
こうした結果は、ICにおける主要な施策である社内報・グループ報が、紙冊子からWeb社内報(イントラ)・スマホ/アプリ社内報への移行・併用化がじわじわ進む中、速報性に優れたデジタルツールの特性に合わせて、各社とも発行目的や内容を最適化した結果だと考えられます。
また「社内・グループ内の一体感の醸成」の増加は、社員登場や趣味紹介といった比較的実現が容易な企画でカジュアルに形にしやすい点が要因と思われます。一方で「経営理念・ビジョン・中計などの浸透」の減少は、こうしたテーマをコンテンツ化すると内容が硬く長文になりがちであり、一般的には前者のほうがWebと相性が良いと言われ、取り上げやすいことに起因するのでしょう。
今回調査での順位変動は、このようにコンテンツを練り込む難易度や、デジタルツールの特性、ツールに対する発信者の習熟度などが、総合的に反映された結果と考えられます。
デジタルツールが社内報の定番に
ICの施策やツールの多様化が進む中、2023年現在の活用実態はどのようになっているのでしょう。
今回の調査では、多様化する社内報のメディア・ツールの活用状況を把握する目的で、回答の選択肢を細分化。特に5,001人以上の企業規模では、「Web社内報」(おもにブラウザで閲覧するもの、イントラもここに含む)、「スマホ/アプリ社内報」「動画社内報」の導入が目立つ結果となっています。
これらのデジタルツールは相互に親和性が高く、連携・拡張がしやすいのが特徴。「Web」や「スマホ/アプリ社内報」は、「印刷」や「動画社内報」も絡めたメディアミックスの考え方が浸透すれば、その中心となる媒体として、今後さらに大きく伸長する可能性を秘めています。
従来は閲覧の導線づくりが課題に挙げられることの多かった「PDF社内報」は、コロナ禍において制作や配信の手軽さが再評価され、主要メディア・ツールの一つとして完全に地位を確立。フォーマットをタテ(A4冊子相当)からヨコに変更したり、企画やデザイン性を高め文字量などもPC画面上での閲覧に最適化したりといった、工夫を凝らしたケースを目にすることが増えています。
社内報は若手や次期リーダー層に向けて
今回、社内報のメインターゲットについても伺いました。
トップの回答は「30代」で、約4割という結果になりました。30代の中堅社員は、若手にとってのロールモデルとして影響力も大きく、組織にとっては現場のマネジメントをはじめ、成長をけん引していく役割が期待されます。そうした「次期リーダー層」の視座を、IC施策を通じて高めることに重きを置いている企業が、やはり多いということでしょう。
「その他」の回答が示すのは、選択肢にあるいずれか単一の年代だけではなく、「20代~40代の一般社員を同列に」など、主ターゲットを幅広い年齢層としているケースだと推察されます。その延長線上として、「全年代」という回答も1割以上と根強く見られます。
自らの業務を楽しむIC担当者は8割以上
「とてもやりがいがあり、楽しい」「まあまあやりがいがあり、楽しんでいる」と回答し、IC業務を好意的に捉えている層が8割以上。この設問の回答傾向は20ページ「貴社経営層のICへの理解・協力状況に近いものは?」と類似が見られ、組織の理解がある担当者は、ICの意味や目的をポジティブに捉え、周囲の積極的な協力を得ながら、楽しんで成果を上げることができているという相関関係が伺えます。
特筆すべきは、1,000人以下の規模で「とてもやりがいがあり、楽しい」と回答した層が、前回調査時の23.2%から35.8%と大幅に増加したこと。中小企業など比較的小回りの利くコンパクトな組織で、従来の発想にとどまらない自由な活動で成果を挙げるIC担当者の事例は実際に多く、こうした変化が業界全体を刺激し、活性化していくことが期待されます。
変化の時代、担当者同士が支え合う
『社内報白書2023(PDF)』発刊にあたり、多くの方々に実態調査アンケートにご協力いただきました。お寄せいただいた回答を分析・編集していくなかで、その一つ一つからICや社内報制作に対する真摯な気持ち、仕事を楽しむ姿勢、ときには悩みや葛藤も感じられました。
そうした貴重な声からは、「ICの今とこれから」が感じ取れます。ひとくちにICと言っても、担当者が置かれた環境や、直面している課題は各社さまざまでしょう。しかし、ここにまとめた貴重なナレッジは、新たな取り組みのヒントや苦境へのエールとして、同じ仕事でつながる仲間同士を支え合い、奮い立たせてくれる一助になるはずです。
変化する時代の頼れる指針として、皆さまのIC活動のお供に、ぜひ『社内報白書2023(PDF)』をご活用ください。
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