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大型特集は読み飽きない仕掛けづくりが成功の秘訣(株式会社ファンケル)


「社内報アワード2024」入賞企業によるオンライン事例発表セミナーの第3弾は、「紙社内報部門/特集・単発企画8ページ以上」でグランプリを獲得した株式会社ファンケル様です。「健康食品事業30周年」をテーマにした全20ページの大型特集には、読む人を飽きさせないユニークな切り口と遊び心が取り込まれ、深い思いを共有できる仕掛けが満載。育休が明けるとともにインターナルコミュニケーション(以下IC)担当に着任した前田さんは、ICの仕事を通してどんどん会社が好きになったといいます。今回は、特別にお持ちいただいた制作過程の貴重な資料も開示してくださいました。

 

【プレゼンテーター】
株式会社ファンケル 
社長室 広報部 係長 
前田 瑛美(まえだ えみ)さん  

 

 

 


【ファシリテーター】

ウィズワークス株式会社
社内報総合研究所 所長
橋詰 知明

 

 

 

読む人のプラスになるコミュニケーションマガジン

――まずは貴社のご紹介をお願いします。

前田私は2009年に新卒でファンケルに入社し、お客様窓口から広告宣伝部、秘書部を経て、20235月に広報部に着任し、グループ報「はぁもにぃ」の企画制作を担当しています。 今年4月に創業45周年を迎えたファンケルは、創業者の池森賢二が化粧品による肌トラブルが社会問題となった1970年代に、自身の妻も悩む姿を見て、綺麗になるための化粧品で皮膚炎を起こしてはいけないと無添加化粧品を開発したのが始まりです。以来、「正義感を持って世の中の『不』を解消しよう」という創業理念と「もっと何かできるはず」という経営理念の下、美と健康の領域でさまざまな事業を展開しています。研究から生産・物流・直営チャネルの展開まで、製販一貫体制でお客様のニーズを素早く反映できることを強みとしています。また、 昨年からはキリンホールディングス株式会社の完全子会社となりました。

化粧品と健康食品を二軸に、製販一貫体制を敷く

創業理念:正義感を持って世の中の「不」を解消しよう

経営理念:もっと何かできるはず 

 <会社概要>
【本社所在地】神奈川県横浜市
【創業】198047
【設立】1981818
【資本金】10,795百万円
【グループ会社】国内7社、海外4
【従業員数】連結3,063名 ※20243月現在

 

――グループ報「はぁもにぃ」は、どのような役割を担っているのでしょう。

前田「はぁもにぃ」は物流部門の部内報として始まり、それがグループ報に進化したものです。2021年に月刊から季刊となり、今は16~20ページの特集企画と6本程度の連載企画からなる構成です。経営方針の浸透、従業員の行動変容、コミュニケーション活性化の3つを発行目的に掲げ、昨年の夏に2年ぶりのリニューアルを実施し、「ファンケル人(びと)をつなぐ、コミュニケーションマガジン」という新たなコンセプトを設定しました。会社や仲間のことがわかるよう、「はぁもにぃ」でしか知り得ない情報を発信し、毎回届くのを楽しみにしてもらえる媒体になることを目指しています。主に経営方針や世の中の動きをテーマとした特集企画に重点を置いていますが、連載企画では仲間のことがわかるコンテンツを提供し、冊子全体で親しみやすさや面白さのある仕掛けづくりをしています。

●ターゲットは全従業員だが、企画に応じたメインターゲットを設定

●発行目的
 ①経営方針の浸透
 ②従業員の行動変容
 ③お互いを知ることで、従業員間のコミュニケーションを活性化

●編集方針
『ファンケル人をつなぐ、コミュニケーションマガジン』

 

――ボリュームがある冊子ですが、企画制作はお一人で担当されているそうですね。

前田:制作は外部の協力会社に依頼していますが、実質的にはワンオペですね。大変ですが、そのぶん自由度が高く、やりがいはあります。社内広報になってから、会社がもっと好きになりました。取材でいろいろな人の話を聞いているときが一番やりがいを感じますし、経営トップの取材でその想いに触れると背筋がピンと伸びますね。

――今回のグランプリ受賞企画を拝見しても、そうした思いが伝わってくるように感じます。

前田:この企画は、私が広報部に着任した頃に健康食品事業30周年に関する全社プロジェクトが立ち上がり、よくわからないままメンバーに選出されたのが出発点です。さまざまな施策を検討する中、「はぁもにぃ」の発行予定が健食事業30周年の記念日にたまたま重なり、プロジェクトの口火を切る形になったので重責を担った感がありました。全従業員の意識調査では、健康食品への理解や愛着が祖業の化粧品よりも低く、それなら30周年を祝う大特集をやって社内を盛り上げたいというのが狙いでした。

――発行目的で掲げた「従業員の行動変容」につなげるためには、どんな工夫をされていますか?

前田:実はまだ67割の人が「はぁもにぃ」をパラパラ読む程度で、まずはしっかり読んでもらうことが課題です。そのうえで、会社に対して少しでもプラスの気持ちを持ってもらえたら、と思っています。そのためにも人を引きつける仕掛けづくりが必要で、誌面のデザインやレイアウトはもちろん、キャッチコピーやタイトルの付け方まで、クリエイティブ面は妥協をしないようにしています。

――細部にまで神経の行き届いた誌面は、そうして生まれるのですね。社内広報サポーターの制度も運用されていると聞きましたが、どのような協力を依頼していますか。

前田:「はぁもにぃ」には創刊当初から社内編集員制度があり、過去には私も2回ほど編集員になりましたが、その頃は企画制作全般に携わっていました。現在は1年任期で各組織から選出いただいています。人数は約25人で、構成は新入社員や若手社員が多く、主に社内の情報収集を依頼し、社外向けのリリースにも使えるネタを月1回集めています。ほかには読後の感想を聞いて集めてもらったり、企画に合った人選をお願いすることもあります。

――社外の協力会社様とは、どのような連携体制を構築していますか。 

前田:台割の作成や特集企画の設計、人選などは私が行い、取材・執筆や撮影、デザインを制作会社様にお願いしていますが、週に一度は時間を取って入念にすり合わせをしています。お付き合いが長いので当社への理解も深く、こちらの意図を汲み取って期待以上の提案をくださることが多いです。

大型特集には綿密な準備と柔軟な対応力が不可欠 

――ここからは受賞企画を見ていきましょう。まず、トビラページには従業員の皆さまが自社の健康食品を手にした写真が並んでいます。続く「ファンケルの健康食品解体新書30」では事業の歩みがつづられていますね。

前田:トビラの写真は社内広報サポーターの協力ですぐに集まりました。「健康食品解体新書30」は健康食品事業の成長や、ファンケルが業界に与えたインパクトを共有したいという意図で企画したものです。関係者から裏話やエピソードを聞き出し、それを全30個のトピックに整理しました。

従業員の写真がずらりと並ぶ特集のトビラ


30周年にかけて30個のトピックで構成

――続く「スター商品『カロリミット』誕生秘話!」は人気商品のお話が中心ですが、左下のイラストが目を引きますね。

前田この特集を企画するにあたり、看板商品の開発ストーリーはぜひやりたかったんです。その中で、発売20年になるカロリミットに決めたのですが、歴代の担当者が多いため人選には苦労しており、一人ひとり話を聞き込んで、やっと最初の開発者にたどり着いたという経緯があります。とはいえ、10年以上前の話を誰もが昨日のことのように語ってくれたので、やはりカロリミットの存在は大きいと感じました。見開きの左下に載せたイラストは、「カロリミット」という絶妙なネーミングを決めたときの社内会議の様子を再現。当時の会議のメンバーを探し出して、遊び心で一人ひとりの風貌に似せて描き起こしてもらったものです。

描き起こしのイラスト(丸囲みの箇所)にも注目!

――次の見開きは雰囲気が一転。 週刊誌風の迫力あるデザインにドキッとさせられます。

前田:これは健康食品を語るうえで機能性表示食品制度の話は欠かせないと、当初16ページの予定だった特集に、後から追加した記事なんです。通常の原稿作成は協力会社のライター様に依頼しますが、この記事は、前に業界紙の記者として活躍していた広報部のメンバーに執筆を頼み、ひと味違う書き口で臨場感を出してもらいました。週刊誌風のデザインは思い付きで、イメージを伝えて突貫で作ってもらったもの。ただ、ページを2ページ追加したらもう2ページ調整しないとならず、台割の調整もけっこう大変でした。

週刊誌風のレイアウト&見出しを活かした演出

 

――続く見開きは、ホスト役のお名前を冠した「智子の部屋」という座談会です。どのページも演出が効いていますが、企画全体の設計はどのようにされているのですか。

前田:この見開きは、事業のリーダーと若手社員の座談会で未来への期待感を持たせる企画ですが、そのままでは面白くないので某テレビ番組のように仕立てました。特集全体の設計については、たまたま参考例として見た、ロングセラー商品を扱った他社様の周年誌がイメージにぴったりで、そこからヒントをもらってアレンジしています。準備段階では、協力会社の方々と一緒に旧本社にある「ファンケルヒストリーミュージアム」という史料室に出向き、事業の背景や各商品の歴史を事前に学んだことも大きかったと思います。また、後からページを増やしたことで、いろいろなトンマナが混じりましたが、結果的に全体を読み通しても飽きることがなく、個別で読んでも面白いものになったのかなと思っています。

人気テレビ番組のスタイルを借りた「智子の部屋」

ともに働く「仲間」にフォーカスする媒体であり続けたい

――本日の配信では、制作中のイラストラフ案やデザインの別案をお持ちいただきました。貴重な資料をありがとうございます。

①「『カロリミット』誕生秘話!」イラストの制作資料
②「健康食品解体新書30」の別デザイン案(右)

前田:前述のカロリミットの会議を再現した挿絵(①)は、参加メンバーを特定して、過去の「はぁもにぃ」を参考に風貌が似るよう画を起こしてもらいました。スカーフの女性は私の元上司にあたる方ですが、まさにこのとおりです。「健康食品解体新書30」は校了の数日前に、「ページ数を増やしてエモーショナルに演出してはどうか」と協力会社様から提案いただいた別案(②)があります。こちらは採用には至りませんでしたが、私たち以上に「はぁもにぃ」をより良くしたいという意気込みが感じられてうれしかったです。

――ここまで記事を拝見して、単なる経営情報のデリバリーではなく、編集者が咀嚼してから誌面に落とし込んでいることがよくわかります。誌面での伝え方をどう工夫しておられますか。

前田もともとは経営目線で決まった特集テーマであっても、制作については私自身が一人の従業員として、現場が何を知りたいのか、どのような内容なら面白いかを考え、意識しています。私が前にいた広告宣伝部では、健康食品の折り込みチラシや新聞広告などの通販レスポンス広告の制作を担当し、広告ターゲットや訴求ポイントを考え、お客様が商品を認知し、魅力を感じて購入してくださるまでのストーリーを組み立てて表現を考えていました。その後の秘書部では経営目線で会社のことを学びましたし、こういった一連の経験は社内広報を進める上でプラスになっているのかもしれません。

――今はICの仕事のどのような部分にやりがいを感じていますか。

前田取材で社内のいろいろな人に話を聞けるのがやりがいであり、特権でもありますね。素敵な仲間の思いや取り組みを聞いたら、「それをしっかり社内に伝えなければ」という気持ちになります。今回の受賞企画では特にそれを強く感じ、今に至るまでに多くの仲間の思いが裏にあることを伝えたかったんです。事業の黎明期の苦労話を聞き、これはドラマや映画にもなりそうなくらい、血の通った物語だと感じました。それを語る先輩従業員の存在は会社の大きな財産ですし、だからこそ「はぁもにぃ」は人にフォーカスした媒体に進化したのだと思っています。

――心温まるお話ですね。最後に、今後の抱負を聞かせてください。

前田:社内報とはいえ一媒体を任されている以上、作り手としてのプライドみたいなものは大事にしていきたいです。だからこそクオリティには妥協してはいけないし、これからも追及していきたい。その原動力は「会社が好きで、より良くしたい」というシンプルな正義感だと思っています。仕事は「好き」だけでやり抜けるものではないかもしれませんが、その気持ちを大事にして取り組みたいです。

――本日は貴重なお話をありがとうございました。

 

冊子社内報『はぁもにぃ』
創刊:1991
閲覧対象者:全従業員
発行頻度:年4
会社情報:https://www.fancl.jp/


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