
経営企画部 コーポレートコミュニケーション・広報 担当
式地 知美(しきち ともみ)さん
(プロフィール)
株式会社ファイブグループ居酒屋店舗でのアルバイトを経験し、「“楽しい”でつながる世界をつくる」という会社の理念に共感し、2012年に正社員に。新店舗を含め複数の居酒屋店舗で責任者を務め、2018年にバックオフィス部門へ異動。2019年より広報業務立ち上げに携わり、社内LINEとオープン社内報の立ち上げ・運用を担ってきた。現在は経営企画部のコーポレートコミュニケーション・広報担当として、会社PR、採用広報、社内報など広報全般の業務に携わり、社内報アワード2022では「Web/アプリ社内報部門_媒体全体」でグランプリを獲得。(ファイブグループ公式note:https://note.five-group.co.jp/)
関東地方を中心に約30ブランド、100店舗以上の飲食店を展開している株式会社ファイブグループで社内報制作に携わり、「社内報アワード」コンクール審査員を務める式地知美さん。「社内報アワード2025」表彰・交流イベントでは、ICの力について考える展示で「モチベーションと巻き込む力」のパネルにもご登場いただきましたが、そこには収まりきらなかった式地さんの熱い思いをお届けします!
いつの間にか、社内報制作のひとり担当者に!
社内報の制作に携わるようなって5~6年経ちますが、それ以前はずっと居酒屋の現場で働いており、社内報づくりに関わるとは夢にも思っていませんでした。バックオフィス部門に移ってからも、飲食店営業許可の申請や防火管理者の届けなどの店舗サポート業務や、店舗で使用するマネジメントツールの見直しなどを行っていました。
そもそも、当社には「ファイブマガジン」という紙の社内報を月1回発行していた時期もありましたが、私がバックオフィスに異動したころは休刊していました。復刊の予定はなかったのですが、店舗アルバイトから正社員になり、バックオフィスに異動してきた若いスタッフが、「アルバイト時代に社内報を読んでモチベーションが上がったのでぜひ復活させたい」という熱い思いを持っていたのです。当社には、若いスタッフが自分から「やりたい」と言うことはやらせてみようという文化が根付いているので、私もサポートに加わり、社外のパートナー企業の力も借りて「ファイブマガジン」を復活させました。
このときに、せっかくなら自社のブランディングにも役立つオープンな社内報にしていこうという方向性は決めていて、オウンドメディアも立ち上げました。しかし、自社で運営していくのは難しいとわかり、別の方法を模索する中で、「復活させたい」と言っていたスタッフが現場に戻ることになり、紙の「ファイブマガジン」は再度休刊。それでも社内報のプロジェクトは継続させる必要があり、私が全面的に引き継ぐことになったのです。
ですから、「担当ね」と言われはしたものの実は最初特別な意気込みもなく、「せっかく復活させたんだから続けないともったいないよね」という程度。上長とも相談して、noteを使ったオープン社内報にして、ゆくゆくは会社のブランディングや採用活動でも使っていくという目的は理解していましたが、当事者意識は薄く、多くを外部のカメラマンやライターにお願いするつもりでいました。ディレクターというよりPMO的な役割のつもりといいますか。ところが、コロナ禍ということもあり予算が厳しく、社長から「しきっちゃん、文章書くの得意じゃない。シャッターも押せるでしょ」と言われ、覚悟を決めました。それが私の社内報制作のスタートでした。

偏りがちだった取材先を、露出量を基準に仕組み化
当時の上長も、さすがにこれは大変だと思ったのでしょう。「ほかの業務はいったん忘れて、半年ぐらい集中しよう」と言っていただき、そこからは毎月10本以上の記事を書いていました。 以前のオウンドメディアに掲載した記事の移設なども含めると月に20~30本更新することもありました。
初めのころは内容よりもとにかく数。月に最低10本は記事をあげるという目標を決めたのはよかったと思います。数をこなすことで自然に経験値が上がるので、「もっとこうした方がいい」というのが次第にわかるようになっていきました。人によってはかなり過酷な状況かもしれませんが、幸い、私の場合はインタビューをしたり、文章を書いたりすることが好きで、写真にも興味があったので、「半年間、これだけやっていてお給料をもらえるんだ!」というありがたい気持ちでした。
とはいえ、苦労したこともあります。自分でも力不足だったと思うのが企画と、それを形にすることです。“こんなテーマで、こんなページにしたい”というアイデアはあっても、そのテーマにふさわしい人にたどり着けず、思うような記事がつくれないこともありました。このままじゃだめだと思ったのが、ある事業部長に「頑張って記事を書いているみたいだけど、しきっちゃんの知ってる人しか出てこないね」と言われたときです。
そこから、取材の依頼先を自分が知っている人や社内の有名人に頼るのはやめようと決め、まず露出量の平等性を担保することを最優先に、定常の企画は何月にどの事業部を取り上げるか年間のスケジュールを作成。そのほかに、「新しく立ち上がった事業部に勢いをつける」、「新しい取り組みを始めた事業部を後押しする」といった目的に応じて露出量を調整するという仕組みをつくりました。そして、最大の課題がテーマにふさわしい人を選ぶこと。これは、各事業部の部長を巻き込むことにしました。

事業部のための記事づくりで、事業部長を巻き込む
どのように巻き込んだかというと、まずは記事の企画内容、目的、掲載の結果として期待できる成果を取材先の事業部長にプレゼンすることから始めました。事業部のための記事づくりを徹底し、協力することが自分の事業部の利益になるということをわかってもらい、取材を受けるのは誰がいいか、人選をお任せしました。記事づくりに意見を反映することで、「自分たちの記事」という意識を持ってもらうようにしたのです。
それでも初めのころは「今、忙しいんだけどなぁ」とか、「うちじゃなきゃダメなの?」と、面倒がられることもありました。でも、紹介されればうれしいんです。「自分たちの記事」ですから、事業部のスタッフにも「読んでおけよ」と、声をかけてくれます。
さらに、効果が実感できるようになるとすごく変わります。定常の企画のひとつに、アルバイトスタッフを紹介する記事があるのですが、これは社員登用の後押しをするための企画で、会社が社員になってほしいと思っているスタッフに取材をします。店長や先輩から何度も口説かれるより、本部から取材に来た初対面の相手に、「アルバイトでそこまで考えているなんてすごく優秀ですよ。社員になってくれたらいいのに!」と言われたら、その人の意識は変わります。そういう狙いも事業部長にご理解いただいているので、実際に入社が決まれば喜ばれ、感謝もされますし、「また、なにかあれば協力するよ」と言ってもらえます。
もちろん、すぐには成果が出ないことも多く、「取材をきっかけに事業部内が活気づいてきた」とか、「目的を達成した」など、励みになる言葉をかけてもらえるようになるまで1年くらい。本当に手ごたえを感じるようになったのは2年目に入ってからでした。

取材相手からの「ありがとう」が励みになる
記事の目的を明確にしているので、目的通りの成果が生まれたときの喜びは言うまでもありませんが、私個人の満足度というのは、取材のでき次第で7割がた決まる気がします。取材というのは、取材を受ける人にとっては、会社やお店に対して、あるいは仕事についてぼんやりと考えていたことや感じていたことをあらためて言語化する機会だと思うんです。ですから、取材を進める中で、曖昧だった言葉がどんどん明確になって、考えが深まっていく様子が見えると、「結構、いいパスが出せたかも」と、うれしくなります。
当社では、昇進の際にレポート提出が必須なのですが、レポート作成に取り組んでいるスタッフからは、「取材を受けて自分の考えが整理できました」と、感謝されることも多く、それも励みになります。
取材相手の中には、口下手な方や、話をするのが苦手なんだろうなと思う方もいます。質問に対して最低限の言葉しか返ってこないこともありますが、そんなときは、私の方からたくさんの言葉を投げかけるようにしています。あらかじめ、記事の目的に沿って相手にこういう話をしてもらいたい、こういう言葉を引き出したいという具体的なイメージを持って取材に臨むので、「それって、こういうことですか?」、「私はこんなふうに思うのですが、間違っていませんか?」、「普段のお仕事ぶりについて、こんなふうに聞いてきたのですが、どうですか?」「もっと、こういうこともしたいと思っているのではないですか?」など。こんなことを言いたいのではないかと、想像しながら言葉を重ねます。
また、取材を進める中で、「この考え方は家族の影響なのかな?」などと思うようなことがあれば、予定の質問にはない家族の話を聞くなど、臨機応変な対応も心がけています。そうした対応力も、数をこなすうちに身につくものだと思います。

店長経験を活かしながら、記事の幅を広げていきたい
責任者という立場も含めて現場を経験してきたことは、社内報制作において大いに役立っています。経験してきたからこそ、今、現場で働いている人が持っている悩みや、感じている壁の存在なども理解できますし、現場を知らないと聞き出せない話もあると思います。
各店のナレッジについて店長にインタビューする連載企画があるのですが、「やるべきことをやっているだけ」という店長が多いんです。というのも、ずっと同じ店で経験を積んで店長になっている人が多いので、他店と比べることがなく、自分たちがやっていることを特別だと思っていないのです。そこで、どんなことをやっているか細かく聞くのですが、店長経験があるからこそ「それ、すごくいい取り組みですよ」という指摘ができる。そこから「えっ、普通のことだと思ってました」、「いやいや、他店ではやってないですよ。何がきっかけで始めたんですか」という具合に話も広がります。せっかく店長に話を聞くなら表面的な内容にしたくないので、このコーナーのインタビュアーはほかのライターさんには任せず、ずっと私が務めています。
今後は、目的が明確な記事作りという基本的な方針は変えずに、企画や記事の幅を広げていきたいと考えています。今は人にスポットを当てる企画が多く、主に現場のアルバイトから店長クラスを対象にした記事が中心ですが、次世代のリーダー、幹部育成というのが会社の課題のひとつになっているので、店長からエリアマネージャーを目指す層に向けた記事などを増やしたいです。これまで少なかった社長や経営層のインタビューなどにも取り組み、さらなる充実を図っていきます。
社内報制作は、企画から始まり、渉外、取材、原稿執筆、撮影やデザイン、校正など、さまざまなタスクがあります。私はどれも興味を持って取り組んでこれたのですが、今、社内報制作に携わっている皆さんも、何かひとつでいいので、「楽しい」「好き」と思えることを見つけて、ぜひ楽しみながら取り組んでいきましょう!
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