2020年10月6日(火)~9日(金)に開催した「社内報アワードONLINE EVENT 4DAYS」では、上位入賞を果たした優秀企業10社による、社内報制作の事例発表を行いました。「社内報ナビ」では、各社の発表内容を紹介していきます。
第5回は、「社内報アワード2020」の紙社内報部門 1冊子20P以上でゴールド賞に輝いたマルハニチロ株式会社様。国内外に多数のグループ会社を持つ大企業ならではの課題と向き合い、インターナルコミュニケーションのきっかけとなる社内報づくりについて語っていただきました。
2社の経営統合から生まれた大規模な企業
当社は2020年に創業140年を迎えた水産に強みを持つ総合食品企業です。元は水産商事事業に強みを持つマルハと、食品加工事業に強みを持つニチロという、それぞれ100年以上の歴史を持つ別々の会社でしたが、2007年10月に経営統合してマルハニチロとなりました。
企業ロゴの2つの赤い曲線は、それぞれマルハの「M」とニチロの「N」をパターン化したものです。この2つの波が共鳴し、「伝統をベースに、しなやかに変化しながら食の世界に新しい波を起こしたい、世界中においしさをお届けしたい」という願いをイメージしています。これは社内で「DOUBLE WAVE!(ダブルウェーブ)」と呼ばれており、社内報のタイトルにもなっています。
現在のマルハニチログループは国内75社、海外77社の計152社、従業員は総勢11, 000人超という大所帯です。主な事業は、漁業・養殖、水産商事、畜産商事、家庭用冷凍食品、家庭用加工食品、業務用食品、化成バイオ事業など多岐にわたり、全11ユニットで構成されています。
社員一人ひとりの「肌感覚」が伝わる誌面に
私の所属するコーポレートコミュニケーション部では、社内外の広報活動をはじめブランディグ活動など幅広い業務を11名の課員で分担しています。
現在のマルハニチログループの社内報は、2007年の経営統合後に創刊されたもので、発行は年4回です。社内報は、数多くの事業部門があって他部署の人が何をしているのかわからないという社内環境の下、ユニット間の相互理解を深めることをねらいとし、従業員の一体感を醸成するテーマを設定するようにしています。
主な内容は経営メッセージ、商品紹介、顧客への施策、ブランディング活動、従業員や業務の紹介、グループニュースなど、かなり読み応えのある構成になっていますが、制作する上で特に心掛けているのは、なるべく多くの社員に登場してもらい、その「肌感覚」を伝えること。例えば社内プロジェクトを取り上げるなら単なる内容紹介にとどまらず、どんな人がどんな思いで関わったのかを誌面で紹介し、読者の理解がいっそう深まるように努めています。
一方、当社では2018年度に4カ年の中期経営計画「Innovation toward 2021」がスタートし、その一つの柱として新コーポレートブランディング戦略が発足しています。それに伴い、母なる海のような存在になるという思いを込めた「海といのちの未来をつくる」という新たなブランドステートメントとブランディングカラーが設定され、これを機に社内報の表紙デザインも一新することとなりました。
ブランディング戦略と社内報
- 企業ロゴと社内報のタイトル
マルハとニチロの2つの波「DOUBLE WAVE!」を社内報のタイトルに採用。 - ブランドイメージの統一
基本デザインと組み合わせ要素を設定したブランドのデザインコンセプトを軸に社内
報の表紙を制作。多彩なブランディングカラーと季節感のある写真素材を使って視覚
的に社内のブランド浸透を図っている。
社内コミュニケーションのきっかけに
ここからは、受賞した2019年秋号の社内報から、いくつかの企画をご紹介します。
連載企画:未来をつくる人
大きな人物写真を使い、巻頭で読者の興味を引くことをねらいとしています。タイトル通り20代から30代の若手社員をグループ各社からピックアップし、今の仕事を志したきっかけや業務の内容、苦労話などを語ってもらい、奮闘する若手の姿を読者に知ってもらおうというものです。
特集企画:基盤と先端を担う
茨城県のつくば市にある中央研究所という組織を取り上げました。企画の背景には、地理的に離れた同研究所について他部門の社員が知る機会が少ないため、この掲載を社
内コミュニケーションのきっかけにしてもらいたいという思いがありました。
工夫した点は、研究内容がいずれも専門的で多岐にわたるため、全てを網羅するのではなく、特徴的なものに絞り込んだことです。読者がイメージしやすいように、その研究によってどんな商品が誕生したかなどの具体事例を紹介しました。
所内の部署紹介では、所属社員の集合写真や名前
とともに、一人ひとり「自分は〇〇のプロ」と個性が伝わるような表現をアンケート形式で答えてもらいました。
この質問コーナーは、私自身が業務の上で専門的な知識が必要な時に誰に聞けばいいかわからなかったことがあり、他部門の人も同様に今後のコミュニケーションのきっかけになればいいなという思いがあり、企画しました。
ところが皆さんの回答の中には「釣り」や「柔道」など業務に関係ないものもあり、それまで抱いていた研究所の真面目で固いイメージが薄れ、意外に身近な一面を発見するといううれしい驚きもありました。
特集の最後には、所長の挨拶と研究所の年表を作成して掲載しています。
今回の受賞でいただいた講評では、「今後のコミュニケーションのきっかけとなることを意識する」という点を高く評価していただき、あらためて社内報を作る意義を感じることができました。
連載企画:世界のサカナごはん
世界各国の事業所の駐在員に現地で有名な魚料理とレシピを紹介してもらうものです。東京本社でレシピを整えて調理し、撮影しており、さらに誌面では事業所の方々や現地の様子を英文併記で紹介しています。料理の写真はプロのカメラマンに動画を撮影してもらい、社内報だけではなく、「世界のサカナごはん」シリーズとして公式サイトにも掲載しています。
連載企画:「俺の逸品」&グループ各社のニュース
先に紹介した「未来をつくる人」が「人」を切り口にしているのに対し、「商品」を切り口にしたものです。多くの事業があるので社内でも知らない逸品がたくさんあるところから、各グループの社員が「逸品」と自慢する商品について語ってもらう企画です。
このように、人がたくさん登場する企画を数多く用意し、巻末にはグループ各社のニュースをピックアップして毎号掲載しています。
各企画に共通する制作のポイントは下記のとおりです。
- 特集記事のプランニング
自分自身が知りたいことや、日頃からいろいろな部署の人と話して社内報の感想を聞いたり、こんなものを読みたいと言われたりしたことをきっかけにする。 - 表記や編集の工夫
新入社員や他部門の従業員など「誰が読んでも分かりやすい」ものにすることを心掛ける。文字が多過ぎると最後まで読まれないので、人物写真を多く使って目を引くなどの工夫をしている - 人選のポイント
昔から社内報に協力的な文化があり、口コミや個人的なつながりで依頼することも。魅力的な社員が多いので、できるだけ取り上げたい。 - 海外従業員への対応
海外でも読んでほしい記事は英訳する。ただし日本語と併記すると情報量が減るので、英文用の誌面を別に作ることもある。
新たにWeb社内報もスタート
そのほか紙媒体の社内報とは別に、10月1日から新たにWeb版の社内報をスタートしました。こちらは毎日記事を更新しており、コロナ禍においても柔軟なコミュニケーションを図りたいと考えています。
マルハニチロは「世界においしいしあわせを」というグループスローガンを掲げ、多くの事業所がある中で「世界中においしいしあわせをお届けしたい」という思いを一つにしています。これからも社内報という媒体によって、お互いがお互いを知るきっかけを作ることで、従業員の一体感を醸成していけるように頑張っていきたいと思います。
- グループ報『DOUBLE WAVE!』
創刊:2007年
発行部数:11,000部
仕様:A4判、4色、平均約40P
発行頻度:季刊 - 会社情報
URL:https://www.maruha-nichiro.co.jp/
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